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day44 ポイント交換

「わー! 可愛らしいですねー!」


シアとレヴの周りをキラキラと光る粉を振り撒きながら妖精ちゃんが飛び回っている。

近いうちにまた会えたらいいなとは思っていたけど、まさかゲーム内時間で2日後に会えるとは思っていなかった。


「それで、シア様とレヴ様、どちらの防具をご用意したらよろしいのですか?」

「あー……防具も2人分いるんだね?」


朝食を食べて、部屋に戻って来た俺達は、早速シアとレヴの防具を受賞ポイントで交換することにした。

他にポイントの使い道もないし、全員『祭囃子防具一式』でお揃いにしたかったからだ。

それに、祭囃子防具はレベルでの装備条件がなく、DEFとMNDの装備条件だけなので、街や露店で売っている2人が装備できる防具よりも良い防具を装備できるのではないかと予想している。


シアとレヴはステータスページは1つしかなかったけれどご飯は2人分必要だ。朝食も5人分の料金を支払った。恐らく転移陣も2人分だろう。

宿については、シアとレヴは一緒に寝ると言ったのでこれまで通り4人部屋だ。

装備ページは2人分表示されていたけど、全く同じ防具が並んでいたので、とりあえず『防具一式オーダーメイド』を1人分だけ交換して妖精ちゃんを呼び出した。


「そうですねぇ~! シア様とレヴ様はすこーし複雑でして……あ、生い立ちがってことじゃないですよ!

 ステータスや装備、スキルがです!」


生い立ちについては複雑かどうかはともかく、決して幸せなものではないのだろうとは思う。

昨日、歓迎会の意味も込めて少し豪華な夕食を楽しんでいる時に、リーノが教会で何をしていたのか世間話のように聞いた際、何も覚えていないと言っていたから、二人は忘れてしまっているようだ。

堕ちてしまうような出来事があったわけだし、忘れているなら無理に思い出す必要もないだろう。


「現在、シア様とレヴ様のHPは100ですが、これはシア様が100、レヴ様が100というわけではありません!

 あくまで2人で100。50ずつというわけでもないです!」

「片方が攻撃を受けたとしても、両方が攻撃を受けたことになるってこと?

 その場合、2倍の攻撃を受けたってことになったりする?」

「2倍にはなりませんよ! 例えば20の攻撃をお一人が受けた場合、HPは80になります。

 ですが、お二人が同時に20の攻撃を受けた場合はHPは60です」

「うーん……なるほど。片方が毒を受けた場合でも2人共毒になるってことだね」

「そうです! それから、2人揃って同時にスキルを使用しなければ発動しません」

「1人だけ一緒に狩りをしても、スキルは使えない?」

「その通りです! と、いうより、2人一緒でなければパーティーメンバーに加えることも外すこともできません!」


ちなみに、パーティーメンバーとしての扱いは2人分のようで、現在俺のパーティーは『5/6』と表示されている。


「食事や転移陣等は2人分。装備も2人分です。

 ただし! 装備の数値はそれぞれに割り振られるわけでも合計するわけでもありません!

 お二人が装備している防具や武器の平均がお二人の装備の数値になります」


なるほど複雑だ。

つまり、防御力30の防具と40の防具をそれぞれで装備した場合、2人の防御力は合わせて35ということだろう。


「ネーレーイスの双子ってすごーく珍しいんですよ!

 ネーレーイスという種族自体も凄く珍しいんですけどね」

「そうなんだ? ってことはユニークなのは……」

「あっ……えぇと……はい……そういうことです……」


シアとレヴのことについて色々教えてくれたけど、今の妖精ちゃんはあくまで防具の案内人のはずだ。

そもそもキャラクター作成時の妖精ちゃんも、うっかり言葉にしてしまったみたいな場面はあったものの、詳細は教えられないと言っていた。

そういうキャラクターとして設定されているのなら良いけど、『高性能学習型次世代AI』とやらの弊害だとしたら、妖精ちゃんに会えなくなる日がきてしまうのではないだろうかと不安になる。


まぁ、キャラクター作成時のうっかり発言を経て、特に何も変わらず俺の前に現れているのだから大丈夫なのだろう。多分。

調整が入るのも、違う人になってしまうようで嫌だけど、運営から消されたりなんてことはないと信じたい。


「……遅かれ早かれライ様にもわかることでしょうし!

