day38 狩猟祭④
「派手な色だね」
「はは、そんな感想? 確かに、紫と赤で派手な色してるけど」
大きく深呼吸をして、敵を見据える。
モンスターに黒炎弾を使うのは初めてだ。
最終進化先のようだし、MP500も使うのだから、それなりに威力は高いはずだ。
それだけでなく、俺の種族特性で威力が上がっている。
「兄ちゃん、魔法も近くから打ったほうが強い?」
「まぁ、そうだね。魔力弾程の差はないから、離れた位置でも構わないけど」
「うーん……近付く。兄ちゃん、タゲ取ってくれる?」
「いいよ。それじゃ、先に行くね」
兄ちゃんが向かって行くのを見ながら、隠密を発動しておく。
スキルレベルが低いのでほとんど効果はないだろうけれど、一応だ。
詠唱に時間がかかるわけではないけれど、絶対に外すわけにはいかない。
ひらりひらりと斧の攻撃を避けながら魔力弾を撃つ兄ちゃんの姿を確認して、敵に駆け寄る。
どこを狙うべきだろうか。やっぱり弱点は頭なのだろうか。それとも心臓あたりだろうか。
ある程度追従するとは言っていたけれど、ちゃんと狙えるかはわからない。
大きな宝石の付いた胸の辺りを狙っておこう。
「【黒炎弾】」
巻き上がる熱風と共に、黒炎が掌から飛び出して行く。
融合をする時は留まらせていたので掌の上で大きくなっていたけれど、攻撃時は違うようだ。
ミノタウロスの胸へと辿り着いた黒炎がぶわりと大きくなり、じわりじわりと体を蝕むように広がっていく。
体を蝕む黒炎が一度小さくなったかと思うと、爆風と共に急激に黒炎が燃え盛り、敵の体を黒炎が包み込んだ。
思わず耳を塞いでしまうような、断末魔のような叫びが辺りへ響き渡る。
黒炎が燃え尽きるよりも先に、ミノタウロスの体が地面へと轟音を立てて倒れ、そして。
「う、そ……倒した……?」
「……ふ……はは! とんでもなさ過ぎて笑えてきた。
ははは、凄いね、ライ。ふふ」
「えぇー……チートじゃんもう……」
さすがにここまでの威力だなんて思ってもいなかった。
さすがMP500とか言ってられない威力である。
スキルレベルだって融合で上がってはいるけれど、2だ。低い。
☆4種族がごく僅かしか出ない理由が分かった気がする。
メリットが上手く作用すると、デメリットなんて帳消しに出来る強さだ。そんな種族がぽんぽん出るわけがない。
「まぁ、色んな要素が重なった結果だとは思うよ。
火が弱点で、胸にあった宝石が弱点。それから、魔法防御がかなり低いんじゃないかな。
俺の攻撃でも結構ダメージ入ってたしね」
「うーん……それなら、いいんだけど。
まぁ、現状はヌシくらいでしか使えないかな。単体攻撃だし、通常モンスターに使うのはやっぱり勿体ないね」
とは言え、ヌシも一発で倒すなんてことになったら、ちょっとつまらない。
「一瞬で倒せちゃったし、もう1体いっとこうか」
「ん、えーと……ジャングルのほうが近いかな、もや」
俺の言葉に頷いた兄ちゃんは、アイテムボックスから透き通った緑色の宝石のようなものを取り出して、指でパキリとそれを砕いた。
その瞬間、辺りにふわりと先程の宝石と同じ色の風が舞う。
「エリアルマナポーションだよ。空のやつ」
「優勝したやつだね!」
《初級マナポーション》と《中級マナポーション》はさっき使ったばかりだ。
とりあえず、《初級ハイマナポーション》をアイテムボックスから取り出し、飲んでおく。
エリアルマナポーションと合わせて110程のMPが回復した。
「黒炎弾のクールタイムってどれくらい?」
「30分だよ」
「なるほど長いね。30分あれば……MPも回復できるね。
マナポーションのクールタイムが回復し次第、使って。後は魔力回復と自然回復で足りるようになるはず」
「うん、わかった」
ジャングルにあるもやへ向かって全速力で走る。他のモンスターを倒す時間はない。
残る時間は45分。間に合うだろうか。
全速力で走っていると言え、もやの場所までは恐らく30分はかかる。
つまり、15分で倒さなければならない。
マナポーションのクールタイムは全て15分。それから自然回復が3分間で1、魔力回復スキルと合わせると4。
今のMPが130ちょい。30分で40回復だから……うん、初級と中級を2つずつとハイマナポーションを1つ使えば足りる。
辿り着いた時にすぐに黒炎弾を打てるだろう。
「一瞬で終わっちゃったから、よく見れてなかったんだけど、さっきのミノタウロスってどんな感じだったの?」
「んー……俺もよくわかんなかったね。でも、攻撃力は高そうだったかな。
あ、そうそう。前にヌシを倒した時と同じような地面の抉れ方してたよ」
「兄ちゃんの種族特性が発動しているヌシってことだよね?
