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第2皇子・イルゼ殿下




ひとまずウチのもふちゃんとそのお婿さんをイルゼ殿下がもふっている間、私は趣味のお菓子作りです。


本日は木の実を使ったマフィンにしてみましたよ。


お昼ご飯の前にちょっと味見してもらいましょうか。ディルさまは甘いものは普通にお好きなようですがイルゼ殿下はどうでしょうか?


「イルゼ殿下、ちょっと味見をお願いしてもよろしいですか?」


「何故?毒が入っているかもしれないのに」


「私も毒に多少慣らされているので毒見しても意味がないのですが。食べてみましょうか?」


「もふぃっ!」

その時もふちゃんがその匂いを嗅いで“OK”とばかりに、そのふわもふ前足をちょこんとイルゼ殿下の太ももに乗せました。


「まぁ、もふがそう言うなら・・・」

渋々イルゼ殿下がマフィンを口に含ませます。


「まぁ、美味いんじゃないか」


「よかった。今日のお茶の時間にディルさまにお出ししようと思っていたのです。イルゼ殿下も甘いものはお好きなようですね」


「・・・あなたのせいです」

え・・・?おふたりの甘いもの好きがですか?特に心当たりがないのですが。


「今日のお茶の時間はあなたと過ごすから俺との時間が作れないと言われましたので。それまでは例え婚約者が言おうと兄上のお茶の時間は俺のものだったのですよ?」

何かまたイルゼ殿下の目が深淵を覗いているかの如くどす黒い光を放ち始めます。


「では、イルゼ殿下もご一緒にいかがですか?」


「はァ?兄上とふたりっきりだからいいんですよ。そこにあなたが加わったら俺が兄上を独占できないじゃないですか」

え、ブラコン・・・?つまりディルさまが私にべったりすぎて、自分と過ごす時間が短くなったから焼いておられるのですか?


「なら私は給仕をしましょうか?そうであればイルゼ殿下はディルさまとお茶の時間を堪能できます」


「あなたはいいのか?それにあなたは王女だろう?それを給仕などと」


「お茶をれるくらいはできますよ?あと、その間私はもふちゃんたちを愛でて過ごしますからお気になさらないでください」


「ひとりだけずるいです」


「二兎を追う者は一兎をも得ずですよ」


「ぐ・・・っ」


「それとももふちゃんたちも交えてみんなでお茶をしましょうか?」


「・・・わかった。だがあなたは俺の隣。俺は兄上の真正面に座ります」


「えぇ、それは構いませんが。何故?」


「兄上の真正面を独占するためですよ」

ぐごごごごごご・・・また目の奥から深淵が漏れ出てくるんですが・・・


「あの・・・ディルさまのお話を聞かせてもらえませんか?」


「何故、あなたに?」


「イルゼ殿下がいかにディルさまをお慕いしているのかを聞いてみたいのですよ」


「・・・っ!それは確かに俺が兄上のことを一番に思っていると、あなたに思い知らせることができますね。ふふふ・・・」

何だか笑みが黒いんですが。軽くホラーですよ。イルゼ殿下のお膝の上はふわもふハッピーフィールド展開中ですがね。


「あれはちょうど2年前。俺が14歳の時かなぁ」

つまり今は16歳なのですね。私よりも1歳年下です。因みにディルさまは今年ちょうど20歳だそうです。


「ウチの母上の話だけど。俺は皇子として産まれたけれど闇魔法使いだったから、“呪われた子”とか“使えない子”とか散々言ってきたんだよ」

え・・・何かいきなりダークな身の上話に発展していませんか?


「それで、ある日母上は闇魔力を封じる檻に俺を閉じ込めて、俺の魔力を使って当時から王太子だった兄上を兄上に反発する一派を率いて討とうとしたわけ」

それって、その・・・皇位継承争いでは?2年前にそんなことがあったなんてとても信じられません。ウチのシンシャ兄さまあたりは祖国の王太子なので、父の名代としてよく宗主国である竜帝国を訪問していました。もちろん父が行く時もありますが、そんな話は聞いたことがありませんでした。勉強不足ですかね。


「それでねその一派が兄上のもとに押し寄せたんだ」


「そんなっ!ディルさまはご無事だったのですか!?」


「無事だから、今ここにいるのでしょう?」


「そ、そうですよね」

つい取り乱してしまいました。会って2日目なのに何故、こんなにも。はて?本当にそうでしたかね。遠い昔にどこかでお会いしたことがあったような・・・


「俺は牢を抜け出して」


「抜け出せたのですか?」


「あぁ。だってその牢に使った闇の魔力を封じる魔法陣は俺が研究して作ったものだったから」

魔法陣を生み出すなんてイルゼ殿下の才能はすごいですね。自分で天才とか言うのもわかりますね。


「だからどうやったら解除できるかもわかってるからね。抜け出して影を伝って兄上のところに行ったわけ。俺を神輿として掲げて兄上を追い詰めた一派は俺の顔を見て呆然としていたよ。今思い出しても笑えてくるね」

