156 探索クエストに行きます
その日は雨だった。
さらに目的地はジャングルだった。
気温も高いし、湿度もやばい。
「蒸し蒸ししてそう」
パイロットスーツを着ているから快適だけど。生身だったら湿気がまとわりついて真夏にセーターを着るみたいな感覚だったんじゃないだろうか。
惑星ユニレウスにあるジャングルを抜けてやって来た、1100年以上前の研究所。
建物の外観は、「ガラスのルービックキューブ(19x19)を角を下にして立てた」みたいな見た目だった。
よくアレで立ってられるなあ・・・。
ここでブラックボックスという物を確保して持って帰るのが、今回のクエスト。
初代・銀河連合元帥の研究していたデータが、入っているらしい。
なんか、人をマザーMoBにする方法のデータもあるらしい。
さくらくんが首を傾げる。
「ここ、周りだけ植物とかがないですね。周りジャングルなのに」
そういえば周囲が全然荒れてない。1000年前の建物って全部植物で荒れてるんだけど、周囲がまるで1000年前のまま、時が止まったよう。
「本当に入っても大丈夫なのかな」
「バーサスフレームを持ってきましょうか」
コハクさんが顔色悪く言うけど、
「今回は建物の破壊が目的ではないので。内部調査なんで」
建物を破壊しちゃ駄目です。
私達が嫌な予感に襲われて躊躇していると、全く警戒のない人が居た。
「なんだ、開いてんじゃん」
「リ、リあンさん――!」
リあンさんが、フラグでも立ちそうな言葉を吐いて、無警戒に扉へ近づいていく。
私達は、慌てて彼女を追いかけて中に入る。
「リ・・・リあンさんは豪胆なのか、繊細なのか」
コハクさんが肩をすくめる。
「考えがないだけですヨ」
「一番頭良さそうな見た目してるのに!」
そしたら早速だ。私は、建物内部に入って、「オートマキナ!!」と叫ぶ事になった。
奥から、電子音の様な靴音を鳴らして歩んでくる女性型の機械。
機械は、右手を手刀の形にする。
こ、こいつも暴走してる?
リあンさんが顔を引きつらせながら、手のひらを突き出した。
もしかして、〖空気砲〗を撃つつもり?
駄目だ、オートマキナ達には銃弾すら通用しないんだ――〖空気砲〗なんかあっさり弾かれる。
「〖空気砲〗!!」
リあンさんがスキルを放つけど、思ったとおりだ。攻撃はあっさりメタリックボディに弾かれた。
実験してみて思ったけど、このスキルの使い方は――多分人間を無傷で制圧したりする使い方が向いてるスキルだ。
あとは――、
「なにこれ、意味ないじゃん!」
リあンさんが、腹立たしそうに舌打ちをする。
オートマキナが走り始めた。手刀を構えリあンさんに駆ける。
リあンさんの表情が固まった、体まで固まってる。
だめだ、オートマキナが近すぎる。
私はリあンさんを抱き上げようとするけど、普通の方法じゃ間に合わない。
(〖超怪力〗、〖怪力〗、〖飛行〗、〖念動力〗、〖前進〗)
私は〖超怪力〗&〖怪力〗で前方に跳んで、そのまま光の翼で飛行、〖念動力〗に〖超怪力〗&〖怪力〗、〖前進〗を乗せて加速。
更に、
(〖空気砲〗!)
足の裏から〖空気砲〗を放って加速。
(〖空気砲〗、〖空気砲〗、〖空気砲〗!!)
