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赤ちゃん ※グロあり

サブタイトルで嫌な予感がした方や、グロ耐性がない方は即ブラウザバックなさって下さい。主人公発狂します。

「なんだか、今日は迷惑かてばかりで、ごめんなさい。」

「いや、そんな日だってあるって。」


 肩を落としつつ一緒に歩いてると、犬飼君が私の肩をトントンと優しく叩いて、宥めてくれる。


 どういうわけだか、私が触る物全て言う事を聞いてくれなかったのだ。

 ファミレスの呼び出しベルも、ドリンクバーも、押してるのにうんともすんとも言わないし、最後にはトイレまで流れない始末だ。

 三人とも魔力がどうのと言ってくるのだけど、こんな時にゲームの話なんかしないだろうし、私の容姿同様に幻聴をきいているのだろう。

 本当は対処を教えてくれてるだろうに、申し訳ない限りで気が滅入る。


 いや、気が滅入るほど、最初から元気なわけじゃないんだけどさ。


 溜息を飲み込む、これ以上雰囲気を悪くしたないし。気を取り直して。


「その、パンアイス?って――。」


 ウーーーゥ! ウーーーゥ!


 どんなアイスなの?と聞こうとしたのに、大きなサイレンの音で遮られた。


 ……何のサイレンだろ?結構近くで鳴っててうるさいな。


 何のサイレンだろうね?と聞こうとしたら、隣居た翔君が真剣な顔をしながら、指抜きの革のグローブをはめていた。

 よく周りを見ると、周囲の人々も厳つい表情をし、構えをとっていた。


「緋璃、(わり)いけど、蔦の張った建物に入っててくれ。」

「え?」

()()()()()()説明する時間がねえ。早く行け。」


 犬飼君がグローブの甲の部分から、光る鉤爪を生やしながら、静かに怒鳴った。

 その突拍子もない幻覚と突然の命令口調に驚きつつ、犬飼君達に私は背を向け、言われた通りに蔦の張った建物に向かう。

 数人が同じように蔦の張った建物に向かっている中に、私も混ざって同じように走った。


 何が起こってるの?浴槽からずっとからずっと変な夢でも見たるの気分だ。

 でも、お茶を飲んだら火傷したし、それなのにグラタン頼んでヒリヒリしたし、夢なわけがない。

 ああ、どこからどこまでが幻覚と幻聴なんだろう?


 私が最後だったからか、私が指定された建物に入った途端、シャッターのようなものが降りてきた。

 鉄格子式のそれが、ゆっくりと降りるのをぼんやりと眺める。


「回復系はこっちに集まって!」

「防御系は入口付近よ!」


 中の人々が、何やら後ろでキビキビ動いてるのがわかる。

 でも、言ってる内容がよくわからないや。


「どうしたの?」


 私が降り切ったシャッターを茫然と見ていたら、不意に小さな子供が近づいてきた。

 白い髪で6、7歳くらいの可愛らしい少年が、私の右隣りで心配そうに私を見上げている。


 ああ。君の髪は、本当は何色なんだろうね?


「どこか怪我した?」

「……ううん、おばちゃんはどこも怪我してないよ。」

「おばちゃん?」


 屈んで少年の頭を撫でながら答えた私に、少年が不思議そうな顔をし。


「おばちゃんってお姉「隆!まだ時間的には大丈夫だけど、こっちに来てなさい!」


 少年の言葉を少年の母親らしき人が遮り、少年はそれに対してはーいと、大きく返事をする。


「ここ危ないよ!一緒に奥行こう!」


 元気に私の手を掴んで引っ張る少年を、少し眩しいと思いながら立ち上がり、足を動かそうとした。

 その瞬間だった。



 あれ?私倒れてる?


「……なん、で、たか、隆、隆ぃ、たかぁ、あ、あ゛、あ゛あ゛あ゛あ゛っ!いやああああ゛あ゛あ゛!」


 周りで何故だか土埃が上がってて煙い。

 あ、白くて小さな手、私、いつの間にマネキンの手だけなんて握ってたんだろ?

