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7年目の約束-連載版-  作者: ひろきち
第2章 7年目秋~冬
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麻友お嬢様

「なぁ 渋川って本当にお嬢様だったんだな」

「言っただろ社長令嬢だって」


とある土曜日。

俺は今、川北町の住宅街の外れにある渋川の自宅前に居た。

文化祭の出店をA組とB組合同で行うにあたっての打合せをするためだ。

A組は、代表として俺と楓、実行委員の結城とまとめ役の早瀬の4人。

B組は、実行委員の渋川さんと大崎さん。俺と同じバスケ部で学級委員の吉見と森川さんの4人だ。

ちなみに大崎さんは・・・渋川さんに頼まれて断れなかったらしい。


インターフォンを押すと、大きな門が自動で開いていった。

そして、広い庭の先にある玄関に近づくと


「いらっしゃいませ。麻友お嬢様がお待ちです」


とメイドさんが出迎えてくれた。

『すげ〜本物のメイドって初めて見たよ』

でもこのメイドさん何処かで見たような・・・


「・・・もしかして大崎さん?」


もしかしなくてもよく見たら同級生の大崎さんだ。


「なんでそんなカッコしてんの?」

「何って・・・バイトかな」

「バイト?」

「うん。私、土曜日限定だけど麻友の家でメイドのバイトしてるんだよ

 平日はちゃんとしたメイドの人がいるんだけど土日は休みだからその代役。

 まぁ半分は麻友の遊び相手というか勉強したり遊んだりしてるだけだけどね。

 あっ 一応食事作ったり掃除したりもしてるよ」


何だか楽しそうなバイトだなそれ・・・時給幾らなんだろ。

執事は募集してないのかな?


「とりあえず、私の家じゃないけど遠慮なく上がって!」


と大崎さんに案内され渋川さんが待つ応接室に通された。

うん。絵画に彫像、革張りソファ。

予想通りというか絵に描いたようなお金持ちの部屋だ。


前言撤回だな。こんな貴重品の多い部屋の掃除とかしたくないや俺。

頑張れ大崎さん。


「皆さまお待ちしていました。

  隆さんも皆さんを連れてきてくれてありがとうございます。助かりました」

「お おぅ」


渋川さんは座っていたソファから立ち上がり俺達を迎え入れてくれた。

それにしても結城は"隆さん"って呼ばれてるのか。前は結城君だったのにな。

何というか旦那感があるな。

楓の"ケンちゃん"も親しみやすくていいけど、俺も今度から"健吾さん"とか呼んでもらおうかな・・・でもそれはそれで何だか恥ずかしいな。


「え え~と田辺君?何だか楽しそうだけど、初めてよろしいかしら?」

「え?あ あぁ大丈夫だ。早速始めよう!」


って俺凄くニヤケてたりしたのか?結構恥ずかしいぞそれ。


今日の進行は渋川さんが行ってくれた。


「A組の衣装は早瀬さんが作るんですか?」

「うん。まだ試作品1着作っただけなんだけどね」

「それなら型紙とかあるんですよね?

 私達も来週メイドの衣装を業者に発注するので一緒に発注しちゃいましょ」

「メイド服のデザインとかは大丈夫なのか?」

「はい。美津子ちゃんが作ってくれました」

「美津子ちゃん?」

「あっ 私だよ。大崎美津子。

 これでも本物のメイドだからね裁縫とか家事全般は得意なんだ。

 一応バイト始める前に研修も受けたんだからね」


本当か?何だか胡散臭いメイドだけど・・・

って研修あるの?


「でも業者に頼むと結構高くなるんじゃないの?」

「知り合いのメーカーさんに頼めるからかなり安くできるはずよ。

 各自手作りする時間を考えたらコスパもずっといいと思うの」


確かにデザインまで出来てるならその方が効率は良いな。


「うん。そうだな発注しよう。早瀬さんは型紙とかのデータを渋川さんに渡しておいてくれ。それから衣装数やサイズについても頼む」

「了解。渋川さん後でメールでデータ送るね」


今日の段取りを色々と考えてくれていたのか渋川さんの進行は中々上手く、必要な決め事はほぼ決めることが出来た。

提供する料理メニューは、無理のなさそうな内容で大体決めたので週明けに実際に調理を行う料理部メンバの意見を聞いて最終決定する。

内装もデザイン画は出来ているので両組で協力して制作を行うこととなった。

資材もまとめ買いすれば安くなるからな。

ちなみにカップやお皿は渋川が知り合いのお店から安く仕入れたり借りてくれるとの事だ。流石お嬢様は知り合いも多いというか交友関係が広いんだな。


と色々と皆で盛り上がっていると何やら美味しそうな匂いがしてきた。


「ん?何の匂いだ?」

「ふふ~ん。そろそろお腹空いてきたでしょ

 メイドさん特製のオムライスだよ~!!」

「「おぉ~!!」」


大崎さん。いつも渋川さんの傍に居るから何となくガサツな感じに見えてしまっていたけど、オムライスを持つ姿はなんというか、某所にある本場のメイドカフェに居てもおかしくないくらい可愛く見える。

それに、いつの間に席を外していたのか気が付かなかったけど、俺たち全員分のオムライスとサラダ、スープもササっと作って来てくれた。本当に家事全般得意なんだな。


「どうかな?おいしい?」

「おいしいよ!おかわりしたくなっちゃいそ」

「うん。私こんなうまく作れないよ」

「渋川さんから料理上手とは聞いてたけど流石本物のメイドさんね!」

「美津子ちゃんは本当料理上手なのよ」


大崎さんの問いに料理を絶賛する女性陣。

確かに美味しい。さっぱりしているようでコクのあるチキンライスにフワとろで見た目も綺麗な卵。それにただのケチャップじゃなくてデミグラソースが掛けられている凝りよう。ちょっとどころかかなり大崎さんを見直してしまった。


「凄く美味しいよ。大崎さん料理上手なんだね」

「え?あ ありがとう吉見君」


ん?大崎さんの反応。吉見に褒められてなんだか顔赤くしてる。

吉見って細身の美形タイプだけど大崎さんって吉見みたいなのが好みなのかな?

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