と、ひとの悪い笑みを浮かべるイルゼ殿下です。


「そして俺は兄上の腕に抱き着いて言ってやったんだ。“俺は兄上のものであり忠実な下僕だから、兄上に剣を向けるなら、お前らごと闇に沈めてやるぞ”とね」

あの、“ディルさまのもの”とか、“下僕”とかってどう言う意味なんでしょうか?


そう言えば昔、シンシャ兄さまがエイダ姉さまに“ぼくはエイダさまの下僕です!”みたいなことを言っていましたね。


それを見た私にエイダ姉さまは“メイリィちゃんにはまだ早いから忘れなさい”と言われましたが。私ももう嫁ぐ年齢になったのでもういいころ合いでしょうかね?今度シンシャ兄さまにお手紙で聞いてみましょう。


「だから俺を担いでおきながら、俺の闇魔力を恐れている彼らは戦慄したみたいだよ。そして彼ら反逆者一派と母上はみ~んなまとめて闇魔法の渦に飲まれて牢屋行き・・・うふふ♡」

何でしょう?この、背筋がぞくっとする感じは・・・。


「あ・・・でも、竜帝陛下はお妃さま方と一緒に晩ご飯を食べていると聞いたのですが」


「母上は牢に幽閉されているから独り寂しく貧しく食べているよ?俺は実子だけど・・・兄上側についたから無罪放免だけどねぇ。でもこれからも俺を掲げるようなクズがいたら嫌だから“皇子”ではあるけれど、皇位継承権は返上しているんだ~。兄上を愚弄する愚かなクズどもはみんな闇に沈めばいいんだよ・・・?」

何か、また闇の深淵みたいな目をしだしたのですが。


「でも、イルゼ殿下はディルさまのことが本当にお好きなんですね」


「そうだよ。ねぇ、メイリィさまは兄上のことは好きなの・・・?」


「え?」


「好きなの?」


「あの、えと、政略結婚なので」

そう言うのはちょっと。


「兄上にキスさせて指で口の中をぐちゅぐちゅさせて、胸の谷間に兄上の顔をうずめさせたのに・・・?」


「な、何で知っているのですか!?それ!」


「俺はその気になれば、影を伝ってどこへでも潜り込めるので」

つまり寝室に侵入したと!?


「ね?俺恐ろしいでしょ?闇魔法ってこう言うこともできるんですよ?」


「できるなら私からしたわけじゃないこともわかりますよね・・・?」


「え?」


「本当に見ていたんですかぁイルゼ殿下ぁ~?それともイルゼ殿下の目は節穴なのですかぁ~?」


「その、メイリィさま・・・?」


「昨夜の何時何分にディルさまがどうやって私の聖なる谷間にどのようにもぐりこんだのか。説明してくださいませんかねぇ~?」

見ていたと言うのならば、今朝の一件がどのようにして起こったのか・・・。私は検証せねばなりません。


「あの、メイリィさま。俺に兄上とのこと見られていいの・・・?」

私はイルゼ殿下の両肩をがしっと掴みました。


「是非そこら辺の解説をお願いしたいのですがぁ~?」


「あ、へ・・・?」


「あ、でも寝不足は行けませんからちゃんと仮眠はとるんですよ?」

ここはしっかりと福利厚生を保障しなくてはいけませんね。


御見おみそれいたしました、姉上」

え?何故、イルゼ殿下が平伏しているのでしょうか?立場と言えば私はまだ婚約者で籍を入れていないので属国のしがない王女です。それに加えてイルゼ殿下は皇位継承権を持たなくとも宗主国の第2皇子さまですよ?


「あの、イルゼ殿下・・・?」


「“ルゼ”でいいですよ姉上。兄上もそう呼びますから。いずれ姉上になられるお方。俺に“殿下”や敬称はいりません」


「じゃぁ、ルゼくん・・・?」


「はい、姉上!」

何故でしょう。何故かものっそい笑顔で告げられました。未来の義弟に懐かれたのでしょうか。まぁそれは将来ディルさまの妃になる上でも、大切ですかね?これから家族になるのですから仲良くしてもらうにこしたことはありません。こうして何だか黒々としたものを目の奥に宿したルゼくんと仲良くなれました。他の婚約者の方々とも仲良くなりたいのですが、昨夜の晩餐会の様子から考えるに前途多難ですかねぇ・・・?


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