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美少女と魔獣~実は人間だったなんてウソですよね!?~  作者: 真麻一花
発覚後の行く末

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9/11

9嫁さん(予定)かわいいから問題なし!


レオン視点





 ………………あのさ。自慢だけど、俺めっちゃかっこよかったのよ。そりゃあもう、いい気になってブイブイやっても許してもらえるぐらい。俺の顔見ただけで、女の子たちは軒並みぽーってなって見とれるぐらい。

 ………なんでリリーたん、俺の姿見て「は? だれ?!」みたいな歪んだ顔してんの?


「……リリー。ありがとう。君の愛で、私は元の姿に戻れた」


 なんでか愕然とした顔をしてるリリーの手を取って、手の甲にちゅっと口付けて、場を取り繕いつつ、リリーたん現状把握して!!と、願った。


「……れ、レオンさま?」

「ああ」

「ホントに、レオンさまですか? え。あの、だって………レオンさまは、獅子の獣人で……」

「私はね、リリー。呪いにかかっていたのだよ。君が本来の姿に、戻してくれた……」

「そん、な……」


 驚いた様子でリリーが口元を覆う。その手が小刻みに震えていた。

 やっぱり、なんか反応、おかしいよねー……。

 そんなの聞いてないんですけど……? みたいな拒絶方向の雰囲気がねー……。あれぇー……?


「わ、私、なんてことを……ごめんなさい……ごめんなさい……」


 ははは……なんで、謝ってんのかなー……?

 ものっすごく、聞きたくないけど、聞かないわけにもいかないよねー……。

 ちょっと俺、泣きそう。


「リリー?」


 ボロボロと涙をこぼす彼女に手を伸ばせば、ビクッと震える。

 ……イヤ、うん、リリーたんからしたら、知らない男の姿だもんねー。人間の男怖いもんねー……うそぉぉぉぉぉ!!!!! えぇ?! まさか、そういうこと?!


「……すまない、人間の男の姿は、恐ろしいか?」


 嗚咽で声も出せず泣きじゃくる彼女だったが、それでも俺の自嘲に、必死に首を横に振る。優しいかよ……。


「ひとまず、城に帰ろう」


 促せば、彼女は俺の後についてきた。差しのばした手に、震えながらも乗せてくれる様子が、痛々しかった。

 俺も泣きたい……。せっかく人間に戻れたのにー……。




 城に戻ると、やはり全員が人間に戻っていた。祝宴中だった。なんで俺抜きではじめてるの?!


「レオンさま! リリーさま……なぜ、泣いていらっしゃるのですか? ……レオンさま、もしや……」

「違う! 違うぞ! 誤解だ!! 手は出してない!!」


 なにも言われてないが、その目は絶対、そういう意味だろう!! 俺の人間性を疑いすぎじゃないでしょうか!!! いくら呪いが解けた=両思いだとしても、人間に戻った途端襲うようなクズじゃありませーん!!


「……皆様、獣化が、解けて、らっしゃるのですね……。私、なんということをしてしまったのでしょう………申し訳、ありません………」


 またぽろぽろ泣き出した彼女に、全員の目が俺に問いかけてくる。

 俺もまったく訳が分かってないので、泣きそうになりながら首を横に振った。


「この森から人を守ってらっしゃる皆様に、はからずも獣化を解くようなことをしてしまい、申し訳ありません……。あの姿であるからこそ、なせることがあると、おっしゃっていたのに……。誇り高き皆様の邪魔立てをするような真似を、わたくしは……」


 あー。言ったね。確かに言った。「私がこの姿なのは、ここで魔物を食い止めて、人の世を守るためなのだろう」とかなんとか。「なれば、この姿である事は、誇れることなのかもしれないな」とかなんとか。

 ……だって!! リリーたんが! 褒めてくれるから! なんか格好いいこと言わなくちゃとか思って! なんかそれっぽいことを言った気がする!!


「違う! 私たちは呪われてあの姿になっていただけだ。解ける日を待っていたんだ。君が、解いてくれたんだよ……」

「……そんな風に、気遣って、私に負担をかけないようにおっしゃって下さるけれど、でも、私は、私が許せません……っ」


 えええええー……。そうくるのーー……? まさかの、獣人の方がよかった展開?!


「……君は、私が獣の姿の方が、よかったのか?」

「どんな姿でも……!! レオンさまはレオンさまです!!」


 めっちゃ慰められたんだけど。

 ……俺、そこまで気を遣われるような、容姿だっただろうか……。

 夢見たとおりのすごく嬉しいこと言われてる気もするけど……なんかちがーう……。俺、ちょっと泣いていい?

