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100 オートマキナと戦います

 ともかく私達は、工場まで楽にやって来た。

 しかし私は、暫く不定の狂気に陥って『人間失格』を(そら)で朗読していたらしい。記憶にない。


❝生まれて来てくれてありがとう!❞

❝生きててエライ!❞


 コメントが暖かすぎて、エルニーニョを起こしてる。


「暖かすぎる気候に、スウの発育しすぎ具合に気を揉みます」


❝その心配はいらない・・・❞

❝スウたんは多分、寒すぎて発育不良起こしてるから・・・もうちょい適度に温かさ貰え?❞


 本当に温かいな・・・とか思ってると、放送が聞こえてきた。


『アニマティリオンの皆様、今日も元気に労働に勤しみましょう。AIではない貴方達に仕事があるのは幸せです。幸せを噛み締めて下さい』


 声に驚いたのか、リッカさんが「ひぃ」と言って私の後ろに隠れた。

 私はあたりを見回しながら、眉をひそめる。


「なにこの、某『パラノイア』みたいな放送。そのうち、幸せを感じるのが義務みたいな事を言い出しそう」


 アリスが唸る。


「いかにもディストピアっぽい文言ですねえ」

「というか、アニマノイドじゃなくて、アニマティリオン?」


 私が首を傾げると、命理ちゃんが教えてくれた。


「アニマティリオンは、星団帝国時代のアニマノイドの呼び名」

「星団帝国時代の人類さんかあ」

「ちがうわ、アニマティリオンに人権はなかった」

「え、アニマノイドと同じ人々なんでしょ? ・・・外のグールがそうなら――むしろ、動物の耳とか尻尾がない分、より人間とそっくりな遺伝子なんじゃ」

「人間と全く同じ遺伝子を持つアニマティリオンだけれど、動物の遺伝子を改造して作られた遺伝子だから、人権はなかったわ。銀河連合のアニマノイドは人権を得ているみたいだけれど」

「いやいや、動物の遺伝子を人間とまったく同じ遺伝子にしたら、それは人間じゃん!?」

「今はそういう判断になってるみたいだけれど、当時は人間とは判断されなかったわ」

「じゃあ、外のグールの生前は、当時の判断では〝人間じゃない〟という感じなの? 彼らはMoBに襲われたんでしょ?」

「MoBも、彼らは人間だと判断しなかったのかアニマティリオンは襲わなかったわ。ただ、流石にMoBに戦いを挑んでいる間はそうもいかなかったけれど。ここに居るアニマティリオンは、そんな戦争の余波を受けたのだと思う」

「そんな・・・・そうだ、旧人類が動物の遺伝子を取り込んだりはしなかったの? そしたら襲われなくなるんじゃない?」

「MoBは、動物の遺伝子を取り込んだ人類にも襲いかかってきたわ」

「私には、全部人間に思えるんだけど。訳分からなくなってくる――」


 アリスが、私の背中をぽんぽんと叩いてくる。


「そういう事を考え出すと泥沼に陥りますよ、先に進みましょう」

「うん。でも、とりあえず星団帝国が相変わらずゲスの極みだったってのは分かった」


 この工場は、どうやらガス惑星から気体を採取する工場だったらしく、極太のパイプがあちこちに走っていた。

 無機質な工場の廊下を、無重力の中で跳んでいく。

 そういえば、コンクリートが全然ないなあ。なんて思っていると、急に重力が戻る――。


「え」


 私は金属な床に、尻もちを突いてしまった。

 パイロットスーツのお陰で、痛くもなんとも無いけど。

 命理ちゃんが解説してくれた。


「安全装置が作動したみたい」


 アリスが納得の声を出す。


「なるほど。たしかにずっと重力が切れていたら、住む人も困りますね。軌道にも影響ありそうですし」


 みんなで納得して、進軍を再開。

 所々錆びた金属な廊下を歩いていくと、前方から金属質な靴音と電子音が混じった歩行音が聞こえてきた。

 現れたのはシルバーメタルなボディをした、女性形ヒューマノイド――いや、メカメカしい感じからして、アンドロイドの方かな?

 瞳の虹彩が命理ちゃんとおなじく、歯車みたいに見えた。

 

 アンドロイドは、最初は私達にゆっくり歩み寄っていたけど、急に速度を上げて走り込んでくる。

 明らかに、こっちを攻撃対象と認識している走り。

 しかも滅茶苦茶疾い――一瞬で私の目の前!!

 私はニューゲームを撃つけど、メタルボディに弾かれる。

 ヒューマノイドの腕がわたしに迫る。私は自分の頭が、弾けたトマトになるのを幻視した。

 しかし――


 ―――ガキィ


 リッカさんが凄まじい速さの抜刀術で、アンドロイドのメタリックな腕を刀で受け止めてくれた。


 ヒューマノイドの名前が〝オートマキナ〟と表示された。


 オートマキナとリッカさんが、金属の腕と刀で鍔迫り合いを開始。

 でもリッカさんの力では機械の力を押さえ切れないようで、リッカさんは攻撃を受け流す。

 すると体勢が崩れたオートマキナの顔面に、命理ちゃんの飛び蹴りが叩き込まれた。

 オートマキナは吹き飛んで、奥の壁に激突。

 『ジジジ』という電子音を鳴らして震えながら立ち上がろうとするが、やがて目の光を失って沈黙した。

 命理ちゃんが、ホコリを払う仕草をしながらオートマキナを観察する。


「これ、暴走してるわ。なにか命令系統がおかしくなっているみたい。普通は人間を襲わないのだけれど『侵入者を全て排除しろ』とか、そんな命令に書き換わってそうよ」


 私は、助けてくれた二人にお礼を言う。


「ふ、二人共ありがとう。この先オートマキナは一杯いて、それが全部襲いかかって来そうなのかな」

「そうよ、注意すべきね」

「そ、そっか。うん、わかった」


 私はニューゲームにロイトさんが作ってくれた大型アタッチメントを付けて、ピストル・カービンに変えたニューゲームを構えて進む。


 暫く進むと、大きな広間にやって来た。

 命理ちゃんが呟く。


「気をつけて、居る」


 四方から聞こえてくる、金属的な足音と電子音。

 オートマキナたちは、中二階(ちゅうにかい)積層棚(メザニン)――バルコニーのようにせり出した部分に現れた。

 シルバーメタリックなオートマキナ達8体が、一斉に指鉄砲のポーズを取る。


(まずい。多分、命理ちゃんと同じ武装だ!)


