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両親兄姉たちの言い分


「うぐ。すまないメイリィ。メイリィを嫁がせるしかないこの父を、許しておくれ」


「しっかりなさってください。父さま。今や一大帝国を築く竜帝国の属国となった以上、属国として妃を差し出し忠誠心を示すのは当然ですわ」

私は多分、父に似たのだと思う。父は人族の国・ツェイロンの国王をやっております。因みに私はそのツェイロンの第3王女だったりします。父は銀色の見事なさらさら髪をキレイに切りそろえおり、アメジスト色のキレイな瞳を持つ美丈夫です。その父に色を色褪せたかのような私の白い髪、そして薄紫色の色素の薄い瞳。父は美丈夫ですが私は割と普通の顔立ちです。


「しかしっ!!しかし、だな」

そんなに悔しがらないでくださいませ父さま。妃を決めるため三日三晩の激論会議の末決まらなかったからとして、やけになった宰相兼伯父さまがじゃぁくじ引きで!と言い出し三徹さんてつで出現した目元のクマによって、悪の王さまのような見た目になった父さまもやけになって賛同して決まった私の嫁入り。


―――くじ引きで妃を決めるって。


ウチの国、大丈夫かしらね。いや父さまと宰相もやけになってくじ引き大会を催しておいてよく国を治めているとは思うけれど。


因みに私が貧乏くじを引いた途端ショックでこと切れたかのように1日寝入った父さまは、しっかり見た目ちゃんとした王に戻ったわ。


―――そして今日はその翌日。私の前には父や母、兄姉たちが集まっている。


「まさかメイリィが竜帝国の皇太子殿下に嫁ぐなんてっ!!」

母さま、そんなに悲しまないで。母は恐らく国でも1、2を争う美女でしょう。金色のウェーブがかった長い髪に前髪を真ん中分けにしておりエメラルドグリーンのアーモンド型の瞳を持っている。整った顔立ちに雪のように白い肌。どこからどう見てもカンペキ美女です。


「こうなったら玉の輿!玉の輿に乗ったと思って張り切って行ってらっしゃいな!!」

いや母さま。先ほどの涙は、ウソ泣きっすか?明らかに瞳にめらめらと炎を顕現させガッツポーズを向けてくる。うん、強い母だ。何事にもポジティブな母がいればこの国は大丈夫だろう。私は安心して嫁ぐことができそうです。


「あうぅ、メイリィ。お兄ちゃんは、お兄ちゃんはメイリィが嫁に行くなんて、嫌だ!!」

いや駄々こねないでください、シンシャ兄さま。シンシャ兄さまは王太子なんですよ?因みに母の遺伝子をこれでもかと受け継いだ金髪にエメラルドグリーンの美青年です。おとぎ話の中から現れたかの如き王子さまです。

―――中身は全くの別物ですけれど。


「小さい頃お兄ちゃんのお嫁さんになるって言ったじゃないかぁっ!!どうしてお兄ちゃん以外の嫁になんてなっちゃうんだ!!」

どうやらそれは、私が3歳の時に言ったらしいシンシャ兄さまを骨抜きにした、よくあるちびっ子の

父さま/兄さまのお嫁さんになる宣言らしいのですが私にはその記憶はありません。3歳の頃の話ですからね。


以来、シンシャ兄さまはそれを私の誕生日に自慢していらっしゃったのですが、さすがに恥ずかしいですし実の兄王太子に嫁ぐ妹がどこにいるよ。後でエイダ義姉さまに通報して恒例のお尻ぺんぺんをしていただきましょう。


「本当は、姉さまが代わってあげたかった!」

何を言っているんですか、ユーリィ姉さま。ユーリィ姉さまは既に同じ竜帝国の属国に嫁いでいるじゃないですか。ユーリィ姉さまは父譲りの銀糸のさらさらロングヘアをなびかせががら、美しいアメジスト色の瞳をうるうるさせています。


「夫も私のかわいい妹のためならと同意してくれたわ!」

んなわけあるかです。遊ばれていますよ。ユーリィ姉さま。しかも、相手は隣国の王太子殿下。さすがにユーリィ姉さまをくじ引きに参加させるわけにはいかなかったので、後ろで大失笑しているユーリィ姉さまの夫・アレン義兄さまに思う存分拘束していただいておりました。


アレン義兄さまは隣国で多い艶やかな黒髪に以前異国の血が入っていると仰っていた神秘的な銀色のつり目がちな瞳を持っていらっしゃいます。そしてアレン義兄さまは“獣人”の国の出身です。なのでふわもふ狐耳しっぽを持っていらっしゃいます。


そんな美しすぎる王太子ですが私が思うに、アレン義兄さまは生粋のドSですね。くじ引きごときで絶叫して暴れ出したユーリィ姉さまを腕で抱きしめ拘束しつつユーリィ姉さまにすりすりして、ふわもふ狐しっぽをユーリィ姉さまに巻き付けて、終始楽しそうにしていたアレン義兄さま。


あのとろけるような麗しの変態顔はぶっちゃけホラーですよ。このひとが隣国の王太子で本当に大丈夫なのかと、思われるかもしれませんがユーリィ姉さまを愛でる時以外は凛とされていて仕事も速い完璧超人なイケメンです。ユーリィ姉さまと結婚されているにも関わらず、側室希望が絶えず、また今でも多くの女性たちにモテモテ。国内のみならず周辺国でも絶大な信頼と人気を誇っておられます。この真実の顔を拝見している義妹としては王太子としての顔だけは、尊敬しております。


