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177 着艦できなくて焦ります

 別の防衛機構に飛ぶ。


「さらに、左〈粒子加速ヨーヨー〉前方向に射出」

『〈粒子加速ヨーヨー〉前方向に射出。イエス、マイマスター!!』


 私は前方に射出されたヨーヨーをコントロールしながら、眼の前に居る防衛機構に絡める。

 この防衛機構も掴んで飛べるけど、ちょっと厳しくなるな・・・・引っ張ってる防衛機構に追いつかれるかも知れない。


 私は〈時空倉庫の鍵・大〉を開いて、中から兵装をフェアリーさんの腕で取り出す。


 取り出したのはアンカー。フェアリーさんの腕で射出。別の防衛機構に打ち込んでさらに絡めた。


 流石に3体は普通の出力だと掴んで飛べそうにないから、左のプラスチック板を砕いてリミッターを外す。

 よし、飛べる。


 私は、3体の防衛機構を掴んで飛ぶ。


 真っすぐ飛ばずに、蛇行したり回転したりして飛んで、防衛機構自体も絡ませた。


 周りの星間ノーツの人が騒いだ。


『お、おい―――これって!』

『防衛機構のウネウネと複雑だった動きが、一直線になって、弾幕がかなり単純になった! ――防衛機構が同士討ちになりそうな弾幕は止んでるし』

『これなら、俺たちでも結構躱せるぞ!』

『よし、星団ノーツ、攻勢に転進だ!』


 しばらく飛んでいると、マリさんも真似をして防衛機構を引きずってる姿が遠くに見えた。

 あっ、ユーも、スケさんもやってる。


❝各国の猛者もやり始めたみたいだな❞

❝フィンランドのエース〝傷痕〟が大暴れしてるぞ❞


「――でも、ユーのスワローテイルはフェアリーテイルほどの出力は無いんで」


 言いかけて、止める。


「――いやこの辺りは、ユーには馬の耳に説法か」


❝スウたん・・・・それは釈迦に説法と、馬の耳に念仏が混じってる❞

❝ユー馬扱いwww❞


 え、あれ。そうなの!?


 私が羞恥プレイをしていると、さくらくんのつぶやきが聞こえた。


『これなら、僕にも』


 さくらくんが通信で、大きな声を出す。


『スウさん、僕――』


 それは不味い。さくらくんが彼の近くにいた防衛機構に向かおうとした。


『いや、さくらくんは綺雪ちゃ――』


 私の不安は的中。


『きゃぁぁぁ!!』


 不味い、綺雪ちゃんが被弾した!

 わ、私は防衛機構を引きずってるから助けに行けない!

 いや――良かった、ダメージは軽微なようだ。綺雪ちゃんは姿勢を取り戻して通常飛行に戻った。

 でも、さくらくんが慌てる。


『す、すみません! 僕が馬鹿なこと考えたばっかりに! 大丈夫ですか、綺雪さん!』

『だ、大丈夫です、掠っただけで! 私が、未熟で――足手まといになってすいません! き、機体がスパークしてるんで、私、一度ティンクルスターに戻ります!』

『送って――』

『いえ、さくらさんは大事な戦力です。戦って下さい!』

『は、はい。わかりました』


 綺雪ちゃんが、単独で退いていく。

 たしかにさくらくんが居ると居ないでは戦場の様子が変わるけど、綺雪ちゃん大丈夫かな・・・。

 

 その後、うまく飛べないスワローテイルで綺雪ちゃんが着艦したところ、アレスティング・ワイヤー(短い滑走路で戦闘機を受け止めるワイヤー)が故障したという連絡が通信で入った。