 遠い目になった俺に、彼女が気遣うように手を差し伸べてくる。


「触れても……?」


 頷けば、彼女がそっと頬に触れてきた。そして、また目元に涙が溜まってゆく。


「どうして、こんなことに……。レオン様……どんな姿でも、レオン様は素晴らしい方です。これまであなたが築き上げてきた功績は消えません……。呪いを解いた私がなにをとお思いでしょうが、お慕いしております。姿が変わっても、あなたがあなたであるのなら、それだけで……あなたがどんな姿であっても、あなたに会えただけで私は幸せでした……」

「ええええー……」


 なんだろう、フォローされればされるほど、胸が痛い……。


「誇り高き王であるあなたがこのような人間の姿になるなど、さぞ屈辱でしょう……どうか、この罪深い私を、罰して下さい………」

「ええええー……」


 リリーたんから苦境に耐えるように嗚咽を飲む音がする。すぐ後ろで同じく人間になってしまった執事が口元を覆い、耐えるようにうつむいていた。


「ん゛ん゛ん゛ん゛っっっ」


 執事から耐えきれないような咳が漏れた

 お前、いま絶対笑いをこらえてるよな。うつむいて笑ってる顔を隠してるよな?!全然ごまかせてねぇからな!!


「リリー、やめてくれ。そんなことを言わないでくれ。愛し愛されていないと解けない呪いだ。私は君に感謝しているし、愛する君に罰など与えるわけがない」


 リリーたんの思考回路が今ひとつわからないけど、とりあえず獣人の方がよかったことだけは理解した。で、なんか、罪の意識を抱いているらしい。意味わかんなーい。

 とりあえず……引き留めるべし!!

 でもリリーたんの表情は悲嘆に暮れている。地味に傷つくんだけどー……。まさか、あの姿をそんなに気に入ってもらえてたとは……それって! もしかして、細身の男が好みじゃなかったとか?! ジーザス!!

 冷や汗吹き出る中、リリーたんが切なげに心情を吐露する。


「……けれど、こんな罪を犯してしまった私は、やはり、ここにいるべきではないのでしょう……」

「なにを言って……」

「元々、つり合わない恋でした。国を追われて、なんの力もない小娘に、よくして下さって……。挙げ句、こんな……どうすれば、償えるのでしょう……」


 いや、だから……。


「償いなどいらない。呪いを解いてくれたのは君だ。そう言っただろう。愛した君に愛されて、なにを憂うというのだ」

「……お気を、遣わせて………」


 ………オーケーわかった。そういうことにしよう。それでいこう。


 これは、諦めたのでもなければ、逃げたのでもない。そう、これは、乙女の夢を壊さないための決断なのだ。

 リリーたんは悔やんでいる。なぜなら俺が望まずして人間になったから!

 じゃあそういう事にしようじゃないか。俺は人間に戻りたくなかった、よし、そういうことにしよう。

 決して保身のための大人の選択ではない。そう、これは、リリーのための大人の決断!

 俺は望んで獣になってたし、人間や国のためにここを守ってたし、不本意ながら獣化が解けたけど愛するリリーのために本心を隠して、人間に戻ったことを嬉しいという嘘を言ってるのだ!!

 なに言ってるのかわかんなくなってきたけど、うん、まあ、リリーたんがそう思ってるのならそれでいこう!!

 これからは、それが真実!!

 事実など、使用人たちしか知らねぇんだから、いいんだよ!!

 あいつらも、リリーたんがかわいいから、わざわざ傷つけることは言わないだろう。


 俺も幸せ! リリーたんも幸せ! 完璧!!! 事実なんて糞食らえだ!! 俺はリリーに愛されたいし、尊敬されたい! 汚いと罵るなら罵るがいい!! 事実で互いが不幸になるよりかよっぽどいいわ!!


 そうと決まれば、リリーたんの気持ちを逆手に取ろうか。姿が変わっても愛してるといってくれてるわけだし、愛してもらおうじゃないか!!

 これが!! 二百年の経験値!!

 俺は切なく笑って見せた。間違いなく今の俺はいろんな意味で切ないから、表情は割と素だ。


「人間になった私には、興味がないというのかい?」

「え……?」


 案の定リリーたんがびっくりした顔になる。よし、いいぞ。更に畳み掛ける。


「獣の王として、ここを守れない私には、価値がないと?」

「そんな……!!!」

「出て行くなどと言うな。償うなどと言わなくていい。君に、ここにいて欲しい。私の側にいて支えて欲しい………君にそう願うことは、リリーにとって苦しいことかい?」


 リリーたんは、涙を溜めて首を横に振る。

 よかった!! 否定されなかった!!

 安心しすぎて、俺も泣きそうになる。

 生きててよかった……。獣じゃなくていい、人間でも愛してる……リリーたんに、そう言われる男になりたい。……なんか、それ、おかしくない……? まあいいや、リリーたんがモフスキーに進化したのなら仕方ない。そういう事もありうるだろう。

 でもリリーたんは憂い顔のままだ。


「でも、私が幸せになるばかりです……」

「それこそが私の望みだと言っても……?」

「レオンさまは、優しすぎます……」


 抱き寄せるように腕を引くと、彼女は俺の胸にぽふっと頭を預けてくれた。

 おそるおそる背中に手を回してみると、彼女も俺の背中に手を回してくれる。

 いやっふー!!!! リリーたん、説得できたー!!


 使用人全員が一糸乱れぬタイミングでサムズアップした。誤解を解くのをやめたのは正解だったらしい。俺も返しておいた。

 よし、真実は、闇の中へ葬ろう。





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