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136 宝石を手に入れます

「おーい」

「みなさ~ん」

「ただいま」


 振り返れば、オックスさん、さくらくん、命理ちゃん。


 さらに、反対側から。


「楽しそうな事やってんじゃーん」

「川遊びするなら呼んでほしかったです」

「よーし泳ぐぞー」

「お姉ちゃん、ちゃんとひじきも食べようよ」


 と言いながら、リあンさん、コハクさん、星ノ空さん、メープルちゃんが姿を現した。

 私は首を傾げる。


「え、みんななんで?」


 すると、リあンさんが返してくれた。


「配信を見たんだよん」


 言いながら、リあンさんは服を脱いだ。

 下から出て来た水着は、大人っぽい黒いヤツだった。なんだか体に巻き付くようなデザイン。布面積はビキニより多いのに、なんかエッッッ。

 スレンダーで綺麗な体型が映えている。


「ちょっと食後の運動してくるわ」

「私も」


 コハクさんも服を脱ぐと、大人しめの水着が出てきた。

 可愛いコハクさんらしく、可愛い系のピンクの水着。ただしリッカちゃんと違ってビキニ。大人だ。


「他所の惑星の川を楽しむぞー!」


 いつの間にか脱いだ星ノ空さんの水着は、黄色と青と赤のトリコロールカラー。

 ビキニに見えるんだけど、上下がナナメの帯みたいなので繋がれている。ジャンル的になんだろう。

 なんにしても元気のいい感じのデザイン。


 メープルちゃんも脱いだ。

 水着はリッカに似た白いやつ。ただし、所々にピンクの紐があって更に可愛さを増強している。

 彼女は脱いだけど河には向かわず、私達の方にきてリッカの世話を焼き出した。


 そうして命理ちゃんも脱ごうとしたが、私は嫌な予感がして彼女を呼び寄せた。


「ちょっと命理ちゃんコッチに来て」


 頭の上に疑問符を浮かべて、トテトテと近づいてくる命理ちゃん。

 服を引っ張って中を見ると、水着とか見当たらない。

 危ないところだった・・・。


「アリス・・・前に、命理ちゃんに着せようとした水着ある?」


 命理ちゃんなら、アリスの水着を着れるはずだ。

 胸のサイズがほら、・・・ね。


「あります・・・・けど、まさか―――着てなかったんですか?」

「―――御名答」

「超プロブレム・・・」


 私達が頭を抱えていると、命理ちゃんが首を傾げる。


「当機の体は機械よ、生殖器も再現されていないし、問題ないわ」


❝いやいや❞

❝っぶねえ❞

❝命理ちゃん、怖いって❞

❝でも・・・機械だから裸じゃないもんって感じの、たまにあるけども❞

❝BANが怖いから止めとけ❞


 バーサスフレーム用の〈時空倉庫の鍵〉を開いて、命理ちゃんには中で着替えてもらう。

 やがて出てきた命理ちゃん。グラビア撮影用の水着なのでちょっと際どいけど、水色が健康的にみえるので良し。


 男の子みたいな体型だし、問題もないだろう。

 なにより着てるのが良い。


 ――にしてもアリスも、リッカも、命理ちゃんも、みんな男の子みたいな――ムッ・・・殺気!?


 私が振り向くとアリスが「ジーーー」っと蝉の声でも聴こえてきそうなほど、私を見ていた。


「スウさん。さっきから、わたし達の胸ばかり見ていますが。なにか妙なこと考えてませんか?」

「考えてない考えてない!!」

「そうですか・・・なら良いですが・・・」


 アリスが珍しく陰属性になって、私から離れていく。

 危ないところだった、何かの必殺技でも飛んでくるかと思った。


 私が安堵していると、リッカが私を指さした。


「女の子の胸ばっか、視るスケベだー!」

「何でだよ! 女同士だろ!? ――私が女の子の胸に興奮したり――あっ、するわ・・・・言い訳できないわ」


 私が事実に気づくと、リッカが小さな悲鳴を上げて、胸を隠しながら私から距離を取った。


 私、時々この子を怯えさせてるな。


「よし! 魚を穫るか、さくら」

「はい!」


 さくらくんに言ったオックスさんが、グイッと脱ぐ。

 オックスさんの水着は普通の丈の長い黒いトランクス型で、サイドに金の紐があしらわれてる感じなんだけど――凄いのは体だ、滅茶苦茶鍛えてある。ボディビルダーってほどじゃないけど、見事にガッシリ。

 色黒さや野性的な髪型もあって、ダンディなお父さんって感じ。


 で・・・最後に・・・・問題のさくらくん。

 どうみても、可憐な女の子が男の子の水着を着てるようにしか見えない。

 

(これは犯罪では!?)


