189 古竜とドッグ・ファイトします
・・・私が見ればヘビの様な体に手足が生えた、横に長い翼を持った竜。
その爪に、10歳くらいの女の子が捕まってる!
あの竜がウィルムか!
私がフェアリーさんのバルカンをウィルムに向けると、ヤツが逃げた。
ウィルムは首だけをこちらに向け、憎々しげに言う。
『おのれ・・・機神か・・・!』
そして、閃光みたいなブレスを吐いた。
『どうだ機神。我ら古種は機神の群れを相手していた。貴様らを破壊することなど・・・・――なにっ!?』
❝まあ、確かにコイツ等MoBだからなあ。バーサスフレームと戦えないこともないんだろうけど❞
❝今のバーサスフレームには黒体があるし、あと――❞
❝相手が悪い❞
「光は避けられないけど、黒体がありますから、熱が効かないんですよね」
『ね、熱が効かない!? な、ならば――!』
ウィルムが大きく翼を広げる。彼の周囲に現れる沢山の氷の槍。
ウィルムが翼の先を勢いよく私へ向けると、大量の槍が飛んでくる。
『これだけの数の槍、躱せまい!』
❝草❞
❝また悪手www❞
「入れ、ゾーン」
❝ゾーン入らせちゃったよ、もう勝ち目なしwww❞
いい感じだ、今日のゾーンは入りが深い。
私のゾーンも日々成長してるんだ!
これからもどんどん成長していきたい!
私は、翼を水平なテーパー翼モードにして素早く――ほんの一瞬、機首を上げる。
今からやる機動は、前進翼だとやりにくいんだよね。
翼の下で風を受けながら滑るように前へ進む。そうして翼の下に空気を溜めたら、垂直尾翼の動翼で風を勢いよく蹴る。
すると翼の下に溜まった力が開放される。同時に横滑りにより内側の主翼が失速。
左右の主翼に凄まじい揚力差が生まれる。
ここで同時に主翼の補助翼も使って横転すれば。
途轍もない速さで飛行機が横転、横転、横転。飛行機が、ドリルみたいに回転を繰り返す。
あとは勢いのまま垂直尾翼の動翼と主翼の補助翼両方で、横転し続けるだけ。
❝え、なにあれスウが見せた横転で一番速いんだけど❞
❝バレルロールどころか、コークスクリューみたいに回転してる❞
❝スナップロールだわ、プロのアクロバットパイロットでも難易度が高いって答えるヤツ❞
物凄いGに曝されてるはずのリイムが、「なにこれ?」という感じに首を傾げた。
「コケ?」
リイムも随分成長して、少々のGはなんともない。というか、もう私より強靭。
『な、なぜ槍が一発も当たらない――いや掠りもしないのか!?』
ウィルムが若干焦り始める。
『―――くっ、こんな化け物と戦ってられるか!』
❝モンスターに化け物呼ばわりされる人間(草)❞
ウィルムが背中を向けて逃げていく。
「こら、その小さな女の子を置いていけ!!」
あの子だけは取り返さないと!
私は慌てながらも、大きな十字みたいな姿をしたウィルムの飛び方を見て納得する。
「コイツ、そうか魔法みたいな方法で大きく舞い上がって、あとは滑翔で飛ぶんだ・・・・!?」
❝滑翔ってなに?❞
❝鳥の飛び方の一つ。鳥の飛び方には色々あるんだけど、滑翔は大型の鳥がよくする滑空しながら飛ぶやり方❞
❝グライダーみたいな?❞
❝グライダーはちょっと違うかも、グライダーは帆翔かな、帆翔は上昇気流を捉えて飛ぶ。――滑翔は、例えるなら紙飛行機かな❞
❝なるほど、ニキに感謝❞
私は相手の飛行性能を分析する。
相手の飛行性能を見極めるのは、空戦では凄く大事なこと。
遮蔽物もない大空では、飛行機の特性を捉えて作戦を練るのが大事。
飛行機の性能が、一番作戦に組み込みやすいから。
「あの翼、一度高度を上げればずっと揚力を得やすい形になってる。下面にはフラップのような膜が張られているし、上面はどうも空気の粘り気を効率よく捉えるみたいだ。――尾翼はないけど、細長い首と尻尾を振ったりする事で、姿勢制御してるのか。――あの巨体でずっと羽ばたいてたらエネルギー効率悪すぎるけど、なるほど滑翔ならエネルギーを節約できる――でも」
❝スウたん、早口早口❞
私は、私を突き刺してくる言葉のナイフを華麗に躱して(躱せたとは言ってない)、ウィルムの上空を捕る。
「貴方、上昇が苦手でしょう!」
『ぬおっ!?』
私は、相手の上昇性能が非常に低いと見た。なので、フェアリーテイルを急速上昇させる。
しかし、ウィルムも負けていない。
翼を動かすと、ヤツの翼から風が発生。まるでジェットエンジンだ――多分あれが上昇用の魔法!?
必死で私に食らいついてくる、ウィルム。
『1000年を生きる古竜である我は知っているぞ、〝だいぶ・あんど・ずうむ〟とかいう技であろう! その様な事はさせぬわッ!!』
「邪魔できますか!? 横に長い翼は、ロール性能が弱い!」
相手の翼は長く滑空し続けるために、非常に揚力を得やすい形をしている。
揚力を得やすいという事は沈み込みにくいと言うこと、つまり横転がしにくい。
私はハイ・ヨーヨーを実行。
――って、うわっ・・・ウィルムが翼を纏うようにして空中で体をくねらせて落下するも、翼で空気をとらえ直した!
