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160 命理ちゃんとデートします

「これが地球なのね。母なる星―――テラ」


 ストラトス協会で私のステータスを上げて、命理ちゃんのパスポートを取ってやって来ました。地球、神奈川の海岸。


 私達の目の前に広がる海、水平線。

 道路と線路と水平線、電線や横断歩道――雲すら横一直線にならんでいる。――もはや芸術的。

 そこを緑色と黄色の、ややレトロ感のある可愛い電車が走り抜けていく。


 私が地球に帰ってきたばかりなので、アルカナくんとはまだ合流していない。


 ふと、命理ちゃんが気付いたように顔を上げて、こちらを視る。


「――ここって、バスケアニメの?」

「そうそう!」


 命理ちゃんは、私がよくアニメを見ているので一緒に見るようになった。

 それでとあるバスケアニメを紹介するとハマってしまった。


 「部活って素敵ね」と言って、アリスを羨望の眼差しで見ていた。アリスは「え、なんですか?」って顔だったけど。


 命理ちゃんが、胸の前で手を組む。


「素晴らしいわ、アニメのままね」

「でしょー。ここらへんを湘南海岸っていうんだよ、島があんまりなくて海が一望できて絶景でしょ」

「ええ、とても奇麗。けれど―――人が多いわね」

「・・・ここは、観光名所になっちゃったからね」


 踏切の周りは人だらけだ。

 海外の方も多い、スマホで写真を撮ったりしている。


「神奈川は、沢山のアニメの舞台になっているのよね?」

「うんうん!」

「だから涼姫は、神奈川から出ないのよね」

「う―――うん」

「湘南には、陽キャが多いのに」

「う・・・うん。それはいいから! 私の家は後で行くとして、どこか他に行きたい場所ある?」

「涼姫の学校に行きたいわ。胡蝶のバタフライエフェクトの舞台なんでしょう?」

「おっけー。ウチの学校はね、他にも色んなアニメやドラマやCMの舞台にもなってるんだよ、アリスが出演してるCMにも使われててね。坂の上からの光景が絶景なんだ――私は、裏門から登校するんだけど」

「涼姫は、いつもままならないのね」

「そうだけど・・・」


 江ノ島とか行かないで、アニメの聖地巡礼を始める所が私である。

 ――いや、江の島も散々アニメに出てるけどさ。


 聖地巡礼デートも、いいと思う。



「命理ちゃん、もしかして地球は初めてくるの? 帝国時代とかは?」

「初めてよ。当機がヒトだった頃は生まれも育ちも、惑星ユニレウスだったらしいわ。データノイドになってからは、多くの時間をイスヘリヤルに配属されていたわ――」


 ユニレウスは私達がロッジを買った惑星。

 今、銀河連合が必死で奪還しようとしてる41層の元・星団帝国の主惑星。

 星団帝国ユニレウスの首都があった惑星。


 イスヘリヤルは極寒の惑星だって訊く。


「――当機が知る限り、地球は聖地として保護されていたわ。もう人は住んでいなかったのよ」

「そうなんだ・・・?」

「実は人が住めなくなって、テラフォーミングされていたという噂があったわ」

「地球がテラフォーミングされてたの?」


 なんてこったい。


 会話をしながら800メートルくらい歩いて、私の学校に到着。


 命理ちゃんに学校を外から案内していると、夏休みでも部活をやっている人が居て、


「スウだ」

「フェアリー・スウだ」

「Her スウ Her スウ」


 という声が聞こえてくる。


 顔から火が出そうなんだけど。


「涼姫、有名人なのね」

「ちょ、ちょっとね」


 すると、更に、


「命理ちゃんじゃね?」

「命理ちゃんだ」

彼女は(Her)、命理?」

「本物やべぇな。めちゃくちゃ可愛い」

「でもあの見た目って、作り物なんだろ?」


 なんて声が聞こえてきた。


「当機、有名人なのね」

「だ、だねえ。私のせいだから、ごめん」

「別に構わないわ。むしろ誇らしいわ。涼姫も、もっと胸を張ったら良いわ」

「私、リアルで目立つの苦手だから」

「涼姫は、いつもままならないのね」

「うん・・・」

「あと、当機の見た目は生前とそっくりらしいわ」

「え!? まじで!?」


 そのルックスで生まれてきたの!?


