12話 寝言は寝て言え
ランクアップしてから、まだ宿を探さずにギルドにいるのだが。解体が終わってないらしい。今日中に終わるとのことだからこうしてギルド内をぶらついてる。
「Bランクの依頼は……メタルリザード、白魔草採取、竜の糞、盗賊討伐……」
「見つけたぞ!おい!」
「メタルリザードは楽しそうだな。白魔草って魔力回復薬だっけ?竜の糞は何に使うんだろ……盗賊……」
「おい!こっちを向け!無視をするな!」
揉め事か?外でやれよ、うるせぇな。盗賊って殺していいんかな。
「無視すんなって言ってんだろ!!」
何者かに肩を掴まれた。呼んでいたのは俺だったらしい。
「なんだ?」
「防具を弁償しろ!」
「誰だお前、冒険者なら自分の防具の手入れは自分の金でやれよ」
「誰だって忘れたのかぁ!?」
「お前のことなんて知らん。あ、盗賊討伐ってお前みたいなやつを討伐すればいいだよな?」
「と、盗賊だと!?ふざけるな!お前のミミックハウスに攻撃された冒険者だ!!」
「他人のテントに攻撃しかけて防衛機能で反撃された間抜けな冒険者か」
「なにぃ!?俺をバカにするのもいい加減にしろ!」
「はいはい、それで何の用ですか〜?」
「だから!防具を弁償しろって言ってんだろ!!」
「弁償?じゃあ、俺のミミックハウスに攻撃してきたお前たちのせいで大切な召喚獣が傷ついたんだが、弁償してくれるんだよな?」
「はぁ!?弁償するのはてめぇだろ!」
「はぁ……わかったわかった。ギルド職員に報告しようか。俺は森でテントの中で寝ていたら攻撃された。お前はテントの防衛機能の反撃により防具を損傷した。どっちが悪いかなんて猿でもわかるが、猿以下の盗賊さんには理解できないようだからな。冒険者同士の問題はギルド職員に仲裁に入ってもらおうじゃないか」
「え……それは、これは俺とお前の問題だろ!職員は関係ねぇ!」
「まぁお前が職員は関係ないと思ってもな?お前が俺のテント(ミミックハウス)に攻撃したのは事実なんだ。戦闘中に魔法や矢が飛んできた場合とは訳が違う。お前の相手を殺すという意思の元、俺は攻撃を受けたわけだ」
「俺が殺そうとしたのはお前じゃなくてミミック……」
「あ?なんか言ったか?盗賊」
「盗賊じゃねぇ!俺は冒険者だ!!」
「冒険者は他人のテントに攻撃しねぇって言ってんだよ!職員さーーん?!この盗賊を何とかしてくださいよ!森で寝てたら攻撃してきたんですよ!!」
「おい!やめろ!俺はミミックに攻撃したんだ!!」
「はい、自白ありがとう。ミミックハウスの中に俺がいることくらい、探知魔法を使えばすぐに分かったはずだ」
ミミックハウスを普通の家に見えるようにしていなかったのは俺のミスだが、言わなければバレないだろう。いや?森の中にいきなり家が現れたら怪しいからな、結局侵入しようとして防衛機能で……。やっぱ俺は悪くねぇな。
「メナス様、話は聞こえてましたが。夜の森でミミックハウスを召喚したのですか?」
「え?はい」
「なぜ?」
「え?」
「夜の森でミミックハウスを見つければ、敵だと思ってしまうのは仕方のないことでは?」
「そうだそうだ!仕方なかったんだ!」
「黙りなさい」
「ッ!?」
「確かに敵と認識した所までは仕方のないことですが、メナス様の言う通り探知魔法を使っていれば中に人がいることくらいわかったでしょう?」
「それは……」
「ふっ」
「メナス様?あなたは創造魔法で家を創る事ができたのではないですか?普通の人であれば魔力量の問題で創れないかもしれません。"普通の人"であれば、ですが。あのレベルの馬車を2台創り、ペガサスを召喚。馬車に浮遊魔法を付与した状態を維持。その後も平気な顔してギルドへ行き、宿には行かず森へ行く。普通ではない魔力量のメナス様なら創造魔法、使えましたよね?」
「うっ」
「はぁ……今回は両者に非がありましたが、両者共に人的被害は出ませんでしたので。この件はこれで終わりにしましょう。ビルさん、あなたはメナス様に訴えられれば負けます。メナス様、あなたは大して被害は出ていないでしょう」
「まぁ、俺はこれで終わりなら面倒にならないからいいけど」
「防具……」
「メナス様、解体と精算が終了致しました」
「あー、分かりました」
「ではまた別室へ」
ところでなんで俺に対しては「様」なのに、あの盗賊は「さん」。なんでだ?
「何度も待たせて申し訳ありませんが、こちらでお待ちを」
「はい」
「お待たせいたしました。オークジェネラル2体、オークロード1体、オーガ1体、レッドボア15体。オークジェネラルが1体につき銀貨8枚、オークロードが金貨4枚と銀貨8枚、オーガが金貨3枚、レッドボアが1体につき銀貨1枚。
合計、金貨10枚と銀貨9枚です。お確かめください」
「大丈夫ですね」
「それでは今日はお帰りになられてください。この時間ですし」
「そうですね……1つ質問してもいいですか?」
「なんでしょう?」
「セミラスさんが他の冒険者に対しては「さん」って言って、俺に対しては「様」なのは何か理由があるんですか?」
「ふふ」
なんだ?なんか変なこと言ったか?
「それはですね、私が聖王国出身だからですよ。聖王 メナス・ハルファール様」
次回をお楽しみに!