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邪竜と神龍

もっふぃ「もふぃっ!もふぃもふぃっ!」

ディル「ん・・・?今回は長めなのか」


―――???


「は・・・話が全く呑み込めないのですが・・・

あなたは・・・一体、どなたなのでしょうか?」

メイリィは、灰色の部屋の中で、ルゼを抱きしめながら、

目の前の白い髪の竜族の少年に目を向ける。


「・・・ぼくは・・・ぼくはキーシャだ・・・

メイリィ・・・!ぼくがつがいの印をつけたのに・・・

どうして・・・どうして覚えていないの!?」

きーしゃ・・・?

誰・・・でしたっけ・・・

それに・・・


つがいの印とは、何のことでしょうか」


「ぼくの、生涯の妻になるという、竜の求愛の印じゃないか!」

・・・つがい・・・確か、昔読んでいた、竜姫の恋愛小説に、

出てきましたね・・・その昔、竜には、

つがいと言う風習があったそうです。


生涯にたったひとりの伴侶を迎えると言う竜は

つがいに会った瞬間、それがわかるのだと。

そして、そのつがいに求愛の印を授け、

一生涯に渡り、そのつがいだけを大切にする・・・


その昔、竜帝国にもその風習があったそうですが、

今では、そのような風習はすたれ、

つがいを選ぶ本能は、竜族の遺伝子が優勢だとは言え、

混血が進んだ結果、徐々に退化し、

求愛の印を授ける儀式すら、

今では婚姻の契りを結ぶ際に行われる形だけのものだそうです。


何故、私がこのようなことを知っているかと言うと、

その竜姫の恋愛小説は、

そのつがい伝説をモチーフにした、

ラブロマンスだからです。


しかし・・・


「私は、あなたのことは知りませんし・・・

求愛の印なんて、持っていませんよ」

そんないかにも・・・なフラグ的印はありません。

昔、シンシャ兄さまがそれで大騒ぎをして、

私たち弟妹の体を、従者や侍女たちにくまなく

調べさせたんですから。


“これでフラグは立たないな!よかった、よかった~!”

と、シンシャ兄さまが笑顔で満足げに誇っておられましたが、

案の定、母さまにそれがバレて、

こっぴどく叱られ、頭ぐりぐり攻撃をくらわされていました。


まぁ、そんな兄は哀れでしたが、

その伝説を知ったアレン義兄にいさまが真似して、

ユーリィ姉さまの体を隅々まで、自ら!調べようと変態顔で迫ったそうで・・・

さすがにそれは結婚してから・・・となったようですが・・・

もう結婚されていますから・・・結局調べられたのでしょうか・・・


ぶるる・・・っ


何だか悪寒がしたので、話を元に戻しましょう。


「そんな・・・はずは!服を・・・服を脱げ・・・!」

と、キーシャなる少年が、私に掴みかかり、

無理矢理胸元をはだけさせようとしてきました・・・!?


「ちょ・・・やめ・・・っ」

しかし、キーシャなる少年は、私の鎖骨あたりが見えた途端、

呆然と立ち尽くしました。


「ない・・・何故・・・?」


「は・・・放し・・・っ」


「なら、もう一度、印を刻むまでだ!」


「や・・・やめてくださいっ!」

なんと、キーシャなる少年が、

私の鎖骨に顔を近づけてきます。

慌てて抵抗しますが・・・うぅ・・・

いかんせん、少年とは言え、男性・・・

しかも力の強い竜族には、かないません・・・


「い・・・いや・・・っ!」

顔を近づけさせまいと、手を出せば、

手首を掴まれて・・・


だ・・・ダメ・・・ッ!

やめて・・・っ!!


無属性魔法ビームみたいな波動を放とうとしましたが、

上手く力が出ません。

魔法を放たれれば、多少はカウンター回避できそうですけど・・・

うぐ・・・っ


こ・・・これは・・・っ


「姉上から・・・離れろ!」

ルゼくんの声が聞こえたかと思えば、

思いっきり・・・思いっきり・・・


キーシャなる少年に、角アタックを決めていました。

こ・・・これは・・・痛い・・・!