 私は叫ぶ。


「遮蔽物に隠れて!!」


 リッカさんとメープルちゃんは流石で、すぐさま声に反応して部屋の中央に四角形に配置されていた、巨大なガス管のような物に隠れた。

 四角形の内部は、結構な広さがある。


 命理ちゃんは私の言葉に従う必要はないと判断したのか、中二階に飛び乗った。


 私は、反応が遅れているアリスの首根っこを掴んで、床を転がりガス管の後ろに隠れる。

 私達が居た場所を、銃弾が貫く。


「す、すみません。スウさん!」


 私はアリスに返事をしている暇はない。パイプに囲まれているけど、敵は四方だ。私たちを狙える敵がいる。

 とりあえず命理ちゃんが戦い始めた東(仮)からは、距離を取る。

 距離を取ったら撃たれる可能性があるけど、命理ちゃんと戦闘をしているオートマキナはコッチに構う余裕はないだろう。

 私とアリスは、四角形の北西の角に移動。

 これだと南から撃たれる可能性があるけど、カービン・ニューゲームでオートマキナを撃つ。

 オートマキナは、仰け反るだけで破壊できない。

 メープルちゃんも矢を放つが、倒せないでいる。

 でも、とりあえず相手の攻撃は防げている。

 にしてもこのガス管、中身があったら怖い。


「みんな、ヘルメットを被って! 管に猛毒のガスとか入ってたら怖い!」


 あとは可燃性のガスでない事を祈りたいけど――極が青かったし、そこから採取していたとしたら、多分メタンだ。コンロにも使われる程、酸素が有ると燃えるガス。

 ――だとしたら、思いっきり爆発する。


(怖すぎ!)


 だがこの時点では、私の懸念はあまり必要なかった。

 オートマキナはガスタンクを撃つ事はなく、中二階から飛び降りてこちらに向かって来た。

 どうやら危険な行為を避けて、接近戦を挑むつもりらしい。

 オートマキナの行動を見たアリスとリッカさんが、頷き合う。


 オートマキナの1体が、跳び上がって私達に上から襲いかかって来た。

 するとリッカさんが刀で、オートマキナの手刀を受け流した。

 アリスが、「〖重力操作〗」と言って、バランスを崩したオートマキナに向かって、


「面ェェェェェン」


 と気合の声と共に、から縦割りを打ち込む。

 高速振動する蛍丸が、オートマキナの頭の先から胸までめり込んだ。

 オートマキナは、ガクガクと震えながら沈黙。

 さらに上空から、オートマキナ3体が跳び上がって襲いかかってくる。

 しかしリッカさんが、まるで殺陣(たて)のように3本の手刀を受け止め、受け流しながら包囲を抜け出す。

 リッカさんは、追いすがるオートマキナに、合気道の達人がするように翻弄して相手を絡ませ転がしてしまう。


「機械の体って歩くのが苦手みたいだね。人間より転がしやすい」


 リッカさんは、未来の機械の二足歩行に弱点を見出したみたいだった。

 そうして転んだオートマキナの頭に、アリスが目覚めた蛍丸を連続で叩き込む。

 3体のオートマキナが全部、沈黙した。


 だが、私達の背後から悲鳴が聞こえた。

 振り向けば、メープルちゃんが2体のオートマキナに襲われている。

 彼女もオートマキナを転ばせたりしているけど、相手を破壊する決定打がなくて追い詰められたようだ。


(かえで)!!」


 リッカさんが「楓」と叫ぶ。恐らく、メープルちゃんの――本名?


「楓から、離ァれェろォォォオオオォォォ―――ッ!!」


 咆吼したリッカさんが、相手に背中を見せるほど、刀を思い切り引いて、


「胴ォォォォォォォォォォォォォ!!」


 と、ガーディアンに刀を撃ち込んだ。

 恐るべき事に〖重力操作〗もない一撃が、オートマキナの胴体を真っ二つにする。


 私とアリスが驚愕に目を見開いた、その時。

 私の首筋が冷たくなった。


(なにか来る?)


 周囲を見回す。――なんだ・・・・なにが来る!?

 さらに〖第六感〗まで、耳鳴りで警告してくる。

 私は訳も分からず、本能のままに叫んでいた。


「この部屋から離れて!!」


 私はアリスを抱いて、〖念動力〗と〖超怪力〗を使って後方に飛んでいた。

 リッカさんも私の声に反応したのか、メープルちゃんを抱いて奥へ跳ぶ。


 刹那、オートマキナの放った流れ弾がガス管を貫いて、メタンが大爆発を起こした。


100話達成しました!!!

これからも宜しくお願いします!!!

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― 新着の感想 ―
更新お疲れ様です&100話到達おめでとうございます(^_^) やはり銀河連合(の過去)は闇が深いですなぁ…目を反らしたくなる事案だらけですが、連合には一つ一つ向き合って貰わないと宇宙を救えないですか…
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