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day51 作業場完成

「みんな、おはよ。あ、家具届いたんだ?」


ログインしてすぐ、眠りから覚める様に目を開けば、ログアウトした時はエルムさんの家で作ったシアとレヴの溶鉱炉とリーノの研磨機、ガヴィンさんに借りている鍛治炉と細工炉、そして、この家に初めて訪れた日に置いておいたアイテムが置かれていただけの作業場に、大きな作業机やそれぞれの作業机、本棚、道具を置くための棚等の家具が増えていた。

それ以外にも、恐らくシアとレヴが作ったであろう道具が増えており、俺のいない間にこの部屋が作業場として機能するようになったようだ。


「はい。一昨日、ライさんが帰った後、すぐに届きましたよ」

「ベッドも運んでおいたぜ~! 1部屋に2つずつ。

 1人で寝るには大きいサイズのベッドだったから、結構ぎっちりだけどな」

「運んでくれてありがとう。俺じゃ運べないだろうから……助かるよ。

 エルムさん奮発してくれたんだね」


早速2階の寝室へ向かい、確認してみると、セミダブルサイズのベッドが2つ、間にナイトテーブルを挟んで置かれていた。

それから、ワードローブ。入れておく服は1つも持っていないけど。


「手紙も届いてましたよ」


ジオンから受け取った手紙には、今度遊びに行くから家にいる日を教えるようにと書かれていた。

俺の予定より、エルムさんの予定に合わせたほうが良いと思うけど。

後で郵便局に行かなければ。手紙も書くけど、今度会った時にちゃんとお礼をしよう。


「あと、売却用のアクセサリーも作ったぜ!」

「私も武器を数本……確認していただけますか?」


頷いて、作業場に戻る。

中心に置かれた大きな作業机に置かれている数本の武器の中から、1本の剣を手に取り、鑑定する。


「あれ? 数値上がってるね」

「はい。鉱石の品質が上がったので、その分少し上がりました」

「なるほどね。今回から岩山脈で採った鉱石だもんね」


鉱山の鉱石は玉鋼を除いて☆2だったけど、岩山脈の鉱石は☆3だった。

ログアウト前に少しずつ融合しておいた魔法鉱石は☆4だ。

玉鋼は他の鉱石と比べて1つ品質が落ちる。


「うん。全部25レベルの武器だね。

 えーと……ブレードと、グラディウス、それからバスタードだね」

「今回は大剣、ショートソード、ロングソードを作ってみました。

 大剣は鉱石の数が多いので、1本だけですが」


剣を扱うスキルにも種類があるそうで、大剣術、剣術、長剣術、短剣術が剣を使うプレイヤーが主に取るスキルだそうだ。

ちなみにこれまでに作った武器で言うと、『ブレード』が大剣術、『カトラス』と『グラディウス』がショートソードで剣術、『バスタード』がロングソードで長剣術、『ダガー』が短剣術だ。


短剣術を取るプレイヤーはあまり多くないらしい。

ダガー等の短剣の攻撃力が低いことが一番の理由だそうだ。それから、間合いが近いからとも。

それから、投擲スキルで投げて使うことも出来るらしいけど、5回に1回程度の確率で投擲したアイテムが消えてしまうそうで、そもそも投擲スキル自体があまり人気がないとのことだ。


一番人気なのは剣術で、カトラスも剣術の武器だけど、真っ直ぐな剣、ジオンが作ってくれている武器で言うならグラディウスのほうが人気のようだ。

たしかに戦闘祭でも多かった覚えがある。

主観だと一番人気は剣術、次いで大剣術と長剣術……どちらかと言えば大剣術のほうが人気かなという印象だ。


「大剣って鉄と銅で作るんだっけ?

 トーラス街にも着いたことだし、今度またたくさん採りに行こうか」


その時は、カプリコーン街側からかな。

トーラス街側からの岩山脈に出てくるワイバーンにレベル差があるのかわからないけど、トーラス街側のほうが鉱石の品質が上だと言っていたし、恐らくトーラス街側のワイバーンのほうがレベルが高いのではないかと予想できる。

その場合、《魔除けの短剣》が使えなくなるかもしれない。エルムさんはぎりぎりワイバーンまでだと言っていたけど、どうだろうか。


「リーノは……指輪だね。あれ? 装備条件あるけど」

「おー多分そうだろうなって思ってたぜ。

 けど、レベルそんな高くないだろ?」

「うん。15だね。これまでのはなかったけど、何か違いあるの?」

「作り方の違いっつーか、コツ? どっちかって言うと、装備条件ないやつ作る方がコツがいるな!

