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7年目の約束-連載版-  作者: ひろきち
第1章 7年目春~夏
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田辺雫④

1週間はあっという間に過ぎた。

結局、雫姉は金曜の夜にうちに来て1泊し、土曜夕方に成田から帰るということになった。

この為、亮兄と三上コーチは金曜の夜に雫姉と会って、俺達は空港に行く前に見送りもかねて会うことになった。


そして、ついさっき亮兄達と会っていた雫姉がうちに来た。

何だか悲しそうな顔をしている。あんな顔した雫姉を見たのは初めてだ。


「健吾、疲れたから先に寝るね」


そういって雫姉は、リビングのソファベッドに寝転がりタオルケットを頭から被った。


「亮兄と何かあったのか?」

「・・・・よくわからない。どうしたらいいのかわからないよ」


少し涙声だ。喧嘩でもしたのかな?それとも三上コーチと?


[ピン]

ん?亮兄からメール?

[雫はもう着いたよな? 健吾の家の近くの公園に居るんだけど出てこれないか?]

雫姉の事かな

[はい。雫姉は何だか着いてすぐ寝てしまいましたので公園行きます]

俺は、公園へ行く旨を返信し、静かに部屋を出た。


「おぅ悪いな遅い時間に」

公園に着くと亮兄が待っていた。何だか亮兄の表情も暗い。


「何があったんですか?亮兄さんも顔色が何だか悪いですよ」

「・・・健吾には話しておいた方が良いかと思ってな。その、前に俺と雫が付き合ってたって話はしたよな」

「はい。でも何も言わずに留学してしまったって話ですよね」

「そうだ。もう2年近く前の話だけど、連絡も取れなかったし今でも引きずっててな。今日理由を聞いたんだ・・・」


そういいながら少し辛そうな顔をする亮兄さん。

何があったんだろう。


「あいつが全国大会優勝チームのエースだったことは話しただろ?

 あいつ見た目も良いし、ちょっとした有名人になっちゃったんだよ。

 それなのに俺の方は県予選で敗退してたし、少し引け目感じちゃって大会後の夏以降は少し疎遠になっちゃってたんだ。あいつがそういうこと気にしないのはわかってたんだけど・・・まぁ俺の僻みだわな。

 ただ、当時は一緒に川野辺大学に行こうって話もしてたから、大学に合格すればまたあいつに会えるって甘えもあったんだろうな。受験勉強頑張って川野辺大学には合格したんだけど、あいつ何も言わずに海外の大学に行っちまったんだ」

「・・・・・」

「あの時は、俺に嫌気がさしてフラれれたんだってかなり落ち込んでな。雫と仲が良かった五月おばさんに相談したんだ。そうしたら、雫は俺のために距離をおく道を選んだんだって言われたんだ。正直意味が分からなかったけど、その後に"あんたが雫ちゃん本気で好きなら信じて待ちな"とも言われてな。雫を信じて待つことにしたんだよ」


そんなことがあったんだ。

でも、そうすると五月おばさんは雫姉が何で亮兄と距離をおいたか理由も知ってたのかな。この間も話し込んでたみたいだし。


「でも、三上コーチとは付き合ってるんじゃないんですか?」

「・・・確かに高校卒業の時に告白はされたけど、好きな人が居るって断った。今も同じ学部の同級生。ただの友達だよ」

「だとしても、三上コーチは亮兄の事を好きなんじゃ」

「確かにな。雫もそれで誤解しちまったんだ」


****************

-3時間前 川野辺駅前の喫茶店 <牧村亮視点>-


今日俺は久々に雫に会う。

もしかしたらあいつにとって俺はもう過去の恋人の1人なのかもしれないけど、今まで待ってたんだ。思いだけはぶつけるさ。


「ねぇ。私も居ていいのかな?雫さんって・・・その亮が好きな人だよね?」

「何となくなんだけど、三上も居た方がいい気がするんだよな。この間三上の事を"彼女さん"って言ってただろ?変な誤解させたくない」

「・・・・・誤解か」


三上の気持ちは知ってるけど、俺が好きなのは・・・


[カランコロンカラン]

