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竜帝国へ向かう朝


しかしまぁ、美男美女の両親とその兄姉たち。その中に産まれたひとりだけ平凡な私。そして色の抜けたような白い髪に色素の薄い、薄紫の瞳。少しは父さまのキラキラした銀色粒子を受け継ぎたかったものです。美男美女の中にもたまにフツーを絵にいたような子も産まれるものなのですね。


そんな私を指名だなんて。シャンリィ姉さまはたいそうな儚げな美人ですが、いかんせん体が丈夫ではありません。だからこそこんなフツーな顔立ちの私をわざわざ選ばざるを得なかった竜帝国の皇太子殿下。


今はそのご厚意に、感謝するしかありません。だから後宮ではなるべく目立たず地味に生活したいものですね。


「―――ひとりで?」


「はい」

宰相でもある伯父さまが大真面目な顔で仰います。


「そう言う竜帝国からの申し出で、侍女も護衛も必要物資も全てあちらさまがご負担していただけるようで。馬車もあちらさまが派遣してくださるそうです」


「―――何故、でしょうか?」


「皇太子殿下が是非に、と」

もしやこれは冷遇フラグでしょうか?後宮にたったひとりで送り込まれ、四面楚歌の状態でいびり倒されるという恐怖の冷遇フラグなのでしょうか?


「こちらとしては、宗主国が全て用意するとのことなのでこのようなご厚意を無駄にするわけにはまいりません」


「そう、ですよね」

それなのに無理に自国のともを連れて行ったら宗主国を信頼していないのか・・・とか言われますよね。


「大丈夫です。叩き折れないフラグなどこの世にはないのだとシンシャ兄さまが仰っておりました」


「はい?それ、何の話ですか?」


「三徹の前に兄さまが護衛の近衛騎士たちにそう演説されていました」


「あぁ、一緒に巻き添えで三徹することになった近衛騎士たちがやけに張り切っていると思ったらそう言うことでしたか」

兄さまは度々そう言ったわけのわからない演説をされるのですが、何故かその演説は絶大な支持を得ているのです。きっとこの国をもっと良き方向に導いてくれるはずです。

私は安心してお嫁に行けますね。


「あとピンク髪の痛い子ちゃんにも気を付けるんだぞと、シンシャ兄さまが仰っていたのですが。

伯父さまは何のことだかわかりますか?」


「いいえ、全く」

この世界には頭脳明晰である伯父さまにも理解できないことがあるのですね。それはシンシャ兄さまの頭脳が優秀なのか、王太子としてのお顔は優秀なのに肝心なところが残念なだけなのか判断しかねるところですね。


―――


その日以来、日中の執務を終えた家族がまたもや徹夜で私の嫁入りをむせび泣き明かそうとしたもので。さすがにそれは迷惑だったので何故かまだこちらに滞在されている、隣国の王太子であるアレン義兄さま、近衛騎士のリンファ義姉さまと、宰相の伯父さまと共謀し、吹きかければすぐさま眠りに落ちる“眠れるミストくん”を彼ら彼女らに吹きかけ強制的に眠っていただきました。


そして遂に竜帝国からの馬車が参りました。


「うぅぅ、メイリィ。辛くなったらいつでも相談するんだぞ!?」

父さま、そんなに泣かないでください。


「よっしゃぁっ!堂々とお行きなさい!いざ、玉の輿!」

母さま、もうちょっとお上品にお願いします。


「お兄ちゃん、やっぱりメイリィがお兄ちゃん以外のお嫁さんになるなんていやだあああああぁぁぁぁぁっっ!!!」

シンシャ兄さまったら。隣に控えていたエイダ義姉さまに視線を送ると、すぐに頷いて兄さまのお尻をつねって大人しくさせてくださいました。


因みにエイダ姉さまは燃えるように赤いロングヘアに苛烈かれつそうな赤い瞳を持つメリハリボディな見た目も中身も迫力満点な義姉さま。この義姉さまがいれば、きっとシンシャ兄さまのシスコンから来る変態妄想も華麗に鞭打って薙ぎ払ってくれるでしょう。


「あひぃっ」

変な声出さないでください。シンシャ兄さま。


「わああああぁぁぁんっっ!メイリィ!後宮で他の女に虐められたらっ」

ユーリィ姉さま、大丈夫ですよ。お国のためしっかりやりくりしますとも。


「3倍返し、よ。3倍返し」

ちょっ、今にもりそうな顔で何を仰ってるんですか。


「そんな君もステキだよ。ハァ、ハァ」

いやユーリィ姉さまの陰であなたは何を変態顔でほざいているんですか、アレン義兄さま。


「メイリィちゃん。困った時は、金的。金的よ?」

あのー、アルシャ姉さま(男)。それはアルシャ姉さま(男)の弱点でもあるのでは?

何かすっごい笑顔で言ってきますね。そしてその横で“こうです!”と脚で素振りをする近衛騎士のリンファ義姉さま。このひとこれでも一応公爵令嬢なのですが。


「メイリィちゃっ、げほぁっ」

シャンリィ姉さまは開口一番にげほって担架で運ばれて行ってしまわれました。シャンリィ姉さま、お体にお気をつけて。


迎えに来た竜族の方々がドン引きされてしまいます。ちらっと見ると哀れなものを見る目で見られました。わ、私の方ですかっ!!?


ともかく私は家族に見送られ、竜帝国へと旅立ったのです。


※アルシャ姉さまと私※

アルシャ「メイリィちゃん。今日は姉さまが最強の護身術を教えてあげる!」

メイリィ「わぁ、楽しみです!」

アルシャ「い~い?こうして~、目つぶし!!」

メイリィ「それは反則ですアルシャ姉さま―――っ!!」

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