 良いってことにしましょう! さて、どうしますか?」

「あ、うん。今、『防具一式オーダーメイド』をもう1人分交換したら、このまま対応してもらえる?」

「はい! 大丈夫ですよ!」


妖精ちゃんの言葉に頷いて、もう1人分を600ポイントと交換する。

2人分合計1,200ポイントで、残りのポイントは1,900ポイントとなった。


「それじゃあ、2人分、お願いします。

 シア、レヴ。何か要望ある?」

「アタシはないよ」

「ボクもお任せ」

「そっか。それじゃあ妖精ちゃんにお任せするよ」

「はい! それでは、これより防具の作成を開始します」


間もなく出来た防具に早速変更してもらい、シアとレヴの姿を確認する。


双子コーデというやつなのだろうか。正真正銘双子だけれども。

半袖の白のシャツにシアはリボン、レヴはネクタイを付けている。

その上から濃い青色の千鳥格子のベストを着ており、俺やジオン、リーノはポンチョだったりジャケットだったりが外套になっているけど、二人はベストが外套扱いのようだ。

裾にベストと同じ色合いの青色の太いラインが入った、白いスカートと半ズボンをそれぞれ履いている。

靴は赤みのある濃い茶色の皮靴だ。


「いいね! 凄く似合ってるよ」

「ライくんたちのは?」

「俺? あぁ、俺達の分は3日前に同じように作ってもらったんだよ」

「ライくん、ボクたちとお揃い?」

「うん。お揃い」


2人は、あまり表情豊かではないようだ。特に、レヴが笑っているところをこれまでに見たことがない。

まぁ、出会ってから1日も経っていない付き合いだからかもしれないけど。

それでも、俺の言葉に嬉しそうにしているのが分かって、俺も嬉しくなる。


「妖精ちゃん、元の装備は引き取って貰って良い?」

「はい! 大丈夫ですよ~!

 ではでは、名残惜しいですが、これで案内は終了です。

 またまたお会いすることができますように!」


妖精ちゃんがぽんっという音を立てて消えたのを見届けて、口を開く。


「残りのポイントどうしようかな」

「交換に期限があるんですよね?」

「そうそう。俺、次に戻ってこれるの明後日だからね。

 明日が期限だから、今日中に交換しておきたいんだけど」


とは言え、欲しい物がない。魔道具製造に使う道具魔法陣を描くものがあればそれでいいし。

残り全て魔石にしてしまっても良いけど、既に38個の魔石を持っているわけだし急ぎで必要なわけでもない。


「シアとレヴが鋳造で使う道具にしたらどうだ?」

「作業場にはないの?」

「溶鉱炉はなかったですね。エルムさんが使ってた道具を覚えてますか?」

「冷蔵庫は覚えてるけど」

「冷蔵庫? まぁ、作業場にはなかったな」


言われてみればエルムさんが使っていた溶鉱炉とジオンが使う炉は別物だ。


「そもそも、鍛冶も細工も鋳造も鉱石を使って作るんだよね?

 エルムさんが彫刻刀なんかは鋳造だって言ってたけど、その差は何?」

「ざっくりと言うと、鍛冶は刃がついた武器が主ですね。

 斧や鎌のような武器としても道具としても使える物も作れますよ」

「彫刻刀って一応刃があると思うけど」

「ふむ……作ろうと思えば作れますが、鋳造職人の作った彫刻刀のほうが品質が良いですね」

「細工は装備できるアクセサリーとそれから生産品への細工……装飾がメインだな!

