159 いつの間にか資格を得ます
カリーンの近くに買った家、湿地のロッジ。
私はクエストに出かけている命理ちゃんを待ちながら、命理ちゃんが飼う事にしたカエルのケロりんと、みずきがどこからともなく連れてきた歩く植物のマンドレイク(鉢植えサイズ)のドラ子の頭を撫でながら、白い粘液を もっちゃもっちゃ していた。
思考加速のステータスアップ効果がある根っこの粘液だ。
チョ~~~苦いので、〖味変化〗で苦味を消して、甘くしてある。
でも美味しくないなあ――残りは、プロテインで流し込もう。
ケロりんとドラ子がソファの上でじゃれあっているのを見ながら、パイロットスーツを着てみる。
ちなみにパイロットスーツは、しっかりアリス原案のデザインにされた。
フェアリーテイルに合わせて白に金の刺繍が入ってる感じにされた。
撮影とか部活とか忙しい中、三日くらい寝ないでデザインを考えたらしい。しかも、VR内で。
無理しないで。
「スウさんの可愛さを、最大限に引き出せるデザインにしたかったんです!」とか鼻息荒く仰ってた。
ただアリスは最初、妖精っぽく緑にしようとしたんで、私は泣きながら「やぁめぇてぇー」と、アリスの背中をポカポカ叩いた。そしたら止めてくれた。
透明成分も減らしてもらったんだけど、胸の谷間辺りが透明になってたり、なんか前より際どくなってない? これ。
「スウさんのぺーは、大事なファクターですので」とか、鼻息荒く曰くってた。
「おしりの上見られちゃいましたし、そこも透明にしましょうか?」とかほざいた時は、流石に頭にチョップを入れた。
アリスがレプリケイターで雪花をチーンとやったのを見た私は、気づく。
これ、銀牙とセンチネルをレプリケイターで合成できないかな?
「その発想、天才ですね」
そこからは、クレイジーギークスのパイロットスーツメイキングが始まった。
銀牙成分とセンチネル成分、どちらに比重を置くかで性能が結構、変わるらしい。
で、ほとんどのメンバーが銀牙成分(防御力)多めにする中で、リッカとアリスだけはセンチネル成分(身体強化)を強めにしていた。
出来たパイロットスーツの名前はシルバーセンチネルらしい。
雪花だけは強すぎて、何と混ぜても弱体化するので手がつけられなかった。
さて、私はパイロットスーツの機能で自分のステータスを確認。
ID:スウ
力:22
知力:56
敏捷:324
ステータス上昇:
原始反射加速40%
空間把握20%
筋操作(切り替え)20%
酸素消費量低下10%
記憶力拡大20%
集中力持続強化20%
思考加速1%
称号:〖伝説〗、〖銀河より親愛を込めて〗、〖開放者〗
スキル:〖奇跡〗、〖暗視〗、〖強靭な胃袋〗、〖超怪力〗、〖怪力〗、〖第六感〗、〖超暗視〗、〖サイコメトリーμ〗、〖念動力μ〗、〖再生〗、〖飛行〗、〖超音波〗、〖マッピング〗、〖超聴覚〗、〖前進〗、〖味変化〗、〖黄金律〗、〖空気砲〗、〖ショートスリーパー〗、〖熱耐性〗
魔術:土属性
クラン:クレイジーギークス
所持機体:XFT-01 フェアリーテイル
クレジット 2998万c
勲功ポイント1164万p 総計1581p/TOP100位
草の粘液で、本当に思考加速の能力が上がってる。粘液凄い。
あとプロテイン効果か、力が上がってる。プロテイン凄い。
というか、クレジットも勲功ポイントも凄く貯まったなあ。
とうとう勲功ポイントでTOP100に入っちゃったし。これで私もランカーとか上位勢って呼ばれる立場なのかあ。
ちなみにマイルズの累計勲功ポイントは、私がシミュレーターから出てきた時点でが3500万ポイントを超えていたらしい(WEB情報)。今はもっと増えてると思う。
じゃあ待ってる間に勲功ポイントを使って、能力アップしようかな。
あとは新しい武器が欲しいな。
――武器が特に心許ないから、先に買おうかな。
「荷電粒子砲は強いんだけど、フェアリーさんが火力ありすぎて162mmキャノンや64mm機関銃だと、ちょっと足りない気がするんだよね」
だからって、流石に昔の戦艦の主砲みたいなサイズの武器は買わない。
あれって発射の時に人が周囲に居たら、衝撃波で死んじゃうらしい。
発射の映像見たこと有るんだけど、衝撃波で海が ごぼ ってえぐれて、目を疑った。
ちなみに世界最大の主砲と言われる、大和の主砲が46cm砲。つまり460mmキャノン。
つまりこれくらいになるとフェアリーさんで使うならともかく、生身で使ったら人間がヤバすぎる。
そもそも戦艦の主砲って、沿岸から艦砲射撃で都市を壊すために撃たれる事もある弾丸なわけで、街中で使って建物にでも当たろうものなら大変なことになる。――建物っていうか、道路も駄目か。
空に撃っても、どっかに着弾するし。
「まあ、艦砲射撃はFLなら荷電粒子砲の方が得意だろうけど。というか荷電粒子砲も、生身じゃ使えないんだけれども。荷電粒子って要は放射線だから、使ったら色々大変な事になるし」
でも、パイロットスーツの雪花を着てたら大丈夫なのかな?