 けど、条件あるやつのほうが数値は高いはずだぜ」

「確かに。この指輪、俺達が付けてるやつより高いね」

「げ。そりゃそうなるよな。取り換えようぜ!

 ……って、俺達に合わせて作ったやつじゃねぇしな。今度もっと良いやつ作っとく」

「楽しみにしてるね」


先日エルムさんの家で作ってくれたアクセサリーは腕輪だ。

俺とジオン、それからシアとレヴには魔法攻撃力の数値が高い物を、そしてリーノは防御力と魔法防御力の数値が高い物を用意してくれた。

ちなみにシアとレヴのピアスと指輪は、俺やジオンと同じ数値のものだ。


早速、ジオンが作った7本の剣と、リーノが作った3つの指輪をオークションへ出品する。

やっぱり、値段も少し上がっているようだ。

値段は街で売却する金額の大体4倍……大剣が140,000CZで、ショートソードが109,000CZ、それから長剣が121,000CZ。

こんなに高くて売れるのかな……いや、売れる。ジオンが打った武器が売れないわけがない。


指輪は使っている鉱石の数が少ないからか約4倍で52,000CZと武器と比べると安く感じるが、やっぱり高い。

トーラス街の宿屋が4人部屋1泊2,000CZだから、26泊分だ。


自分が買うアイテムや装備、食事等の値段は気にならないのに、自分が売却する装備の金額については高いと思ってしまうのは何故なのだろうか。


「そう言えば、ある程度分けていたとは言え、よく魔法宝石とか魔法鉱石の違いわかったね」

「宝石なら大体わかるようになったぜ! ジオンも鉱石ならわかるよな?」

「そうですね。数値はわかりませんが、その鉱石に何の付与が付いているかはわかるようになりましたね」

「見ただけでわかるの?」

「おーそうだなー……」


リーノが宝石を入れている宝箱から1つの青色の宝石を取り出して俺に見せる。


「これは、魔力回復が付いたやつ! 合ってるか?」

「えーと……うん。合ってる。どうしてわかるの?」

「色が違うからな!」

「色……?」


鑑定をしながら、宝箱の中から体力回復が付いた青色の宝石を探して取り出す。

例えば氷晶弾を融合した《氷晶鉄》だと普通の《鉄》と比べて少しだけ青みがかっているが、宝石では違いがないと思っていた。

それに、《氷晶鉄》だと分かっても、それに何の付与がされているかは見た目では俺は判断できない。


魔力回復と体力回復は、聖力弾を凝固したものだそうだ。

色が違うとしても、同じ聖属性から凝固したものに違いがあるものなのだろうか。


「これはなんだと思う?」

「体力回復!」

「正解! 凄いね! どう違うの?」

「んー……両方とも少し白いんだけど、魔力回復が若干緑で、体力回復が赤いんだよなー」

「えぇ? 全然わかんない。ジオンわかる?」

「いえ、私も宝石だと違いが全然わかりません。全部同じ青色に見えます」

「俺も鉱石だと全然わかんねぇけどな。《氷晶鉄》と《鉄》の違いしかわかんねぇ」

「俺もそうだよ。得意分野ってことなのかなぁ。

 でも、それだとリーノは鉱石もわかりそうなものだけど」

「んにゃ、鉱石も探せるけど、俺の得意分野って宝石だぜ?」

「そうなの? あ、でも確かに、最初宝石の場所教えてくれたもんね」


俺がリーノの声を採掘スキルのナビゲートだと思っていた時だ。


「アタシ、付与わかんない」

「ボクも。だからジオンくんに聞いてるよ」

「あれ? 2人はわからないのか……うーん……?」

「私が鉱石に何の付与があるかわかるようになったのは、ライさんが教えてくださっていたからなので、シアとレヴもその内わかるようになると思いますよ」

「おーそうそう。最初は何の属性が凝固されてんのかは分かっても、付与はわかんなかったぜ」

「なるほど? んー……鑑定に近いのかな?