スキルを連発して加速していく。
さくらくんの声が後ろからした。
「そ、そういう使い方!?」
魔術発動用のペンを腰から抜いて、振るってリあンさんの前に鉄の盾を生成。
ペンダントを握る。
私は勢いを止めず、リあンさんに突撃、
「リあンさん!」
「え、スウ!?」
リあンさんを抱いて転がる。
だけどオートマキナの手刀で、鉄の盾が引き裂かれ、さらに私の背中を切りつけられた。
「ぎ―――っ」
焼きごてを当てられた様な痛みが、背中に走る。
なんて切れ味の良い手刀なんだ。
鉄の盾とアリスのくれた高価なパイロットスーツが、あっさり切り裂かれた。
銃弾を受けても破れなかったパイロットスーツなのに。
オートマキナが手を、指鉄砲の形にした。
私は床を転がりながらオートマキナの指から放たれる弾丸を躱し、バーサスフレーム用の時空倉庫を開いて、中から巨大な64mm機関銃を取り出して発射。
砲弾みたいな弾丸が連続で射出されて、メタリックボディに吸い込まれる。
轟音と振動が巻き起こり、圧倒的な暴力がオートマキナの体を弄ぶように揺らす。
私が射出をやめると、体のあちこちが丸く刮げたオートマキナが立っていた。
オートマキナは痙攣しながら、内股に崩れ落ちて床に倒れて沈黙。
にしても、壁や床には傷ひとつない。真っ黒にはなってるけど、それだけ。
私が頑丈な建物に驚いていると、リあンさんが泣きそうな顔を向けてきた。
「ご、ごめんスウ! ・・・・ありがとう、助かった・・・。背中は大丈夫!?」
「あ、大丈夫です。〖再生〗」
私はすぐに傷を塞いで、リあンさんを安心させる。
リあンさんが、長い息を吐いて安堵した。
「遺跡探索とか初めてなんだけど、こんなに危ないんだね。ほんとゴメン、調子に乗りました」
私は「うんまあ、あのオートマキナっていうの結構強いんですよ」と返すと、コハクさんが、項垂れるリあンさんの頭をこついた。
「反省した?」
「はい」
「んじゃまあ、配信開始するか。視聴者にそんな顔見せないようにね、はい笑顔」
「う、うん」
リあンさんが苦笑いだけど、笑顔を作る。
こうして私達は配信を始めた。
❝Har スウ! Har スウ!❞
❝きちゃー❞
コハクさんが肩を竦めて視聴者たちに報告する。
「今撮れ高があったんですけど、残念です。リあンがヘマして、スウさんに助けられるという絵が」
「視聴者に言わないでよ!」
リあンさんが、あっさり明かすコハクさんに噛み付いていた。
❝なにそれ、スウたんのイイとこ見たかった❞
「大したものじゃないですよ」
私が言うと、さくらくんが首を振る。
「いやー、いきなり〖空気砲〗を足で放って空中で加速しだすんですもん。すぐ、ああ言う事思いついちゃうんですね」
「今思いついたんじゃないんだ。私スキルを手に入れたら、すぐに検証するから」
「あ! そうなんですか――たしかに大事なことですね・・・僕も今度からやろう」
「そうそう、ネット小説だと検証は常識だよー。〖空気砲〗は多分、対人制圧に使うのがいいよ。放つ空気の勢いも変えれるし」
「スウさんは、相変わらず知識の源泉がサブカルなんですねえ・・・・」
「うっ」
❝実にスウらしい❞
❝どんなの読むんだろう❞
「えっと、今ハマってるのは―――」
私は、視聴者と好きなネット小説について語りながら探索を開始した。
もちろんピストル・カービン・ニューゲームを抱えて歩いてる――けどこれ、オートマキナに通用しないしなあ。
しばらく歩くと窓があった。そうして外の景色を見て驚く。
「建物の外の地面が、斜めになってる!」
え、てことはこの建物の重力おかしなことになってるの?