「買うのはこの183mmキャノンというのにしよう。フェアリーさんで使うにはちょっと大きすぎる気もするけど、どうせゲートから撃つんだし」
あとはロケットランチャーと、機関銃かな。
「ロケットランチャーは、このFF-304 フォルゲンファウスト16連ランチャーがいいかな。自動装填できる連射式ミサイル砲。ある程度は追尾までしてくれるらしい――MoB相手にどこまで通用するのかわかんないけど」
機関銃は、前のが64mmで、スワローさんの〈汎用バルカン〉のほぼ倍の口径だったんだよね。
「――今のフェアリーさんの〈汎用バルカン〉が64mm、だけど流石に120ミリ機関銃なんてないから――81mm機関銃くらいにしとこうかな」
んで買った81mm機関銃はその名もTY-150 タイニーガン。
どこがとても小さいなのか、むしろ巨人。
お値段〆て、350万勲功ポイント也
武器6本でこの値段は、結構高いと思う。
350万ポイントあったら空母3つ買えるし、かなりいいバーサスフレームが買える。
――って、あれ?
カタログの一覧になぜか航宙タンカーと、航宙輸送艦がある。
なんで私に、これが普通に表示されてるの? 解禁されちゃってるの?
私は「なんでじゃろ」と、首をひねる。
私はクナウティアさんっぽい運営さんの言葉を思い出す。『タンカーは、通常買えません。しかし購入条件を満たせば購入できます。――購入条件は、銀河連合で一定以上の生産活動をし、非常に友好度の高い人物である事。こういった方のカタログにはタンカーが表示される仕組みです』
私は友好度は高いって、教えてもらえた。
だとすると、生産活動の条件が満たされたって事だよね?
生産活動・・・・? したっけ?
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
「あ!」
私は手元を見る。そこには白い粘液が入ったコップ。
「この粘液が取れるヤコウ草と、デカ芋と、ハベス!」
完全オートメーションだから、すっかり忘れてた。
私が窓に寄ると、遠くにコンバインWのドローンが飛んでいるのが見える。
あそこで着々と、芋と茶が積み上げられているんだよなあ。ちなみに銀河連合に出荷してます。
一部、沖小路宇宙運輸に地球に運んでもらってたりもします。
私って、あのオートメーションだけでも一生暮らせそう。
よし、航宙輸送艦と航宙タンカーを1つずつ買って、フーリにプレゼントしよう。
で、武器を買ったんでフェアリーさんの腕に格納しているドリルドローンも、時空倉庫に移動してもらった。
その方が何かと便利なので。
そしたらポルッカとカストール、リンクスとイダスが喧嘩を始めた「どっちの双子が私の役に立てるか」みたいな感じに・・・・倉庫の中は時がないし、私が呼ぶまで寝ているから、ずっと喧嘩してるわけじゃないんだけど。
同時に呼ぶと喧嘩を始める。大変弱った。
そしてカストールとポルッカがいなくなったフェアリーさんの腕の格納スペースには、予備弾を詰め込んだ。
さて、残りの勲功ポイントはステータス強化に使おうかな。全部は使わないけど。
先ずは、原始反射加速。
次は1回上げるだけで160万だったかな。
流石に高すぎるんで、ストラトス協会の20%割引が欲しいな。
これは予定だけ組んで、あとでストラトス協会に行って上げよう。
一応、正確な値を訊いておこう。
「イルさん。次、原始反射を10%上げるのにどれくらい掛かるかな?」
『マイマスター、有志サイトに能力アップシミュレーターがあります。どのくらい勲功ポイントが掛かるか、前もってシミューレートできます』
「おお・・・この時代にも有志サイトが有るんだ?」
私はありがたやと感謝しながら、シミュレーターで能力の計算をしてみる。
「あ、10%上昇出来る(大)が使えるのは50%アップまでなのかあ・・・それ以降は(中)になって、しかも次は320万ポイント・・・・ヤバスギ。これはちょっと現実的じゃないなあ」
アリスが筋力強化を50%で止めてた理由がわかったかも。
そうするとステータスアップは、1.5倍辺りで止めるのが現実なのかな?