「姉さまだって、代わってあげたかったわ!」

まぁ、その気持ちは何よりですがアルシャ姉さまは絶対に無理です。

王太子殿下の嫁じゃなくても絶対に無理です。


だって、アルシャ姉さま。






―――男じゃないですか。





母の金色のウェーブがかった見事なロングヘアをハーフアップに結い上げ、父のアメジスト色の神秘的な瞳を持つアルシャ姉さまは母に勝るとも劣らない美貌の姫と謳われます。


ですが、その肉体はまごうことなく男性です。因みに正真正銘の女性である我が国の公爵のご令嬢と婚約されています。将来義姉さまになるその方・リンファさまは、たいそう男勝りで剣の腕もたつご令嬢です。紫色の流れるような髪を一つに結い上げ、キリっとしたダークグリーンのつり目がちな瞳を持つ美人です。ついでに姫カット。


そんなリンファさまのカッコよさに惚れたアルシャ姉さまは、彼女との婚約を嬉々として了承されました。因みに未来の義姉さま・リンファさまは近衛騎士隊に所属しており、今もそこに控えております。表情筋を殺し、涙に濡れる麗しのアルシャ姉さま(男)をその脳裏に焼き付けるかの如く物凄い眼力でこちらを見ていらっしゃいます。本当にこのアルシャ姉さまが引き当てていたら、まさかの宗主国に激怒されませんかね?全く、私が貧乏くじを引いたことに感謝ですね。


「私だって、代わってあげたいっ!」

シャンリィ姉さま。


シャンリィ姉さまはまだ婚約者がおりません。しかし、その淡い金色の髪を真ん中わけにし紫色の瞳のコントラストが抜群な上、ものっそい儚げな美人なシャンリィ姉さまには縁談がひっきりなしに来ております。しかし、病弱なシャンリィ姉さまの縁談はあまり思ったように進まないのです。


だからぶっちゃけ私とシャンリィ姉さまのどちらかが選ばれることになっていたのです。


「大丈夫ですよ姉さま。私、しっかりと皇太子妃の責務をまっとうしてまいります」


「メイリィちゃんっ!なんて優しい子なの!?あうぅ、お姉さま、お姉さまは、―――げほぁっ」

過度に興奮したお姉さまは案の定いつもの吐血をされて、控えていた医療班が搬送していってしまいました。元々お体が丈夫ではないお姉さまですから、実質皇太子妃になるのは私しかいなかったのです。


宰相である伯父さまは私しかいないと主張し、父さまたち一派は私をお嫁さんにしたくないと激論を繰り広げたそうです。


あぁ、日々の仕事はどうかって?大丈夫です。そのしょうもない会議をやるために王家総出で日中に仕事を片付け、その後寝ずに朝日が昇るまで激論を繰り広げたのです。


―――その結果の三徹です。


本当に、このひとらは。因みに結果がわかり切っていた私は会議室の机にほっぺたをつけて、およそ一国の姫とは思えぬ爆睡っぷりを披露しておりましたとも。


シャンリィ姉さまの嫁入りの時はせめて二徹までにしてくださいね。


私は早速嫁入りの準備にかかります。そんな時、宰相である伯父さまに呼ばれました。伯父さまは母の兄でもあります。兄妹そろって美人です。金色の髪は母と同じく前髪は真ん中分けにしており、エメラルドグリーンの瞳を持つ美しい顔立ちの美丈夫ですよ。


いつもウチの父と兄姉たちがすみません。と謝ると、先ほどくじ引きで使った棒を見せてくださいました。


握ってみてほしいと言われたので握ってみると。あれ?全ての棒の先っぽが赤く染まっている?


「姫さまにだけは真実をお伝えしなくてはと思いまして。これ、姫さまの魔力を感知すると先っぽが

赤くなるようになっている魔道具なのです」


「―――っ!?」


「騙す真似をして申し訳ございません」


「いえ、いつもご迷惑をおかけしておりますので気にされないでください」

宰相である伯父さまのはかりごともこの国を思ってのこと。むしろ小細工までしていただいて感謝極まりありません。何せ私以外に候補はいなかったわけですし、他の兄姉たちが選ばれたらとんでもないことになっておりました。


「あと、姫さまを嫁がせることについては」


「はい」


「竜帝国の皇太子殿下のご指名だったのです。これだけはお伝えしておきますね」

は?つまり最初から私以外に候補がいなかったと?最初から私が嫁ぐことになっていたと?しかし、何故私なんだ?病弱なシャンリィ姉さまのことを気遣ってくださったのだろうか。優しいお方なのかもしれませんね。少し安心しました。


結局、最初から三徹などする必要はなかったと言うことです。

―――爆睡していて正解だったということですね。


※シャンリィ姉さまと私※

シャンリィ「メイリィちゃん。今日は姉さまが刺繍を教えてあげるわね」

メイリィ「はい、シャンリィ姉さま」

シャンリィ「これが、初めて姉さまが刺繍したハンカチなのよ」

メイリィ「わぁ、姉さまの刺しゅっ、血まみれじゃないですか―――!!」

シャンリィ「てへっ」



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