「重力制御装置でしょうか」
「ああ、そっか重力制御装置があるから不思議な事ではないんだね――でも、それにしたって1000年前の装置がまだ稼働してるって凄いな・・・・こんな場所で、一体なんの研究をしていたんだろう」
「もしかして、さっきのオートマキナも暴走してるんじゃなくて、侵入者は排除せよって命令が掛かってるのかも知れませんね」
❝スウたんのアリスウツが!❞
❝あ、背中が破れてる!!❞
「ちょっとやられちゃいまして」
❝尾てい骨が、せくしー❞
❝エッッッッッッ!❞
「えっ?」
私は配信に映る、自分の背中を確認する。
おしりの上の方が丸出しだった。
「ちょ、だめ!! だめ、見ないで!!」
慌てて手でお尻を押さえて廻って、カメラから背中を隠す
リあンさんがまた謝ってくる。
「ウチのせいで、本当にごめん――アリスウツは弁償するから」
「いえいえ、大丈夫です」
「アリスのプレゼントなのに・・・」
するとコハクさんがニヤニヤした。
「リあン弁償するって、それ100万クレジットだよ。日本円にして1000万円だよ。払えるの?」
「え、そんなに高いの!? ぬぉぉぉ・・・・頑張る・・・!」
リあンさんが怯えているので、私は首を振った。
「いえ、本当に大丈夫ですから。修理できるかも知れませんし、それにこの場所に来た目的にパイロットスーツを探して、っていうのも有るんで」
「アリスに貰った奴なのに交換しちゃうの?」
「アリスには以前『良い物があったらそっちを使って下さい、スウさん身を守るためにプレゼントしたのに、このスーツに拘られては本末転倒です』って言われてます『ただし、見た目は変えちゃだめですよ』・・・・とも」
「なるほど。じゃあパイロットスーツがあったら、スウに優先的にということで」
「はいはい」
「僕等はリあンさんを助けられなかった訳ですし、僕等の不覚でも有るわけですからね」
有り難く好意を受けようかな。パイロットスーツ無いと色々困るし。
昔のは、ヨグ・オトーコから返ってきてないし。予備はフーリにあげちゃったしなあ。
「ありがとうございます。でもまあ、本当にパイロットスーツが有るかはまだわからないので」
にしても、お尻をどうしようかな。裁縫セットはあるけど、人間の手で縫えるような素材で出来てないしこのパイロットスーツ、銃弾を抑えるような伸縮性が有るの物をどうやって縫えと。
とりあえず倉庫に入れておいたガムテープで、なんとかしました。
ただ、これが戦う度にめくれるんだ。
その後も何度かオートマキナに遭遇。毎回、64mm機関銃で撃退しました。
「これ、スウいなかったら進めなかったよね」
「私達だけじゃ、探索不可能ですね」
このオートマキナ相手に、刀で勝っちゃうアリスとリッカってやっぱ異常なんだなあ。
今年の日本一と、日本二の高校生剣道家はやっぱ凄いなあと感心した。
リッカなんか最近、スキルや超科学アイテムと組み合せたトンデモ剣術生み出してるし。
曰く「科学剣術素晴らしい。立花放神捨刀流の中興の開祖に、我はなる!」とか息巻いてた。
コハクさんが、不安気に周りを見回す。
「ここの廊下、長いですね」
さくらくんが頷き返した。
「ですね。なんかこの廊下、窓もトビラどころか柱や――突起すらないです」
リあンさんが、前を指差す。
「やっとトビラが見えてきたよ」
ふと、嫌な予感がした。
長い廊下――おかしな重力――突起すら無い――、
〖第六感〗に反応。
――まさか!
