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165 補給します

 ◆◇◆◇◆




 という訳でやって来たのは、ハイレーン。

 まだ発展途中のユニレウスでは、ボロボロのダーリン・リッカ・インフィニティの修理は不可能らしい。


 フェアリーテイルは修理できるらしかったので、昨日の内に本体のメンテナンスだけやってもらった。

 ハイレーンに向かう途中に機体が崩壊しないように。

 ただ〈アイアン・ノヴァ〉の在庫はハイレーンにしか無いと言われた。


 というわけでハイレーンに降下――ハイレーンの海上を飛んで基地に向かっていると、複座の後ろに座っているみずきがダーリンドローンに向かってピースサインをした。


「こんリッカー! 今日は、スウと一緒に補給基地に向かってます」


 どうやら配信を始めたようだ。あれも、お小遣い稼ぎなんだろうなあ。


 私も配信を始めようかな。


「イルさん、配信開始できる?」

『イエス、マイマスター』


 私が配信を何の告知もなくはじめたのに、なぜかすぐさま1000人くらいになる。


 なんだろう、普段からチャンネルに張り付いている人がいるみたいで100人くらいにはすぐなるんだけど、今日は多いなあ。

 あっ、そっか・・・リッカが配信始めたから、一緒にいる私も始めそうだ行こうって感じ?


❝Her スウ! Her スウ! やっぱり突発配信きたー!❞

❝Her スウ! Her スウ!❞

❝Her Sū! Her Sū!❞


 瞬く間に視てる人が、5000人位になった。


 そうだ。リッカに渡す物があったんだ。


「リッカ。昨日、勲功ポイントでお小遣い稼いでるって言ってたでしょ?」

「うん。ごめんなさい。もう怒らないで下さい」


 リッカがお怒りアリスを思い出したのか、若干震えてる。


「これ売りなよ」

「え?」


 私は〈時空倉庫の鍵〉から、グロックに似たジェネラル16を1ダース取り出す。


「えっ、ジェネラル16じゃん!? こんなに買ったら勲功ポイント120万も掛かるよ!? 良いの?」

「いや、これは今朝クレジットで買ってきたんだ」

「え??」


 リッカが、|(意味がわからない)という顔になる。


「FLの銃は、勲功ポイントでしか買えないじゃん?」

「そうでもないよ。禁止区域なら、クレジットで買えるんだ。しかも5000クレジットもしない」

「え・・・・」


 リッカが一瞬、機能停止したみたいに止まる。

 そして徐々に目を丸くしだし、


「・・・・えええッ!? 日本円にして5万円もしないの!? ――FLの銃は、オークションサイトで数百万で取引されてるんだよ!?」

「うん」

「チ、チート! これこそ正しくチート!」


 叫んだ。


「そういう事言うなら、あげないよ?」

「大変失礼しました」


 リッカ、椅子に座ったまま上半身で土下座の姿勢。


❝なんだそれ、特別権限ストライダー、ズルすぎんだろ!?❞

❝完全にチートじゃん!❞

❝スウたん頼む、価格破壊は止めちくり、俺が困る!❞


「まあ、オークションサイトなら価格破壊とかにはならないと思いますけど」


 リッカが、ほくほく顔でジェネラル16を〈時空倉庫の鍵〉に入れていく。


「やっぱ、持つべきはスウだなあ」


❝モデレイター(アリス):スウさん、あんまりリッカを甘やかさなで下さい❞


 現れたコメントにリッカが、ビクゥっとなっていた。

 私はアリスに答える。


「私も転売みたいなのは嫌いだけど。一般人さんの安全にも繋がるし、リッカが馬鹿な事しないなら、・・・・太閤立◯伝の米転がしみたいなものと思って・・・・? まあ。てかこの子、配信で相当儲けてるのに、なにに使ってるんだろう・・・」

