修学旅行②
食事を終えた俺達は再びバスに乗り天授庵、南禅寺、永観堂、そして銀閣と近隣の寺院を見て回った。
ちなみに金閣ではなく銀閣を見るというのは”銀閣寺の方が落ち着いてて素敵!”という山口先生のチョイス。
まぁ俺も派手さはないけど銀閣寺の方が好きかな。
少し時期は過ぎてしまったけど色鮮やかな紅葉に彩られた趣のある建造物や故山水等の和庭園。こういう景色を見ると日本だなぁとあらためて感じる。
「ねぇ ケンちゃんあっち見に行ってみよ」
「おぅ」
一応クラス単位で移動はしているけど、引率の田中先生や小島先生が緩く仕切ってくれているので、皆比較的自由に見学を行っている。
まぁ高校生だし、集合時間と場所さえ決まってれば大丈夫でしょ。
「なんだか落ち着くよね」
「そうだな」
「静かだねぇ~」
「そうだなぁ~」
ベンチに座り楓と2人で枯山水の庭園を眺める。
何だか落ち着く。
「・・・お前ら熟年夫婦みたいだな」
「うん。熟年感半端ないよ♪」
裕也と浜野さんの声が静寂を破る。
熟年って・・・人の事言ってるけどお前らも大概だからな。
「同い年なのに酷いぞそれ。っていうか落ち着くじゃんこういう庭園って」
「熟年夫婦。ふうふ・・・・」
あ、楓は他のところでツボったみたいだ。
「まぁ俺も嫌いではないけどな。それよりそろそろ集合時間だぜ」
「おっもうそんな時間か。そろそろ行くか。楓?」
「うん。また今度・・・今度は2人でゆっくり来ようね」
「あぁそうだな」
そうだな。また今度2人でゆっくり旅行しよな。
・・・・とりあえず資金稼ぎにまたバイト頑張ろ!
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何とか遅れずに集合場所に着いた俺達は再びバスに乗り今日の宿舎がある嵐山方面へ向かった。
「あ、舞妓さんが歩いてる!」
「あっちは人力車」
寺社仏閣を見て回るのも良いけど、渡月橋を渡り嵐山の賑わいを見ると京都観光に来てる!って感じするよな。
そんな嵐山の賑わいを抜け狭い脇道を通り目的の宿舎に到着。
京都の雰囲気に合った和風の落ち着いた佇まいのホテルだ。
今日はここで1泊する。
「う~ん。バスもずっと座ってると疲れるね」
「だな。腰が痛くなる」
伸びをしながら話しかけてくる楓。
本当、バスも嫌いじゃないけどずっと同じ姿勢で乗ってるのはなぁ。
「何だか疲れたし、早く風呂入って寝ころびたいな」
「ふふ ケンちゃん何だかおっさんっぽいよ」
「そ そうか?」
熟年とかおっさんとかそんなに俺の言動って・・・
ちょっとへこみながらバスの前で楓や裕也と話をしてると、遅れて到着したB組のバスから吉見と大崎さんが仲良く降りてきた。大崎さんも吉見も良い笑顔だ。2人も上手くいってるみたいだな。
そして、後に続いて降りてきた渋川さんは、そのまま結城のもとへ。
こっちはこっちでお熱いことで♪
各自荷物を持ってホテルに入ると団体客である俺達の夕飯の準備をしてくれているのか仲居さん達が慌ただしく動いていた。
夕飯を期待しつつ、俺達は割り振られた部屋に移動し荷物を置いてしばし休憩。
部屋は和室8畳で4人部屋。俺と裕也、それに結城と長谷部。
例の温泉旅行と同じ部屋割りだ。
夕飯までは30分位時間があったので寝ころんだり、スマホを弄ったりと思い思いに休憩を取ったが、
「そろそろ行くか?」
「そうだな。お腹も空いたし」
休憩開始から15分。まだ早かったけど、お腹が空いた俺達は夕飯が用意されている別館2Fの大広間に向かった。空腹には勝てません・・・
ちなみに今日泊るホテルの別館は俺達の高校で貸し切りとの事。
大浴場も別館内にあるので他のお客さんを気にしなくてよいのは助かるな。
「あれ~ 裕也達もう来てる。食いしん坊なんだから♪」
「いやいやお前らもだろ」
浜野さんに村田さんそれに柚木さんと楓。
女子はバスケ部の4人が同部屋だ。
彼女たちもお腹が空いたらしく、美味しそうな匂いにつられてきたらしい。
大広間入り口で皆で雑談していると他のクラスの生徒たちも徐々に集まり始めた。そして「みんな来るの早いなぁ~」と小島先生が三宅先生と一緒に登場。
先生達もお腹空いてたんですな。
小島先生が仲居さんと話をしてくれたので、少し早めに大広間に入り割り当てられた席に着くことが出来た。
そして、学年主任の先生から長いお話を頂いた後、ようやく夕飯となった。
「わぁこのお魚美味しい」
「うん。この漬物もいいね」
昼の会席を更に豪華にしたような和会席。
京料理の繊細さも感じられる見た目も綺麗で中々に美味しい食事でした。
食事を満喫した後は、大浴場で温まり、おとなしく就寝・・・
とはならず、遅い時間まで皆で部屋に集まり色々と恋バナや将来の事を語り明かした。
俺と楓は教師を目指し同じ大学を目指しているとか、
村田さんは大学は行くけど将来は酒屋を継ぐ予定だとか、
(誰ととは言わなかったけど福島を見ながら話していたのは察し)
浜野さんは調理系の専門学校に行く予定だとか、
結城は渋川さんの親父さんの会社に就職予定だとか、
皆、将来をどうするか色々と考え始めているみたいだ。
高校生活も後1年。
来年の今頃は受験勉強の追い込み時期だ。
再来年の春は皆で笑って過ごしたいな。