二者択一
★☆★
10分後。
教室に戻ってきた西条はもうすっかりいつも通りの西条だった。
そして、授業が終わると直ぐに教壇を後にしようとする須藤先生の所に行き、律儀に頭を下げて謝っていた。
先生はというと、クラス一の優等生のやらかしに対し、怒ることは無く、寧ろ心配そうに、体調を気遣う言葉を投げかけていた。
「どうしたんだ? 昨日あんまり寝なかったんか?」
「……すいません」
「いやいやいや。別に俺は怒ってないからな? そりゃ365日生きていたら今日みたいな日もある。だからな、あんまりしんどいなら無理しないで言ってな?」
「ありがとうございます。でも、もう大丈夫ですから」
「そうか? なら、いいんだけどな」
「はい」
(……ああいう根回し?っていうのができるから西条は完璧って言われるのかもなぁ……)
俺が同じことをしても、須藤先生の雷がおまけにもう一つ落ちるだけなのは想像に難くない。
そんな事を考えていると、先生との話を終え席に戻ってきた西条と一瞬目が合った。
――が、反射的に目を逸らしてしまった。
俺が。
そう俺が。
……え? なんで?
自分の行動に俺自身が驚いていると、
ドンッ
「うわっ! な、何だよ!?」
見ると西条が俺の机を両手で軽く叩いた。
「何だよ、じゃないわよ。ミツキ、今日放課後付き合って」