「親戚の子の入学費とか、道場として借りてる中学校の体育館を壊しちゃった修繕費用とか、近くの神社の修繕費用とか――」


 私は項垂(うなだ)れた。

 アリスも呆れたのかコメントしない。

 なので私は告げておく。


「リッカさあ・・・・そういうのは、お小遣いと言わないんだよ・・・・。そういうのなら相談して、なんとかするから・・・流石に体育館に私が手を出すのはアレだけども」

「マジで? ほんと、持つべき物はスウかも!」


❝モデレイター(アリス):リッカ、昨日は言い過ぎました。そういう事ならちゃんと事情を話してください❞


 しかし次のリッカの正直すぎるリプライに、私達は頭が痛くなる。


「いや、普通に服とか食事とかゲームとかにも使ってるから」


 ははっ、こやつめ。

 まあ、嘘を吐かないところは流石リッカだけれども、正直すぎないか。


 アリスが絶句したところで、私は今日の配信内容を伝える。


「という訳で皆さん、今日は補給配信です」


❝どういう訳か全く話が繋がらないけど、スウの補給の様子って初めてじゃね?❞

❝んだ❞

❝無料?❞


「初めてと言っても、大したことはしないんですけどね――無料です」


❝相変わらず無料かあ❞

❝なんで無料? またチート?❞


「最近見始めてくれた人でしょうか。私、初心者クエストの機体選択で、スワローテイルがあったので、しばらく補給が無料になる権利を選んだので」


❝なんでもチートにすんなしワロw❞

❝いや・・・・旧型スワローテイルから乗り換える必要がないのは、十分チート(人力)❞


 コメントに色々言われながら、フェアリーテイルとダーリンを整備ドックの前に持ってきた。

 灰色の巨大な建物の入口に降り立って、基地の通信士さんに連絡。


『動かない機体を格納庫のハンガーに、手動でドッキングですか。お待ち下さい、今ランディングオペレーターを向かわせます』

「よろしくお願いします」


 しばらくして、サイリュウムみたいなのを持ったセーラー服の男性がやって来た。

 セーラー服といってもアレは軍服、別にコスプレじゃない。


 セーラー服の男性が、サイリュウムみたいな物を振って案内してくれる。


『オーライ、オーライ。――はいそこで、ゆっくり降ろして下さーい』

「わかりましたー」


 こうしてダーリンをハンガーに収めて、次はフェアリーさん。


『飛行形態に出来ますかー?』


 オペレーターさんに言われたので、私は格納庫のサイズを確認。ちょっと狭いけど、サイズの小さなフェアリーさんならいけるね。


「はい」


 軽く跳んで――すると、男性が叫んだ。


『ちょ、ま――ここで!?』


「え? ――あ、そっか!」


 前に視聴者に危ないって言われてたのを、完全に忘れていた。

 外で変形して、入り直してくれって意味だよね!?

 しかし、変形を始めたフェアリーさんはまたたく間に飛行形態に変わる。

 私は、慌ててランディングオペレーターさんの無事を確認。


「す―――すみません!」


 ランディングオペレーターさんは、呆然とフェアリーさんの方を見ていた。

 とりあえず怪我はないみたい。


『いえ、大丈夫です。――凄いですね、・・・こんな狭い場所で曲芸みたいに変形した・・・・初めて見ました、今みたいな変形方法』


❝今、VRで変形しながら操縦桿で位置調整したよな❞

❝スウにしか、あんな変態変形できないぞ❞


 フェアリーさんは小さいから、狭い場所でも楽に変形できるから・・・。

 私は、ランディングオペレーターさんに平謝り。


「ほんとすみませんでした!」

『問題ないですよ、振動すらなかったです。降りてこれますか?』

「はい、今行きます」


 私が降りていくと、ランディングオペレーターさんが、私の頭上を見て「あー、なるほど。この人が噂の。だからか」と言っている。


 頭上?

 そういえば、たまに私の頭上を見てビックリしたり微笑んだりするNPCさんがいるんだけど、あれは何なんだろう。ストライダーIDより上を見てるみたいなんだよね。


 私は自分の頭上を、見上げてみる。


 IDしかない。若葉マークも、もう消えたし。


「なんもないよね?」


 私が首を傾げていると、ランディングオペレーターさんが私に手のひらで指し示して案内しようとしてくれる。


「メンテナンス申請のカウンターは、こちらです。どうぞ」

「あ、そんなカウンターの案内まで―――」

「いえいえ、やらせてください」


 結局ランディングオペレーターさんが、私を案内してくれた。


 私がペコペコしながら着いていくと、なぜかランディングオペレーターさんは微笑ましいモノでも視ているかのような顔になった。


❝丁寧なオペレーターさんだな❞

❝だよなあ❞

❝男性のセーラー服って良いよね❞


「・・・・ネキ、性癖暴露やめてください」


 私が言うと、ネキから衝撃の言葉が伝えられる。


❝『一体、いつから―――私をネキだと錯覚していた?』❞


「『・・・・・・・・・何(なん)・・・・・・・・・――・・・・・・だと・・・・・・』」


 衝撃に身をまかせながら、やがてカウンターに到着する。


「じゃ、頑張ってください」


 ランディングオペレーターさんに応援されてしまう。――いや~、補給と修理を頼むだけだから頑張ることではないとは思うんだけど。


 頑張るのは基地の人だと思うんだけど。

 いや、私の場合若干人と話すの頑張らないと駄目か。あのランディングオペレーターさんは、そこを見抜いたんだな。


「えっと、はい」


 歯切れ悪く返事すると、ランディングオペレーターさんが何故か敬礼して廊下に消えていった。

 一応、私は文民敬礼を返しておいた。

 リッカは首を傾げてた。


「やたら丁寧な人だったなあ?」

「だねぇ・・・」


 (なんでだろう?)と思いながら、カウンターに向かうと、なんかネイルをしているNPCさんがカウンターにいた。


 だ、だらけた人だなあ・・・。

 そんな風に思いながらも、私が「あの・・・修理と補給のお願いを――」と彼女に言うと、爪を見たまま「ッシャセー」という深夜のコンビニ店員のお兄さんみたいな塩対応が返えってきた。

 そして、しばらく何の反応もない。


 確かにこれは、頑張らないといけなかったかも!