「〖飛行〗! 〖念動力〗!」
廊下が光る、重力の向きが変わる。
重力が45度傾いて、廊下が落とし穴みたいになった。
猛然と落下していくリあンさん、コハクさん、さくらくん。
突起がないのでしがみつく場所など無い。このままではさっき通った曲がり角の壁に叩きつけられる。
「え、ちょ」
「きゃあああああああ!!」
「わ、わ、死ぬ!!」
私は〖念動力〗で、3人を掴む。
リあンさん、コハクさん、さくらくんの恐怖に染まっていた顔が、安堵に変わる。
「あ・・・・・・ありがとう、スウ!」
「ありがとうございます、スウさん―――!!」
「たたた・・・助かりましたあ・・・」
3人が荒い息を吐いている。
「ま・・・間に合って良かった・・・」
コメントに、他の3人の配信を見ていたらしいみんなのファンからのお礼が溢れた。
あ、コメント欄がカラフルになった。虹色まで出来てる。
にしても、ここの遺跡・・・・こういうトラップも用意してくるのか。
殺意、かなり高いぞ・・・。
オックスさんや星ノ空さんと行ったゴブリン退治みたいに「またクラメンとお散歩クエスト」くらいに思ってたけど。ここは、本気で命の危険を感じる。
気を引き締めなきゃ。
『侵入者に警告、これ以上の侵入を許可しません。立ち去らない場合、命の保証はありません』
「今、警告なしに初見殺ししようとしてきた癖に」
「初見殺しがバレたら、こっちが警戒を始めるの分かるから、警告してるんでしょうか」
「意地が悪すぎますね・・・殺意高すぎます」
❝大丈夫か、この建物進んで❞
❝すんげえ心配なんだけど❞
でも結構重要な物らしいんだよね、ここで手に入るブラックボックス。
私は〖飛行〗したまま〖念動力〗で扉を押す。
また、嫌な予感がする。
〖第六感〗に反応。
(〖サイコメトリー〗)
この先に何が有るかの記憶を、発見。
記憶に、侵入者撃退用のタレット(設置型の機銃)が置かれているという物があった。
〖念動力〗でゆっくりと開くと――確かにタレットだ。
扉を〖念動力〗と〖超怪力〗で引き剥がす。
縦になって落とし穴のようになった廊下の奥から、つまり頭上から襲い来る銃弾。
扉を盾にして、銃弾を防ぐ。
「〖念動力〗〖超怪力〗」
私はタレットの銃身を〖念動力〗で握るイメージをして、腕を動かす。
そうして銃身をひん曲げると、銃弾が発生させたガスがタレットの内部で膨張、暴発して、タレットが沈黙する。
4つあったタレットを全て爆散させて飛翔。
後ろに庇っている3人が「ちょちょちょ、スウさんがまたなんかしてる!」「大丈夫なの!?」「なんでそんなに躊躇ないんですか!?」って騒ぎだす。
〖サイコメトリー〗で情報を得てるから大丈夫。
「今度は扉じゃ受けきれないな――サイズはギリギリかな――リンクス出てきて」
『よんだでありますか、母上』
私は、バーサスフレーム用の時空倉庫からシールド・ドローンを取り出す。
頭上に見えてきた扉を、162mmキャノンで爆散。
間髪入れず飛んできた単分子ワイヤーを、シールド・ドローンで防ぐ。
「今キラっとしたのなに!? ――立て続けにキラキラキラって光ってたけど!」
「単分子ワイヤーの、ワイヤートラップみたいです」
念動力の腕に掴まれたリあンさんが、周りを見回しているので、彼女に答えた。
すると、さくらくんが小さな悲鳴を挙げた。
「単分子ワイヤーってあれですよね!? 分子一個の分の太さしかないワイヤーだからすごい切れ味を誇るっていう!」
コハクさんまで青ざめる。
「そ、そんなの当たったら真っ二つになっちゃうんじゃ――いえ、細切れになっちゃいません!?」
「ちゃいますよ!」
❝モデレーター(音子):さくらくん。「ちゃいますよ」やと、関西では「違いますよ」って意味になるんやけど、そんな場合ではないな❞
コハクさんが胸の前で腕を組んで祈りだした「サイコロステーキは嫌、サイコロステーキは嫌」って呟いている。
