110 最強戦力と交戦します
『って、ヒナ! スウがこっちにきよるで!! あかん挟まれる―――!』
『ちいとの奴、あれだけ大口叩いてもう負けたの!?』
❝いやー。2分は、十分もったほうだと思うぞ❞
❝そうとう頑張ってた方だから、褒めたれよwww カワイソスwww❞
❝パーフェクトハイランダーが全員で1分45秒だもんなあ・・・1クラン分以上の活躍した❞
❝まあハイランダーは、・・・スウたんを怒らせたのが不味かった❞
❝ちいとは悪くない、相手が悪かった❞
すると、空飛ぶイカのような機体がヒナの前に出た。
『ヒナさん、音子さん自分が行きます!』
『おお、頼むわダン君! 我がクランの最強戦力の登録者30人』
『君の強さ見せつけて、登録者獲得してきなさい!』
『3年間ずっとプレイヤー配信者やってるのに、なんで登録者数伸びないんでしょうか。ぅぅぅ。――はい! うぉぉ、スウさん視聴者わけてくださーーーい!』
❝正直者がいるwww❞
❝よし、お姉さんこの戦い次第で登録しちゃうぞ♪❞
❝俺はもうしてきたワロwww❞
❝てか、この間のレースで結構いい感じだったのに、なんで登録者増えてないんだwww❞
❝増えたよ、30人に。――なんと30倍❞
❝元は1人かよ!!❞
VRウィンドウを幾つも展開して、空母の周囲を警戒しているオペレーターのリあンが敵機を発見。
「コハク。左舷・七時方向から、光神機の機体4機!」
「予想通り! シールド解除」
「おう、シールド解除」
「左舷全砲門、撃ーーーーーーー!」
焦る光神機の4人。
『な、なんでバレた!?』
『わかりません、一旦退却――あ』
『どした!?』
『アリスさんとリッカさんが、こっちに!』
『さっきまで音子さんとヒナさんと鬼ごっこしてたのに、諦めてこっちに来たか!』
『音子さんとヒナさんの戦闘機も速いからなあ、ロボ限定の2人じゃ追いつけなかったか・・・』
『迎え撃とう、合体だ!』
『OK』
『『『『光神合体!』』』』
ブリキの戦車や機関車、戦闘機、虎みたいな見た目の機体が変形して合体する。
出現するのは巨大メカ、その見た目を喩えるなら「シルクハット、ガスマスク、ドレススカート、ピストン、無数の汽管と歯車を後光のように背負う」まるでスチームパンクにでも出てきそうな見た目の、巨人モールス。
巨人が汽管から蒸気を吹き出しながら空を仰いで、叫ぶ。
『トントンつぅーーー!』
轟音が、気流を乱してアリスとリッカを吹き飛ばした。
空を転がったアリスとリッカが姿勢を制御して、警戒するように剣と刀を構えた。
◆◇◆◇◆
スウに迫るイカの様なバーサスフレーム、カラマリ。
スウは、リッカのリスナーから飛んできた密告に「リッカさんは後でほっぺプニプニの刑に処しておきます」と返しながら〈励起翼〉で、カラマリを一刀のもとに斬り伏せようとする。
しかし、カラマリは急なローリングで回避してしまった。
『その手は食いませんよ』
「あっ、避けられた――そうか君がストリーマーズの秘密兵器ダンくんだね」
『スゥ・イエッスゥ!!』
「新兵、その返事はするなと言ったはずだ!」
❝こいつも特殊な訓練受けてやがるwww❞
❝りスウなー、だったかw❞
「まって、りスウなーってなんですか!? また誰かが知らない言葉を作ってる!」
視聴者と会話をしながらもスウは容赦なく、ダンの背後を取る。
〈汎用バルカン〉で撃ち抜こうとするが、ダンは下降で躱す。
「下降で、重力の力を使って加速した訳だね――」
スウはダンを強者と観て、尋ねながら罠を設置する。
〔行って〕
『うん』
『はい』
ダンが急降下しながら、答える。
『カラマリは、スワローテイルに速力で劣りますからね』
「そしてここから、上昇で減速しつつ旋回して、相手に追い抜かせて背後を取り返す――と」
『バ、バレてますね』
「そうは行かないね」
スウが、スワローテイルを人型にする。
『しま――っ』
スウが、ロボットになり減速し、さらに安定したAIMを手に入れる。