 それにしても、周りが騒がしいな。


「サイレン鳴ってからまだ五分も経ってないぞ!」

「原因究明なんて今はいい!防御系前に出ろ!」


 ……痛い、頭打ったのか、痛いな。


「奥さん!あんた腹に居んだろ!あんただけでも早く奥へ逃げるんだ!」


 それとどこか切ったかな?ヌルっと生暖かい液体の感触がする。


「いや、い゛や゛よぉ。だっでぇ、だぁかしがっ!!」


 ああ、あの子、あの子は怪我してない?大丈夫かな?


「君!意識があるなら、早く奥に来るんだ!」


 誰か私に向かって喋ってる?でも、ごめんなさい。もう幻聴を聞くのはたくさんなの。なにもしたくない、何故だか気力が湧かないの。


「くそっ!」

「あ、おい馬鹿、やめろ!お前戦闘系じゃない癖にっ!」


 誰かが駆け寄ってくる。億劫だけど、無理やりそちらに顔を向けた。


「早く。」


 こっちに、って言おうとしたのかな?でも、その男の人はそれ以上喋れなかった。

 だって、潰れちゃった。グシャッ、て、とにかく水分を含んだ物が潰れる音して、漫画みたいに頭からでっかいこん棒みたいなので、ぺちゃんこ。辺りにいろいろ撒き散らしてぺちゃんこだ。

 これも、幻覚かなぁ?


 これが阿鼻叫喚というものか、と思うよな叫び声沢山周りで上がる。

 それに比例するように、液体が辺りに叩きつけられるような音も鳴り響く。

 私は、ぼんやり周りを見ることしかできなかった。


 だって、アニメの様な光景が広がってるんだもの。

 沢山の様々な怪物が人々を、齧ったり、殴ったり、引っかいたり、突き刺したり、引き裂いたり、犯したり、潰したり、引きずりまわしたり、おもちゃの様に遊んだり、蹴ったり、切り刻んたり、たり、たり?たり!とにかくたくさんひどいことしてるの。

 こんなの、げんかくだよ。


「あ、今度は逆さまだ。」


 私の足が大きい手の様なものに掴まれ、体を逆さまに持ち上げられて、頭に血が上る。

 その感覚が、気持ち悪いのに、とても可笑しなことの様に感じて、私はからからと笑う。


 すると、目の前にいる。人の形をした何か、きっと怪物だ。怪物が不服そうな顔してる。しかも複数いる。

 なにそれ、ウケる。


 もっと声を上げて笑ってたら、どこからか赤ちゃんの泣き声がする。


 ああ、赤ちゃん、どうしたの?赤ちゃん、赤ちゃん。大丈夫よ。


「赤ちゃん、赤ちゃん。」


 当てもなく手を伸ばすと、怪物の一匹がニヤリと笑った気がする。

 その怪物が背を向け、どこかに行ったかと思うと、直ぐに戻ってきた。


「ダメ。」


 首根っこ掴むなんて、なんて乱暴な持ち方するの?赤ちゃん泣いてるじゃない。ダメよ。そんなの。

 そして怪物が私の目の前に着て。


「赤ちゃん。」


 グチャッ


 床に叩きつけられた。なにが?赤ちゃんだ。


 グシャッ、べキャッ、ゴシャツ


 何度も、何度も何度も何度も何度も何度も。

 最初の一回でもう泣き声が上がらなくなったのに、繰り返し何度も叩きつけて、怪物は握れない物体になるまで、叩きつけた。


 あ、あぁ。ダメ、こんなのダメ。幻覚だろうと何だろうと、許せない。許さない。


「死ねよ。」


 私の言葉に怪物達が咆哮を上げた。違う。これは咆哮じゃない。笑ってるんだ。こいつら。


「死ね。何でこんな。死ねよ。」


 赤ちゃん、どうして、なんで、こんなむごい事。


「お前らみんな死ね。何で生きてんだ化け物。死ね。」


 赤ちゃん、私の赤ちゃん。私のも、潰れた。潰された。


「死ねよ。死ね。死ね死ね死ね死ね死ね。」


 赤ちゃん。何も悪くないのにね。なんで、殺されなきゃならないだろね?

 ――ああ、そうだ。うん、そうだね。そうしよう。そうしなきゃ。ね?


「殺してやる。」


 その瞬間、血が舞った。

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