 緑と黄色の男性用の水着を着てるんだけど、本人が貧乳の女の子にしか見えないから大変な事になってる。

 まつ毛長いし、垂れ目気味なのがなんかもう女の子女の子してて。


「え、大丈夫なの!? さくらくんの水着姿! これ映して大丈夫!?」


 レースクイーンの格好のほうが、まだ摂理に従ってる感じがするよ!?


❝あれもBANされんか?❞

❝叡智すぎんか・・・?❞

❝まあ、男の子だし――男だよな?❞


 アリスも苦笑い。


「凄いですね、見てはいけないものに見えます。あれで水泳の授業受けたら周りの男子は涙目でしょうね」

「ぜひその授業の光景を、校舎からニヤニヤして見つめたい」


 リッカが鬼畜な事を言っているけど、君の表情筋的にニヤニヤするには頼りなさそう。てか、私はそれどころではない


「本当に男の子なんだよね? 彼。・・・・実は女の子でしたーなんて、楠なんとかさんみたいな事ないよね・・・」

「笑えない冗談です」


『大丈夫ですマイマスター、遺伝子的に彼は間違いなく男性です。少々女性ホルモンが多いようですが』


 少々?


 てか、私より手足が綺麗じゃね? 嫉妬しそう。

 でも綺麗な物を見れて眼福という気持ちもあって、こころが2つ有る状態になる。

 とにかくBANはされなかった。





 やがて、みんなで魚とりや魚釣りになる。

 1000年間人間がやってこなかった川なんで、魚が釣りとかに全く警戒がない。

 自然破壊などもないので生態系も豊かで、入れ食いだった――主にオックスさんと、さくらくんが。――あとリッカが。


 リッカが素手で獲った魚を掲げる、鮎っぽい。

 彼女は何故か、わざわざ私の方を向いて言った。


「『獲ったどー!』」


 私は、リッカに釣果を見せられながら水の中をバシャバシャするだけ。

 私も手で獲ってるから、釣果って言っていいのかわかんないけど。


「わっはっは、スウはボウズかあ」


 リッカは3匹も獲ってる。


 ちなみに命理ちゃんは、早々にオックスさんに魚穫りを止められていた。

 確かに命理ちゃんがあのまま続けちゃうと釣果とか呼べず、漁獲量とかになってしまう。

 バーサスフレームで魚獲ってるようなもんだし。

 私は、逃げていく魚を見ながら呻いた。


「むう・・・」


 なぜか私にだけ、魚の警戒心がやたら強い。

 毒電波でも出ているのだろうか。

 

 私は見つけた魚に近づくが、やっぱり逃げられる。

 ・・・・イラ。


「〖念動力〗」

「あ、ズルい!」


 鱗が光った辺りの水ごと持ち上げると、どでかいシャケみたいなのが獲れた。

 リッカがなんか文句言ってたけど知らない。


「魚獲りにルールなど無用、バーリトゥードなのだ」

「〖水生成〗」

「あ、ズルい!」

「最高の褒め言葉だよ――あれ?」


 するとリッカの指から、水がチョロチョロ出るだけ。


「あっはっは、そりゃそうだよ。いくら水が作れても川の水を操作出来ないなら魚は獲れないじゃん〖念動力〗」

「こ、この〖水生成〗ってあんまり水が操作できない・・・・生み出した水を動かすのがせいぜい・・・温度とか変えられないし・・・川の水に生み出した水が混ざったら操作できなくなるし! スウ、ズルいー!」

