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183/461

181 街に突入します

カナード翼は、今の設定に合わせた設定画を描いていたら生えてきましt。


突然生やしてすみません、今後はカナード翼もある体で行きます。

 綺怜くんが、迫りくる弾幕を受けて消していく。

 私もドローンを呼び出す。


「出てきて、アルハナ!」

『お呼びですか、お母様』

「綺怜くんのバリアを回復してあげて」

『お任せ下さい』


 さらに私はシールドドローンも呼び出して防衛に回らせた。

 ヒールドローンの回復力は、プレイヤーの駆る平均的なヒーラー機の1/3程の回復量しかないけど、後から他の盾機体やヒーラーも来ている。回復は十分間に合うはず。

 それに、綺怜くんはただ受け止めるだけではなくアリス直伝の受け流しで弾を消してる。

 あのやり方ならバリアへのダメージが少ない。

 にしても飛行形態と人型形態をうまく切り替えて素早く移動したり、姿勢を安定させたりしてる。上手い。

 アレックスさんとマイルズも褒める。


『やはりやるな』

『ああ、かなり上手い』


 綺怜くんの照れるような声が聞こえてきた。


『えへへ』


 にしても、アレックスさんとマイルズのコンビ技も凄い。

 マイルズが囮になって、アレックスさんが仕留める感じだ。

 私も〈臨界・励起翼〉でキューピィを斬りつける。

 ところが・・・・。


「うそ、〈臨界・励起翼〉を耐えた!?」


 小型なのに、硬すぎない?


『任せて!』


 私がフェアリーさんを人型にして振り返って驚いていると、マリさんが私の攻撃したキューピィに突っ込んで切り裂いた。


 流石だ。みんなで暫く交戦していると、ゲートが開いた。


『よし、ゲートが開いた。後は任せたぞテイル小隊!』

『『「はいっ!」』』

『テイルリーダーより各位へ、突っ込め!!』


 私達は青いゲートに次々入っていく。

 

