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女王の裁定



その後、縄に繋がれたトルー・・・さんと、

マリア女王陛下、トリス王女と共に・・・

モニカさまのお父君、宰相さまもいらっしゃいます。

そして、私たちディル一行、事後処理を手伝ってくださった

イザナさまたちが、玉座の間に集合しました。

とは言え、今回の兼に責任を感じている

マリア女王陛下は、玉座を降りていますが。


そして、ディルが是非、とシュキ殿下を誘い、

彼も同席しております。


何故か・・・いつの間にか仲良くなっていましたね。

気でも合ったのでしょうかね・・・?

因みに、アルダさんはすっかり金鱗でもある

竜の翼の出し入れをマスターされました。


「ディラン皇太子殿下・・・

此度の件、大変ご迷惑をおかけしました」

マリア女王陛下が平伏しようとしたのを、

ディルが止め、立つように促します。


「マリア女王陛下。此度の件は、

属国の王子が、宗主国に無断で、

属国を売り渡そうとした大事件だ」

まぁ、トルーさんはそのつもりだったものの、

それは聖女・聖者の血が欲しかった

サクル皇国の一部の竜族が、

トルーさんをうまく乗せて騙しただけなのですが、

だからと言ってそれを伝えれば、

自分は詐欺に巻き込まれただけ、とか、

そんなつもりはなかったとか、

ぐだぐだ言いそうなので、

本人には黙っているそうです。

そして、罪状が確定した時点で、

伝えるそうです。なんと鬼畜な・・・

まぁ、未遂に終わったとはいえ、

皇太子殿下の婚約者のシアと私を

外国に売り渡そうとしたのは事実ですし、

サクル皇国を後ろ盾に、

竜帝国から独立し、王位を簒奪しようとしたのは事実です。


「あなたの裁定を聞きたい。それを以って、

皇帝陛下はエストランディスへの対処を決めるそうだ」

因みに、皇帝陛下へは、魔法で此度の一件を伝え、

ディルがしっかりと命令を受け取っています。


「はい・・・わかりました。

此度の件は、私の甘さが招いたこと・・・

しっかりと・・・責任は採らせていただきます」

マリア女王陛下の瞳は、憂いを帯びてはいるものの、

しっかりとした意思の強さを感じます。


「まずは、トルー」


「は・・・母上!た、助けてください!

私は、エストランディス王家の長子なのですよ!?」

トルーが顔を上げ、マリア女王陛下を涙目で見上げます。


「だとしても、あなたがエストランディスを売ろうとした時点で、

あなたに、エストランディスの王族を名乗る権利はありません」


「そんな・・・」


「今までのシアへの仕打ち・・・先日の王城の夜会での

皇太子殿下や婚約者のシアへの仕打ち・・・

そして今回、シアとメイリィさまを外国に売り渡し、

更にはエストランディスを竜帝国より

勝手に独立させ、その王位を簒奪しようとしたその行為は・・・

決して、許されるものではありません」


「そ・・・そんな・・・っ!

