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皇太子殿下と婚約者たちの晩餐会



「貴様は、我ら竜帝国に盾突いた」

晩餐会の場でディルは冷たくシンディアに言い放ちます。


「け、決してそのようなことはっ!」

シンディアは必死に弁解しようとしますが事実は、事実。その分シアが苦しんだのは紛れもない事実なのです。


「国家予算を騙し取っておいて何を言う?」


「それは、婚約者として着飾るのは当然ですし」


「お前はいつから私の婚約者になった?偽証罪も加えるか?」


「それはっ!」


「お前は私の婚約者を騙り、そして国家予算を騙し取った。それで間違いないな」


「そ、そんなことはありません!」


「しかし証拠は挙がっているし、先ほどお前自身の口からきいた。尤もここでのやり取りは全て魔道具で録画しているから今更何を取りつくろうが、無駄だ」


「ひっ、卑怯です!」


「宗主国の国家予算を騙し取る方がよっぽど下劣だろう?」


「う・・・っ」


「お前は宗主国に従順ではないようだ。よって王族の位を剥奪の上、我が帝国の刑法によって大罪人として厳罰に処す」


「そ、そんなこと許されるはずっ」


「属国の王族を認めているのは我が竜帝国だ。つまりお前らを王族とするかしないかは我らが決めること。お前たちに決める権利はない」

王子や王女が産まれた時また、王族が婚約、婚姻を結ぶときは必ず宗主国である竜帝国への申請及び王族として認める許可、婚姻を認める許可が必要となります。


王族、貴族として生活していくにしろ市井しせいにおりるにしろその手続きは必ず踏まなくてはいけません。誕生の手続きについてはよく知りませんが。私、末っ子ですから。


でも、兄姉たちはひとつ上の姉さま以外は婚姻、婚約していますから。当然その手続きのため兄姉たちが竜帝国に赴くのを見送りましたし。自国の婚約、婚姻パーティーにはどなたか竜皇族の方が出向いてくださいました。


王太子であるシンシャ兄さまの時は皇帝陛下夫妻がお越しになられていましたね。


長女のユーリィ姉さま・次男のアルシャ姉さま(※男ですが姉さまです)の婚姻&婚約の時は他でもないディルが来てくれました。

※アルシャ姉さまのお相手は男勝りな女性です


私も遠目にお姿を拝見していたのですが、その方が今私の隣にいる婚約者になるなどとは当時全く思いもしませんでした。


「だがお前は聖女でもある。何かの役に立つかもしれないから処刑だけはないだろうな。よかったな。一生塀の中だろうが」


「んなっ!私は、聖女でこの世界のためになります!シンシアなどよりもよっぽど!」


「あのさァ兄上、言ってもいい?」

と、ここでルゼくんが手を挙げます。


口調はかなりフランクですが基本はこのように必ず許可を得てから、自分よりも高位の竜皇族の方々や竜帝国の貴族の方々に意見を言います。


今回は断罪における意見聴取も兼ねていますので、シンディアの勝手な発言についてディルも無視していますが本来であればシンディアの行動は許されないわけですね。


「あぁ、許可する」

ディルが短く答えるとルゼくんがこちらに近づいてきます。それを見てシンディアが後ずさろうとしますが近衛騎士たちに拘束され動けずにいます。


「あのさァ、俺闇魔法使いだからわかるんだぁ。アンタの光の魔力よどんでてめちゃくちゃ弱くなってるねぇ?シア姉上の10分の1もないんじゃない?」


「んなっ!?」


「本当のことを言えば~、俺が兄上に言ったんだよぉ?金髪の聖女の方は不純物が混じっていて美味しくないヨ~♪ってね」


「じゃ、じゃぁ、アンタのせいで私は選ばれなかったの!?闇魔法使いめ!!」


「弟への侮辱は許さぬと言ったはずだ。それと弟の助言がなくとも私はお前を選ばなかった」


「な、ぜ・・・?」


「お前のような高慢な女は好かぬ。元々私はエルフ族の王族貴族の態度には煮え切らぬものがあってな。だがエルフ族には・・・特に王族には聖女が生まれやすいからがまんをしていたが」

そんな貴重な聖女を多く輩出するエルフ族の王国は宗主国である竜帝国の庇護から外れれば、あっちゅーまに他の大国に占領されて聖女を生み出すだけの奴隷として扱われたことでしょう。


