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7年目の約束-連載版-  作者: ひろきち
第1章 7年目春~夏
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田辺雫⑤

翌日

いつもの様に日課のランニングに出かけようと着替えて部屋を出るとショートパンツにTシャツ姿の雫姉が居た。


「おはよ ランニング行くんでしょ?私も走るわ」

「え?一緒に走るって 帰る前に疲れちゃわない?」

「大丈夫よ。私も向こうでは毎朝走ってたし。むしろ体が鈍っちゃって」


ということで急遽雫姉と一緒にランニングすることになった。

いつもの様に小早川家に立ち寄り、楓と合流して川沿いのサイクリングコースを走る。朝の空気が心地よい。


「ねぇ雫姉さんペース早くない?」

「あぁ毎朝走ってるとは言ってたけど、あのペースでどれくらい走ってるんだろ」


俺と楓が毎朝走ってるコースは大体5キロだけど、雫姉がハイスペック過ぎるのか、結構走ってるはずなのに息が全く乱れてない。

むしろ俺や楓の方が息が上がってる。

凄いな雫姉・・・


-----------------

ランニングを終え、3人で軽めの朝食を食べた後、俺たちは小早川家に向かった。

当初の予定では9:00頃行く予定だったけど、亮兄の事を考えて少し早めに行くことにした。


「おはようございます」

「健吾君、雫ちゃんいらっしゃい。

 雫ちゃんが今日で帰っちゃうと思うと何だか寂しいわね」

「本当はもう少しゆっくりしたかったんですけど、あっちでのバイトもありますし、大学の課題とかもあるので」


留学はお金が掛かるし、雫姉は学費以外の生活費はバイト代でやりくりしてるらしいんだよな。俺もバイトは始めたけど、学費だけじゃなくマンション代や生活費も親に出してもらってる。本当尊敬しますというか見習わないとな。


「まだ時間あるんでしょ? 玄関で話すのもなんだし、お茶用意するから少し上がってきなさいな」

「はい。お邪魔します」


五月おばさんに勧められリビングに通された雫姉は、椅子に座ってしばらく五月おばさんや紅葉と談笑していた。

この間も結構な時間話はしてたみたいだけど、積もる話は色々あるようだ。


[ガチャ]

玄関のドアが開く音がした


「ん?誰か来たのかしら?」


と玄関まで見に行った五月おばさんだったけど、亮兄を伴って部屋に戻ってきた。


「雫」

「えっ亮君なんで?」

「健吾とおばさんに頼んで、雫と会えるように時間を作ってもらったんだ」

「雫ちゃん 亮の話少し聞いてあげて」

「・・・・・」

「雫。俺のちっぽけなプライドのせいで不安な想いや辛い思いをさせたのは謝って許してもらえるものじゃないかもしれない。

 でも、謝らせてくれ。申し訳なかった。俺は今も雫の事が好きなんだ。だからもう一度チャンスをくれないか?」

「・・・三上さんの告白も断ったんだって言ってたよね」

「あぁ」

「私のためにあんな可愛い人の告白を断るなんて亮君も本当馬鹿だよね」

「ふっ そうかもしれないな」

「でも、勝手に勘違いして、一緒の大学に行く約束を破って海外に逃げた私はもっと馬鹿だよね」

「雫・・・」

「私もね。まだ亮君の事が好き。昨日の夜にね色々考えたんだ。当時の事や留学してからの事。でもね結局忘れようと思ってたけど駄目だったみたい・・・」

「・・・雫」

「留学期間って2年なんだ。だから今期の終わりに本当は都内の大学に編入する予定だったの。

 だけど・・・今更かもだけど私も亮君との約束守って川野辺大学の編入試験受けるよ。受かったら・・・今度こそ亮君と同級生になれるかな」


と亮兄に手を差しだしてきた。


「・・・ありがとう雫。俺、待ってるからな」

「うん。私こそまたよろしくね」


と亮兄は雫姉の手を握り、そして自分の方に引き寄せ抱きしめた。


「ちょ!!みんな見てるから」


頬を赤くして恥ずかしがりながらも少し嬉しそうな雫姉。

告白されても彼氏作らなかったのは亮兄が居たからなんだねきっと。


その後、長谷部の実家の喫茶店にて裕也達と合流した。

予想取りというか裕也と村田さんは、それぞれの彼氏・彼女について雫姉に弄られたけど、雫姉と亮兄が仲良さげに店に入ってきたことで亮兄との仲を逆に弄られて赤面していた。


三上コーチは、あらためて雫姉に謝罪してたけど『もう気にしてないし自分の早とちりだったんだから』と返事をしていた。

その後は、同じバスケ好きということもあり、すっかり打ち解け恩田先輩や浜野さん達も交え女子会というかバスケ会というか楽し気に盛り上がっていた。

三上コーチは、川野辺大学に編入するなら是非バスケ部にってしきりに勧誘してたな。確かに来年は恩田先輩も川野辺大学受けるみたいだし雫姉も入ったらメチャ強いチームになるんじゃないか?


-----------------

成田空港


川野辺駅前で裕也達と別れ、俺と楓は雫姉の見送りで成田まで来た。

もちろん亮兄も一緒だ。

そして、国際線の出発ロビー。

俺と楓は少し離れたところで二人を見守った。


「じゃぁ行くね」

「あぁ戻ってくるの待ってるからな」

「うん 着いたらメールするからね。今度はちゃんと返事ちょうだいよ!」

「もちろんだ!」


抱き合いながら別れのキスをする二人。

何というか、俺も楓も身内ということもあり少し恥ずかしかったりするけど、この先は2年間の溝を埋めるべく色々とやり取りしてくのかな。

でも、雫姉も来年こっちに帰って来るのか。まさか俺の家に住まないよな・・・

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