1 セシリア・バートルの好きな人
わたくし、セシリア・バートルには物心ついた頃からずっと片想いをしている人がいる。
物心つく頃にはすでにその人のことが好きだった。
いつも美味しいお菓子を持ってきてくれて、日が傾くまで一緒に遊んでくれて、わたくしが転んで泣いていたら優しく背中をなでてくれるような人で――大きくなったら結婚したいと本気で思っていた。
わたくしはその人が遊びに来てくれるのを心待ちにして、会えない日は次に会える日を指折り数えながら眠りについた。
成長と共に消えてしまった記憶の中でさえ、きっとその人のことが好きだったんだと思う。
思い返すと、わたくしの中のその人の記憶はいつも夕焼けから始まる。
どういう状況かは忘れてしまったけれど、夕焼けに照らされた彼の慈しむような優しい笑顔に、幼いながらもときめいたのを今でも覚えている。
それが、わたくしの中に残る『その人』との一番古い記憶。
わたくしの両親の古くからのお友達で、艶やかな黒髪に綺麗な黒い瞳が印象的な人。
わたくしの大好きで、大好きで、大大大大好きな人――――ブライト・レイ様。
そんな二十歳も年上の彼のことを、わたくしは十七歳になった今でも想い続けている。