 さらに暫く戦っていると、各方面から防衛機構を引きずって撃破したという連絡が続々と入ってくる。


 私達も、この方法で撃破しまくってたんだけど。

 〖第六感〗が激しく感応して、耳鳴りがした。


「――なに?」


 私が周囲を見回すと、正十二面体の街の方で、耳鳴りが大きくなった。


 目を凝らせば、視界に入っている限りの対空機銃やミサイルが、全部私に向いていることに気づく。

 あの都市は正十二面体だからこっちに向いている機銃が滅茶苦茶多い、14箇所もの角に備えられた対空砲が、全部私の方向に向いている。


「ちょっ―――と」


 猛烈な数の機銃やミサイルから、一斉に集中砲火が飛んでくる。


 さくらくんが叫んだ。


『スウさん!』


❝スウ!❞

❝に、逃げろ!!❞

❝敵が、スウを危険だと判断したってこと!?❞


「まずい、この弾幕の中で、あの数の機銃とミサイルは躱しきれない! すみません星間ノーツの方々、アンカーを切り離します! 避けきれません!」


『―――了解!! あとはこっちで何とかするから、逃げて!!』

「はい!」


 アンカーを切り離すと、フェアリーテイルが大きく揺れた。

 この揺れは――機銃の弾に、被弾した!

 その後も揺れは続く。駄目だ――どうしても避けきれない!

 とうとうシールドが破られ、振り返ればエンジンが煙を吐いている。


 私は変則的な動きで躱そうとするけど――、

 ・・・・いけない、被弾のせいでフェアリーさんの変形機構が動かなくなってる! こうなると逆噴射も出来ない!


『すみません! 一旦ティンクルスターへ下がります!』


 星団ノーツの人達から、心配するような声で通信が返ってくる。


『了解!!』

『こっちは大丈夫だから! 早く帰還して!!』


『スウさん、僕が引き続き防衛機構をワイヤーフックします!!』

『お願いさくらくん。でも無理はしないでね!?』

『はい!』

『当機にも任せて、当機は小さいので被弾はまずしないわ』


 言って命理ちゃんが、私が引きずっていた防衛機構に拳を叩き込んで引きずり始める。


 さくらくんも私の引きずっていた防衛機構に、アンカーを埋めて引きずり始めた。


 私は左右のヨーヨーを切り離して、ティンクルスターに急ぐ。


 ヨーヨーを切り離すと、私への集中砲火が止んだ。


「――よかった」


 でもエンジンが爆発しそう、イルさんがフラグ回収しそう!


「こちらフェアリーテイル! ティンクルスター、着艦許可を!」

『まってスウ! アレスティング・ワイヤー交換中だから! ロボ形態で着艦できない!?』


 空さんの声だ。彼女は整備士だから、アレスティング・ワイヤーが壊れたって聞いて戻ったんだろう。

 でも、弱ったぞ。


「そ、それは――」


 変形機構が動かないんだ。


 エンジンがスパークしてる。早くエンジンを切らないと爆発するかも。


「――じゃ、じゃあコブラで着艦するから。どいてもらえる!?」


『え、コブラってなに?』


 空さんの困惑の声。

 すると綺雪ちゃんから通信が入る。


『ア、アレスティング・ワイヤーを壊しちゃってすみません!! ――空さん、大丈夫です。たぶんスウさんがコブラを使えば、着艦できます!! どいて任せましょう』

『りょ、了解!』


 だけど今の速度でコブラを使えば、エンジンの出力が強すぎて、空中に止まれず上へ飛んでいってしまう。


「ティンクルスター速度を少し落としてください! 今のままじゃ浮力を保ったままコブラを使えません。スロットルを1まで落として下さい! できれば0がいいですが、できますか!?」

