14話 封印の謎
「報酬の受け渡しはもう済んだはずでしょ?」
「何を話していたの?」
「我々の長年の探し人が見つかったので、つい話し込んでしまいました」
「探し人って……聖王様が見つかったの!?」
!?
「ギルドマスターはセミラス=エルナさんって知ってたの?」
「私だけが協力者無しに探してるわけないでしょう?」
「エルナが突然受付嬢にして欲しいって言ってきたときは驚いたわ……メナス君って同じ名前の人じゃなくて本人だったのね……以前は話したことはありませんでしたが、私は勇王国 王都ギルドマスター 兼 勇王国魔法士団団長 マーリン・メスポリアでございます。当時はどこかに飛ばされたと聞いて驚きましたが、ご無事で何よりです」
「ほぇ〜……メスポリアって姓のことだったのか……姓は聞いたことなかったな」
「なぜマーリンがギルドマスターをやってるか、については聞かないんですね」
「んー……隠居しようとしたら止められた、とかじゃないのか?」
「隠居……まぁ隠居であってますね……冒険者になって旅をしようとしたら、陛下に「ならギルドマスターにしてやる」と強引にギルドマスターにされたのです。ギルドマスターも冒険者ではありますが、また仕事の日々です……」
「陛下ってランゲルツ殿か?」
「マクファーレン王です」
「あー……ジジイの方か」
「あの方をそんな風に呼ぶのは、さすが聖王様ですね。他の王……冥王様と竜王様も聖王様と同じ呼び方ですが、なぜ守護者達は注意しないのか……」
「昔は注意していたのですよ。呼び方を直さないので諦めました」
「ジジイは人間だから死んじまったんだろうが、他の王は全員生きてるのか?」
「はい、他の方は無限に等しい命ですから」
「マクファーレン王も亡くなりはしましたが、転生を繰り返してまだ生きていますよ。今は冥王国にて、ムラクモと修行しているそうです」
「転生者同士、意気投合したのかな」
「どちらも武人兼戦闘狂ですので、強き者と高め合いたいのでしょう」
「生きてんのか〜……」
「嬉しいですか?」
「別に……」
「ニヤついてますよ」
「……」
「2人はこれからどうするおつもりで?」
「メナス様は人間界を楽しんでから戻るそうなので、私も勇王国にいる間はサポートを。勇王国を出るときにはついて行きます」
「しばらくはこの国にいるってこと?」
「そうだな、冒険者ランクがどこまで上げられるか試したいし」
「ふふふ。聖王であることを公表すればすぐにSSランクになりますよ」
「今の俺は《聖王》の異能を使えないからな……難しいだろ」
「は?使えない?」
「水晶ある?情報を全部開示するから見てみな」
「持ってきます」
エルナさんはすぐに戻ってきた。
「こちらです」
「じゃあ、はい」
「「……」」
「封印……ですか」
「なんでこうなってるか分からないんだけど、使えなくなってたんだよね。気づいたら」
「封印……異能を封印できる者と言えば、冥王国のソルオーンしか……」
「あー……ソルオーンか……確かにあいつなら、というかあいつとノアの力なら王の異能すら封印できそうだな……」
「王の異能」とは3〜5つの能力を持つ異能だ。ノアの《冥王》には「融合」「貸与」「絆」がある。他にもあるのかもしれないが、俺は知らない。「貸与」と「絆」は全ての王の異能が持っている能力だ。その2つに加えて固有能力があるため、最低3つの能力となる。「融合」を使えばソルオーンが持つ《知恵》の異能を「絆」と融合させることで配下の持つ異能をノアに集約し、異能同士の融合、強化が可能となる、らしい。何らかの異能とソルオーンが持つ『封印』を融合させ、強化した異能で俺《聖王》を封印したのだろう。
「なぜそんなことをしたのかは分からないが……」
「理由については本人に聞けば良いでしょう」
「そうだな……現状、俺は困ってない。と言ったらステラ達に怒られそうだが、スキルと《空間》《憤怒》があればある程度のことはできるからな」
「そうですね、いざとなれば魔神に備えて鍛えた我ら守護者の力がありますから」
「話は変わるんだけど、スタンピードの件。聖王様が冒険者としてこの国で過ごすなら、協力してくださるのですか?」
「あぁ、そのつもりだ。《聖王》の異能が無い状態で、俺の力が200年後の世界にどれだけ通用するのか気になるしな」
「そうですかそうですか!それはありがたいですね!あなた様の魔法があれば冒険者達の被害は減りそうですね!」
「マーリン1人でも何とかなるんじゃないか?魔法士団の団長なんだろ?」
「「……はぁ」」
「?」
「ヒュリンゲルも言っていましたが、魔法特化の我々よりも物理特化の聖王様の方が魔法の力が強い……にも拘わらず、我々の方が「魔法が上手いんじゃないか?」と言われるのは腹が立ちますね……」
「え」
「メナス様の魔法力は理不尽だと思いますよ。あなたに魔法で勝てるのは神王様と精霊王様だけでしょう」
「あいつらは魔法特化な上に王の異能で底上げされてるからだろ」
「あなたは物理特化なのですが。本来、魔法は苦手なはずなのですよ。全ての世界でトップクラスの魔法力を持つ物理特化なんて、理不尽以外の何ものでもないでしょう」
「ちゃんと教育して欲しいものね、私とヒュリンゲルは腹が立つ程度で済むけど。神王国と精霊王国の魔法士団長の前で言えば、激怒されるでしょうね」
「今後は気をつけるよ……」
「そうしてください」
物理特化が魔法特化に魔法で勝つのは怒られることだったのね。そんなことを思っていたら、突然ドアが開いた。
「ギルドマスター!!森に異変が!!!低ランクの魔物たちが森の外へ大量に出てきました!!」
次回をお楽しみに!
午後よりも午前の方が安定した時間に投稿できるので7時です。何度も変更してすいません