第69話 エースさんって働き過ぎ……え?
翌日から、アスレチック神社の一部では改装工事が行われていた。指導者さんの指導の元、『桜花』の弟子達が率先してやってくれている。
まぁ、改装工事と言ってもちょっとしたお化け屋敷をやるだけで、お年を取った方も来る事を考えて、そこまで本格的な物はやらないという方針になったのだが。
材料は段ボールとか絵の具、こんにゃくなどと言った学祭級の物だ。
「いや〜……だけど、これじゃあなぁ?」
目の前には、常連客の他にチラホラとしかお客さんが来ていないKIRO。
夏祭りで宣伝した事を考えれば、KIROの客足はそこまで増えていないのが現状だった。
んー、やっぱり異世界の扉の影響なのかなぁ。一先ず、枝豆を『桜花』に卸してるから何とか維持出来ては居るけどこのままじゃ……あ"ぁーーッ!!?
「エースさん……アンタだけが俺の味方だよ」
ぷる。
俺はエースさんと共に、店の裏側の方に向かっていた。もうなんか、あっち側にいれば店の事を考えてしまう……まぁ所謂、現実逃避というやつである。
「よし! 俺とゆっくりしながら、これからのK政治について話し合おうぜ!」
ぷるっ!
エースさんは優しさの塊である。俺が何を提案しているのか分からないのに、元気よく返事をしてくれる。こんなスライムが居ても良いのか。
俺達は空いている土地にドカッと座り込んだ。
「あー……良い気持ちだー……」
ぷるーん……。
すげー……久々だ。こうやって寝転がるのもこの土地の草刈りをした時以来か?
エースさんもお客さんが居ないからか、凄いだらけ切っている。
「エースさんって、お客さんが居ない時基本何してるんだ?」
ふと、世間話をしようと俺はエースさんへと話し掛けると、エースさんは「良くぞ聞いてくれました!」と言わんばかりに大きく飛び跳ねた。
ぷる! ぷるるっ!! ぷる、ぷる、ぷぷる!!
「え! 匂いの研究をしてる!? マジで!?」
ぷる! ぷるるっ!!ぷっ、ぷるるっ!!
「毎日、10時間ぐらいは研究してるって!? エースさんって意外に研究熱心なんだな~、俺とは大違いだ…………」
ぷる……ぷるる………。
「……そうだよな。俺には俺の出来る事があるよな。それを頑張れば良いんだよな!」
ぷるっ、ぷるるるっ。
「え? 分体から街の情報収集もやってるって?」
ぷるっ! ぷっ、ぷるる!
「ほ、ほう? でも、それはもうちょっと情報が集まってからと……」
エースさんの分体って……祭りの時にメマがエースさんの体を千切ってたヤツだよな。まさかそれが情報収集を行なっているとは……エースさんって働き過ぎなんじゃないか? と少し疑問に思いながらも、俺はエースさんが最近生み出した匂いをお披露目したいと言って、俺は上体を起こす。
ぷるっ!!
エースさんが大きく震えた後、エースさんの身体から紫色の気体が放たれる。
な、なんか毒々しい……しかもあんまり良い匂いでもないな、ちょっと鼻の奥がツーンとする様な匂いだ。
「エースさん、これって何の匂いなんだ?」
ぷるっ?
「え……僕達魔物が好きそうな匂いかな? って……………」
ガサッ
「っおぉ!?」
茂みの方から音がして、俺は思わずファイティングポーズを取った。
つ、つつつまり? この匂いを嗅ぎ付けて魔物が来ちゃったりとか? いやー、まさかね? だって異世界の扉あんなにちっちゃいんだもんね?
ガサガサガサッ
「っお!! って………な、何だよ」
ニャ〜ッ
そこから現れたのは青がかった黒色の毛色をした猫だった。種で言えば、"ロシアンブルー"みたいな感じだ。
まぁ、こんな田舎にそんなのいる訳がないから違うとは思うけど……。
ニャ〜
寄ってくる猫に、俺は顎の下を掻いてやる。
〜〜ッ!
猫は気持ち良さそうに目を細めている。
……うん。なんかすげー癒されるな。いやはや、エースさんが魔物の好きそうな匂い、とか言うからビビったけど、ただの猫かよ。そう言えば防犯センサーとかこの前付けたから、もし魔物が入って来ても分かる様にしてたんだわ。
「……ん?」
ふと。ふとだが、俺は視界の隅に入ったそれを見て、動きを止めた。
「……猫って、尻尾2本もなくね?」
「面白い!」
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