『ごめん、空母で0は無理! さくらなら出来るかもだけど・・・0.8でいい!?』


 コハクさんの慌てた声が返ってきた。


「もちろん、0.8で良いなら、それでお願いします! でも無理はしないで下さい!」


 ティンクルスターに無理させて墜落させたら大変だ。ゆっくりと速度を落としていくティンクルスター。


 私はティンクルスターと相対速度を合わせていく。そうして、こっちが少し早いあたりで止める。

 そのままスロットル上げつつ格納庫に近づく。


 ギリギリまで近づくと、私もスロットルを0.8まで落として――少し下から。


「よし、今!」


 機首を上に思いっきり上げて、空中にほぼ静止。

 そこから、前に倒れるように――着艦。


「できた!」


❝成功した!❞

❝うは―――飛んでる空中空母に・・・・コブラで着艦したぞ、この娘❞

❝she is so crazy(完全にイカれてやがる)❞


 私が着艦すると、すぐさま空さんの整備ロボにより、フェアリーテイルが修理されていく。


 ビブリオ・ビブレからの広域通信で、


『スウのフェアリーテイル、只今出れません。繰り返します。スウのフェアリーテイル出れません、注意して下さい』


 とか流れてくる。

 ちょっと恥ずかしい。


 整備はロボットの役目なので、私にはやることがない。というか整備の事なんか何もわからない。


 修理は綺雪ちゃんのスワローテイルより、私のフェアリーテイルを優先しくれているんだけど、それでもまだ時間が掛かりそうだ。

 とりあえず私が、気を揉みながらもティンクルスターの砲手になって、遠くから砲撃していると、


『すみません、フェアリーテイルの修理まだ掛かりますか!?』


 という通信が入ってきた。


 空さんが通信に『ごめん、パーツ交換に後8分ほど掛かる!』と返す。

 すると、ビブリオ・ビブレの通信士さんが焦ったように続ける。


『ビブリオ・ビブレ旗艦ライブ・ア・ライブラリが危険な状態なんです・・・!』


 ・・・・ビブリオ・ビブレの旗艦が危険なのか。


 私は、砲手席で頷いて。


『分かりました、ホワイトマンで出ます』

『え!? ――ホ、ホワイトマン!?』


 コメントもざわつき始める。


❝まって、ホワイトマンって言った? この娘❞

❝嘘だろ、おい。あれは練習機だぞ❞

❝That's ridiculous!(馬鹿げてる!)❞

❝スウたん無茶だ、ホワイトマンなんか実戦で使えない!❞


 確かに、予備機のスワローテイル辺りも買っとかないとなあ。でも前にさくらくんのスワローテイルに乗らせて貰って思ったんだけど、現世代のスワローテイルはだいぶ操作感が違うんだよねえ。


 ・・・もう一機フェアリーテイルを買っても、操作感は違うみたいだし。


 特注頼んだら、作ってくれるかなあ?


 私は格納庫に走って「来て、ホワイ太」と機体を召還。

 〖飛行〗で乗り込む。


❝マジかよ。スウが――というか配信者が、チュートリアル以外でホワイトマンを使う所、初めて見るわ❞

❝みんなそうだと思う❞


「WM-01 ホワイトマン。行ってきますね!」

『ご武運を!』


 格納庫から出るわけじゃないけど、一応挨拶しておいた。


 結構強いGとともに出撃。


「Gがキツイ。やっぱ無茶はできないな、ホワイトマンじゃ」


 私は急いで戦艦ライブ・ア・ライブラリに直行。


「スウ来ました! ・・・・ホワイトマンですが」

『スウさ――ホワイトマン?!』


 あっ、私が不安な声を出したら相手も不安になるよね。


「はい、ホワイトマンの良さを活かします! 問題ありません! 援護しますね!」

『お、お願いします!』


 通信士さんの安心したような声が返ってきた。良かった。


 みれば既にクレイジーギークスの数人が、ライブ・ア・ライブラリの援護に入っている。


 メープルちゃんと、何人かのヒーラーが懸命に戦艦のシールドを回復してる。


 命理ちゃんが、防衛機構に殴る蹴るの暴行を加えながら引きずり回してる。怖い。


 さくらくんは居ない。多分元の場所で防衛機構を引きずり回してるんだと思う。


 私はライブ・ア・ライブラリに襲いかかってる防衛機構に、突撃を仕掛ける。


 弾幕を躱しながら〈汎用ガトリング〉で撃つ。


 私のホワイトマンには、VR訓練をクリアするために装備させた〈励起翼〉があるのでこれでも攻撃。


 流石ホワイトマン、火力がスワローテイルより高い。なかなか早く防衛機構の球体が破壊できた。


❝はええ❞

❝やっぱ、スワローテイルよりは火力が高いんだなあ・・・・❞

❝ホワイトマンってあんなに強いの? ホワイトマンブーム来る?❞

❝こねーよ、危ないから止めろwww ホワイトマンは火力高くても、普通あんなに避けられない、火力高いって言っても火力役が出来るほどでもない。スワローテイルより硬いと言っても所詮シールドしかない❞