次の扉の向こうは、ちょっと不味いな。
開けたら、〈励起放射〉が飛んでくるらしい。
FLでは、バリアは熱武器も防いでくれるけど。シールドは熱武器を防いでくれない。熱は黒体塗料で吸収するから。
だからシールド・ドローンじゃ防げない。
(勿体ないけど)
とりあえず、予備の〈時空倉庫の鍵〉を開く。
扉を〖念動力〗で開く。
奥から青い輝き。
誰かが叫んだ。
「〈励起放射〉!?」
私は、〈時空倉庫の鍵〉の空間の歪みを前に構える。
青い光が、時空の歪みに吸い込まれていく。
〖念動力〗と〖超怪力〗&〖怪力〗で砲身をぶん殴る。
大爆発が起きて、〈励起放射〉を放っていた砲台が破壊された。
「し、死ぬかと思いました・・・」
「建物の中で〈励起放射〉を撃ってくるとか・・・・なんでウチら生きてるの?」
「え、時空倉庫で〈励起放射〉受け止めたんですか?」
「・・・というかこの建物建てた奴何考えるんですか・・・・殺意高すぎですよ―――」
❝倉庫つええ❞
「でもこれすると、〈時空倉庫の鍵〉の中の球体が壊れて〈時空倉庫の鍵〉自体が壊れちゃうんですよね――この倉庫はもう使えません。〈時空倉庫の鍵〉って、銃弾でも数発受けると壊れちゃうんです。脆いですよね」
❝レアアイテムの〈時空倉庫の鍵〉を大量に持ってるから出来る所業だなあ❞
❝脆くはない❞
私は警戒しつつ通路の奥――というか頭上をみる。
「情報を奪われないようになのか、よっぽど他人に見せられないような研究をしてたのか。まあ黒体放射じゃなくて良かった――帝国時代には黒体は無かったらしいけど・・・・このまま探索を続けて大丈夫かなあ・・・」
流石に危険を感じる。
にしてもこんなに危険な場所を生身で探索するなら、命理ちゃんに付いてきて貰った方が良かったかも・・・。命理ちゃんなら、生身でバーサスフレーム並の戦闘力持ってるし。
出直す?
いや――とりあえず〖サイコメトリー〗を使いながら慎重に進もう。
「ここMoBの研究施設みたいですね」
「やっぱり、重要な場所なんですね」
〖サイコメトリー〗を使って次の扉は問題ないと確認してから、正面の扉を抜けると、重力が戻った。
「とっとと」
「あわ」
「ひっ」
「っと」
みんな〖飛行〗と〖念動力〗で浮いたからなんとも無い。
特に、さくらくんは見事な宙返りを見せた。おっとりした見た目なのに運動神経いいんだなあ。
「皆さん、大丈夫ですか――」
私がみんなを心配していると、第六感に反応があった。
「おかしいな、この先に罠とかはないみたいだけど――〖マッピング〗」
「なにか見えます?」
赤い点が幾つか表示される。
これは、オートマキナなんだろうか?
とにかく、わたしたちの扉(今までよりかなり厳重な物)の向こうにも赤点があって、ゆっくりと――しかし真っすぐこっちに近づいてきている。
サイズや動きやリズムが人だ――人の歩みだ。
「人?」
そう私が呟くと、コハクさんが尋ねてきた。
「人が居るんですか?」
「わかんない、ただオートマキナのような感じじゃない」
赤点が、扉の前まで来た。
ピッという音がして、鋭く空気の抜ける音がした。
ゆっくりと開いていく、両開きの扉。
はたして現れたのは、トレンチコートの男性の老人。
丸いサングラスを掛けている。
髭と髪がライオンのタテガミみたいになってる。
老人がトレンチコートを、ゆっくりと脱ぎ去った。
中から出現したのは、ボディビルダーの世界大会にも出れそうな筋肉。
筋肉が隆起しすぎて、シャツが張り詰めて悲鳴を挙げていそうだ。
老人が、胸ポケットの何かを取る。
(折りたたみ式ナイフ?)
―――違った、櫛だ。
老人はナイフの様な櫛で、撫でこするように髪を整えながら悠然とこちらに歩み寄ってくる。
「どなたですか?」
「俺の名はジャバウォック」
ジャバウォック・・・・ハンプティダンプティと同じく鏡のアリスに出てくるキャラクターだ。どうもハンプティダンプティの仲間臭いぞ。




