158 お宝を見つけます
探索を再開して暫くいろんな部屋を回った、すると目的の1つを見つけた。
「あった、パイロットスーツ!」
VRに、『乙姫重工 XXXXX-P-310 パイロットスーツ雪花』と表示される。
なんか重そうな箱を開けると、中に入っていた。
乙姫重工――日本語の会社名かあ。つまり日本がかつて有ったんだなあ、この宇宙。
「一着しかないなあ。完全に女性用だし」
私が呟くと、コハクさんが別の箱を開けた。
「こっちにもありますよ。乙姫重工XX-P-300銀牙、男女兼用ですね。どっちが良い物なんでしょう」
コハクさんの疑問に、ネクタイみたいな物を着けたドローンが返事をする。
『お嬢様。乙姫重工の場合、型番のXが多いほど高級品でございます。またPはパイロットスーツを示し、数字は作られた年代を表しておりますので、XXXXX-P-310の方が後期型かつ高級品でございます。なお、型番の形式は会社毎に意味合いが異なりますので、御留意下さい』
コハクさんのバーサスフレームドローンは、執事風なのかな。
「じゃあ雪花はスウさんので、私達は銀牙を頂きましょうか。こっちなら一杯あります」
「やった」
「ラッキーです」
リあンさんとさくらくんも喜んでいた。
その後「GordonMax A3-4000 センチネル」というパイロットスーツも見つかった。
イルさんドローン曰く、GordonMaxは1100年前に乙姫重工と軍用品シェア奪い合ってい合ってた企業らしく、ガーディアンと銀牙は一長一短らしい。ただしガーディアンでは、雪花には敵わないとのこと。
「雪花は、よっぽどいいものなのかな」
私が水色の「つなぎ」みたいな物をぶらんぶらんさせると、スワローさんが答えてくれる。
『マイマスター。XXXXXの雪花は当時、着るバーサスフレームと呼ばれていました』
「え・・・・まじで」
『「ミスリル窒化ケイ素エアロゲル」などの様々なエアロゲルの粉による靭性・剛性・耐熱性と軽さに加え、防御力も素晴らしく、バーサスフレームのバルカンを一発程度なら受けても無傷です。先程のジャバウォックという老人が作り出した爆轟程度なら、ダメージは通しません。――オートマキナの攻撃も防ぐでしょう。通常時の身体能力も僅かに上昇させてくれます。マスターが〖超怪力〗を使用しても、マスターの体にダメージはないでしょう――他のスキルを併用した場合は、分かりませんが』
え、バーサスフレームの装甲材を超軽いエアロゲル化して詰め込んでるの?
「つんよ」
『さらに身体データを読み取り、VRに表示してくれます。手首のボタンを押すと、この機能が使えます。ちなみに特殊認証のパイロットスーツなので、一度登録すると、同じパイロットスーツは本人にしか使えません。そして、最も大きな機能がバーサークモードへの移行です。バーサークモードになると30秒間ですが、あらゆる身体能力が2倍に向上します。こう言った経緯からパイロットスーツの形をした特機と言われていた存在です』
「パイロットスーツの形をした特機・・・」
『ただし、バーサークモードを使用すると、体に大きなダメージがありますのでお気をつけ下さい。耐えられない場合意識を失ってしまうかも知れません』
「うん・・・・わかった」
マジの変身ヒーローのスーツみたいな物なんだね、これ。
コハクさんが、イルさんに尋ねる。
「銀牙はどうなんですか?」
『バーサークモードはオミットされています。また防御力が半分程度です』
「そこをオミットされちゃ・・・ですねえ。――防御力半分でも凄いとは思いますが」
さくらくんも、彼のドローンであるお蝶さんに尋ねた。
「ガーディアンはどうなんでしょう」
『銀牙と同じくバーサークモードがありません。ただし、通常時の身体能力を上げる機能が強いです。これは雪花をも上回ります。欠点は防御力が銀牙より低い事です。バーサスフレームの武器の攻撃は耐えられないでしょう』
「なるほどです」
つまりガーディアンは防御力下がるけど、身体能力の強化率が高いってことなのね?