 すると内部は大変な事になっていた。

 ワルシャワみたいな街の上空を、見渡す限りキューピィ、キューピィ。視界を埋め尽くすキューピィたち。


 スズメ蜂の巣の中みたいな騒ぎだった。


『多すぎない!? これは!!』


 マリさんが、少し慌てた声を出した。

 私も流石に慌てる。これでも他のプレイやーたちが、上の門へ大分引きつけてくれてるって謂うんだから、怖い。

 十二面体の中は、壁に張り付くように街があって、他の面は透明になっていて空が見える。

 一面の広さは神奈川の半分くらい有るんじゃないだろうか。

 十二面合わせたら、新潟県の面積くらいあるかも知れない。

 ――見た目はワルシャワだけど。


「操作室はどこですか!?」

『この面の端だ、このまま一直線に行けばいい』

『だが、あまり高く飛ばないぞ。キューピィに下まで取られたら危険だ。弾幕が来る方向は前と上だけに限定する』


 確かに低く飛べば、後ろからは弾幕が追いついてこないから、前と上だけ気にしてれば良い感じになるのか。


『――建物にぶつかるなよ!!』

『誰に言ってる!』


 マイルズがアレックスさんに返して建物を躱しながら、〈励起翼〉でキューピィに斬りつける。

 だが一撃では倒しきれない。

 アレックスさん、綺雪ちゃん、マリさん、私とキューピィに切りつけながら通過した。


 そうしながら飛んでいると、前方から金色のキューピィが飛んできた。


『アイツは――また厄介なのが出てきたな!』


 名前は――『レアエネミー ハイパーミュータント エレメント種 ドミナント・キューピィ』だ。


「強いんですか?」


 私の質問にアレックスさんが答えてくれる。


『強い。――というか硬い。――くっそ硬い。倒すのに一時間位かかる。くせに速いから振り切れない』

「一時間・・・」

『モタモタしてらんねえ。さっさと街の中に味方を招くのがこの作戦だ。俺とマイルズが囮になる。――マリ曹長行け、アンタが先頭になって他の奴を引っ張ってくれ』

「了解!」


 マリさんが私の前から、一気に先頭に出る。


『しっかり着いてきてね!』

『はい!』

『おう!』

『りょ!』


 流石、マリさん上手い。

 彼女に着いていけば、弾幕や建物が避けている感じ。

 でも、私のフェアリーさんのバックミラーに銀色の影が映った。

 振り返れば『レアエネミー ミュータント エレメント種 サーバント・キューピィ』の文字。

 マリさんがちょっと慌てる。


『ス、スウちゃん、大丈夫!?』


 サーバント・キューピィは、凄まじいスピードで追ってくる。

 アレックスさんから心配するような通信が入る。


『どうした!』


 マリさんが返事をする。


『サーバント・キューピィっていうのが追ってきてるんだよ!』

『また面倒なのが――もう足を止めて戦うしか――』

「いえ、待って下さい」


 私の否定に、アレックスさんが訝しがる。


『どうした』

「こいつ、飛ぶの下手です」


 サーバント・キューピィは弓から矢を放ちながら、私の後ろをピッタリとついてくるけど、飛び方が〝なってない〟。


『なるほど、それでどうする・・・?』

「巻きます。あの湖の先の建物が目的地ですよね? ――マリさん、あの橋の上を飛んで」

『なんだかよくわかんないけど、了解!』


 大きな湖らしきものに浮かぶ桁橋(けたばし)が迫ってくる、沢山の橋脚(きょうきゃく)がある――あれなら丁度いい。


 みんなが橋の上を飛んでいく。

 私は橋脚の間と、橋の上を交互に――螺旋を描くように飛んだ。

 常に橋に背中を向けるように、機体をロール(バンク)させながら。


『ちょ・・・この速度で、何してるんですかあの人!』


 綺怜くんが、ビックリしてた。

 でもこの飛び方、橋が敵から飛んでくる矢を避ける遮蔽物にもなっていい感じ。


『あっはっは、いいねスウちゃん! 凄いよ、なんでそんな狭い場所を抜けれるんだい?』


 マリさんが笑う、マイルズが余計なことを言う。


『なんだ、また狂人軌道を描いているのか?』

「マイルズうっさい!」


 すると綺雪ちゃんが本当にビックリした感じで尋ねてくる。


『ま、待って下さい。スウさん、本当に可怪しいですよ! あんな横転速度おかしくないですか!? 速すぎます、それに機体の機首上げも機首下げも!』


 そこで通信ウィンドウのマリさんが黙った。そうして背後をしばらく振り返って呟いた。


『なるほど・・・・そういう事なのかい、本当に無茶苦茶だ』

『スウさんが何をしているのか分かったんですか!? マリさん!』

『いきなり真似しちゃいけないよ、操舵不能になる可能性が有るから』

『えっ、・・・はい』


 綺雪ちゃんの少し緊張した声が聞こえた。

 マリさんが私が何をしているのか話しだす。


『スウちゃんはね、まず機首を左右に振る為の垂直尾翼を一瞬素早く左に跳ねさせて、左回転の力を生み出す』

『あ・・・やっぱりそういう力があるんですね。垂直尾翼の感覚が機体の上にしかないから回転する力も生まれるんでしょうか』


 マリさんが『ほう』と感心してから綺雪ちゃんを褒める。


『さすが天才、感覚で理解してるんだね。そう、垂直尾翼は機体の上にしかないから動かすと回転の力も起きる。スウちゃんはこの回転の勢いに乗って、さらに主翼の補助翼(エルロン)の右を上げて、左を下げる』

主翼の補助翼(エルロン)の動きは、左横転時の普通の動きですね。そんなのであんな高速回転――』

『さらに尾翼の昇降舵(エレベーター)の右を上げて、左を下げる』

『はい!? 尾翼の昇降舵(エレベーター)も使って横転してるんですか!?』

『そう、さらにカナード翼も使ってるね、主翼の前の小さな翼。――しかもフェアリーテイルは前進翼だからね、主翼の気流が中央に集まるから尾翼にもきっちり風が当たる。尾翼たちの効果は抜群だよ』

『でも主翼から流れてくる風って、乱気流ですよね!?』

『だから、いきなりやっちゃいけないよ』


 マリさんと綺雪ちゃんが話していると、私の後ろで何かが激突した気配がした。

 振り返れば、サーバント・キューピィが橋脚に当たって墜落していた。


「ざまぁ」


 〝なってない〟飛び方で、私に着いてこようなんて百年早い。

 さて、湖の真ん中の浮島にたどり着いた私達は、機体を降りる事になるんだけど。


『だけど、これ機体放置したら壊されちゃうよね・・・? さっきのサーバント・キューピィも来ると思うし』

『俺が守るッス!』


 綺怜くんのアーマーテイルが人型になって、盾を持った腕で胸を叩いた。

 綺怜くんの盾は頼りになる。ただ、彼を一人にするのは心配だ。マリさんには残ってもらいたい。


『じゃあ、ぼくもココに残るよ――中は恐らく〖飛行〗のスウちゃんに行ってもらったほうが良い』


 同じ考えだったのか、マリさんが残る宣言をしてくれた。彼女がいれば安心だ。


『それなら、私はスウさんに』


 すると綺雪ちゃんが、私に着いてこようとする。だけどこれは駄目。


「綺雪ちゃんと綺麗くんは機体から降りないで。転送装置が使えなくなるから――危なくなったら転送で逃げる約束だよね」

『そっか・・・そうですね』

「私1人で行くよ。ハッキングはイルさんのドローンが、クナウティアさんに繋いでやってくれるから問題ないし、危なくなっても私なら最悪バーサスフレーム用の倉庫に逃げ込めるから――そこで助けを待つよ。それに私の着てるパイロットスーツは、下手なバーサスフレームより強靭だから」