「だが、やはり妃に迎えるには性格上の問題がある。更にメイリィを害そうとする者など論外だ。貴様は我がメイリィを散々に侮辱したな。その時点でお前は外れだ」

私を、散々?そう言えば私はエルフ族の王国には行ったことがありませんが、ウチの祖国に来られていた金髪碧眼のいかにもなエルフの子どもによくこの髪の色をなじられていましたっけ。


以来それを疎んだ家族のおかげでエルフ族の王国から来賓がたくさん来るようなパーティーにはなにかと理由をつけて出席せず守ってもらいました。どうしても、な時は婚約者が近衛騎士として警備をしているため、自ずとフリーになるアルシャ姉さまが普段は滅多に見せない男装をして(いや本来は男なので本来の格好をして)私をガードしてくれましたね。


いや、むしろ私をガードするためにアルシャ姉さまの婚約者であるリンファ義姉ねえさまが私を守るために強引に近衛騎士隊の任務を入れる形でアルシャ姉さまを貸してくださったのです。


今思えば自分たちの婚約パーティー以外ではあのお2人でパーティーに出たことなど数えるほどなのではないでしょうか?妹ながら2人に苦労をかけてしまいました。


リンファ義姉さまはドレスや宝飾品よりも武器と装備派なので気にされていませんが。


私にもディルと言う婚約者ができたので、これからはお2人でパーティーに参加していただきたいものです。ディルがいれば心強いですからね。どこへだって・・・そう、エルフ族の王国にだって行けちゃう気がするのです。


「結果、性格上も最もエルフ族らしくないシアになる」


「そん、な」

シンディアは愕然としていますし、ディルも当初はシアをどうとも思っていなかったようですが。なぁんだ、ちゃんと好みで選んでいるじゃないですか。心配させるひとですねぇ全くもう。


「連れて行け」

そのディルのひと言に茫然自失としたシンディアは近衛騎士たちに引きずられるようにして晩餐会会場を後にしました。


「さて、邪魔者はいなくなった。晩餐会を開始しようか」

ディルがそう告げました。


―――


晩餐会はつつがなく進んでいきます。

ディルの両脇に私とシアが座り、その向かいに並んで竜姫さまと獣人族の姫さまが座っておられます。


ディルは放っておくと私の方ばかり見るのでたまに肘で合図します。

そしてシアに話しかけます。シアも晩餐会のメニューについて好みなどをディルと話されています。


今回は私とシア、そしてディルも壮絶な痴話喧嘩の後なので、晩餐会のメニューは消化の良いあまり脂っこくないメニューにしていただきました。


私の祖国でよく食べられているお粥でさえも竜帝国の宮廷料理人にかかればあら不思議。何だか高級そうなお粥に見えてきちゃいます。


初めてのメニューに竜姫さまは目を丸くしておられました。シアは昨日一緒に食べたので経験済みです。獣人族の姫さまは慣れているのか普通に食べられています。獣人国でも米は食べますからね。むしろ食文化が祖国と似ているのですよね。だから米も小麦も食べたりと、食文化が豊かであったりします。


反対にエルフの王国は木の実などの森の恵みをベースにしたベジタブルな食事が好まれます。しかしシアはか細そうに見えてお肉もお菓子も大好きだそうで。ドーナツ鶏肉卵がゆを出してあげたらとっても喜んでいました。

※お菓子のドーナツは関係ありませんよ?ドーナツは地名です、地名。


しかしディルは私かシアとばかりしゃべるので、他のお2名の姫さまはずっと黙って黙々と食べています。私なんて竜族の姫さまにちらちらと睨まれます。


やはり皇太子殿下であるディルの身分が高いので、私たちのように身近な存在にならなければまだまだ難しいでしょうね。


しかしこのままではせっかくのディル補正計画が台無しなので、そろそろ例の件をとディルに静かに告げます。


ディルはこれから1週間に1回お茶の時間に交代で、婚約者ひとりひとりと時間を取ることを伝えました。もし時間が取れなかった場合は必ず後日代わりの時間を作ることも。その提案に他の2名の姫さまたちは驚いているようでしたが、少しずつディル補正計画が進むことを願いましょう。



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