第7話 あだ名決めるか
昼に出そうと思ってたのに…遅れた。すみません。
10年前までは黒かった髪が、今では茶色がかっている。
10年前までは凹凸のなかった身体が、今では綺麗な曲線を描いている。
10年前までは何もされていなかった頬が、今では少し赤みを帯びている。
「久しぶり、比奈」
俺は比奈の姿を見ながら答えた。
凄い、大人びたなぁ。
恥ずかしくて口には出さないが、素直にそう思っていると比奈は顔を背ける。
「あんまりジロジロ見ないでよ」
「あー、悪い悪い」
皆んなこれを見てどう思っただろうか。側から見れば、こう思っただろう。
『え? この人が本当にコミ力高いの?』と。
これでは人見知りツンデレの可愛いお姉さんである。だが、これは俺にだけ見せてくれる姿。つまり、俺以外には愛想の良い外交官並みのコミュ力で誰とでも仲良くなれるのだ。
俺には自然体で素で接してくれているというのは、とても嬉しい事である。
「そ、それで? 何の用なんですか? 急に家に来るなんて……」
俺が思い耽っていると、比奈がフンッと言う効果音を出しそうな素晴らしいツンデレっぷりを見せる。
「あー、実はこの子の事で話があって来たんだ」
俺はそんな中、隣に居る子供を抱き上げる。
「う?」
「え………その子って……」
その瞬間、比奈の顔が青褪める。
その反応……何か知ってるのか?
「色々あってな、今一緒に
「ま、待って!!」
「……何だよ?」
焦った様子で比奈は俺に掌を突き出すと、比奈ママの方へと素早く移動する。
『ま、ママ!? どういう事!?!?』
『哲平君の子供らしいわよ。今日は比奈の好きな食べ物作ってあげるからね』
『!!!? え、え? やっぱりそうなの!!?』
……聞こえん。何言ってるんだ?
「おとーちゃん、はなしてー! クッキーたべたいー!!」
おぉっと、我慢の限界だったか。これだから子供は大好きだ。俺も一緒にクッキー食べる。
そんな事を思いながらクッキーを口に運んでいると、比奈がこちらを見て顎が外れそうな勢いで口を開いている。美人が台無しだぞ?
「ごめん……あの、今日は用事があって……もう帰ってくれる?」
比奈は有無を言わせずリビングから出て行った……何故だ。さっきまで普段通りみたいな感じだったのに。
「ごめんね、哲平君。また何日か後で来てくれる?」
「あぁ、いえ。用事があるなら仕方ないですよ。また来ます」
俺は、何故か気まずい空気が流れる空間に耐えられず比奈の家を後にした。
取り敢えずコイツはウチで預かるしかないか………態々聞いて回るのも面倒くさいって、あ。
家へと帰ってる途中、俺は重大な事に気づく。
「そう言えばまだ名前聞いてなかったな」
そう。名前である。一緒に生活を共にしていく中で、名前は必ず知っておかなければならないものだ。
子供はルンルンとスキップをしながら俺の前を歩いている。
「名前なんて言うんだ?」
「わたしはわたしだよ?」
質問するが、子供は何を言ってるのか理解出来ないと言わんばかりに首を傾げる。何度も聞くが、返ってくるのは同じ言葉のみ。
「えーっと…ユアネーム?」
「ゆあねーむ? ユアネムユアネム!!」
風貌は外人っぽいから英語で話しても関係なし。
どうしたもんか。名前ないと少し不便な所あるよな。名前がないと『おい!』とか『お前』とかで言わないといけないから…周りの印象は悪いだろう。
これからカフェを経営する者、何時も綺麗な言葉遣いをしないとな。名前を教えてくれないなら……あだ名としてこっちが勝手に呼んでも良さそうではあるな。
あだ名…あだ名……
俺は前にいる子供をボーッと見ながら考える。そして、先程からフワフワと上下する子供の2つの緑色のお団子を見て呟く。
「えだまめ……"メマ"とか?」
いや、流石に俺が名前を付けるのは…ネーミングセンスがないんだって。髪型が枝豆に見えて、"まめ"を反対にして"メマ"にしたなんて……テキトー過ぎる。
「メマ…メマ! いい!!」
えぇ……いいんだ。なら良いけど。
「メマ、あまいものたべたーい!!」
「甘いものか……ならカフェで作って食べるか、"メマ"」
「たべるぅーっ!!」
『ジジッ……として認定……記録します』
ん? なんか今変な声が………いや、気のせいか。
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