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本気でそう思ってるの?



「ルミ……お願いだからさっきの動画消して」


――空き教室。


西条は、教室扉を閉めるなり、工藤に詰め寄った。


その剣幕は凄まじく、思わず気圧された工藤。


だが、気後れしがらも、持っていたスマホを奪われないように、今一度握り締めて、


「……アハッ、アハハ。何マジになってるの? 言われなくてもちゃんと消すよ。西条さんがちゃんと私に協力してくれたらだけど」


「……文化祭の事言ってるの?」


「そうだよ~」


ぎろりと、より一段と睨みを効かせてきた西条の目線と合わないように、視線を横に反らして、口笛を吹く工藤。


「動画」を消す代わりに、文化祭に参加する。


工藤の交換条件だが、西条はそれでも渋い顔をしている。


だが、それでも少しは迷っている様子はある。


工藤もそれを見て、もう少し押せばいけると踏んだのか、


「たった一日だけだって。ね? 準備とかそういった雑用はやらなくていいからさ~」


「……」


「——参加してくれないなら、この動画皆に見せちゃうけどいいのかなぁ?」


おどけた様に言う工藤だが、西条にとってはそれは何よりも恐れていたことだった。


動揺したのか、肩をビクッと震わせて、


「……止めて」


「だったら出てよ~。私、全然無理難題言っているって思わないんだけど?」


——西条は、両者を天秤にかけた結果、


「……分かったわよ。出ればいいんでしょ。出れば」


渋々ながらも承諾した。


「さっすがぁ! ありがとね! 西条さん、愛している!」


予定通りとは言え、事が上手く運んで喜ぶ工藤。


嬉しさのあまり、西条にハグを求めて、近寄ろうとしたが、西条は軽くいなして、


「……人の事、脅しておいて何言ってるんだか。言っておくけど私何にもするつもりないから」


「うん。だからそれでいいってば」


「あ……そ」


それって参加する意味あるのかしら、と西条は心の中で疑問に思ったが、工藤からすれば大いにある。


文化祭での成功を確信した工藤は鼻歌交じりに、「じゃ、よろしくね~」と西条の肩をポンポンと叩いて、教室を出て行こうとした。


だが、途中で思い出したように、


「あ、そういえば。西条さん。立花に告られて、断ったんだって?」


「………それが何?」


むしゃくしゃしている西条にとって、その話題は火に油を注ぐようなものだが、工藤は構わずに思った事を口に出す。


「言っちゃ悪いかもしれないけど、アタシから見れば二人はお似合いだと思ったんだけどね~。立花はそうだし、西条さんもいつも立花の事目で追ってたじゃん。好きなんでしょ? 立花が」


「……ルミには関係ないじゃん」


不貞腐れた様に、顔を背ける西条。


その態度に工藤は、苦言を呈する様に、


「あのね、西条さん。西条さんはいつまでも立花が待ってくれると思っているのかもしれないけど、それ勘違いだからね?」


「……勘違い?」


「知らないのかもしれないけれど、結構立花って人気あるよ? アイツって結構顔もいいし、性格も……ちょっと女たらしな所はあるけど良いし」


だが、西条は鼻で笑うように、


「嘘よ。今までミツキが誰かに告白されたりしたの私見たことないもの」


「……本気でそう思ってるの?」


「うん」


真顔で答える西条。


工藤は「こりゃダメだ」とどこか遠い所を見ながら、


「……バカねぇ。今まで立花がそうだったのは、皆相手が西()()()()だって知ってたからよ。だから、皆手を引いていたのよ?」


「……………………へ。じゃあ、あの弁当ってもしかして……」


言われてみれば思い当たる節は既にある。


鳩が豆鉄砲を食ったように目が点になる西条。


工藤も、「どうやら手遅れみたいね」と前置きしたうえで、


「立花はモテるわよ。フリーになった今、もう誰かに喰われててもおかしくないわ」


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― 新着の感想 ―
[一言] 西条さんこれで危機感を覚えたかな? っていうか告白を断ったのに待っててくれるなんて本当に勘違いですね。さて、これからどうなるのかな? 主人公はまだ未練ありそうだし、今なら可能性は残ってそうだ…
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