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史上最悪の痴話喧嘩の後の反省会



「世界が、終わるかと思ったぁ。でも兄上とふたりっきりの世界ならそれはそれでゾクゾクする。ひひひ」

かわいそうに。びっくりしすぎてルゼくんがヤンデレブラコン弟みたいになっていますね。

※これが通常運転です


「メイリィ」


「何ですか」

私は茫然自失としているディルのバカの前にかがみこみました。


「その、怒ってる?」

恐る恐る顔を上げるディル。


「えぇ。怒ってますよ」


「どうしたら、許してくれる?許してくれたら俺のことを好きになってくれる?」


「えぇと。その、まぁそうですね。反省して、ちゃんと将来奥さんになる婚約者みなさんを大切にしてくださるのなら、許します」


「メイリィはそれでいいのか?」


「はい?」


「俺は、メイリィが俺以外の誰かを愛するなんて耐えられない」

え?あの、いきなり抱きしめられたのですが。


「それなのにメイリィは俺に他の女を愛せと言うのか」


「その、政略結婚なのですから全ての方が、全てのお相手を愛するのは無理なことくらい承知です。ですが婚約者なのですから、未来の夫として最低限の気は回すべきです」


「どう言う意味だ?」

このひとは、完璧竜人のように見えて本当に基本的なところが欠如しているのですね。


「例えばシンシアさまが怪我をして、ボロボロの服を着て身なりも汚れている。それは皇太子の妃としてだけではなくひとりのひととしての尊厳すら守られていないかもしれない。そう言うことです。

彼女が、彼女に与えられた宮でどんな扱いを受けているのかあれで想像がつかない方がおかしいです。あなたはこの竜帝国を継ぐのでしょう?ならたやすく想像はつくはずです」


「それは、わかる。だが何故、俺が?俺は何をすればいい?」

この方はご両親から・・・竜帝陛下と元皇后陛下からそれを学ぶことができなかったのですね。御両人がどのような方なのか、私は兄姉たちの陰から遠目にお姿を見るくらいしか接点はありませんでした。


ですから、どのような方々でディルに欠落しているものを与えられない環境にあったのかはわかりません。


けれど他の婚約者たちは竜帝国が選んだとしても、ディルは私を選んだ。私の立場だけに目を向けて私の外見を嘲笑したり、影で兄姉たちに色目をつかったりしたひとたちを私は見てきた。


だから私を選んでくれたディルに、ディルの心に答えたい。


「私がお教えします。だから二度と世界を滅ぼすなんてバカを言わないでください。ディルに足りないものは私が補いますから」


「名前を」


「はい?」


「ディルと、呼んでくれたな」


「あ、ごめんなさい。私、夢中で」


「いや、いいんだ。これからもそう呼んでくれ」


「はい、ディル」

私はいつの間にかディルからの抱擁を返すようにディルを抱きしめていたのです。


―――


「ダメだ。このもっふぃはオスだろう」

ディルはふぃーくんを見るなりそう言った。


「いやもっふぃですよ?」


「もっふぃでも、オスはオスだ」

全くディルは。


「もふぃっ!」

その時もふちゃんが力強く鳴きました。どうしたのでしょう?


「そうか。そのオスはもふが責任をもって調教するのだな」

いや調教はしないと思いますけど。てかもふちゃんの言葉、やっぱりわかるのですか?曲解しているようにも見えますが。


「わかった。俺も、もふを信じよう」


「もふぃっ!」

本当にディルはもふちゃんの言うことはすんなり聞きますね。


「えぇと、お隣のお部屋が空いているそうなのでそこにシンシアさまを住まわせると言うことでよろしいですか?」


「あぁ。メイリィの好きにしていい」


「わかりました。もふちゃんはふぃーくんと一緒にシンシアさまをお願いね」


「もふぃっ!」

もふちゃんの寝床は私の部屋とシンシアさまのところ、どちらがいいかと考えた結果、やっぱりシンシアさまをひとりにはできないのでもふちゃんたちに一緒にいてもらうことにした。もちろん日中はこちらの部屋で過ごすのでみんな一緒である。


「あと、メイリィ」


「何です?」


「この部屋に男が来たような気がする」


「それはあなたの弟のルゼくんですよ」


「・・・」


「そうですよ。兄上。俺の匂い、部屋に残ってるでしょ?」

と言って長女のユーリィ姉さまの夫・アレン義兄にいさまのような変態顔を浮かべるルゼくん。

ルゼくんもディルが少しずつ変わりつつあるように、義兄あにと同じ道に進んでしまったのですね。

※元からこうです。


「まぁ、ルゼならいいだろう」


「わぁいっ!兄上、嬉しい!ハァハァッ!」

ハァハァ?

そう言えばアレン義兄さまもよくそんな効果音を出していましたね。


みんな変わろうと努力していると言うことですね。

※元からこうです。


「とにかく朝、昼、お茶は私とシンシアさまはご一緒に過ごすことにしました。晩餐会は今まで通りですね」


「あぁ。もちろん俺も一緒だ」

「俺も~」


「まぁルゼは2人の護衛として付いてくれ」


「はぁい!俺、影飛ばして遠隔でもできるからぁ!よゆ~!あ、もちろん兄上にも随時飛ばしてるからねっ♡」

それで私たちのベッド事情をご存じだったのですかね?