「いらっしゃいませ」

「知り合いが来てるはずなんですが・・・」

「お~い こっちだ!」


店員さんに対応されてた雫に俺は声を掛けた。

体育館で勝負した時のスポーティな服装と違って、今日の雫は夏らしい涼し気なワンピース姿だった。


「その・・・久しぶりだな」

「久しぶり。あっこの間はごめんね。急に部活に割り込んじゃって」

「んっあぁー正直焦ったけどな。あれで俺が勝ててりゃカッコが付いたんだけど、見事にシュート決められちゃったからな・・・」

「ははは でも結構私もギリギリだったよ。亮君も腕上げたよね」

「ありがとな」

「・・・この店は変わらないね。で、隣の方が彼女さんだよね。田辺雫です。先週は突然でご迷惑おかけしました」

「し雫、その事なんだけど、彼女、三上は高校からの同級生で、特に付き合ってるわけじゃない。それより何で急に海外留学なんてしたんだよ。一緒に川野辺大学に行くって話してたじゃないか」

「ちょ 亮 声が大きいよ」

「す すまん」


つい大声で話してしまった。

一瞬驚いた顔をした雫だったけど、その後静かに語りだした。


「全国大会の後、亮君私が連絡してもあんまり返事してくれなくなったよね。

 大会に優勝して雑誌とかにも出ちゃったせいで、いろんな人から告白されたり付け回されたりして凄く怖かったし嫌だった。学校も少し休んでたんだよ。

 でも亮君は返事くれないし・・・一度川野辺高校まで会いに行ったんだよ。

そうしたら・・・・三上さんだと思うけど同じバスケ部の女の子と仲良さそうにしてて、それでもう亮君の傍にも居られないんだって」

「それは・・・」

「だから、その日は五月おばさんに挨拶だけしてそのまま家に帰ったんだ。

 アメリカの大学は高校の姉妹校で元々推薦で留学しないかって先生から話を貰ってたんだよ。

 川野辺大学に行くつもりだったから断ってたんだけど、次の日先生にお願いして留学することにしてもらったんだ。亮君から離れた方がいいかなと思って」


まさか、雫がそんな思いをしてたなんて・・・・それなのに俺は。


「ごめん。返事しなかったのは情けないけど全国区になった雫に嫉妬してたんだ。それにもう一度言うけど高校の頃も三上とは付き合ってない。信じてくれ」

「雫さん。私のせいならごめんなさい。確かに高校生の頃、りょ・・牧村君の事が好きでアプローチはしてました。

 彼女が居るとも聞いてたんだけど諦めきれなくて・・・

 それに卒業式の日に告白したんだけど振られてるんです"好きな人が居るって" だから、私が言うのも変だけど牧村君の事を信じて許してあげてください」

「・・・わからないよ。

 2年。もう気持ちの整理が出来たと思ってたのに今更そんな事・・・

 それに三上さんは今でも亮君の事が好きなんでしょ?」

「・・・雫。俺は今でも」

「ごめんなさい。今日は帰るね」


雫はそのまま店を出て行ってしまった。


「雫!」

「雫さん!」


****************

「すぐ俺も追いかけたんだけど、見失っちゃってな。健吾の家に泊まることは知ってたから連絡したんだよ」

「そうですか」

「それに・・・店を出るとき多分あいつ泣いてたんだ。許してもらえるとは思わないが、もう一度会って話したいんだ。だから明日、家を出る前に連絡くれないか」

「・・・三上コーチはいいんですか?」


三上コーチは今でも亮兄の事が好きなんじゃ。


「三上には悪いと思うけど、あいつの気持ちには答えられない。それに、今回の件はあいつも責任を感じちまってるみたいでな。自分のせいで雫を傷付けたって・・・」

「わかりました。明日は裕也達と待ち合わせる前に五月おばさんに会いに小早川家に行く予定なんです。9時位に行く予定でしたけど理由つけて早めに雫姉を連れて行くようにしますので、先に小早川家で待っててください」

「わかった。手間かけるな健吾」

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