ガーディアンは、リッカとアリスが欲しがりそう。
ワンチャン、オックスさんと空さんも。
「とりあえず、見つけたスーツでここにいる人が着ない物は全部時空倉庫に放り込みましょうか。私のに入れておきますね」
言ったコハクさんが、スーツを自分の時空倉庫に放り込んでいく。
クレイジーギークスの面々には全員〈時空倉庫の鍵〉を配ってある。
コハクさんが急に「ふっふっふ、いいでしょースウさんに貰ったんですよ」といい出した。
リあンさんや、さくらくんも「うらやましかろー」「アリスさんに、貰っちゃいました」とか言ってる。
多分コメントに、クレイジーギークスに入ると〈時空倉庫の鍵〉が貰える事を羨んだコメントが流れてきたんだと思う。
「でも、そろそろ〈時空倉庫の鍵〉少なくなって来てるんだよね。さっきも一個壊したし」
私が言いながら適当に近くのダンボールを開くと――ん?
「あ、〈時空倉庫の鍵〉がジャラジャラ有る」
「えっ!? マジですか!?」
「うそん」
「わわわ、お宝ですよ!」
❝ええええええ❞
❝うらやまけしからん!!❞
❝なんでクレイジーギークスばっかりぃぃぃ!!❞
「・・・・アハハ」
こうして私は〈時空倉庫の鍵〉を補充するのだった。
思ったんだけど、〈時空倉庫の鍵〉って命理ちゃんが居た場所とかMoBの研究室とかに有って、ドラム遺跡とか大正風都市遺跡には無かったし。旧人類時代でも、普通の人は持ってない軍事品とかだったんじゃないだろうか。
だから軍事に関連する研究施設とかなら、見つかるのかも?
コハクさんが、箱の中を覗き込む。
「流石にバーサスフレーム用の〈時空倉庫の鍵・大〉はないですね。まあ有っても〖念動力〗と〖超怪力〗がないと、スウさんみたいな事はできませんが」
トビラ・オブ・カナガワの事かな。
❝いいなあ、クレイジーギークスはみんな〈時空倉庫の鍵〉があって❞
❝俺もクレイジーギークスに入れてくれぇ❞
❝モデレイター(音子):ウチも入れて~なあ❞
❝モデレイター(ヒナ):私もー❞
❝音子とヒナも、よーみとるw❞
音子さんとヒナさんが、何か喋っている。
「あんたらクランマスターと、副マスターでしょう」
❝モデレイター(音子):こんなん酷いわあ❞
❝モデレイター(ヒナ):えーん❞
でも、この2人にはこっそりプレゼントしてもいいかな。今一杯手に入ったし。誰かにあげるために在庫用意してるんだし、今度あげよう。
コハクさんが、私の背中のガムテープを指でペシペシ弾きながら言う。
「スウさんパイロットスーツ破れてますし、着替えてきたらどうです?」
❝モデレイター(音子):コハクー、やほー❞
❝モデレイター(ヒナ):いや、このコメントはコハクに見えないって❞
❝モデレイター(音子):コハクにもすっかり登録者数抜かれてもうたなあ❞
❝モデレイター(ヒナ):向こうにはスウが付いてるから勝てないわ。ランカーのアリスまでいるし。――コハクもすっかり大手配信者だよねぇ❞
❝モデレイター(音子):さくらも❞
❝モデレイター(ヒナ):無理、さくらにはタイマンでも勝てない❞
❝モデレイター(音子):スウの視聴者の皆さん、今度コハクと一緒にコラボするんで見に来てなあ❞
❝モデレイター(ヒナ):宣伝乙❞
何やってるんだ、この人たち。
「とりあえず着替えますね」
❝ちょ、スウたんの生着替え!!❞
❝パイロットスーツって下着を着けるの!?❞
❝さっき尻を確認した限り、穿いてない可能性大!❞
❝宇宙の謎が、今、明かされる!❞
私はとっとと、バーサスフレーム用の〈時空倉庫の鍵〉を開いてイルさんドローンを中にいれる。
そしてコハクさん達に「ちょっと行ってきます」と言ってから、隣の部屋で着替えだした。
❝お隠れに!❞
❝こんな事が赦されて良いのか!!❞
❝モデレイター(音子):(血涙)❞
音子さんは視聴者と一緒になって、何を言っているんだ。
さて着替え終わって、倉庫から出る。
「あー、普通のデザインのパイロットスーツって良いですね! 透明部分とか無い、ほんと素晴らしい!」
今着てる雪花というパイロットスーツの見た目は、青と黒をベースに白いラインの入った、The・パイロットスーツ(アニメ)という感じ。
❝モデレイター(アリス):新しいデザインを用意したので、お帰りを待っています❞
「アリス・・・見てたんだ・・・・」
そうだこのパイロットスーツって、自分のステータスを見れるんだっけ?
