表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
美少女と魔獣~実は人間だったなんてウソですよね!?~  作者: 真麻一花
裏:レオン

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/11

7告白


 手を差し伸べれば、彼女ははにかみながらも躊躇うことなく手を預けてくれる。

 人の手の形なのに、爪も毛皮も肉球もある、化け物としか言いようのない手だ。なのに彼女はその手を取って、毛並みを撫で、肉球をむにむにと指圧し、指先を押して爪をにょっと出して、目を輝かせながら弄ぶ。怖がるどころか、「大きな手なのに、かわいいですね」なんて、かわいいのは君だ…!! みたいなことを言ってくる。


「化け物の手だろう……?」

「違います。人に恐れられても人を守り続ける、力強くて、優しくて、誰よりも安心できる手です」


 そんなことを言って、握った手に頬を寄せられて……惚れてまうやろぉぉぉぉ!!


「手だけじゃありません。この大きな身体もその顔立ちも全部、凜々しくて気高くて、……かっこいいと、思います」


 リリーたん、かわいい……。もう惚れた。惚れたから、それ以上はやめて……襲ってまうやろ……。


「はは……気を遣わせたようだな。すまない。私は、女性にとって……イヤ、人間にとって、恐ろしい見た目だと言うことは理解している。無理をしなくても良い。それを責めるつもりはない。こんなかわいらしい女性から気にせずに、こうして普通に話をしてもらえるだけでも、私は十分に救われている」


 全力! 自制!! ちょっと自分で古傷抉って吐血しそう。大丈夫。リリーたん優しいから否定してくれる!! それを見越しての自虐である。二百年の経験値舐めんな。

 リリーの優しさに甘えてほんのちょびっといい気になりつつも、自分の立場を確認するそんな自虐の言葉だった。

 なのに彼女は、ひどく驚いた顔をして、苦しそうにうつむいた後、きっと俺を睨むように見つめてきた。


「そんな悲しいことを、おっしゃらないで下さい……!」

「悲しい?」

「私は、心から……。いえ、確かに最初は恐ろしいと思いました。でもすぐに皆さんもレオンさまも優しい方々だと分かって、そのお姿も大好きになりました」

「……ありがとう。その言葉だけで十分だよ」


 この子、マジ天使。リリーたん一生推せる。

 尊さで昇天しそうだ。俺は、なんとか笑顔を浮かべることができただろうか。イヤ俺の笑顔は牙がのぞいてめちゃくちゃ怖いんだった。やっべぇ。

 けれど俺に応えるように、彼女も微笑む。微笑んだ彼女は「それで、あの、……」と、何やら言いよどむ。

 なになに? もうそんなかわいいこと言われたら、おじさん、なんでも聞いちゃうよ!!


「気高く美しいあなたの姿も、誇り高いその心も、全て、お慕いしております……!」


 頬を染めて、彼女はそう俺に告げた。

 うっそ。マジで?

 いやいやいや、落ち着けオレ。お慕いって、別に恋してなくても尊敬でも使うってば。


「…………こんなかわいい天使に慕われるとは、私も捨てた物ではないな。それほど尊敬されるようなことは、してないから、照れくさくはあるが、リリーがそう思ってくれるというのはうれ…………」

「違います!! お慕いしてるって言うのは、そうではなくって……あの、あ、愛……愛して、ます!」


 思考が飛んだ。

 待って、俺、夢見てない? 夢じゃない? じゃあ、なにか勘違いしてるよね? 愛情にも色々あるしね! なるほど!


「……父親のように?」

「違います!」

「…………兄?」

「こ、恋してます!!」

「……こい?」


 こ、これ、やっぱり幻聴じゃね? え? 幻覚? いや、そりゃ、脈アリとかなんとか脳内会議してたけど、イヤだって、そんなん妄想だから勝手に言えただけで、夢?! いや、だめでしょ!! こんなところに閉じ込めちゃったから、なんか歪ませちゃった? うれしいけど、これ、リリーのためにならないんじゃない?!

 動揺とは裏腹に、リリーたんが真剣な顔で言い募ってくる。


「恋です!!」


 ずっきゅーん☆

 打ち抜かれた。死ぬ。


「こんな、獣なのに……?」

「姿は関係ありません。どんな姿であっても、レオンさまはレオンさまです。あなたが、好きなんです。姿なんて、関係ないんです」

「だが、獣相手に……」

「……レオンさま!!」

「はい!」

「ごめんなさい!」


 なにが、と言う前に、リリーに口元を両手で挟まれ、ナニゴト?! と思っている内にリリーが顔を近づけてきて、ちゅっと。

 ちゅっ、っと………。

 キスされたんだけどーーーー!!!!!

 ふぁー!! 乙女のキス!! 告白のキス!! これって、もしかして!!


 呪い解けるやツーーーーー!!!


 俺の周りを光が取り囲んだ。

 おっふ。魔女のヤツ、派手なエフェクト仕込んでやがった! 確かに、呪いが解けました感があった方がいいもんな!!

 俺の身体が、みるみるうちにしぼんでゆく。

 ガチだーーーー!!! ホントに呪い解けていってる!!! 俺、リリーたんに、本気で愛されてたーーーーー!!!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