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7年目の約束-連載版-  作者: ひろきち
第2章 7年目秋~冬
91/189

バイトにて

[カランコロンカラン]


「いらっしゃいませ」

「え?楓?」

「あ、ケンちゃん」


とある日曜日の朝 7:00。

たまには、外で朝食でも食べようかとバイト先でもある喫茶店[ラウム]に来た。

店内はいつも通りの落ち着いた雰囲気で、日曜のこの時間はバイトリーダーの島田さんが働いているはずなんだけど・・・何故かウエイトレスの制服を身に着けた楓が居た。


「その服って、もしかして楓もここでバイトはじめたのか?」

「うん。まだ研修中だけどね」

「何でまた急に」

「ちょ ちょっと社会勉強してみようかなぁ~と」

「そっか偉いなぁ。俺なんか唯の小遣い稼ぎだからな。

 でもまぁ、そういうことなら俺も一応バイトの先輩だな。

 何かわからないことあったら聞いてくれな」

「うん。よろしくお願いしますね。せ・ん・ぱ・い」


なるほどねぇ~社会勉強か。

でも・・・"先輩"何だかいい響きだ。

それにウエイトレス姿。いつもの楓と違う雰囲気だし結構"あり"だな。

そんなことも思いながら楓に案内されて、俺は奥のテーブル席に座った。

この店は開店当初はコーヒーと軽食の所謂昔ながらの喫茶店だったらしいんだけど、一時期のブームにあやかってモーニングサービスをはじめたところ意外とヒット。今でも続けているらしい。

実際コーヒーが美味しいのは当然だけど、食パンやサンドウィッチ、ホットドックなども味がしっかりしてて美味しいのがヒットの要因なんだろな。


「じゃ、モーニングセットをブレンドでお願い」

「はい かしこまりました。ブレンドコーヒーにモーニングセットですね」


うん。注文の受け答えとかもしっかりしているし慣れるの早いみたいだな。

流石は楓。いやここは指導している島田先輩が凄いのかな?

などと考え事をしながらコーヒーが来るまでの間、スマホを弄って時間を潰していると、


「君、可愛いね! 新人さん?バイト終わるのって何時かな?

良かったら僕らと遊びに行かない?」

「えっ あの・・・・」


入り口付近の席に座っていた大学生くらいの男二人組が、注文を取りに来た楓をテンプレの様な言葉でナンパしている・・・

楓が可愛いのはわかるけど、ナンパとか許せんな全く。ちょっとイラっとした。


「あの、そういうの困りますので・・・」

「あぁ僕ら怪しいものじゃないから大丈夫だよ。

 ね♪いいじゃん。遊び行こうよ」


と男が楓の手を取ろうとしたタイミングで俺がその手を遮った。


「ここはそういった類のお店では無いと思いますよ」

「なんだお前?」

「彼女の恋人です」


俺は努めて冷静な口調で相手を睨みつけてみた。


「うっ・・・ふん 彼氏持ちかよ! 何だか白けたな帰ろぜ」


とこれまたテンプレ的なステセリフを吐いて店を出ていった。

『川野辺にもああいうの居るんだな・・・』


「あ、ありがとうケンちゃん。こういうの慣れて無くて・・・」

「まぁ慣れる必要も無いけど気をつけろよ」

「うん!・・・・・でもこいびとかぁ」

「ん?何か言ったか?」

「えっ な何でもないよ」


なんだかニヤニヤしながら、バックヤードに戻る楓を見送り席に戻ると、島田先輩がモーニングセットを持ってきてくれていた。


「田辺君も中々やるじゃん」

「何というか、自分の彼女がナンパされてるとか嫌でしょ」

「まっ確かにね。

 でも人の目を気にしてこういう対応が出来ない子も多いと思うよ」

「そんなもんですかねぇ

 あっ そういえば楓っていつからバイトしてるんですか?」

「ん?知らなかったんだ。ちょうど今日からだよ。

 湯川ちゃん経由で店長に話したみたい。

 田辺君と同じく開店前に研修やって今は実地研修中ってとこかな。

 あっなんなら今度シフト一緒に組んでやろうか?」

「はは 気を使わなくても大丈夫ですよ」


今日からだったのか。

そうか・・・お互いシフトに入ると会える時間とか減っちゃうんだな。


「島田先輩。やっぱり週1くらいは楓とシフト一緒にしてもらえますか・・・」

「ふふ 了解」


その後は、トーストを食べてコーヒーを飲み、日曜の朝から少し贅沢な時間を楽しみ帰宅した。

自宅でも同じようなことは出来るけど、喫茶店という空間でくつろぐのって何となく贅沢な気分になれるんだよな。


ちなみに今日はサッカー部の試合があるので、後で裕也達と見に行く約束をしている。梶や古川がようやくサッカー部に入部して初の公式戦らしいんだよな。

あいつ等とも色々あったけど、まぁ悪い奴ではないし応援してやるつもりだ。


<ラウムのバックヤード>

「楓ちゃん、田辺君にバイトの事話してなかったんだ」

「・・・何だか照れくさくて」

「まぁ確かに田辺君の誕生日プレゼント買うために始めたとか本人にはね♪」

「し島田さん それ秘密にしておいてくださいよ!」

「わかったわかった。でも、さっきの田辺君ちょっとカッコよかったよね。

 俺の女に手を出すな的な」

「・・・ケンちゃんはいつでもかっこいいですよ」

「・・・お暑いですねぇ ブラックコーヒーでも飲もうかしら」

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