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204 リイムの宝物が発掘されます

 ◆◇Sight:鈴咲 涼姫◇◆




 夏休み最終日「天気もいいし」と神奈川の家を掃除していたら、部屋の隅から大量のガラクタが出てきた。


「え・・・なにこれ・・・」


 ボロボロのタオル、よくわからないガラス玉。謎の長い木の棒、耳がちぎられたうさぎの人形。私の靴や靴下。ボロボロになった私の下着まで出てきた。


 こんな事しそうな犯人は、野生を所持しているリイムしかいない。


「恐らく、リイムがここに集めたんだろうけど。流石に汚いよ・・・虫が涌きそう・・・」


 私がゴミ袋にガラクタを詰めていると、


「コ、コケエエエエ!!」


 悲痛な叫びが、ドアの方向から聞こえてきた。

 開いたドアの向こうで、リイムが眼をまんまるにしていた。


「コケエエエ!!」


 リイムがゴミ袋に飛びかかってくる。


「〖テレパシー〗」

「コケェェェ」(ママやめてぇぇぇ! 捨てないでぇぇぇ!!)


 リイムが真ん丸な眼から、涙まで流している。


「あー、私には困ったガラクタでも、リイムには宝物なのか。うーん」


(でもリイム、流石に汚いよ・・・虫が涌いちゃうよ)

「コケエエ」(やだやだ、捨てないで!)


 リイムがゴミ袋から、私の靴を取り出して逃げていく。あれだけは死守したいようだ。

 匂いフェチで、脚フェチなのか? ママちょっとリイムの将来が心配になるよ。


「うーん・・・・玩具を捨てられる子供みたいなものなのかな? ――私もゲーム機とか捨てられたら、ギャン泣きする自信あるしなあ・・・」


 なにか考えてあげようか。

 ―――あ、そうだ。


(わかった、リイム。ママ、捨てるの止める)


「コケ!?」(ママ、ほんと!?)


(うん、そのかわり、リイムの宝物は別の場所に集めよう)


「コケケ?」(別の場所?)


(専用の棚とか作ってもいいけど、それだとあんまり状況変わらないし。だからリイムにこれをあげるね)


 私はリイムの前足に、人間なら腕輪として使うものを付けてあげる。超フリーサイズなので、リイムの細い前足にもピッタリサイズになった。

 〈時空倉庫の鍵〉である。


「コケ?」(なにこれ? ママ)

「ここをクチバシで押してみて」


 リイムが私の指し示したボタンを押すと、リイムの眼の前に空間の歪みが出現した。


「これはね、何時でもどこでも開ける入れ物なの」

「コケェェェ!!」(ママ、しゅげぇぇぇ!! こんなの持ってるんだ!?)

「この中に、リイムの宝物は入れようね」

「コケッ! コケッ! コケッ!!」(うん! うん! ママありがとう!!)


 リイムが喜びに翼をバタバタさせながら、ゴミ袋から倉庫に宝物を移していく。


「コケェ!」(ママが優しくて、リイム良かった!)


 私はリイムの背中をなでなでしながら、宝物の移動を手伝った。


 その後リイムは、庭、屋上、ダイニングと、色んな場所で倉庫を開いては宝物を出し入れして、嬉しそうに翼をバタバタさせていました。


(どこでもリイムの宝物の玩具が出せる! 本当にありがとうママ!)


