207 みずきが私の家に来ます
今日はみずきが、神奈川にある私の家に来てます。
土曜日の放課後、下校しようとしたら、剣道の防具をつけたままのみずきが廊下に現れて、
「アリスと映画を見に行ったんだって? わたしとも遊べー!」
って剣道の防具を着たまま抱きつかれて、ゴリゴリ痛かったです。
でまあ、最近大都会に行ってきたんで、またお出かけは辛いと言うと、
「じゃあ明日の日曜は部活ないし、涼姫の家に行きたい!」
と挙手されてご招待する事になりました。
みずきについてきたアリスが「じゃあ私も」って言ったんだけど。
なんかみずきが私を持ち上げ、アリスから遠ざけ脇におく――脇におく(物理)。
「だめ、明日はわたしが涼姫を独り占めするの。アリスはこの間独り占めしたんだろー?」
「むう・・・まあ・・・良いですけど。涼姫にあまり迷惑を掛けちゃ駄目ですよ?」
「アリスが最近、楓みたいな事言う!」
というやり取りがあって、今みずきが私の家の玄関にいます。
玄関に入ると、リイムがいつもみたいに「お帰りの」お出迎え。
そうすると、私といっしょにみずきが居るのをみて、リイムの眼が輝いた。
「コケー!」(みずきお姉ちゃん久しぶり!)
「おーリイム、大きくなったなあ」
すっかり人見知りがなくなったリイム。
大好きなみずきお姉ちゃんに体当たり。
私と違ってフィジカル満載のみずきは吹っ飛んだりしない。
みずきがリイムを抱き上げてなでなで。
で、アルカナくんも出てきて、雷にでも打たれたような表情になった。
「涼姫様に、来客・・・!?」
おいおいアルカナくん、どういう意味だい?
君の後ろに幻視できる〝ベタフラッシュ〟はなんだい?
しばらくみずきとリイムとアルカナくんが親睦を深めた後、みずきをわたしの部屋へご招待。
するとみずきが若干ビックリする。
「スゲェ、人形とか全然無くて、プラモデルだらけ・・・・女子の部屋じゃない」
おだまり。
そうしてカーテンを開いて、陽光を部屋に取り込む。
すると南の陽に輝きながら、フィギュア(最近流行りのアニメのヒロイン)を持ち上げ、逆さにしてパンツをつついていた、みずきが呟く。
「涼姫の家って西鎌倉だったんだなあ。南と東の日が当たって、陽当たり良好な家だ」
「そうそう。みずきはどこに住んでるの?」
「ウチは腰越付近のマンションだなあ」
「その辺りも陽当たり良好じゃないの?」
「超良好」
「だよね。しかもあの辺り陽キャだらけで、陽光凄そう」
「あの辺り騒がしいな。特に夏、腰越海岸とか」
「江の島の真ん前だもんね、自転車で学校に通ってるんでしょ?」
「むむっ、なぜそれを!?」
みずきが顔の前に手のひらを置いて、防御の姿勢になって私を覗き見てくる。
「前にモノレールから見えたんだよね。出会って間もない頃、湘南江の島駅の前の道を疾走してたでしょ?」
「なにっ、まさかあの日か? まるで猛虎に狙われているようなプレッシャーを感じたあの日」
「・・・猛虎?」
そういえば自転車止めて、なにやら周り見回してたけど。
「あの時は冷や汗が出て、最大の警戒をしたぞ」
「いや、私は普通に見てただけだけど」
「涼姫だからな・・・その戦闘力のせいだろう・・・。お、もげた」
みずきが、分解したフィギュアを棚に戻した。
「せめて直そうよ・・・・」
言って私は、みずきが分解したフィギュアを直して立たせてから尋ねる。
「お昼どうする? ピザでも取る?」
「涼姫の手料理」
「いや、ピザの方が」
「涼姫の手料理がいい」
「りょ、了解」
何作ろう。
「じゃあ。この間行ってきたし、横浜なナポリタンでも作る?」
「横浜なナポリとは一体!」
「哲学だよね」
「じゃあ、みずき、ピーマンと玉ねぎとウィンナー切って」
「まかせろー」
というわけで二人でキッチンに並んで調理開始。
4人分だから、水は大きなカップに4杯かな。
私はパスタが茹で上がると同時に、水が全部無くなるように調整するんだよね。
パスタから出るでんぷんがソースをよく絡ませてくれて、濃厚になる。
私のナポリタンは特に「とろみ」が大事だし。
大きめの鍋でお湯を沸かして、太めのパスタを投入。
そして、塩を適量。
水を全部飛ばすって言うことはこの塩がそのまんま味になるので、今回は大量に入れたりしない。
ガーリックを包丁の平で潰して、みじん切り。
フライパンにオリーブオイルを多めに入れて、弱火でガーリックの香りをオイルに移す。
その後、玉ねぎをウィンナーと共に炒める。
ピーマンはすぐ火が通るし、形が崩れやすいんで最後。
ここで隠し味、ウスターソースを投入。さらにイタリア人が見たら発狂しそうな調味料、ケチャップで和えておく。
パスタの鍋の水分が無くなってきたら、フライパンにパスタを投入。
・・・流石に4人分は多いな。
〖怪力〗を使いながら具材と絡めたら、再びウスターソースを投入。もはや隠れていない隠し味。
さらにケチャップ――かなり多めを追加、もはやイタリア人ならSAN値チェックもの。
最後にピーマンを入れて、形を崩さないように炒めたら。
「できあがり!」
というわけで、私、リッカ、リイム、アルカナくんで食卓へGo。
「よし、美味しい」
トマトケチャップとウスターソース、そして野菜とソーセージの旨味が織りなす複雑で濃厚な味。
「これが美味しいんだよなあ。素朴な味」
「素朴だよねぇ」
その後リッカがまたたく間に食べ終えて、足りないというのでおにぎりをニギニギ。
中身は、昨日の晩ごはんの唐揚げでいいって言うから投入。
「ふー、たらふく食べた」
「よくそんだけ食べて、その体型を維持できてるね」
ほっそり ミニッ すとーん。
「なんか失礼な波動を感じたけど、代謝が違うのだよ」
「アリスが血の涙を流しそう」
「わたしが出稽古の帰り道に買い食いしてると、たまに泣いてる」
「泣いちゃったかあ」
その後、私とみずきでネットゲーム。
「涼姫の家はゲーム機だらけで羨ましいな」
「まあ・・・最近お金あるからね」
みずきは合体したり形態変化する某ゲーム機を持って、私のベッドへダイブ。
「うーん涼姫の匂い。くんかくんか」
「くんかくんかは止めろ!」
私の周りは、なんでみんな暴挙に出るんだ!