『たのむね』


 私はマリさんに「任せて下さい」と言って、フェアリーさんから降りる。


「何より、私は一人のほうが速いし〖超怪力〗〖怪力〗〖念動力〗〖飛行〗〖前進〗〖空気砲〗」


 私は、ヘッドギアを被るとスキルで飛び出した。生身でも〖飛行〗で加速しながら〖超怪力〗と〖怪力〗で強化した〖念動力〗で地面を蹴った瞬間ならマッハを出せる。パイロットスーツを着ているので、ソニックブームとかは大丈夫。


『ぶ―――っ。は、早ぁ・・・・』


 私が弾丸みたいに建物の中に入ると、綺怜くんが吹き出した。


 建物の入口あたりが、衝撃波で壊れた気がするけどキニシナイ。


 建物内の角を躱しながら、一気に奥へ奥へ。


「内部にもキューピィがいるなあ」


 赤ん坊サイズだもんなあ。


『だ、大丈夫ですか!?』

「トビラ・オブ・カナガワ!」


 私はバーサスフレーム用のゲートを開いて、キューピィを撃ちまくる。

 硬いけど、倒せないことはない。

 綺怜くんが笑う。


『ちょ――訊き間違えじゃなかったら、今スウさん『扉of神奈川』って言いました? ・・・・ン?』


 ここで、綺怜くんの笑い声が消えた。

 そうして焦る声に変わる。


『・・・・って、――まってまってまって、建物揺れてるんですけど!?』


 マリさんが答える。


『綺怜君。あの人ね、生身でバーサスフレーム用の武器使うんだよ』

『そそそ、そんなの、チートじゃないですか!?』


 チートじゃないもん、仕様だもん。


「よし、制御室って書いてある部屋を見つけたよ」

『もう着いたんですか!?』

「あ、うん」


 私は言いながら着地して、ノブを回してみる。


「鍵が掛かってるなあ」

『入れないのかい?』


 マリさんがちょっと心配そうな声を出した。

 私は取り出したショットガン(マスターキー)でノブを2,3度撃つ。


「開いた」

『き、君、躊躇ないんだなあ――』

「じゃあイルさん、ハッキングお願い」

『お任せ下さ――手短にやっちゃいますね』


 イルさんの声が、急にクナウティアさんになった。

 イルさんの周りに魔法陣みたいに数字が現れる。

 うわ・・・・なにあれ、カッコイイ。


 そうしている間にも、キューピィが襲ってくる。

 建物内では弾幕を放ってこないみたいだ。普通に弓で矢を放ってきた。私は矢を躱しながら一斉掃射でキューピィを倒していく。

 八匹ほど倒し終えた頃だった。


『ハッキング完了。街の門が開きます』


 これでプレイヤーの侵入を防いでいる門は開いたかな?

 よし目的達成、長居は無用だ。私はイルさんドローンをひっつかんでチョッパヤで、建物の外に出る。

 遠くから轟音が聞こえてきた。

 いよいよ市街戦が始まったようだ。

 わたしもフェアリーさんのコックピットに戻って、シートベルトを掛ける。

 追ってきたらしいサーバント・キューピィは、マリさんに撃墜されていた。

 ビブリオ・ビブレのハギモトって人から通信が入ってくる。


『よくやってくれましたスウさん。手早く済ましてくれて、本当に助かりました』

「いえ――この後、私達は?」

『午前の戦いからスウさん達には結構無茶させているので、無理はしないでほしいんですよね。ちょっと休憩していて貰えますか? 何か有った時のために体力を回復していておいて欲しいです』

「そうですね。ちょっと体力的にキツくなってきていました」


 体力ないんで。

 アレックスさんから通信が入る。


『よし、テイル小隊一旦後方に下がるぞ、ドミナント・キューピィはウチのクランの奴に任せた。テイルリーダーより各位へ、逃げるぞー!』

『ラジャ』

「はい」

『おっけい』

『はい』

『了解!』


 私達は街を抜け出し、情報班の戦艦に入って、自分の機体のワンルームで暫く寝ることにした。

 ベッドに倒れ込んで、


「あ゛ー。じゃあ、配信一旦切りますね」


❝女子高生が、なんて声を出すんだ❞

❝本日何度目の「あ゛ー」だろう❞ 

❝寝顔配信してよ❞ 


「しません」


❝ちぇ。おスウかれー❞ 

❝おスウかれー❞ 

❝おすかれー❞ 

❝ここまででプレイヤー側の被害は、5000機かあ――結構、壊されたなあ❞

❝復活判定は?❞

❝今のとこなし❞


 良かった。

 配信を終えると、私はすぐにまどろみに飲まれた。


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― 新着の感想 ―
はじめまして。 フェリーさん、カナードまでついたら、ますますイメージがベルクートっぽくなりましたね。よきよき
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