 だけどリイムくん、ママの下着を玩具や宝物に含めるのはちょっと止めて欲しいかなぁ・・・。




 リイムの宝物を〈時空倉庫の鍵〉にしまった日の夕方、私はリッカとアリスに合流してユニバーサルシティに来ていた。


「リッカ・・・・また家を買うの?」


 するとリッカがユニバーサルシティに、家を買う計画を立てていたのだ。


 現在、私、アリス、みずきの3人はワルシャワ風の街並みの観光地らしい、人魚の像がある場所の近くの露天でピエロギという食べ物を受け取っていた。


 ピエロギは小麦粉で作った皮に様々な食材を入れて食べる。お肉から、チーズやジャガイモ、野菜に果物。


 緊急で街の再建が行われているので、ロボロボしいロボが店番をしていた。


 美少女の可動フィギュアみたいな体なんだけど、ところどころ機械がむき出し。


 アリスが「椅子に座りましょう」と白い長椅子を指した。


 3人で座ってピエロギを「ぱくん」。


 今回買ったのは詰め合わせの籠(おそらく合成樹脂製)で、いろんな具材が楽しめる。


 私はまずはお肉のピエロギを ぱっくん ぱっくん と、瞬く間に一個食べ終える。

 するとアリスが、ピエロギの整列した籠の中を私に向けてきた。


 私は「今度は、果物にしよう」と、ブルーベリーのピエロギをもらう。

 アリスが、ブルーベリーのピエロギを頬張る私に微笑んだ。キュン。


 みずきが街を見回す。


「ヨーロッパみたいな街並みで大好きだー。絶対家を買うぞー」


 そっか、みずきは西洋風が大好きだもんね。


「私は止めとこう。家いっぱい有るもん。神奈川の家、ワンルーム、クランハウス、ロッジ。空母にも住むとこあるし」

「そっかぁ。さて、どれにするかなー」


 みずきはちょっと寂しそう言って、この間のイベントで手に入れた〖飛行〗で空に飛んで遠くを指さした。


「アレにしよう」


 私とアリスも〖飛行〗で空に上がる。アリスが雪の妖精こと、えながみたいに首を傾げた。


「どれですか?」

「あのビルの屋上に一軒家が並んでるやつ。白いのがいい」

「なるほど・・・遊びに行きますね」


 私はアホウドリみたいに頷く。


「可愛い家だね。私も行っていい?」

「もちろんだー!」


 みんなで地面に着地して、ピエロギの補充に戻る。

 補充しながら、私は青い空を見上げた。

 十二面体だけど、他の区画は透明に見えるから空が見える。


「――にしてもこれで夏休みも終わりかあ、明日から学校だね。でも今年の夏は、イベント盛りだくさんで満足。――ボス討伐、インターハイ、色んなクエストしたり、三裂星雲に行ってみたり、惑星奪還、街発展、街奪還」


 私とみずきは、ファンタジー世界でお姫様守ったりもしたし。


「スウが筋トレしたり」


 みずきが日常の一コマで私を殴ってくるので、持ち前の回避力でスウェーしておく。


「それは、たいしたイベントじゃないよ?」


 するとアリスが酷い事を言う。


「珍事でしたけど」

「珍事って言わないで」


 私がむくれると、リッカに頬を突かれて空気を抜かれる。


「珍しい事するから、次の日の嵐がひどかった」

「それって、三裂星雲の嵐!? 私のせいじゃないよね!?」

「お陰でわたしの機体壊れるし。修理代ありがとう」

「良いってことよ」


 私はお礼をいうみずきに向かって胸を叩きながら、笑った。


 にしても、今年は盛りだくさんすぎて、宿題は合間を見つけて3日(VR訓練場内なので、実質9日)で終わらせたけど。だいぶ大変だった。


「でも今年は、ほんと夏休みの宿題が大変だったよ」


 私が言って笑っていると、なんか両サイドの二人の顔色がサーっと青くなった。

 え、どうしたの・・・・まさか。

 みずきが叫ぶ。


「どうしよう、スウ! 宿題のことすっかり忘れてた! 写させて!!」

「いや。あんた学校、別やろがい・・・・」

「なんてこった。オワッタ」


 みずきが立ち上がり、頭をかかえて、くるくると回り始めた。

 で、アリスも顔色が優れないんだけど・・・彼女に限って無いとは思いたいんだけど。


「アリス――まさか、とは思うんだけど・・・」

「いえ、言い訳させて下さい! わたし撮影とか、部活とかFLとか・・・いくら〖ショートスリーパー〗を手に入れててもですね――・・・・やってしまいました!」


 みずきはくるくる回り続け、アリスが愕然と地面を見つめたまま項垂れている。

 ・・・・これは。


「じゃ、じゃあ・・・写すのはだめだけど。・・・・そうだねシミュレーターの中のフェアリーさんのワンルームで教えながら手伝ってあげるよ」

「え、シミュレーター?」


 アリスが暫く考えた後「ハッ」とする。


「――あ! ぁぁぁあああ!! そんな手が!?」


 みずきがピタリと回転をやめ、驚愕の表情で私を見つめながら尋ねてくる。


「ま・・・・まさか、スウ――チートじゃん! ・・・・ていうか、スウって、ずっと・・・?」

「そうだよ、私はずっとシミュレーターの中で勉強してた。最近は〖ショートスリーパー〗も手に入れて、本当に助かってる。ずっとシミュレーターの中にいれば、一日に自由にできる時間が63時間になるし」

「ズ、ズル・・・!!」

「そりゃ首席な訳ですよ・・・普通の人が勉強で勝てるわけない。でもシミュレーターやると脳が凄く疲れるんですよね・・・・」


 あー、たしかに。私はもう慣れたけど。


「まあ、思考速度が3倍になるわけだからね」

「あれも、向き不向きがありますよね」


 みずきがショボンと頭を振った。


「わたしは駄目だ、数時間もやってると頭がボーッとしてくる。勉強どころじゃない」

「涼姫はなんとも無いんですか?」

「最初の頃は駄目だったけど、40000時間以上もやってるから・・・」

「40000以上? 24000じゃ――あっ、そっか、訓練以外にも勉強とか他のこともやってるから・・・・なるほど――もしかして涼姫の思考速度が異常に速いのは、3倍の思考に慣れすぎて、思考自体が速くなってるんじゃないでしょうか?」

「それは・・・言われたこと有る――」


 シミュレーターの中で、昔の貴女に。


「――とにかく、急いで宿題をしに戻ろう」


 私がフェアリーさんを呼ぶと、みずきが尋ねてきた。


「でもさ、解いた答えはどうやってリアルのノートに書くの?」

「えっと、VRしながら、こうリアルで体を動かして・・・」

「それ出来るの涼姫だけじゃん!」


 みずきが頭を抱えて、また回り始めた。

 私は少し考えて、解決策を見つける。


「じゃあ、ドローンに書き写してもらえばいいよ・・・そのくらい良いいよね――多分?」


 アリスが真剣な表情で言う。


「もう、それしか無いですね」


 すると、みずきが遠い目をした。


「てかもう、AIに解いてもらえば・・・」

「ちゃんとやりなよ・・・」


 こうしてVR内で勉強会となりました。

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>「どこでもリイムの宝物の玩具が出せる! 本当にありがとうママ!」 リイムが喋っちゃってるが?
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