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詰んだ


(どうしてこうなった……?)


5限目現国。


お昼過ぎという時間帯と、御年58で定年間際である白川先生の抑揚のない声が合わさって、いつもの俺ならとっくに寝ている。


だけど、今は「寝ろ」って言われたって寝れない。


その原因は西条にある。


☆★☆


「――その赤い弁当何?」


「へ……?」


「今日は弁当持ってきてなかったんでしょ? 何であるの? しかも、その弁当、私見たことないんだけど」


「……」


クルリと身体を180度、首だけじゃなくて身体ごと俺の方に向き直り、椅子にまたがり、弁当と俺を交互に視線を行き来して、聞いて来る西条。


「何で、黙ってるの? はやく言いなさいよ」


西条の怒りのスイッチが入った。


こうなると、言い訳せずに素直に答えた方がまだマシだという事を俺は長年の経験で分かっている。


だから、怖くても、


「い、いやこれ……俺のじゃないんだ」


「……は?」


「いッ――」


正直に答えた瞬間、顔色一つ変えずに、俺は西条に足を思いっきり蹴られた。


これでもマシな(ルート)を辿ったはずだ。……多分、な。


――視線が俺じゃなくて弁当に釘付けになっている西条。


「どういうこと? ……ツイに盗んだの?」


「ど、どうしてそーなるんだよ! 貰ったんだよ」


「誰に?」


「それは……」


言うべきか、言わないべきか。


皇の今後の事を考えれば、言わない方が良いに決まってる。


でも、言わないと……。


俺が答えに迷っていると、


「で、食べるのそれ?」


西条が話を変えてくれたので、助かった。


「そ、そりゃ食べるわ……作って貰ったんだから」


昼ごはんこれ食べなきゃ、自動的に抜きになるしな。


有難く貰うつもり……だけど、何だこの雰囲気は。


俺がそう答えた瞬間、西条からさらに「負」のオーラが噴出しているような……。


そんな事を思っていると、突然さっきまでは無の表情だった西条が、突然この空気を打ち破るように、今日初めてニコっと笑って(怖いんだが)、


「その唐揚げ美味しそうね」


「さ、西条……?」


「あ、その卵焼きもふっくらしていて美味しそう。一つ貰おうかしら」


そう言うと、スッと素手のまま弁当にスッと手を伸ばしてきた。


反射的に、俺は


「だ、ダメだっ!」


慌てて弁当を持ち上げて、西条から取り上げて守ってしまった。


……もうやっちまった事だから、仕方ねーが、どうしてさっきこんなことしてしまったのか。


別に弁当の一つぐらい、あげても良かったんだろうに、何故かあの時チラッと皇の顔がチラついて……ヤッチマッタよなこれ完全に。


覆水盆に返らず、とはよく言ったもので、ハッと我に返った時には、


「嘘よ。とらないわよ。何、ムキになってるの。ミツキのバカ」


「……あ」


完全に拗ねていて、それからはうんともすんとも言わずに、俺を完全に無視して、今もこの状態が続いているんだが……もしかして俺詰んでる?



タグでBSS(僕が先に好きだったのに)を入れてましたが、WSS(私が先に好きだったのに)ではないか、とご指摘を受けました。


私の勉強不足でした。


WSSです。


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― 新着の感想 ―
[一言] さすがに今の西条を見てどこを好きになるのか分からないレベルなので、幼馴染とは業の深い関係なのだなと思ってしまった。 主人公は早く目を覚まして、幼馴染に囚われず視野を広くしたら、世界が大きく広…
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