21話 各国の戦力
王都を出たが、まだ勇王国の領土内だ。これから、【カザリの地上都市】へ向かう。名前を考えたやつは誰なのか知らないが、由来を知ってる者からすれば、馬鹿じゃねぇかって思うだろう。地上都市は神界と人間界を繋ぐ門が置いてある。見た目は確かに都市なのだが、そこに住んでいる者はいないため「カザリ(飾り)」だ。受付はいるが、住んでいるわけではない。交代制だったはずだ。
「エルナさん……飛んで行かない?」
「そうですね……飛んで……行きません」
「えぇ!?飛んで行く流れじゃなかった?今の」
「メナス様は魔神戦で短時間に大量の魔力を消費しています。回復したとはいえ、ここから地上都市まではかなり距離があるのでまた枯渇すればこの体をメンテナンスしなければならなくなります」
「休憩しながら行けば良くない?」
「……では、本当のことを言いましょうか。人間界の食材を集めて行きたいのです。肉に関してはメナス様が買取に出し切れなかった物があります。ですが、そうではなくシスティーに紅茶、ステラにチョコ、ローグヴィルスにチーズを頼まれています。聖王国に合流するときに買っておくようにと」
「自分で買えよ……」
「システィーはともかく、ステラとローグヴィルスの分は人間界にしか無い種類の物なので。人間界に来ているのは私だけですからそれくらいは頼まれてもいいかなと思いまして。この先の皇国に売っていますのでそこまでは歩きか、馬車を使いましょう」
「馬車にしようか。『召喚・バトルホース』」
「王国」を使えるのは王の異能を持つ者が統治する国だけだ。それ以外の国は「帝国」「皇国」「公国」または名前だけの国だ。システィーの分の紅茶は王都で買ったのかな?
「馬車は……」
「メナス様が騎士達に貸していた馬車を回収済みですのでそれを使いましょう」
するとエルナさんはスキルの方の『アイテムボックス』から馬車を出してバトルホースと繋げた。俺が使っているのは《空間》の異能によるアイテムボックスだ。これは容量が無限にある。だが、スキルの方は熟練度によって容量が変わる。熟練度に限界は無いので、使えば使うほど容量が増えることになる。魔法にも熟練度があるが、空間魔法の『アイテムボックス』の場合は術者の総魔力量で決まる。俺が作った馬車は8人乗りなため、まぁまぁデカい。このサイズの馬車を入れるなら熟練度が500は必要だ。熟練度というのは一度使えば数値が2増える。この数値というのは《解析》の異能か《知恵》の異能の解析能力で見ることができる。話を戻すが、エルナさんは最低でも250回も『アイテムボックス』を使っていることになる。普段、《空間》自体あまり使わない俺からすれば驚きである。だが、長命種が250回で収まるわけもない。買い物に出ることの多いエルナさんのことだ、王城すらも入る量になってる可能性がある。
「御者台に何か乗せた方がいいかな?」
「乗せなくていいでしょう。皇国に着けば降りますしら盗賊が出てきたらそのまま轢き殺しましょう」
「そうだね」
慈悲もない発言に聞こえると思うが、聖王国の者からすれば普通である。真面目に働きもせずに盗賊などということに手を出したクズ共に慈悲など与えるつもりは無い。戦う力が少しでもあるなら、冒険者になればいいのだ。犯罪に手を染めた時点で生かしておくつもりはない。女性か無性ばかりの聖王国民は盗賊やゴブリンを見つければ必ず殺す。性犯罪者は死ぬべきなのだ。俺は男だが、民の敵は俺の敵だ。
「みんな(守護者)って200年間でどれくらい強くなったの?」
「男勢のゼラヌス、ベリアル、ルカイン、ムラクモは中位魔神までなら1人で倒せるほどでしょうか。守護者でありながら、王を守れなかったから見つけたら、今度こそ守りきれる力が欲しいと。ステラ、ナツメ、イニステア、ローグヴィルスは"異能の進化"まで至っています。ヒュリンゲルは今はどうか分かりませんが、最後に見たときはもう少しで進化する、くらいまで達していました。あの5人は相性次第では3対1くらいなら上位魔神を倒せるかもしれませんね。レインとミツキと私は中位魔神と同等くらいでしょうか」
「もしかしなくても、今の俺より全員強いかな?」
「メナス様は前衛ではないので。《聖王》は封印中、《憤怒》は今すぐ使えるわけではないですから。戦闘に置いては実質異能無しのメナス様には負けませんよ。《聖王》があったとしても、1対1であれば全員負けないでしょう」
「ほう……他の王国との戦力バランス大丈夫なの?」
「200年の間、力を付けたのは我々だけではありません。各国の王の異能を持つ7人。そしてその国の幹部は皆、低位魔神以上の力を得ています。中位以上に有効打を与えられるのは幹部達の中でもひと握りでしょう」
「異能の進化ってさ、"極化"のことだよね?200年で到達できるものなの?当時、極化した異能を持ってたのはクルトゥヴァールとゼファーとシェニフィアの"始源"達だけだよね?」
「あの三方も協力していましたから……メナス様以外の王は全員到達しています。男勢は頑張っていますが、まだ時間がかかりそうです。王以外だと、聖王国は先程の4人、冥王国は3人、魔王国も3人、神王国が5人、精霊王国が7人、竜王国が5人、勇王国が1人ですね。"始源"がいる国の者はさすがに多いですね」
「怒らせたら死ねますね、ボク」
「怒らせないように気をつけてください。まぁ、メナス様のことは守護者が守ります。それに"始源"の三方もメナス様のことをよく"見て"らっしゃるので万が一は起こらないでしょう」
「ん?見てるってどういう……」
「見えてきましたよ」
誤魔化された気がしなくもないが、皇国 カルターンに着いた。
半ば失踪しかけていますが、
ストックが切れる前に再開します。