 神様なにしてんの・・・!?


 部活をやっている男子からも「マジかよ」、「ありえねぇ」という声が聞こえてきた。


 命理ちゃんこそ、妖精だもんね。


 私のルックスでフェアリーとか言われると、(からかわれてる!)とか思うけど。命理ちゃんのルックスをフェアリーって言ったら「ああ、うまい表現だね」って思うだけ。

 この世はかくも不公平。

 ――その後、命理ちゃんのファンだという先生が現れて、一緒に学校の中まで案内することになった。


 命理ちゃんは私の席を見て、「ここでいつも涼姫が勉強しているのね」とかなんか、感慨深げにしていた。


 その後、次に行きたい場所を訊くと、


 「由比ヶ浜という所に行きたいわ」


 などと謂う危険な発言をした。


「ダメ」

「――え、なぜ?」

「ダメ。夏の由比ヶ浜はダメ」


 断固としてダメだと謂う私に、命理ちゃんが首を傾げる。


「なぜ? あの女の子、好きなのよ。それに、地球で泳いでみたいわ」

「私も好きだけどだめ。夏の由比ヶ浜に近づいちゃダメ。あと私は水着になりたくない」


 命理ちゃんがウィンドウを出して確認する。


「近くなんでしょう?」

「2キロもある」


 私はスマホでルートを指でなぞって、距離を測る。


「今800メートル歩いてきたところよ?」

「2キロも歩いたら、足が折れる」

「虚弱すぎるわ。――でも涼姫には〖飛行〗が有るじゃない、飛んでいけばいいじゃない? ところで〖飛行〗ばっかしてるから力の値が下がったんじゃないかと、当機は推理するのだけれど」


 あ! 力が下がったの〖飛行〗のせい!? ――そうか、〖超怪力〗とか〖念動力〗とかでも楽してたから!

 いや、そうではなくて。


「夏の由比ヶ浜はね、地雷原なの、爆弾が一杯なんだよ!」

「ああ、リア充だらけなのね。陽キャだらけなのね」

「そうだよ! 近づきたくないんだよ!! あそこ怖いんだよ!! ――お化け屋敷なんかより、ずっっっと怖いからね!?」


 私みたいな人間には、陽キャの群れなす場所は、すんごいホラーなんだよ!