「やっぱ機械相手の様には、行かない!?」
――と、思うじゃろ?
ウィルムは今、無茶な動きの為に高度も速度失った。
嬉しそうな笑みを浮かべる竜。
『その機神では、このような反転は不可能だろう?』
「そうだね、無理だね―――(やったら駄目だもん)」
本当は、バーサスフレームも人型を挟めば、ああ言うことが出来る。
だけどやっちゃ駄目。
さらに相手の上昇性能は、バーサスフレームほどじゃない。
「その状態から、着いてこれる?」
私はフェアリーテイルを一気に上昇させる。
ウィルムはやっぱり上昇力が足りなくて着いてこれない。
風を翼から吹き出しても、追いついてこれない。
そうして十分距離を取ったところで、
「じゃあ、行こうか――ダイブ&ズーム!」
『ぬおおおっ、追いつけぬ!!』
ウィルムは下から槍を撃ってこようとするけど、角度が急すぎて何度も失速しかかって羽ばたいている。
あれじゃあ、照準が安定しない。
私は、上空でフェアリーさんを反転。
急降下しながら、ウィルムを〈励起放射バルカン〉で撃ちまくった。
ウィルムは、何とか変速的な動きをしようとするけど、
「滑翔なら動きが読みやすい」
それにあの長い翼じゃ、高速域での素早い動きなんて出来ない。
巨体で滑空するために横に長い空気抵抗の高い翼で、どうやって素早い動きをしろと。
どんどん命中していく〈励起放射バルカン〉ウィルムはとうとう逃げるのを諦めて、躱すのに専念するためか空中で体を捻りながら無理なホバリング。
でもその頃には私は上昇開始。ウィルムを置き去りにして遥か上空へ。
そうしてまた急降下しながら、ウィルムを撃ちまくる。
『おのれ、卑怯な! 正面から戦えーーー!』
叫んだウィルムがジルコンのようになって砕け散った。
私は、空中で藻掻いている女の子を念動力でキャッチ。
「よし、片付いた」
『マイマスター、印石が出現したようです。〖毒耐性〗です』
私は落下していく印石も、〖念動力〗でチャッチする。
そういえば誰かがワイバーンの古竜って言ってたっけ。
「〖毒耐性〗かあ〖毒無効〗があるから流石に要らないなあ、というかここのモンスターでも印石が出るんだ? ――そりゃそうか。MoBだし、ヴァンデルさんがそれらしいこと言ってたし」
私が地上を見ると、ヴァンデルさん達はサラマンダーと戦っていた。
ヴァンデルさんが巨大な戦斧を振り回し、トリテさんはダガーを片手に俊敏に動き回る。
バルムさんは精霊魔術だろうか、大地を盛り上げたりしてる。
サラマンダーは火を吐いて攻撃していた。
ヴァンデルさんとトリテさんの戦いは、まさに実戦で育まれた接近戦という感じ。
みずきを連れて来てあげたら、試合とかして喜びそう。
私は女の子をフェアリーテイルのワンルームに招待する。
私が挨拶するためにコックピットからワンルームに顔を出すと、「ポカン」とワンルームを見回していた女の子が、さらにリイムに驚愕していた。
「せ、聖獣を従えた、貴女様は一体!? この規則的な部屋も一体!?」
10歳位の見た目にしては、随分大人びた口調をしている子だった。
「ウィルムを倒しに来ました」
「えっ、倒しに!? ・・・・いえ、とういうか、もう倒した訳ですが・・・」
「そ、そうですね。とりあえず着陸――地面に戻りますね」
「は、はいお願いします!」
というわけで人型で着陸して、女の子を降ろす。
サラマンダーと交戦中のヴァンデルさんが驚いた。
「ウィ、ウィルムは? まさか、もう倒してしまったのか・・・?」
「こっちはまだサラマンダーすら片付けてないのに! あ、サラマンダーが逃げてくニャ・・・! 待て、スキル石を置いてくニャ!」
「流石、勇者様で有りますなあ」
ヴァンデルさんとバルムさんが武器を仕舞う。トリテさんは逃げるサラマンダーを追いかけていった。
私は横倒しになっている馬車を指差す。
「これ、もとに戻し――」
言いかけた時、――耳鳴りがした。
これは〖第六感〗に反応?
ヴァンデルさんが叫んだ。
「つがいだ!!」
「え――ッ どこ!? 〖マッピング〗!」
何処にいるか分からない。
上、そりゃ上か!
まずい、早くバーサスフレームに戻らないと!
私が慌ててフェアリーテイルの中に戻ろうと――ってまって、みなさんが危ない。
敵はレーザーみたいなブレスを吐いてくるんだ。
私は周囲の人間全部を〖念動力〗で――駄目だ、新しいウィルムがブレスの姿勢になった! 間に合わ・・・
「〖永久凍土〗」
100万PV行きました。
これも応援して下さるみなさんのお陰です。
本当にありがとうございます。
頑張っていきますので『フェイテルリンク・レジェンディア ~訓練場に籠もって出てきたら、最強になっていた。バトルでも日常でも無双します~』を宜しくお願いします。