と思ってシミュレートしてみたけど、筋力強化の場合は100%アップまで(大)が使い続けられた。
つまり、ステータスによって(大)が使える量は変化するのかあ。
アリスは効率で止めてる訳では無いっぽい。
そういえば前に計測した反応時間の上がり方の感じだと、原始反射を100%にしちゃうと反応時間が0.001以下とかなんて事になりそうだし、そんなの脳がはち切れそう。
じゃあ原始反射は50%で止めて、普通の反射神経を上げてみよう。
前にアリスに「私は、要らないかも」とは言ったけど、それは勲功ポイントが足りないからで、今ならちょっと余裕がある。原始反射を使うのに失敗した時は普通に反射神経を使ってるわけだから、普通の反射神経も大事だ。
私も常に原始反射が使えてるわけじゃない。反射神経も多く使ってる。
だから上げておいて損はないんだ。
上ブレの上限を上げるのではなく、平均値を上げる感じなら普通の反射神経を上げるべきだよね。
―――そう考えると下ブレをなくす感じは、思考加速かもしれない。
これからも粘液を一杯、もちゃもちゃしないとなあ。と考えつつ、もちゃもちゃする。
「(もちゃもちゃ)」
原始反射をさらに50%へアップ 160万ポイント。
反射神経加速30%アップ 70万ポイントを予定。
で、残りは、
筋力アップ 30% 70万。
筋操作(精密)30% 70万。
筋操作(速度)30% 70万。
頑強(骨)20% 30万。
頑強(筋肉)20% 30万。
集中力持続強化を 30%にアップ 40万。
にしよう。
更に航宙タンカー1隻、航宙輸送艦を1隻買って、合計532万ポイントを使う事になるかな。
(ちょっと待てよ、アレも買っておこうかな)
ふと思いついて、とあるバーサスフレーム用のパーツを買うことにした。
残ったポイントは208万ポイント。
何か有った時のためにこのくらいは残しておこう。
今はまだ無料補給ができるけど、そのうち切れちゃうし。
光崩壊エンジンの熱を生み出す部分である光崩壊炉は、僅かな鉄で何千年も稼働できるからほとんど補給がいらないんだけど、推進剤はそうはいかない。
大気中や水中は、大気や水が推進剤代わりになってくれるんだけど、宇宙空間では何かを放出しないと加速できない。
なので固体酸素や固体水素を推進剤として放出するんだけど、これの値段がそこそこする。
他にも、弾薬や修理代金も必要だし。
クレジットでも補給は可能だけど、軽く100万クレジットとか、エグイ量持ってかれるんだよね。
よし、買い物終わり。
じゃあ命理ちゃんが戻ってくるまで、腹筋でもしてよう。
プロテインのお陰か、ぷにぷにだったお腹に最近、縦線が入ってきた気がするんだよね。
頭にケロりんを乗せて、VRでコハクさんと音子さんのコラボ配信を眺めるながら「い゛っち゛」「に゛っ」。
「ただいまよ」
「ただいまです~」
「ただいまー」
命理ちゃんが、アリスとみずきと一緒にクエストから帰ってきたようだ。
命理ちゃんアリス、みずきとクエストの感想を述べる。
「モータル・フィッシュ退治のクエスト終わったわ。なぜかリーサル・フィッシュが出たわ。ワンダリングイベントだったわ」
「ちょっと手伝ってきました。恐ろしい敵でした、命理さんと一緒でないとアレは倒せなかったですよ」
「こき使われた」
モータル・フィッシュに、リーサル・フィッシュ? ――ヴォーパル・フィッシュの上位互換?
「みずきは、ヴォ-パル・フィッシュの上位種なら〈水作成〉上位の印石が出るかもって、勝手に付いて来たんでしょう」
「〈黄金律〉が有るのに、出なかった」
「そんな危ないことしてきたの・・・?」
ちょっと心配になって、部屋に入ってきた三人を見た。
するとアリスが、私の姿勢――上半身を半分くらい持ち上げ頭の後ろに手を当てている。をみた。
数秒呆然としていたアリスは、やがて私を指差し、プルプル震えだした。
「す、涼姫が・・・・筋トレしてます・・・っ!?」
な、なんでそんなに驚くの。
するとみずきと命理ちゃんが、大変失礼な事を言い出す。
「運動不足の化身のような涼姫が、筋トレだと? スーパーセルの前兆か?」
「涼姫、肉離れに気をつけて」
「だからなんで、私が腹筋しただけで、そんなに気象が乱れるの!? ――あと、肉離れするほど酷い運動不足じゃないから」
なんか、アリスが「別にわたしは落ち着いてますよ」的な、実は落ち着いていないみたいな雰囲気で尋ねてくる――いや、なんで落ち着き払わないといけないほど驚くの。
「・・・いったいどういう風の吹き回しですか、どんな風を呼ぶんですか? スーパーセルは止めてくださいよ? 妙な動画でも食べましたか?」
「スーパーセルなんて来ないから! 動画は食べれない! ――前に自分の能力を調べたら、力の値が下がってたから――」
「え・・・・下がったんですか? どれだけ引きこもってたんですか・・・?」
「・・・・いや、そんなに驚愕されましても」
「そういえば、ゲームとかだと加齢で能力値に減点来たりするんですよね?」
「日々加齢してるけど、まだ能力値は上がっていく若さ!」
みずきが私に近づいて来て くんくん と鼻を鳴らす。
ちょ、やめっ、恥ずかしい。
「涼姫、加齢臭がする」
「ぶん殴るよ!?」
私がみずきのからかいに怒っていると、アリスがポンと手を叩いて冷蔵庫に寄って行った。
ちなみに加齢臭なんてしないからね!? これでも、花も恥じらう女子高生だからね!?