 命理ちゃんが瞑目する。


「可哀想に」

「憐れまないで!?」

「でも、泳ぎたいわ」

「この間、川遊びしたばっかじゃん! どんだけ肌を出したいの!?」


 海水浴はハイレーンか、ユニレウスでしましょう。あとエリアス。


「じゃあせめて波打ち際に行きたいわ」

「まあ、それなら」


 私達は学校前の海岸に降りて靴を脱いで、波打ち際ではしゃぐ。

 海岸で私が命理ちゃんに、


「あはは、捕まえてごらんなさーい」


 とか言ったら、命理ちゃんがロケットエンジンで飛んできたから、ビックリして〖飛行〗で逃げた。

 そこからドッグファイトが始まった。

 なにをやってるんだ、私達は。


 ひとしきり空で追いあって、砂浜に戻って私は息を切らす。命理ちゃんはなんとも無い。


「ぜぇぜぇ・・・なんで私達は、湘南の上空で空中戦をしてるんだ」

「流石、涼姫ね。地上ならすぐに捕まえられるのに、空中では全く触れられなかったわ」


 命理ちゃんが、四つん這いで荒い息を吐く私の隣に座る。

 彼女の足のつま先を、潮がさらって行く。


「命理ちゃん、ああいうのは海岸で慎ましやかにやるもんなんだよ」

「そうなのね」


 私が命理ちゃんに常識を解説していると、


「涼姫様!」


 息せき切ってアルカナくんが走ってきた。


「お待たせしました」


 私は立ち上がって返す。


「大丈夫待ってないよ、いま来た所」


 なんて、待ち合わせのカップルみたいなやり取りをする。


 ていうか、小学生みたいな子とこんなやり取りしてたら白い目で見られそう。

 にしてもアルカナくんは車とか乗れないから、電車とか乗り継いでここまで来たんだよね。


 一応地球に戻るよって連絡は入れておいたから早めに出発したんだろうけど。


「移動大変なのに、ごめんね」

「いえっ、涼姫様のお側に仕えさせて頂くだけで、幸甚の極みです! ――それより母の足を〖再生〗で治してくださり!」

「ああ、うん。気にしないで。フーリに聞いてビックリしたよ。アルカナくんも、早く言ってくれれば良かったのに――そうだ、お母さんとこっちで暮らさないの? 国交も始まったし、良かったら私の家に」

「いえ・・・その・・・母に恋人ができまして」


 なるほど・・・アルカナくんちょっと照れくさそう。


 まあお母さんの恋愛模様を話すのとか、ちょっと照れる気持ちは分かる。


 アルカナくんが慌ててお礼を言う。


「と、とにかく、ありがとうございました!」

「う、うん。ほ、ほんとよかったよ」


 私がアルカナくんと一緒に気まずくなっていると、命理ちゃんがふと海水を掬って舐めた。


(――あ、とんでもなく塩辛いのに!)


 「塩辛いわ」なんて感想が返ってくると思ったら。


「地球の海の水って、生臭いのね」

「感想が正直すぎるよ、それは」


 塩辛いくらいの感想にしてあげて。地球の表面積の七割が海なのに、地球ちゃん泣いちゃう。

 ――いや、ハワイとかの海は生臭くないって訊いたことがある。


「ジメチルスルフィドの匂いだわ」

「え、なにそれ」


 聞き慣れない化学物質の名前が出てきた。


「プランクトンの死骸の匂いよ」

「や、やめて!?」


 海に入れなくなるから!!


「この匂いがするという事は、美味しいお魚が沢山いる証拠ね」

「そ、そうなんだ?」

「当機、お魚が食べたいわ」

「じゃあ、地元の魚を出してくれるお料理店に行こっか」


 確か、この近くにも何軒か有ったはず。まあスマホで調べればよし。

 私はおしりの砂を払い、〖洗う〗を使う。


 このスキル実験したんだけど、端的に言うと〝物体から物体を剥離させるスキル〟らしい。


 判断基準は結構アバウトなんだけど、条件があって、小さかったり薄い物しか駄目。

 砂粒くらいなら、問題なく剥離できる。

 でも「人間はこの地球の汚れ!」とか言って、地球外へ放り出したりは出来ない。

 もちろん「ヴィランは社会の汚れ!」とか言って、社会から弾き出すみたいなのも無理。


 あと液体には効果がなかった。

 ただインクとかなら、乾いてからなら〖洗う〗で剥離できるけど、水溶液状態の時に使うと効果なし。


 液体は、洗う対象ではないという事だろうか?