 この世界の人ってどうやって鑑定を取得してるの?」

「詳しくは分かりませんが、魔物や素材を図鑑と一緒に只管見続けるとか」

「あー見ているアイテムが何か覚えていく感じなのかな」


ジオンが鉱石を鑑定せずとも鉄だと分かるように、そのアイテムが何か、記憶と紐づけられるようになれば覚えられるということだろうか。

世界中のありとあらゆる物全てを記憶することは無理だろうし、いくつくらいのアイテムを記憶したらわかるのだろう。

そもそも、世にある物で記憶と紐づけられない物が、この世界の住人にとってどれくらいあるのか。

俺がはさみをはさみと認識できるように、この世界の住人の人達にとって、この世界にあるアイテム……魔物の素材や鉱石なんかは別として、一般的によく見るアイテムはそれが何かわかるはずだ。


「じゃあさ、俺が鑑定して、それが何か伝えてって繰り返してたら、いつか覚えられるかな?」

「恐らく」

「つーか、ライはいっつもそれしてくれてねぇか?

 目の前の魔物とかの名前絶対教えてくれてるし、素材も最初の1つは教えてくれるよな」

「む。確かに。ってことはもっと必要ってことかなぁ。

 それとも詳しい情報も知る必要がある、とか?」

「さて……両方ですかね?」

「これからは、俺が見えてる情報は全部伝えるようにするね」


数値も全て伝えていたら、付与が分かるようになったように、数値もわかるようになるかもしれない。

自分の作った生産物ならなんとなくわかるとは言え、はっきりとわかるわけではないし、数値がはっきりと分かるに越したことはない。


「カヴォロさんとの約束は何時でしたっけ?」

「えーと……12時だよ。お昼ご飯用意してくれるって」

「楽しみだねー」

「カヴォロくんのご飯美味しい」


現在の時刻は11時過ぎ。そろそろ石工の村に向かおうかな。


「あ、ライ! 俺、金がねぇんだった!」

「そっか。俺がいない間のシアとレヴの分は2人が出してくれてたんだよね。

 シアとレヴにも渡しておかなきゃね」

「ううん。ジオンくんとリーノくんに渡しておいて」

「うん。ボク達だけでお買い物しないよ」

「そう? それじゃあ、2人に多めに渡しておくね」


正直に言うと、小学生低学年程度にしか見えない2人にお金を渡すのは少し心配だった。

とは言え、俺と同じ歳くらいか少し上かにしか見えないエルムさんが凄く年上……はっきり聞いたことはないけど、恐らく驚く程年上なのだろうと予想できるこの世界だ。見た目と年齢が違うってこともあるだろうし、シアとレヴももしかしたら俺よりもずっと年上の可能性はある。


多めに渡しておくとなると、今の手持ちじゃ心許ないかな。

そう思って、少し前までは10,000CZずつ手持ちに持っていたのに、今では88,702CZの手持ちで心許ないなんてと苦笑する。


「それじゃ、銀行に行って、それから郵便局に行ってから石工の村に行こう」


家から出て、海を眺めながら銀行へ向かう。

先日見た時と比べて、更に波が高くなったような気がする。

ほとんど違いはわからないけど。


「おや? 船がありませんね」

「全部の船が出航するなんてことあんのかな?」

「どうだろう? なさそうだけど」

「あ、海から上げているだけのようですね」


ジオンが視線を向ける場所へ顔を向ければ、先日まで沿岸に停泊していた船が海から移動していることが分かる。

やはり、何か起きているようだ。原因は未だ調査中なのだろうか。

さすがに動きはあるはずだし、今度……明日はガヴィンさんの所へ行くし、明後日かな?

ギルドでもう一度聞いてみよう。


海の様子を眺めながら歩き、銀行へと辿り着く。


「いくらくらい渡しておいたら良いかなぁ」

「これまでと同じで良いぜー!」

「ばばーんと100万ずつくらい持ってても良いよ」

「やめてください」


デスペナルティで減ることがないと分かった今、2人が無駄遣いするとは思えないし、渡しても問題ないけれど。

まぁ、2人には50,000CZずつ渡しておこう。

この後ヌシと対峙するわけだし、20,000CZだけ出金して、俺の所持金は少なくしておく。

多分、死ぬことはないだろうけど、何があるかわからないし。

8,502CZあれば、レターセットと配達料、それから5人分の転移陣代は払える。


カヴォロは頑なに俺から食事代を取ろうとしないので、最近は言い争うことなく甘えさせてもらっている。

店舗を開店したらその時は絶対に払うと心に誓っているけど。

あと、石窯や冷蔵庫とは別に、《氷の宝箱》の鞄バージョン……保冷バッグのようなものを作って渡そうかなって考えてる。

買い出しとかで便利かなって思うけど、アイテムボックスに入れたら良いだけだし、必要ないと言えば必要ない物だ。


「よし、次は郵便局ね」

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