固い竜族の角(ディルのを触ったことがあるのでわかります)を、

ガツンと顎にあてられれば、誰でも悶絶します。

皮膚まで貫かなくてよかった・・・

それは、頑丈な皮膚をもつ竜族の少年だからでしょうか。

その衝撃で、少年の手が私から離れ、尻もちをついて倒れました。


「んな・・・っ!この邪竜じゃりゅうが!」

キーシャなる少年は、苦々しくルゼくんを見ながら叫びます。


「じゃ・・・邪竜って・・・」


「その闇使いのことだ・・・そいつは、単なる闇魔法使いじゃない!」

ルゼくんは、何も言わずにキーシャなる少年を睨みつけています。


「・・・どういうことですか・・・?」

ここは姉として、しっかりせねば。


「神龍であるぼくを殺したあと、神龍の純血を受け継ぐ

皇族に紛れ込んだ・・・しきよこしまな竜だ!

それは神龍の敵、竜皇族の敵!」


「な・・・勝手なこと言わないでください!ルゼくんは、ルゼくんです!

とっても兄思い、姉思いないい弟なんですから!」


「うるさい!あのバケモノに傾倒している時点で、

邪竜そのものじゃないかっ!その上、あのバケモノは、

ぼくからメイリィを無理矢理奪い取り、妻にえると言う・・・!」

それって・・・バケモノって・・・

私を妻に迎えるということは・・・ディルの・・・こと・・・?

ディルも自身のことをそう形容していたけれど・・・

ディルは・・・っ!


「兄上を悪く言うな!兄上を悪く言うなら、お前を殺す!」


「神龍であるこのぼくを・・・?

は・・・っ、さすがはあのバケモノに懐柔された邪竜だ!」

な・・・何を・・・


「さっきから聞いていれば・・・お前は誰だ・・・?

それに、竜帝国の神聖な神龍を名乗るだなんて・・・おこがましい!」


「この・・・邪竜が・・・っ!

純粋な竜皇族の中には、たびたび、神の力を発現させる

神龍が産まれるんだ・・・それがこのぼく・・・

その神聖なる竜皇族を、あたかも自分自身のことのように語るとは・・・

さすがは、ぼくから何もかも奪い取って、寄生する邪竜だな!」


「お前から・・・奪い取った?何のことだ・・・?」


「・・・ぼくの名は・・・“キーシャ”」


「・・・っ」

その名を聞いた途端、ルゼくんの表情が固まりました。

むしろ、青白くなっています。


「ルゼくん・・・顔色が・・・」


「それはそうだろう・・・?

本来、ぼくの母は第2妃として迎えられ、

竜帝の寵愛を受け、その血を引き、将来神龍として

崇められるべきこのぼくを殺し、

そして母が死に追いやったバケモノの母体、

さらには、第2妃の地位を奪い取ったお前の母体、

そして第2皇子であったはずのぼくの地位を奪い取り、

あのバケモノと共に、竜帝国の皇族を名乗る・・・お前」

そんな・・・じゃぁ・・・

このキーシャなる少年は、私の父の妹の・・・

私の従兄である、本来の第2皇子・・・?


「でも・・・亡くなったと・・・聞きましたけれど」


「その邪竜とバケモノに、そう吹き込まれたんだね・・・?