 それから対象に触れる必要はないけど、指先をかなり近くまで持っていかないといけない。

 でも、ちょっとした遮蔽物なら貫通できる。


 皮膚くらいは貫通できるけど、皮膚に触れて赤血球バイバイとか、水分バイバイとかは出来ない。


 なんて余計な回想を挟みつつ、私はオススメを命理ちゃんに提案する。


「この辺りだと、マグロもいいけどアジもいいよ。お姉さんが奢ってあげよう。最近、お金持ちなんだよ」


 命理ちゃんも次いで立ち上がり、おしりの砂を払った。

 私が〖洗う〗しながら、命理ちゃんのおしりに合法的にふれるか迷っていると、命理ちゃんが危険な事を言いだした。


「嬉しいわ。日本のお金は1円も持たずに来たから」


 そう言えばそうだ。両替してない。

 私は、命理ちゃんに渋沢さんを数枚渡す。


「どうしたの?」

「護身用」

「お金が護身用になるの?」

「そう、お金は護身術の基本だよ」

「変わった人生観ね――」


 一時期、非常にお金に困ってたんでねぇ。


「――でもそうね、それほど間違ってないと思うわ」


 さてどこのお店に行こうかとスマホで調べていると、2つの声が掛けられた。


「あ、鈴咲ちゃん!」

「おおお。鈴咲さん!」


 声に顔を挙げると、ユニフォームと水着を着て、バレーボールのような物を持っている2人。


「あ、ヨーさん! ユナさん!」


 ビーチバレー部のお二人だ。健康的に日焼けしている肌が眩しい。


「全国大会、優勝おめでとうございます!!」

「ありがとお!」

「学校に有るトロフィー見てくれた!?」


 私、ヨウちゃんさん、ユナさん、と声を掛けあう。


「はい! カッコ良かったです! 試合もテレビで拝見しました」

「なんか照れるね」

「試合会場に来てくれればよかったのにー!」


「そ、それは・・・」

「鈴咲さんは、恥ずかしがり屋だからねぇ」

「仕方ないかあ」


「すみません」

「でも八街さんの応援には行ったんだよね~。妬けるなあ」

「ヨウちゃん、あんまりからかってたら、鈴咲ちゃん居なくなっちゃうよ。八街ちゃんもインターハイで優勝したの?」


「ほんとすみません。はい、アリスも優勝しました。水泳部も優勝って校舎に垂れ幕が掛かってますし、あとフェンシング部は3位、柔道部は2位でしたっけ。今年の爽波は凄いですね」