「ですが、ディル!」


「な、なんだ」


「ディルは婚約者のみんなのことをもっと知った方が良いと思います。例えば昼食あるいはお茶の時間を一緒にとってみては?公務の都合も鑑みてどちらか都合のよい方で」


「メイリィのお菓子を食べられないのか!?」

そんな愕然とするほどの腕ではないのですが。しょうがないですね。


「ではお茶のお菓子は私がご用意しますので、そのお菓子で婚約者のみんなと談笑して来てくださいな」


「メイリィの菓子が食べられるのなら、わかった」


「取り敢えず平日をローテでひとりずつ。あ、一日余ってしまいますね」


「え?余らないよ?婚約者4人と、俺ね?」

あぁ、そう言えばディルとのお茶の時間がなくなったと嘆いていましたね。


「じゃぁ私たち4人と、ルゼくんとでお願いします」


「何故ルゼをいれる?」


「兄弟の親睦を深めるのも大事ですよ?祖国じっかでは、その時集まれる兄姉たちや両親とでなんだかんだでお茶をしながら談笑しておりました」


「わかった。それでは休日は俺の自由なのか?」


「えぇ。休日は私、シンシアさま、ルゼくん、ディルと4人で一緒にお茶をしましょう」


「何故、4人一緒だ」


「一緒の方が楽しいでしょう?あと公務もあるでしょうから、公務が入られた時はそちらを優先なさってください。もし時間を取れなかった場合は休日のお茶や朝食の時間などで埋め合わせをしてください」


「メイリィの手料理が食べたい」


「事前に仰ってくださればご用意しますよ」


「わかった。それなら」


「兄上ったら、もう姉上には頭が上がらないね」


「言うな、ルゼ」

ディルがルゼの額を小突いていた。仲いいなぁ。


「それよりも、姉上」


「なぁに?」


「さっきの姉上の、兄上の魔法を打ち消しちゃったやつって俺に言っていた国家機密ってやつなの?」


「あぁ、うん。見られちゃったのなら、秘密にしてね?」


「それはもちろん」

「私もです」

シンシアさまも頷いてくれる。


「ディルもごめんなさい。黙っていて。あれは、そのー」


「知っている」


「え?」


「メイリィのあの力なら、知っている」


「どうして?」


「昔に、見たから」


「え?」

み、見られた?


「ど、どぉしよう。両親や兄姉たちに絶対外には言うなって、私・・・っ!!」


「メイリィは俺の妻になるのだから構わない。ここにいるものたちもいずれは肉親となる」

つまりはシンシアさまもってことね。短い間だったけど成長したのね。


「ねぇ、結局どう言うこと?」


「あ、あのね。あの力はそのー、無属性魔法デス」


「無属性魔法。伝説じゃぁなかったんだ」


「ルゼくんは知っているのね」


「もちろん。魔法の研究をしていれば誰だって一度は聞いたことがある伝説。あ。だから国家機密なの?」


「そうね。どの属性でもないからどの属性にも効くし、無効化することもできるの」


「そんな属性があったらこの世界の魔法が意味を成さなくなってしまうし、どんな魔法にも対抗できるね」


「そう言うこと。でも、ディルの魔力を相殺できるとは、そのー、思わなくって。無属性魔法にも魔力や相性があるから。もしかしたら、失敗したかもしれないし」


「それはない」


「ディル?」

ディルは真っすぐに私を見つめてくる。


「メイリィの魔力は俺と相性がいい」


「そうなの、ですか?」


「あぁ。メイリィの魔力を受け取ったのは、2度目だ」

2度目?じゃぁ私は昔、どこかでディルと会っているのだろうか。


「あの、ディル」


「だが、その力は危険すぎる。だから、俺の魔力とメイリィの魔力を結び付けたい」


「どう言うことですか?」


「互いがどこにいても分かるし、魔力を通じて声を届けることができる」


「それはすごいですが。そのようなことができるのですか?」


「古代の失われた魔法かな?」

とルゼくん。


「そんな失われた魔法を?」


「メイリィの魔力だって、同じだ」


「確かにそうですね」


「俺にはできる。つなげてもいいか?」


「私の知らないところでまた暴走されては困りますから。いいですよ。ディルさまとつないでくださいな」


「あぁ、ありがとう。メイリィ、愛している」


「へ・・・むっ!?」

いきなり唇を塞がれた。そして体内を魔力が巡るのがわかった。


この感じは何だろう?とても懐かしい魔力を感じて、それが私の中で混ざり合うのだ。


―・・・うぶ、メイリィが、ずっと・・・そばに・・・るから―


―メイリィ・・・?―


―うん!だから、もう―





―ひとりじゃないよ―





幼い時の記憶だろうか?


―――断片的に思い出したのは


―――私の前にいるのは


―――竜族の、鉄色の不思議な髪の色をした男の子・・・


「ディル」

私からゆっくりと唇を外したディルは何だか懐かしいような瞳を私に向けてくれました。


「私、昔あなたに会ったことがあったのね」


「思い出したか?」


「少しだけ、だけど」


「それでも嬉しいよ。メイリィ」



そしてディルの温もりが、私の体を抱きしめた。



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