かわいそうな、メイリィ・・・

でも、この髪と目の色は、君に瓜二つだ・・・

これが、君と同じ血を引いているという証になる・・・

ぼくは、寵愛される妃の御子で、神龍として産まれたから、

元皇后一派や、それに反する邪竜の母体の一派に、命を狙われていた・・・

だから、神龍を真に崇める竜族しもべたちによって、

死んだように見せかけて、保護されていたんだ」


「・・・そんな・・・ことって・・・」


「あのバケモノが、君を娶ると聞いて、ぼくは反吐がでた・・・

どこまでぼくから奪えばいいのかと。

ぼくのつがいまで奪うのかと。

だから・・・ちょうどいい復讐を思いついたんだ」


「それは・・・」


「君に夢中になるあのバケモノから、君を奪って、

更にはその子分の邪竜を痛めつけた上で・・・殺す」


「そ・・・そんな・・・っ!」


「お前・・・っ」

ルゼくんが、苦しそうに顔をゆがめながら、キーシャなる少年を睨みます。


「だから・・・もう・・・死んで」


「そんなことさせません!」

私は、ルゼくんの前に立ちはだかります。


「・・・どうして!なんで、メイリィ!なんでそんな邪竜を庇うの!

やっぱりあのバケモノに洗脳されて・・・っ!」


「そんなの・・・大事な義弟おとうとだからに決まっているじゃないですか!

あと・・・ディルはバケモノではないし、ルゼくんも邪竜ではありません!

ディルは私の婚約者で、将来の旦那さま・・・

ルゼくんもかわいい義弟おとうとですよ!」


「んな・・・っ!そんな・・・そんなはずない!

目を覚ますんだ・・・メイリィ!」

キーシャなる少年は、腕を上に掲げ、何かの魔法発光体を出現させます。


「あ・・・姉上、多分、あれ、やばい・・・!」

ルゼくんが、苦しそうに私にすがりつきました。


「ふふ、さすがは邪竜・・・わかるんだぁ・・・

これはただの光魔法じゃない・・・神龍たる、

神であるぼくだからこそ、放てる・・・神の力・・・!」

そんな・・・私の無属性魔法で・・・かなうでしょうか・・・?


「これは、メイリィの力で無効化はできないよ・・・?」

わ・・・私の国家機密を・・・知っているのですか?


「当然・・・ぼくは神で、君の唯一のつがいなのだから、知っているよ?

メイリィのことなら・・・なぁんでも・・・ね?

でも、大丈夫。この神の力は・・・その邪竜だけを殲滅させるから・・・」

そんな・・・っ!それじゃぁ・・・ルゼくんが・・・!


その、時でした。


「んもぉっふぃぃぃ!」


も・・・もっふぃ・・・?

でも、やけに声が低かったような・・・


そして・・・


もふっ


「ぶへっ」


物凄くもふみのある効果音なのに、

その効果音で、キーシャなる少年は、

突き飛ばされてしまいました。


上を見上げると、とっても大きな、大きな

真っ白な毛並みの、もっふぃがいたとです。

大きさで言えば・・・2メートルほどの高さでしょうか。

ウチのもっふぃたちを、そのまま大きくしたような、

大きくても相変わらずキュートな、ふわもっふなもっふぃです。


どうやら、このもっふぃが、ふわもこ脚で

キーシャなる少年を突き飛ばしてくれたようです。

先ほどの白い光も見えません。

どうやら、彼が気絶した衝撃で、かき消えたようです。


「んもぉっふぃぃぃ!」

おや?おっきなもっふぃが、

しっぽを下から上へ、もっふもっふしております。


「背中に乗れって・・・こと?」

ルゼくんが呟くと、おっきなもっふぃは、コクリ、と頷きました。

けれど・・・どうやって乗りましょう?

全身ふわもっふなので、上りづらそうです。


「姉上、ちょっと触るよ」


「はへ?」

するとルゼくんが私の腰に腕を回し、

背中から、深い藍色の鱗の竜の翼を展開しました。

髪やしっぽと同じ色です。


そしてふわっと浮き上がったと思えば、

私たちふたりは、すちゃっとおっきなもっふぃの

ふわもふ背中に乗っかりました。


うわ・・・なにこれ、幸せな気分です~~~っ♡♡♡


「んもぉっふぃぃぃ!!」

おっきなもっふぃはそういななくと、

ふわっと浮き上がり、そのまま、灰色の壁をすり抜けて、

駆けだしたのです。


え・・・どこ行くの・・・?















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