「スウも、FLのPvP大会優勝してたし」

「そういえば!」


「いや―――っ、それとこれは・・・」

「にしても、私達が優勝できたのは、全部鈴咲ちゃんのお陰だわ」

「だよねぇ、あの時スキルで私の怪我を治してくれなかったら・・・私達の三年間無駄になってた」


「いえ・・・それも」

「本当にありがとう」

「本当にありがとうね」


 言って二人が抱きついてきた。

 ナチュラルフローラル。


 一瞬アルカナくんがピクッとしたけど、大丈夫だから、刺されたりしないから。ていうか刺されても毒使われても私は死なないから。そんなにピリピリしなくていいよ。

 こうして二人にお別れの挨拶をして、私と命理ちゃんとアルカナくんは食事にGo。


「あの二人も部活をやっているのね」

「そうそう」

「素敵ね」

「だよねぇ、憧れちゃう」


 憧れるからといって部活をしないのは、涼姫クオリティ。

 まあ、今は飛行機が楽しいし。


「わたくしは涼姫様に憧れておりますが」


 アルカナくんの眼は相変わらずキラキラしてるけど若干節穴。こんなのになったら生きるの大変だぞ。


 命理ちゃんが尋ねてくる。


「あの二人を助けてあげたの?」

「たまたま手に入れた〖再生〗で怪我を治療してあげただけだよ」

「流石スウ、さスウね」

「あのお二方も〖再生〗で―――!? 本当です、涼姫様はさスウでございます!」

「さスウ? なにそれ・・・・〖再生〗したのはユナさんだけね」

「しかしお二人共救われたような表情でしたよ! ――誰かを癒やすと、他の方も幸せになるのです、涼姫様! 母の足が治って、わたくしが救われたようにッ!」


 そんな事を話しながら歩いていると、また声がかかった。


「アレって、スウじゃね?」

「マジじゃん(笑)」

「ねぇねぇ待ってー!」


 後ろから急に呼び止められたので、振り返る。


 私をリアルでスウ呼びするのは、学校の人くらいだ。だからまた学校の人かなって思って振り返ると、見知らぬ男性2人と女性2人の4人組。


 嫌な予感がする。


「やっぱスウだー」「ヤバイって~」「マジで草」


 命理ちゃんが尋ねてくる。


「誰?」


 私は首を振った。


「知らない人たち」


 アルカナくんが、今度こそ剣呑な雰囲気になる。


「涼姫様、処しても?」

「処さないで、処さないで」

「うわ、命理もいるじゃん!」「ヤベェ」「ちょ(笑) 思ったほど美人じゃない(笑)」


 命理ちゃんを、動物園のチンパンジーでも見るような目で見てニヤニヤと笑っている。


 スマホで撮影までしだした。私達の許可を得てないし、盗撮になるんだけど。

 あ・・・・この人たちアレだ。警察のお世話になったり、訴えられたりする方達だ。


 彼らは今撮った写真をSNSに――ちょっとマジでやめて。住んでる場所バレるじゃん。

 その写真、位置情報とかついてないよね?

 だめだ、本当に関わりになりたくない。


 棒立ちの命理ちゃんが、尋ねてくる。


「スウ、やる?」

「命理ちゃんまで。駄目駄目、ここはFLじゃないんだから。――いや、BANがないし揉み消せるらしいから、むしろFLよりリスクない? ――違う、そういう事じゃない」


 髪をキャラメルマキアートみたいにデコってある女の人が、甲高い笑い声を挙げる。


「でたフェイレジェ(笑) なにゲームで強いからって、リアルでも強いつもり?(笑) ガキがウチらに勝つつもり?(笑)」

「地球だと武器使えないんだろ(笑)」

「プレイヤーとか武器頼りなの知ってるし(笑)」


 一般人には未だにFLを、リアルと切り離してる人が多い。

 まあ情報が伝わりきってないから、あの世界がただの未来だって気づくのは、FLをやってる人や、その知り合いだけだからなあ。


 金髪にした男の人が、剣呑な雰囲気を出してるアルカナくんに向かってシャドーボクシングを「シュッシュッ」と開始する。


「シルクハットとかガチで被ってるヤツ始めて見た(笑)、執事服とかどういうファッションセンス(笑)」


 なんでこの人、よりにもよってこの中で一番の危険人物に向かって挑発してくれちゃうの。その子、動き出したら一番容赦ない狂犬だぞ。

 すると黒髪で野性味はあるけど1人だけ呆れた顔だった人が、ため息混じりの声をだした。


「お前らマジやめとけ、プレイヤーに手を出すの。プレイヤー共はリアルにヤバいんだよ」

「はー何いってんの? 相手高校生のガキよ、ビビってる?」

「リョウ、シャバすぎ(笑)」


 もう彼らに関わりたく無さすぎて、さっさと逃げたいんだけど一個解決しておかないといけない事が有る。


 一応頼んでみる。


「あ、あの撮った写真消してくれませんか? 住んでる場所とかバレたくないんで」


 あれ? ちゃんと頼めた。前なら怯えて何も言えなかったはずだ。


 私も成長したんだろうか。


 写真を取られる事に関しても最近は慣れてきたから、以前みたいに吐きそうになったりしない。

 だから、別に一緒に写真撮ったりするくらいは良いんだけど、それを場所が特定できる形でSNSにアップされたりしたら困る。


「え、なになに近くに住んでるの? ご招待してよ」


 するわけ無いじゃん・・・貴女はどこの国から来たの。


 パーティー好きのアメリカ人ですら、どこの馬の骨とも知らない人間を家に招待しないよ。


「涼姫様、ここはお任せを」


 アルカナくんの目が見開かれ、瞳孔も開いてる。我慢の限界のようだ――上着の中に手を入れてる、ハンティングナイフを出す準備万端。心の中の猛獣を必死に檻に閉じ込めているような様子。あれもう、プッツン一歩手前じゃないか。