 鉄細工も細工スキルのが得意だけど、鉄細工は鋳造でも作ろうと思えば作れるんじゃねぇかな」

「型があればできるよー」

「でも、リーノくんのほうが上手」

「そうですね。鋳造は溶かした金属を鋳型に流し込んで作ることができる物が主です。

 鍛冶で作れない、つまり、刃がない道具かつ鉱石を使う道具も鋳造です」

「うーん……なるほど。なんとなく分かったような分からないような」


適材適所ってやつなのは分かった。

まぁ、この世界と現実世界では色々と差があるわけだし、そもそも、現実世界の鋳造や鍛冶、細工の事も全然知らないから、皆に任せておけば間違いないのだろうけれど。


「とりあえず、溶鉱炉と鋳型が必要ってこと?」

「おー他の道具は作業場にあったと思うぜ。

 エルムの婆さんに貰った道具も一緒に使えるやつあるしな!」


溶鉱炉は俺が作るとして、鋳型か。


「ちなみに、鋳型は何のスキルで作るの?」

「ふむ……鋳造スキルですかね」

「鋳造スキルで使うための鋳型も鋳造スキル? その鋳型を作るための鋳型は……?」

「あのね、型を作る時は完成品を使うんだよ」

「お皿の型はお皿で作るんだよ」

「あー……つまり、お皿の周りに溶かした金属を流し込むってこと?」

「うん、そうだよ」


そのお皿を作るのに魔道具なり道具なりが必要なのではなかろうか。

卵が先か鶏が先かみたいな話になってきた。

俺の魔道具製造スキルもそうだけど、色んな生産スキルが繋がっているように感じる。


「そのお皿は、木材でも良いの? 燃える?」

「焦げちゃうよ」

「でも木でも作れるよ」


焦げる程度なら大丈夫か。

空さんにお願いしても良いけど……。


「鋳型にも品質とかランクってある?」

「あるよ。でも、お皿の品質は関係ないよ」

「だけど、お皿の形が重要だよ」


鋳型を作る時の元になるアイテムの品質は、鋳型の品質やランクに影響しないけど、鋳型にしたい形のアイテムがないと駄目だということだ。

ということは、元になるアイテムさえあれば、鉱石の品質に合わせて品質の良い鋳型を何度も作ることができるのかな。


「交換した鋳型から作った鋳造品の形を変えることはできる?」

「うん。調整できるよ」

「調整した道具から型作れるよ」

「でも、調整はリーノくんが良いよ」

「なるほど。どの鋳型が欲しいとかある?」


カタログをアイテム化して、シアとレヴに見せる。


「型にする? それとも、道具にする?」

「そっか。鋳型を作るための道具と交換するのもありか。どっちが良い?」

「えっとね……ここに描いてあるの、どっちも同じ形だよ」

「うーん……それじゃあ鋳型かな」

「うん、型だね」

「ジオンくんとリーノくんはどんな道具が好き?」


カヴォロが色んな包丁が欲しいと言っていたように、同じ道具でも人によって好みがあるのだろう。

4人が話しているのを眺めながら、これからの事を考える。


次にログインした日はエルムさんの家で転移陣関係の魔道具について教えて貰う約束だ。

ついでに溶鉱炉についても教えてもらおう。

シアとレヴが鋳造スキルの尤を持っていると話した時、キラキラと目を輝かせていたところを見るに、勉強会が終わった後も作業場で1日が潰れてしまうのではなかろうか。


昨日俺が教会に行っていた間、リーノは作業場でエルムさんの魔道具に細工をしていた。

ちなみに、リーノへの依頼な為、報酬も受け取っている。

前回同様欲しい物がないと言うリーノの代わりに、ジオンが好きそうだという本を貰った。

あと、兄ちゃんに渡す用にと魔力銃の本も。


「ライくん決まったよ」

「これと、これと……」


2人が選ぶ鋳型を見ながら、ポイントを計算する。

鋳型はサイズによってポイントに差があるようだ。

使われている金属の量が違うのだからそれもそうかと納得する。


様々な鋳型の中からシアとレヴが指差す鋳型と、それから俺が必要になりそうな鋳型を相談しながら交換したら、残るポイントはあと僅かとなった。

残りは魔石と交換して、残った端数は飴と交換しておこう。


鍛冶に細工に鋳造。これは鉱石がたくさん必要になるな。

トーラス街にも早く行きたいし、生産もしたいし、採掘もしなくちゃだし。

やりたい事がいっぱいだ。

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