私は、腕のボタンを押して現在のステータスを表示させてみた。
ID:スウ
力:21
知力:56
敏捷:324
ステータス上昇:
原始反射加速40%
空間把握20%
筋操作(切り替え)20%
酸素消費量低下10%
記憶力拡大20%
集中力持続強化20%
称号:〖伝説〗、〖銀河より親愛を込めて〗、〖開放者〗
スキル:〖奇跡〗、〖暗視〗、〖強靭な胃袋〗、〖超怪力〗、〖怪力〗、〖第六感〗、〖超暗視〗、〖サイコメトリーμ〗、〖念動力μ〗、〖再生〗、〖飛行〗、〖超音波〗、〖マッピング〗、〖超聴覚〗、〖前進〗、〖味変化〗、〖空気砲〗、〖ショートスリーパー〗、〖熱耐性〗、〖毒無効〗
魔術:土属性
クラン:クレイジーギークス
所持機体:XFT-01 フェアリーテイル
クレジット 2898万c
勲功ポイント1154万p 総計1571p/TOP102位
あ、敏捷と知力が上がってる。
――ん? まって、筋力が前より下がってない!? どういうことなの!?
最近は結構アクティブな事してるのに。
・・・それをも凌駕する引きこもりってこと!?
なんてこった・・・・――プロテインでも飲もうかな。
スキルは増えたなあ、20個かあ。
マイルズが9個でもヤバイみたいな事を言ってたけど、いよいよ9個の倍を超えちゃった。
ステータスを確認し終えて、〈時空倉庫の鍵〉から出て気づく。
一人いない。
「あれ? さくらくんは?」
私が尋ねると、コハクさんが「ハハハ」と抑揚なく笑った。
「パイロットスーツを着替えに行きました」
リあンさんも「ハハハ」と抑揚なく笑う。
「カメラを持って」
え!? 私は緊急事態に慌てた。
「し、視聴者の視線を連れて着替えに行ったんですか?」
「はい」
「視聴者に、さくらくんの裸が見えるんですか?」
「はい」
「なぜ止めなかったんですか!?」
「止めました」「男なんですから問題ないじゃないですか、アハハ~。とかのたまってた」
「なんて事を―――!」
しばらくして、さくらくんが戻ってっくる。
水色っぽいパイロットスーツがよく似合ってる。細い、肩幅小さい、腰つきとかもう女の子にしか見えない。ありていに言うと、ぴっちりスーツの超美少女。
ん? そういえばさっきからコメントが静かだけど・・・・。
❝すごかった❞
❝至福の時間だった❞
❝モデレーター(音子):もう完全にオナゴやった❞
「音子さん・・・・」
私もあとでさくらくんのアーカイブをチェックすることを心に誓い、探索を再開すると、サーバールームのような場所にやって来た。
協会から指定された手のひらサイズの黒い箱を見つけた。
真っ黒な正方形の箱。
赤い筋が脈動している。
取ってきてくれと見せられた画像にあった箱だ。これがブラックボックスかあ。――ブラックボックスって、本当に黒いんだ? マザーMoBの作り方の情報が入ってるんだね?
と言うか人間をマザーMoBに変えてしまう方法。
重いので〖念動力〗で持ち上げて〈時空倉庫の鍵〉に入れる。
これをストラトス協会に届ければ、クエスト完了だ。
ちなみにこの中にあるのは、銀河連合ですらコピーするのに数日掛かるような大規模なデータらしい。
さて帰路を開始。
「―――手に入れられてよかった。」
こうして無事ストラトス協会に帰還した私達。
注文されたブラックボックスは、しっかりと納品。しました。
◆◇◆◇◆
次の日ブラックボックスはユタ中将に届いたらしく、連絡が来た。
『スウくん。素晴らしいよ、これで様々な研究が一気に進む。それから、君の配信のアーカイブも重要な情報源になる。チェックさせてもらっていいかな』
「え・・・・あ・・・はい。どうぞ。銀河連合の人も私の配信見てるのかなあ」
『そうだね。最近は連合の人間がコメントにもちらほら居るよ』
「え、そうだったんですか!?」
『それとそうだ。日本と国交が開始されたんで命理君を日本に連れていけるよ。まあ日本国外には出さないでほしいけれど。僕的には、地球で命理君を匿っていて欲しいくらいだ。まあ本人が由としないだろうけども』
「あ―――そっか、命理ちゃんを日本に・・・良い事を教えてくれて、ありがとうございます!」
早速連れて行こうかな。




