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U子  作者: 憂木冷
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U字型の磁石

 目の前にあるものを「見覚えがある」と思うのは、珍しいことではない。

 それが自宅の中であれば、日常茶飯事の出来事だろう。

 だから僕はいつものようにそれを見て、見覚えがあると思った。

「えっと」

 と1人きりの部屋で口ごもる。

 ただ見覚えがあると言っても、今この場では見覚えがあるということ以上の情報を処理することができていなかった。

 一度、頭の中を整理したほうがいいのかもしれない。

 よくある光景かもしれないけれど、僕は一人暮らしの自宅の冷蔵庫に、いくつかの磁石を貼り付けていた。

 そのうちのひとつに、U字型の磁石があった。

 大人の手の大きさくらいの、家にある磁石の中では比較的大きなモノで、確か小学生の時から持っていたような気がする。どんなタイミングでそれを買ったのかまでは、思い出せなかったし、それほど愛着があるわけでもない。もしかすると、当時は理科の授業で使っていたものかもしれない。高校生となった今は、もうU字型の磁石に触れる機会などなくなってしまった。特に捨てる理由も無かったから残っているだけのものだ。

 僕はそのU字型の磁石のことは一切頭にないまま、数分前に風呂場から出た。

 だから、いつものようにそれを見て、というのは少し表現が間違えているかもしれない。

 いつもは、冷蔵庫に貼り付けてあるそれが無意識に視界に入っているだけで、ここまでまじまじと見ることは珍しかった。類似品と入れ替わっていたとしても、気が付かない程度の認識しかない。

 さて。頭の中の整理はこんなところだろう。どこにも不明確なところはない。あとは現状を再確認するだけだ。

 時間は夕方。1年ぶりに出会った初夏のじっとりとした汗を流すためにシャワーを浴び、風呂場を出て濡れた髪をドライヤーで乾かし、腰にタオルを巻いたままリビングの扉を開くと、ちょうど扉の前の位置に浮遊するU字型の磁石があった。

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