私は・・・竜帝国でのエストランディスの

地位の低さを・・・何とかしようと・・・!」


「・・・我がエストランディスは、

竜帝国から王族の統治権を与えられ、

また、王族、貴族、平民は、

その身分に相応しい暮らしを許されています。

竜帝国から不当に何かを押し付けられている事実は、ありません」


「だけど・・・私は王太子になれないし・・・

シンディアだって、今は牢屋に・・・うううぅ・・・」

トルーさんは涙ぐみます。


「・・・私も、シンディアの減刑を訴えたことはあります」


「でしたら!」


「しかし、それが本当に正しい行為だったかと言えば・・・

今は・・・そのようには思いません」


「そんな・・・!何故!あなたの実子じゃないですか!」


「実の・・・娘と、息子、だからです。

私は、夫の望むまま、あなたたちの望むまま

女王と言う立場を持て余していました・・・

全ては、私ではなく、ユリアナ姉さまこそが、

女王に相応しかった・・・私は相応しくない・・・

この見た目・・・エルフ族らしいと言われる

見た目だけで選ばれた・・・そんな悔恨が、

私を愚王にしたのでしょう・・・」


「母上は愚王では・・・っ!」


「あなたにとっては・・・都合のいい女王だったのでしょうね・・・

あなたが王座を簒奪してもいいと思うほどに・・・」


「それは・・・母上のために・・・!」


「やめて・・・!」


「・・・え・・・」


「もう、やめて・・・亡き夫を止められなかった・・・

あなたたちにシンシアが痛めつけられても、

シンシアをイザナさまのところに逃がすことしかできず・・・

婚約者擁立の際は、夫の勧めるまま、

シンシアが粗相をした時のために、

シンディアがついていくことを、止められなかったの!!」

そう言えば・・・女王陛下の夫・・・

王配殿下には、一度も会ったことがありませんね。


「父上は、帝国が処刑したのではないですか!」

え・・・処刑・・・?


「父を帝国に殺されたのです!帝国から離反し、

独立しようと謀った私の何がいけないのです!

私は、エストランディスを独立に導くために

この身を捧げた・・・英雄です!」


「黙りなさいっ!!」

マリア女王陛下の怒鳴り声に、トルーさんが押し黙ります。


「何を・・・言っているのですか。

しっかり、勉強させた気になっていましたが・・・

せめて、最期に、もう一度、お教えしましょう」


「さ・・・最期って・・・」


「我がエストランディスは、聖女や聖者を多く輩出する国・・・

その他国からの侵略から逃れるため、竜帝国に膝を折り、

その属国に加えていただくことで、身を守ったのです」


「は・・・?」

私も、もちろんそれは知っています。

祖国ウチもそうですから。

竜帝国は一大軍事力を持ちますが、

今ある属国は全て、

竜帝国の評判を聞いて、竜帝国について来た属国です。


だから、宗主国への礼儀は厳しくとも、

それを守ってさえいれば、不当な扱いを受けることはありません。

祖国は従順だったので、国内は平和そのものでしたしね。


ただ、宗主国への無礼については、

竜帝国は温情を与えることも・・・あるにはありますが、

基本は容赦しません。


「・・・亡き夫は・・・あなたの父君は・・・

シンディアと共に、竜帝国の国家予算を不当に

搾取し、皇都で豪遊していたのです・・・」

マリア女王陛下を放ったらかして・・・

ひとりだけ、そんなことをしていたのですか?


「私は・・・夫が帝都で、エストランディスのために

働いてくれているものと、信頼しきっていた、愚かな女王です。

女王に相応しくない・・・そんな悔恨から、

宰相に頼りっきりだった、愚かな女王です・・・

夫は、聖女でも聖者でもなかったこと、

指示役だったからこそ、首謀者として処刑されました。

私がそれを知ったのは、シンディアが終身刑になったという、

知らせを受けた時でした・・・

シンディアは、首謀者ではなく、聖女だったからこそ、

未だ、生かされているにすぎません・・・

それに情状酌量を訴えた私は・・・愚かすぎました・・・

だから・・・私は女王の座を降ります」


「では、次は私が王ですね!」

何故そうなる、縄で縛られているのに。


「トルー・・・一緒に、死にましょう」


「は・・・?」

トルーさんは唖然としています。


「皇太子殿下・・・どうぞ、私と、トルーを、死刑に処してください」

マリア女王陛下が、ディルに平伏し、

シアはショックで崩れ落ちてしまいました。

私とアナが慌ててそれを支えます。


「ま・・・待って!私は・・・まだ・・・っ!」

抵抗して暴れ出そうとするトルーさんを、

騎士さんたちが取り押さえます。


「それじゃぁ、次は私が女王ね!」

と、場違いにトリス王女が歓喜の声を上げました。


「そして、皇太子殿下に、お願いがございます」

しかし、女王陛下はその声に応えず、続けます。


「聞こう」


「トリスは、殿下の婚約者であるシンシアを虐げました。

そして、皇太子殿下に無礼を働きました。

決して、許されることではありません。

ですが、今回のトルーの件にも、シンディアの件にも、

この子は無関係です。どうか、王籍から抹消の上、

平民として、国外へ放逐させていただけませんでしょうか」


「は・・・私が・・・平民?嘘でしょ!?嘘よね!