正確無比な〈汎用バルカン〉が、ダンのカラマリのシールドを激しく揺らす。
ダンもカラマリを変形させ人型形態に移行、左手を突き出してバリアを展開。
「その機体、そうかタンクタイプの高速機なんだね。――だけどもうヒーラーはいないよ」
『スウさんが足を止めたのなら、このバリアが尽きるまでで十分! ――貰ったぁ!!』
カラマリから伸びた触手が、スワローテイルの足に絡まる。
「触手!?」
❝スワローさんの触手プレイ、二度目w❞
「イルさん、〈励起剣〉!」
『〈励起剣〉展開。イエス、マイマスター』
スウは、熱の刃で触手を切り裂こうとする。だが、それより早くダンがカラマリの触手を振った。
「きゃああああああ!」
スワローテイルが宙を舞い、地面に叩きつけられ、スウのコックピットが激しく振動した。
❝おい、スウが女の子みたいな悲鳴挙げたぞw❞
❝スウの悲鳴って初めて訊いたかも・・・❞
❝スウのおっぱいが、凄まじい揺れ方してるw❞
❝貫禄と迫力で眼福だわ❞
❝おいおい、女の子が振り回されてるのにちょっとは心配――VRか、これ。じゃあ良いか。ぺーに集中しよう❞
❝VRのぺーへのこだわりが職人クラス❞
❝スウって、触手と相性悪いのかwww❞
「お前ら、あとで憶えてろよ・・・」
❝ご褒美くる?❞
❝スゥ・イエッスゥ!❞
「カメラを洗濯機に入れてやる」
❝止めて下さい!❞
❝三半規管を処刑しないで、振動で吐いちゃう!❞
❝せめて貴女の下着と共に!❞
❝ブラ着けないから揺れちゃうんだよ❞
❝ブラ擦れちゃうのよ❞
❝スポブラなら大丈夫だよ❞
(なるほど、スポブラなら・・・・)なんて気を抜いていると、スワローテイルが再び宙に振り上げられる。
「きゃあああああ!」
『どうですかスウさん、負けを認めれば、この視聴者がドン引きしそうな絵面は止めてあげますよ!』
❝むしろ攻撃してる本人が、止めたそうでワロw❞
❝ダンくん、さいてー❞
❝ちょっと男子ー、スウちゃん鳴いてんじゃんー、良い声でー❞
『熱武器の〈励起剣〉では、黒体付きの触手はなかなか切れません。さあ負けましたと言って下さい』
❝まさかのスウの初黒星か?❞
❝やるじゃんダンくん❞
❝こんなにあっさり負けちゃうのは、なんか悲しいな❞
❝スウも人間だったかー❞
❝弘法も筆の誤り、河童の川流れ、スウの触手プレイ❞
スウの負けに残念そうにする視聴者のコメントが溢れる中、しかしスウ本人は余裕を崩さない。
「別に止めて貰う必要はないよ、止めさせるから。ね、カストール、ポルックス」
『ドリルドローンの名前!?』
スウが先程設置した罠が発動。爆発したような衝撃が、ダンの背後から巻き起こる。
人型形態のカラマリが、大きく仰け反る。
ダンは背後を振り返った。
そこには、2つのドリルドローン。
『お兄ちゃん、注意が足りないよ』
『脇が甘いですね』
ポルックスとカストールのAIが、オープン通信に紛れ込んで、ダンに話しかけてきた。
『いつの間に!』
スウが微笑む。
「さっき君が前を見て逃げてた時」
『――ドッグファイト中に放ってたんですか!!』
「君は強そうだったからね、罠を用意させてもらったよ」
スウが言っている間に、ドリルドローンはダンのシールドを砕いて触手を断ち切る。
それどころかカラマリは左手腕まで破壊されて、バリアが消え去る。
『ヤバイ!!』
「低火力のスワローテイルで、まともにバリアを砕いていたら、音子さんと、ヒナさんに空母を落とされるまで時間稼ぎされるかも知れないから、連続攻撃が可能なドリルドローンに任せたんだよ!」
触手から開放されたスワローテイルが飛行形態に変形して、〈励起翼〉を展開。
急転直下で、カラマリに迫る。
『バレて――』
ダンが言葉を言い切る前に、〈励起翼〉がカラマリを頭上から真っ二つにした。
❝ダンって子、滅茶苦茶強かったな❞
❝さっきの人理樹 ちいとより、さらに強いじゃん❞