❝つまり、躱しまくるしか無い。しかもスワローテイルより、加速も旋回性能もない❞

❝ホワイトマンは防御高いけど、今はその防御が意味ない相手と戦ってるんだよなあ❞

❝でも、あんなにスイスイ躱してるじゃん。余裕で避けれるんじゃないの?❞

❝お前その認識でFLやらないでくれよ。危なすぎるから――いいか、あれはホワイトマンの動きじゃない、あれはスウの動きだ。あんな狂人機動、スウにしかできない❞


 なんか言われてるけど無視――にしてもホワイトマンで躱すのは、やっぱりちょっと難しい。変な空戦機動を連発しないと駄目。

 あんまりにもキツくなってきたんで――私が、スケさんとの試合でやった機動『ハンマーヘッド・ターン』(3連続(トリプル))をして弾幕を躱すと、コメントがざわつく。


❝おいおい、なんだあれ。フリスビーみたいに回転してるぞ!?❞

❝普通はあんな事したら普通はコントロールしきれない。でもスウはできる。だから他の人は真似しちゃ駄目なんだよ❞

❝でも、完全に制御失ってないか!? 大丈夫か!?❞

❝いや姿勢を取り戻した・・・・マジで、どうやったんだよ❞

❝もう、風の線でも視えてんじゃねえのか。風に乗ってるんじゃ❞


 それは綺雪ちゃんの得意とする所だよ。


 私には綺雪ちゃんの云う、風の線が視えたり、風の声が聴こえたりしない。


 私に見えるのは風の波。

 そして、翼を手のひらみたいに感じての風の手触り。


 線で視えない私は、恐らく綺雪ちゃんより風の捉え方が雑。

 あと綺雪ちゃん、風の声ってなに。風と会話してるの?


 末恐ろしいよ、あの天才小学生。


 防衛機構を1体撃墜した所で、ライブ・ア・ライブラリから連絡が来た。


『・・・す、凄いですね。ホワイトマンでも、あんなに戦えるんですね。あの、一応、格納庫にアンカーを用意してます』

「わかりました。取りに行きます」

『無理しないでくださいね?』

「はい」


 私はホワイトマンを人型にして、ライブ・ア・ライブラリの格納庫に着艦。

 

「おー、他所の(ふね)は初めて。匂いが違う」


❝コックピットだから匂い分からないだろw❞。


「戦艦って、広々としてて凄いですね。もはや壮大」


 15メートルあるホワイトマンの人型形態でも、天井を見上げるくらいある。

 そりゃ、ティンクルスターなら5つくらい格納できるサイズの格納庫だし。


❝でけぇなあ❞


『こちらですー!』


 整備士さんらしき人が整備用ロボットに乗って、アンカーを持ってきてくれる。


「えっと、クレジットとかは」

『いいえ、無料で差し上げます。持ってってください』

「ありがとうございます。じゃあ頂いていきますね」

『はい! 救援ありがとうございます。頑張ってください!』

「お任せ下さい!」


 私はホワイトマンを人型にしてアンカーを受け取って格納庫から出ると、すぐさま飛行形態に変形して防衛機構に急行。

 アンカーを引っ掛けて引きずり回した。


 そうして5分ほど戦っていると、各方面から防衛機構を倒しきったとの連絡が入る。


『こちらアメリカ方面、防衛機構、殲滅完了』

『こちらフィンランド方面、防衛機構、殲滅完了』

『こちら――』


 私達東アジア混成軍も、全部倒しきったみたい。

 そうして、街に設置された対空砲も次から次へと破壊されていく。

 しばらくすると、ユニバーサルシティからの攻撃は完全に止んだ。


 私たちが各々の母艦に帰還していると、NPPの通信士さんから連絡が来る。


『ストライダー諸君よくぞやってくれた。諸君らの活躍により、首都への突破口は開かれた。首都内部への突入決行は、正午11:00(ひとひとまるまる)より開始。繰り返す。突入決行は、正午11:00(ひとひとまるまる)より開始。英気を養い参加してもらいたい。以上』

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