ねぇ・・・ママ!!」

トリス王女が叫びますが、即座に騎士さんたちが取り押さえます。


「では、エストランディスの王位は、どうなる」


「だから、私が女王よ!」

ディルの言葉にまたまた食いつくトリス王女をの口、

騎士さんたちが塞ぎます。

これ以上叫んだら、さすがにディルが切れますよ?

ぶっちゃけ、今ですら皇太子殿下への不敬マックス状態なんですから。


「・・・竜帝国の皇族と、エストランディスの血を引きし、

大公・イザナ殿下に、王位を譲りとうございます」


「んん―――っ!」

「んぐぐ―――っ!!」

何か言いたげに、トリス王女とトルーさんが叫んでいますが。


「私は、かつて、このエルフ族の王族らしい外見・・・

そんな理由で、女王に指名されました・・・

それがそもそもの間違いだったのです・・・ですから・・・

容姿に関係なく、王としての素質のあるものに、譲るべきだと考えます。

宰相も、義息子となるイザナ殿下を、支えてくれましょう」

宰相さまは、それを聞いて、イザナさまと視線を合わせ、頷かれました。

どうやら、このおふたりは、正真正銘、

義理の父子おやことしても懇意にしているのでしょう。

イザナさまを差別する方ならそもそも、

モニカさまの婚約者にはしないでしょうし、

甥っ子のエルタさんも混血の特徴が出ていますものね。


「わかった。あなたの裁定について、皇帝陛下が正式に処断される。

それまでは、あなた方一族は、牢で幽閉されることとなる。

それで、いいか・・・?」


「・・・はい」

マリア女王陛下は、静かに答えました。


―――その後の顛末ですが・・・

2~3日の滞在にするつもりが、結局、

イザナさまの即位の準備やらなんやらで、1週間滞在しております。

シュキ殿下は既に、シリンズランドの王女さま方と帰国されています。

事が決着したら、ふみが欲しいと、ディルと話していました。


相変わらず仲がよろしいようで。

大国の太子同士、微笑ましいですね。


結局、トルーさんは即刻処刑され、

マリア元女王陛下は、その英断を評価され、

なんと彼女の姉・ユリアナさまが彼女も被害者であると

情状酌量を訴えたことで、処刑を免れました。


トリス元王女と共に、平民として、

竜帝国本国、そして属国の全てから追放・・・と言う、

厳しい罪状が告げられました。

トリス元王女は最後まで暴れていました。


一方で、なら、シリンズランドに来ればいい、と、

シリンズランドの王女殿下がシュキ殿下に伝えたようで、

ふたりはシリンズランドへ送られました。


マリアさまはつつましく働き、暮らしていましたが、

トリス元王女は早速問題を起こし、

シリンズランドの王太子さまに散々言い寄った挙句、

王女さまをハーフエルフと蔑み、

数々の嫌がらせと侮辱を行ったことで、

王太子さまに激怒され、奴隷落ちとなったそうです・・・

学ばない方も・・・世の中にはいるのですね。


マリアさまは悲しんでいたそうですが、

もう、甘い顔をしないときっぱりその罪を呑み、

隠居し、新たな人生を歩んでいるようです。


なお、エストランディスは、新たな王として、

竜帝陛下に認められたイザナ陛下と

その王妃となったモニカさま、

そのお父君である宰相さまの治世の元、

新たな時代を迎えているようです。


諸問題が解決し、イザナさまの戴冠式を見届けて、

私たちは帰国の途につきました。


国の体制が落ち着いたら、

今度はイザナさまがモニカさまと共に、

竜帝陛下へ即位の挨拶に向かわれるそうです。


あぁ・・・あと、お土産に、みんなでモニカさまおススメのお店で、

お花を象った小物入れや、シュシュリボンを買いに行きましたよ。

エクレールやもふちゃん、ふぃーくんに渡すのがとても楽しみです。

あと、獣人族のお姫さまにもディルからお土産を渡してもらうことにしました。

婚約者なのですから、しっかりしてくださいね。








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