208 みずきとゲームします
「涼姫の匂い、好きだけどなあ」
みずきはうつぶせになって、足をパタパタさせながらゲーム機を起動。
そういう格好でゲームしてると運動不足――の心配だけはないか、このちびっ子に関しては。
ちびっ子が尋ねてくる。
「最近エアマ5が出たんだよね? できる? どんな感じだった?」
「あー、うん。5分だけやったけど、なんと戦闘機FPSのヒーローシューターだったよ」
「ヒーローシューター?」
「現実離れした特殊能力を持ったキャラで撃ち合うゲームかな? ――まあエアマの場合、賛否両論だけどね。飛行機FPSにはリアルを求めてる人も多いから。だから特殊能力禁止モードが追加されちゃった。特殊能力なくてもリアルなシューターだから十分面白いし」
「特殊能力を持った飛行機乗り? ――それって・・・まるで涼姫じゃない?」
「え・・・?」
「そういえばこのキャラとか涼姫に特に似てるし、能力もサイコキネシスとかまるで〖念動・・・・」
そこでみずきが「はた」という表情になって、私のベッドであぐらをかく。
そうしてスマホで何かを検索しだした。
「やっぱりだ、スウに感化されて設計したゲームってディレクターがインタビューで答えてるぞ」
「なん・・・だと?」
まさかの私の影響パートⅡ。
「まて、だとするとこの二人乗りの機体の金髪とちびっ子はわたしとアリスか!? ――わたしはここまでチビじゃない!」
「草」
「草はやすな!」
みずきが、フグみたいに頬を膨らませた。
そうしてテトロドトキシン豊富そうな顔のまま、画面を操作すると、なにやらニヤニヤしだした。
「これ、無料でアバターに課金するタイプなんだ?」
「うんうん。有料にしたり、Pay to winだと大会賞金とか出せないらしいんだよね。なんか、ギャンブルになっちゃうらしくて。eスポーツは大会とか大事だし」
「涼姫みたいなキャラのアバター、水着だらけで草」
「はい!?」
私は自分のゲーム機の画面でキャラを確認――うわっ、本当に際どい水着ばっかり。
なにしやがるんだ!
妖精みたいな格好で、水着を着てるのまであるじゃないか!
この会社、訴えようかなあ!?
訴えないけど。
キャラ名も『スー』だし、それ私がエアマ4で使ってた名前じゃろ!
訴えたら、若干勝てそうだぞ!?
訴えないけ怒!
ゲーム内容だけど、実は今回のエアマは、地球だけが舞台じゃない。
なんと宇宙にまで進出。
そうして謎の敵と戦う内に、特殊な能力を持つパイロットたちが生まれた。
彼らは銀河の中央からくる謎の敵に、敢然と立ち向かう。
「・・・どっかで聞いた話だなあ」
私が言うと、みずきが白目を剥く。
「ほんとだなあ・・・とりあえず始める?」
「始めよっか」
みずきがキャラ選択をする。
「せっかくだし、わたしはスーを使うか」
「どこにせっかく要素が?」
ゲームから部屋に響き渡る『バッドエンドなんかじゃ・・・終わらせない』の台詞。
や、止めろ・・・寒イボ出るから。
「じゃあわたしはアリス&リッカみたいな――いや、このマイルズみたいなのを使おう」
「マイルズもいて草」
「大草原」
本人がいない所で植物栽培する、私達。
マイルズみたいなキャラ、名前はヤードを選択すると、響き渡る台詞。
『ボクが君を護る』
「若干言いそうで、言わない感じ」
「イケメンキャラにされてるなあ」
で、機体を選ぶか。――最初だし、安定感のあるホーネットでいいかな。
さて、ゲームを開始。
まずは、みずきと一対一で練習。
「なるほど、遮蔽物とか無い空中戦だけど、特殊能力のお陰でさらなる戦略性が出てくるんだね」
「うおおっ、涼姫ワープはやめろ、ワープは! ドッグファイトでそれは反則だろう!?」
このヤードってキャラ、飛行機の向いている方向にしかワープできないけど、ワープできる。エグい。
「みずきこそ、サイコキネシスでこっちの姿勢を崩すの止めて」
あんまり姿勢を崩させれないけど、私が使ったら相手をストールさせたり出来そう。
その後二人で小隊を組んで――二人だから分隊だとか言ってる飛行機マニアは、だーれだ?
私だ。
「アイツ、味方を回復してるぞ! どこの楓だ!」
「墜とせ、ヒーラーは先に墜とせ!」
この戦闘機たち、今回はなぜか宇宙も飛べる。
リッカが叫ぶ。
「うわーーー! やっぱり宇宙はツルツルかあ! 苦手なんだよー!」
「ふっ」
「宇宙だと涼姫が強すぎるだろう!」
「FLで実際に戦ってるし、年季も違うのだよ」
「うわ・・・涼姫が一人で相手の8人全部倒した・・・無双しすぎ。涼姫が味方で良かった。あんな無双されたら、台パンする」
「みずきのパンチは洒落にならないから、その時まで仕舞っておいて。流石にこのゲームは出たばっかで宇宙戦したことない人ばっかで、VRとか実戦の宇宙でさんざん戦ってきた私は反則かな・・・」
「珍しく自分が反則だと、素直に認める涼姫がいた」
「今日は泊まってく?」
「うん。〈時空倉庫の鍵〉にお泊りセット入れてきた」
「泊まる気満々かあ」
「じゃあ晩ごはん何にする?」
すると珍しく、みずきが作ると言い出した。
「お刺し身作ろうか?」
「おおっ、みずきの得意料理がついに炸裂するんだね。じゃあお魚一緒に買いに行こ?」
「おー!」
という訳で、晩ご飯の材料の買い出し。
みずきがお刺身を切ってくれるというので、新鮮なお魚をゲット。
私はツミレのスープでも作ろうかな。
みずきが、包丁片手に魚を捌いていく。
サンマのお刺身だって、珍しい。
あと、アワビのお刺身も。
水場はみずきが使ってるから、私はテーブルの上にまな板を置いてイワシをペースト状に。
今日の魚は新鮮だから、かなり細かくしないと。
プリプリすぎたらツミレって美味しくなくない?
という訳で叩く叩く叩く。
そうして出来たペーストをお団子にして、醤油ベースのスープに投入。
最後にわかめをいれたら完成。
さて、お刺身も出来たみたいなので。
みんなでいただきます。
「えっ、サンマのお刺身ってこんなに美味しいの!?」
「だぞー、びっくりしただろう。骨の処理が面倒だけど、新鮮なサンマの刺し身は濃厚な脂でめちゃくちゃ美味しいんだ」
「これは、本当に美味しい」
みずきが笑いながらツミレのスープを啜った瞬間、目を見開いた。
「えっ、なにこれ・・・ツミレのスープって出汁効きすぎだろ・・・出汁の爆弾か?」
「ふっふっふ。美味しいでしょー」
「び、びっくりした」
さらにアワビも、コリッコリ。
海鮮とともにご飯を搔き込めば、瞬く間に炊飯器はからっぽ。
「今日は美味しいもの一杯食べたなあ」
「だねぇ。なんか食べてばっかな気もしたけどな」
その後、お風呂に入って(一緒にじゃないよ?)
「涼姫、一緒のベッドで寝よう」
「えっ!?」
「女同士だ、構わないだろう? 子どもが出来たりするわけでもなし」
「いやまあ、そう言われると問題ないのかな?」
そうしてみずきの抱き枕になりながら、一緒に寝ました。
でも、みずきの体温が高すぎて、朝起きたら掛け布団がなくなってました。