 ちょっと待っていると、彼女は爪に息を吹きかけて爪の出来具合を確認してから、私の方を見た。


「ンノホキュ――」


 彼女が言いかけて、私の頭上を見た途端、瞳を動揺させて急に立ち上がる。


「――こ、これは、ようこそおいでくださいました! ―――こちらハイレーン補給基地です! 今日は、どのような御用で参られたのでしょうか!」


 敬礼までしてきた。

 彼女の豹変ぶりに、こっちはリッカと一緒に目を白黒。

 私の頭上を見て反応を返してくるNPCさんは多かったけど、この人はとくに凄い。

 なんか私を怖がってるレベル。


「え――えっと、補給と修理を」

「了解致しました! 直ちに! 機体を格納したのは、何番格納庫ですか!」

「あ、番号憶えてくるの忘れたので、戻って見て来――」「承知いたしました!! 只今、確認いたします!!」


 彼女はウィンドウを開いて、見事な手際で確認を終える。


「今来られた、スウさん! そう。はい、15番と16番ですね!! ――確認しました。どうやらオラクルB――IDダーリンは、部品がほとんど全交換となるようです。買い替えた方が安いかも知れません! どうなさいますか!?」

「リッカのダーリンは、改造済みだよね」

「うん、大会の優勝賞品で」

「じゃあ買い替えは、駄目だね」

「スウ、いいの? 高いみたいだけど」

「いいよいいよ。勲功ポイント余ってるし――修理でお願いします」

「補給はどうなさいますか?」

「えっとフェアリーテイルも、ダーリンも全補給してもらって、あとフェアリーテイルには新しいワンルームも付けてもらえますか?」

「了解いたしました! サンプルのモデルルームに御案内致します! こちらです」


 ワンルームはクレジットで買えるらしく、私のクレジットは3000万近くあるから、結構余裕がある。

 なので500万クレジットする高いワンルームを買った。日本円にすると5000万円。前のは標準セットだったから、今回はずいぶん高い。


 今回買ったやつはその分高性能で、ワンルームをパージした場合、収納に入れている荷物とかを基地に転送してくれる。

 これで作ったプラモデルとさよならの可能性がなくなる。

 ほんと前回は危ないところだった。

 え、「そもそも戦闘機のワンルームに、プラモデルを置かなければ良い?」


 みんなに見せたいんだもんっ!


 さらにワンルームの全天を透明にできて風景を楽しめるらしい、宇宙とか深海とか凄そう。


 そして食にもこだわる私、冷蔵庫も大きめで、冷凍機能は細胞などを壊さず鮮度を保つのを設置してもらった。


 そこに冷凍した食材を、ほぼ元通りに戻せるレンジ。


 ウォーターサーバーも購入。


 それから光崩壊エンジンによる、プロパンより火力のある電気調理器具たち。


 あとは大事な空気清浄機。バーサスフレームは密閉空間だから。


 圧縮空気が大量に有ると言っても、空気清浄機は大事。


 空気を入れ替える時にプラズマで完全殺菌。

 超精密フィルターでホコリとかも除去。

 なんか液体のよく分からないフィルターで、人体に有害な気体も除去。

 これでプラモを作り放題!


 んで前のワンルームもだったけど、机とか色々折りたたんで仕舞えるんで、広くも出来る。

 ――というか非戦闘時とか着陸した後は、部屋自体を大きくして広く出来る。

 壁とか屋根とかが ガシャコン と広がって大きくなるんだよね。

 あと翼の上にテントとかも設置できるし。


 ほんとキャンピングカーみたい。


 そしてさらにこだわったのが全天透明状態なら、宇宙に大型ホログラムを出してアニメ鑑賞可能なスクリーン。そのサイズは200メートル。

 もはや動く巨大映画館。

 音だって拘(こだわ)った。スーパーリアル立体スピーカー。


「あとは~」


 私がウキウキとオプションを追加しようとしていると、リッカが背後でボソリと呟いた。


「そして直ぐに、ワンルームをロストすることになるのであった」

「フラグ立てないで!?」


 で、でも、この位にしとこうかな。


 その後も受付の人に丁寧に対応されて、補給を終えたのだった。


 私はリッカに尋ねる。


「さて、帰りますかー」

「アーイ」

「ついでに食材買って帰る? ハイレーンは安いし」

「ソダネー」

「リッカ、眠い?」

「チョットネー」

「じゃあ寝てていいよ」

「運転任せて、助手席で寝るのサイコー」


 助手席ではないと思うけど。

 という訳で「寝てるだけでお金儲け出来るとか、素晴らしい」とか言う、とんでもない発言をブチかましてからスヤスヤと寝顔配信を始めたリッカを後ろに乗せて、ハイレーンの基地から海を飛んで街に向かうのでした。

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