「最高の褒め言葉だよ」

「ヌググ!」


 こうして釣果は私7匹、リッカ4匹という結果になった。


「勝った。量もサイズも。さてリリース」

「バーベキューをするぞー」


 オックスさんが、時空倉庫に用意しているらしいキャンプ用のバーベキューを用意しだした。


「え、食べるんですか? ――これ食べられるの? イルさん」

『イエス、マイマスター。日本の物とは異なりますが、ここに捕獲されている魚は地球と同じ種です。――スズキ、アユ、シャケ、マス、イワナなどと、ほぼ同じ遺伝子を持つ魚たちです。――遺伝子のスキャンの結果、この1000年でもそれほど変化はありません。MoBの影響もありません――元々MoBは、人にしか影響を及ぼしません』

「なるほど。まあ、平安時代の魚が現代で食べられないなんて話はないもんね。MoBが悪さしないなら、余計問題ないし。――じゃあお弁当をつまみながらバーベキューかな?」

「そういう事なら、ウチはちょっくら基地のお店でお肉買ってくるわー――」


 リあンさんが立ち上がった。


「スウ、バイク貸して」

「あ、はい」


 私は以前マイルズの勧めで買ったバイクを、バーサスフレーム用の倉庫から取り出す。


 銀河連合で免許を取るのは簡単だった。


 いかついバイクに水着で乗るリあンさんは、カッコ良かった。


 私が乗ると、スッゲー情けない姿にしかならないのに・・・なんでだ。


 リあンさんが颯爽と街の方へ消えていった。


 オックスさんが、見事なナイフさばきで魚を食材にしていく。


「空、〖冷却〗できるか?」

「できるよー?」

「鮎の刺身を作ってみようと思う、ちょっと凍らせて寄生虫を処理してくれないか」

「おっけえ」


 そんなやり取りに、イルさんドローンの声がした。


『この星には人間に寄生する寄生虫はいませんし、魚の寄生虫も新鮮なら内臓にしかいないので、内臓を処理すれば大丈夫ですよ』

「おっ、マジか。本当に人間が住みやすい惑星なんだな。MoBがいなきゃ永住したいくらいだ」

「残念だねえ」


 星ノ空さんも残念そうだった。


 私はオックスさんに尋ねてみる。


「そういえば遺跡の都市は、どうだったんですか?」


 ちなみに、私が敬語になるのはオックスさん以外のコハクさんやリあンさんも。みんなだいぶ年上だし。

 空さんは年齢が近いんで「タメでいいよ」と言われたので、そうしている。

 名前だけ、さん付けのままだけど。


「この惑星の首都だったって所に行ったんだが、やばいMoBだらけだった。倒しても倒しても復活するドミナント・オーガみたいな奴もいたぞ」

「え!?」

「命理が〈真空回帰砲〉で処理してくれなければ、危ないところだった。と言うわけで帰ってきた。流石は41層だった。今度はもうちょっと小さな遺跡を探索してみる」


 一桁の数字が1から3の層は安全って聞いてたけど、流石に41層ともなると、そこまで安全ではないのかあ。


 そこにリあンさんが帰ってくる。


「速!」

「スウのバイク凄いわ、これ排気量8200ccだっけ? 速度制限もないし、ガンガン飛ばせた」

「最高速度を出したんですか・・・? 私、出そうとしたら身体がバイクから投げ出されたんですけど」


 スキルの〖飛行〗が有って助かった。


「無理無理、こんなオフロードで出せる訳ないじゃん」


 すると食いついたのはオックスさんだった。


「おいおい、トマホーク並の排気量じゃねえか。後で乗らせてくれよ」


 トマホーク? 巡航ミサイルに排気量って有ったっけ?

 この後、オックスさんは私のバイクを借りて体験して、自分もバイクを購入することにしたと言っていた。


 リあンさんがバーサスフレームの倉庫にバイクをしまってから出てくると、スマホを取り出した。


「写真取るよー! 集まってー!」


 私達はバーベキューの前で写真を撮ることになった。


 インドア派の私は、今までこんな事できなかった。

 今日の思い出や写真は、宝物になると思う。

 記憶を、胸の宝石箱に大切に仕舞っておこう。

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