この前誕生日で16歳になりました! おめでとう私!
「今日の夜ご飯はカレーにしますかね」
「「「わーい」」」
私、命理ちゃん、リッカの3人で喜んだ。
アリスの欧風カレーは絶品なんだ。
そうだそうだ、今日の目的を告げないと。
「命理ちゃん、地球に行ってみる? 日本との国交が始まったから行けるんだって」
「凄く行きたいわ」
アリスとみずきが残念そうにした。
「羨ましいです」
「今日かー」
ん、二人も来ればいいのに。
「二人も来る?」
「駄目です・・・今からMalchiLeydプロダクションの皆さんとコラボなんですよ。モールスのパイロットさんたちとの戦いが面白かったって人気らしくて」
「わたしも」
あー、コラボは勝手に抜けられないよね。
「Vtuberの人たちだっけ? 市原のべるさん、甘凍 マイルさん、財重 あるまさん、坂月 ねんどさん」
アリスが頷く。
「そうです」
みずきが頷く。
「名前はしらない」
・・・・みずき、コラボ相手の名前くらい憶えとこうよ。
最近、モールスの4人も人気なんだよね。
みんな、色んな交流してるんだなあ。
私? 私は、あんまり知らない人とコラボとか・・・・ね?
するのはするけど、あんまり頻繁には・・・・ね?
――っと、腹筋の目標が終わってない。
「さ゛ん゛っ」
よし。
私は腹筋の目標3回を終えて、立ち上がる。
なんだか気配がして振り返ると、みずきが驚愕の瞳でわたしを見ていた。
「さ゛ん゛て、3?」
「う、うん・・・3だけど・・・」
「終わり?」
「お、おわり」
「・・・・・・ふがいなさ過ぎない?」
「これ以上、できないんだよ! むしろ初日は1回も出来なかったんだよ!」
「ひんじゃく」
出来ないものはできないの!
「しかたないじゃん! アゼルバイジャン!」
私はピエロみたいな格好をした芸人さんみたいに、言って誤魔化す。
こちとら、ホワイトラビットみたいに不健康なんだよ!
みずきがシャツを持ち上げて、腹筋を見せてくる。
おお、流石剣術家。腹直筋と、内腹斜筋がきれいに別れてる。つまり真ん中が腹筋を左右に割り、その左右をさらに2つに割るように綺麗に、縦に3本筋が入って割れている。
女性として、綺麗で羨ましい。
「ふふ」
みずきの凄く良いドヤ顔。
あの顔に、額縁を被せてタイトル「ドヤ顔」って付けて出展したいくらい。
「腹筋の見せあいですか?」
カレーのルーを持ったアリスまで、上着を上げて見せてきた。
アリスが腹筋にギュっと力を入れると、現れた脅威。
私とみずきは、驚異に目を見開く。
「板チョコ・・・」
「岩盤――」
見事なシックスパック!?
「岩盤とか止めて下さい・・・女の子は、砂糖とスパイスと素敵な何かで出来ているんですから・・・」
アリスが「ぷんぷん」と、カレーのルーを振りながら言う。
「モデルなのにそんなに鍛えていいの?」
「これも結構、わたしが人気の理由なんですよね。凄いって言われます」
「まあ、本気で締めなきゃ・・・縦線3つだもんね――本気で締めたら岩みたいだけど」
しかもアリスの腹筋はズレたりしてる割れ方じゃなくて、幾何学的に綺麗に割れている。
「だから、岩とか言わないで下さい!」
私は、アリスが激オコしない内に、逃亡をキメる事にした。
「とりあえずじゃあ、命理ちゃんと2人で神奈川に行ってくるよ」
「はい」
「デート、いてらー」
「楽しみだわ」