❝音子が秘密兵器って言うわけだわ❞
❝秘密(登録者数30人)❞
❝よし、登録してくるわ❞
❝大型新人発見❞
❝新人(3年目)❞
❝・・・古参やん❞
スウは背後を振り返って、空母が見えないことに気づく。
「随分距離を離されてしまったなあ、やるなあダンくん。とりあえず急いでみんなのところへ――」
言ったスウが、コメントに一匹の密告を見つけて、
「アリスのバカァァァァァァ!!」
と叫んだのだった。
◆◇◆◇◆
空母ティンクルスターの後方でスウが、ダンとの戦いを繰り広げていた頃。
空母左舷でもショーグン&ダーリンと、光神機モールスが戦いを繰り広げていた。
アリスがリッカに尋ねる。
『光神機モールスですか――あれはどう考えても特機ですよね』
『だろうね』
『特機相手なら、最大限の警戒で行きますよ』
『わたしは特機を視るのは初めてだし―――わかった』
リッカが、警戒をモールスに向けたまま返した。
『しかも、どう考えてもロストテクノロジーまみれ』
『こっちは普通の機体だよ、どうする?』
『とにかく仕掛けてみましょう』
『承知』
リッカがバリアを盾のように構えて、前に出る。
後ろからアリスが、〈ソード・リボルバー〉を振るう。
衝突の瞬間振動数を上げる高周波ブレードが、モールスに直撃するかに見えた。
しかしモールスの周りに、球体状の膜のような物が現れ、弾いてしまう。
『効かない!?』
『全身を、バリアが覆ってる』
『あんなに大きなバリアを発生させるなんて・・・』
モールスが、ゆたりゆたりと右手を前に出す。
警戒したリッカが、左腕のバリアを構え自分とアリスを守る。
『なにをする気?』
モールスが静かに、指を上下させた。
まるで、モールス信号を送る時のような仕草だ。
『トン』
僅かな仕草で緑の閃光が放たれ、リッカのバリアを襲った。
『なっ!!』
『〈臨界黒体放射〉!?』
たった一撃で、リッカのバリアが砕かれ消滅した。
『〈臨界黒体放射〉じゃない、威力が違いすぎる!! それにあれは短距離攻撃だ』
『お姉ちゃん!』
メープルのシプロフロートからエネルギーを補給されて、リッカのバリアが復活。
『ありがと、メープル!』
リッカは言ったが、再びモールスが指を動かす。
『ツー』
今度は伸びる閃光、遠距離攻撃。
リッカは再びアリスを背後に庇ってバリアを張るけど、再び砕けるバリア。
砕かれたバリアはメープルにすぐさま回復されるが、
『機体性能が違いすぎる』
『合体しましょう、リッカさん!』
特機である超神機モールスとの機体性能差に、愕然となるアリスとリッカだったが、アリスは直ぐ様思考を切り替え合体を提案した。
『うん、そうだね』
『私メインで、合体! ナイト・アリス!』
『合体、ナイト・アリス』
リッカの機体が分離、鎧パーツとなってショーグンを覆う。
ショーグンが騎士のような格好になった。
『『ナイト・アリス、ここに推参!』』
『ねえアリス、これ言うの恥ずかしい』
『だめですよ、エンターテイナーはきちんと決められたセリフを言うのです』
『わたしエンターテイナーじゃないし』
『配信中ですよね』
『ぐ。・・・・でも』
『スウさんみたいな格好させますよ?』
『言います、言わせて下さい』
リッカはスウがさせられている、完全に痴女としか思えない格好をした自分を想像して戦慄して首を振った。
リッカのリスナーが大笑いする。
❝スウが聞いて無くてよかったね、リッカちゃんw❞
❝スウは多分、猛抗議してくるぞw❞
❝あんなの完全に罰ゲームだからなwww❞
❝アリスはリッカにもあの格好させたくて、ウズウズしてるしw❞
❝あ、スウへの鳩やめろwww❞
『鳩とか大丈夫、スウなんか怖くない』
❝グールの時は、あんなにスウを頼りにしてたくせにwww❞
『スウは怖い人じゃないから、怖くない』
❝そういう意味かw❞
❝真理だw❞
『ちなみにアリスは怖い人だから、怖い』
『どういう意味ですか?』
『ほら・・・・』