 私は必死に、暴発しかけの猛獣を宥める。


「駄目だって! この位の状態なんとでも出来るから!」

「なにいってんの(笑) なんとでも出来るとか、ヨユーこいちゃって草。震えてんでしょ、陰キャ(笑)」


 仕方ない・・・。


「〖念動力〗」


「ちょ、なに、体が動かないんだけど!?」

「なんだよこれ、離せ!」

「はあ――!? ―――意味わかんないんだけどぉ!!」


 ちなみに黒髪の人は無害そうなので、何もしてない。


 黒髪の彼が呆れてため息を吐く。


「だからプレイヤーに手を出すなって言ったんだよ。コイツ等、武器なしでもバケモンなんだよ。だいたいスウってこの間、そこの執事の少年と一緒に、銃もった銀行強盗を2人で素手で制圧してただろ」


 そういえば、銀行強盗に襲われた時の様子を映した監視カメラの映像がネットに流出してたっけか。アレを見たのかな。


 私は念動力で写真を撮った女性のスマホを取りあげ、悪いけど彼女の指を使って写真を消させてもらう。スマホのゴミ箱の中まできっちり。


「私のスマホの写真を勝手に消すなし! 犯罪だろ!」

「私は、貴女のスマホに触れてすらいません」

「訴えるぞ!!」


 訴えてもアンタが盗撮しただけだから勝てないよ。というか、むしろこっちが訴えてもいいんですけども。

 ・・・めんどくさいな。

 まあ、貴方達はそもそも訴えたり出来ないんです。


 私は暴れる彼らの後ろへ周り、〖サイコメトリー〗を発動しながら、黒髪の人に一応言っておく。


「貴方はまともな人そうなんで、何もしませんが――こちらの人達が私とであって以降の記憶を奪うんで、ビックリしないでくださいね」

「おーけーおーけー、スウだもんな、そんくらい出来そうだ。――プレイヤーの中でもとびきりヤバイのに手をだしやがって・・・まったく。じゃあ、俺も君と出会った事は忘れるよ」

「助かります」


 私は暴れる男女の、私と出会ってからの記憶の糸を全部切る。


 男女は急にキョトンという表情になる。


 やることは終わったので、私が黒髪の男性に手を振ると、命理ちゃんも手を振った。


「では」

「さよなら」

「失礼します」

「ああ」


 黒髪の人は苦笑いで、手のひらを振り返してきた。


「〖超怪力〗、〖飛行〗」


 私は命理ちゃんとアルカナくんを小脇に抱えて、〖超怪力〗でお空に一気にジャンプ。


 命理ちゃんとアルカナくんは抵抗もなく、私に身を任せて手足をブラブラ。


 私は〖飛行〗で、そのまま遠くのお店へ飛んだ。


 下の方から、


「人間が空飛んでんじゃねぇよ―――・・・」


 なんて声がしてた。


 それから3人で神奈川のお魚を、たらふく食べた。美味しかった。

 その後命理ちゃんを私の家に招待して、お泊まり会になりました。


 滅茶苦茶ネトゲした。


 そういえば、アリスが顔の認識を阻害するアイテムが有るって言ってたなあ。そう言うのがあれば声かけられないようになるかな? 買おうかなあ。

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― 新着の感想 ―
その程度の理由で記憶操作はやりすぎに感じます この物語の中でもとびぬけて冷酷で残虐な行為
更新お疲れ様です。 まぁ何処の世界でも、こういう『自分の承認欲求の為なら他人なんかどうでもいい』な阿呆はゴキブ○並みにポンポン湧きますからなぁ(クソデカため息) 認識阻害アイテムは買っといた方が良い…
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