ってことは、かなりきつそうだね」
ミノタウロスは魔法攻撃、更には火属性に特別弱かったから一撃で倒せたらしいとは言え、ジャングルの☆10がそうとは限らない。
ハイマナポーションを飲めば、刀術スキルが使えるけど、スキルにもクールタイムがある。
普段からスキルを使うより通常攻撃を使って攻撃をしているから、大丈夫だとは思うけれど、やっぱり不安だ。
残り時間は後少し。恐らく彼等も☆10を倒しているだろう。
見つけられていない可能性もあるけれど、そう考えておいたほうが良い。
今の差がどれだけ開いているのかは分からないし、☆10のポイントがどの程度かもわからないけど、1体倒しただけでは差は埋まらない。
「兄ちゃん、見えて……おぉ……」
「トカゲ……かな? もはや恐竜だね」
☆9以上のモンスターは大きくないといけない決まりでもあるのだろうか。
どのモンスターも大きかったけど、さすがにここまで規格外な大きさはしていなかった。
「どう? 回復してる?」
「うん、打てるよ」
「それじゃ、俺が先に行くよ」
駆け寄って攻撃を仕掛ける兄ちゃんに攻撃のタゲが向いたのを確認してから、俺も走る。
「よし……【黒炎弾】」
狙うは兄ちゃんが弱点だと判断して攻撃しているであろう頭部……顔だ。
燃え盛る黒炎がまるで恐竜のようなトカゲの顔から胸のあたりまで包み込み、やがて燃え尽きた。
怒り狂った大きな咆哮を上げるトカゲに、ミノタウロスが火と魔法が弱点だったのはどうやら本当だったらしいと分かる。
それでも、半分ものHPが減っており、改めて黒炎弾の威力の凄さを思い知った。
「ぎりぎり、かな。ライ、最後だよ」
「うん、回復は任せるからね」
「掠る程度なら良いけど、直撃したら回復できないと思うよ」
ハイマナポーションを飲んで、地面を蹴る。
後は無我夢中で斬り続けるだけだ。様子見なんてしている時間はない。
「【刃斬】! 【連斬】!!」
顔の前で次々と魔力弾を撃ち込む兄ちゃんの傍で、俺も刀を振るう。
『狩猟祭終了まであと10分です』
聞こえてきたアナウンスの声に焦りを感じる。
なるべくMPは温存しておきたかったけれど、ほとんどスキルが使えない状況なので、攻撃力の強化を優先する。
ジオンが作ってくれた刀のお陰でなんとかなってはいるが、STRが低い俺では、もっと手数を増やさないと駄目だ。
『狩猟祭終了まであと5分です』
鋭い爪が頬を掠っていく。
その衝撃によろめきそうになるが、なんとか堪えて刀を振るい続る。
「【刃斬】!」
これまでに使ったスキルは刃斬が4回と、連斬が2回。
残るMPは31。スキルが使えるのは、それぞれ1回ずつ、あと2回だろう。
当然、出し惜しむなんてことはしない。復活と同時に使用しなければ、クールタイム復活の時間がずれる。
つまり、スキルを使う回数が減るだけだ。
『狩猟祭終了まであと1分です』
HPはあと僅かだ。間に合う。大丈夫。きっと間に合う。
『30秒前』
もう、スキルは使えない。後は通常攻撃だけだ。
カウントダウンのアナウンスを聞きながら、最後の力を振り絞って斬り続ける。
『5――4――3――……』
あと、少し。倒せる。倒す。
『1――……狩猟祭、終了です』
終了を知らせるアナウンスと同時に、キラキラとエフェクトが弾ける。
「ま、間に合った……?」
「……狩猟数、増えてる。間に合ってるよ」
俺達は大きく息を吐いて、その場に座り込む。
視界のあちこちに表示されていたもやは、どこにも見えなくなっていた。
俺達はもやの大きさでどこに☆10がいるか判断できたからこうして2体倒すことができたけど、兄ちゃんが言っていたような、ただの赤い点が表示されるだけの魔力感知だったら、2体どころか1体も見つけられてなかったかもしれない。
ふと、これが会場から見られているかもしれないことを思い出す。
俺は今、どう見られているんだろう。
チートのようなスキルで無双しているプレイヤーに見えているのだろうか。
間違ってはいないのかもしれない、けど。
疲労の溜息とは違う溜息を吐いた俺を見た兄ちゃんが笑った。
「何をしてても難癖付けてくる人ってのはいるし、放っておいたらいいよ」
「うん……そうだね。放っておく」
知らない人にどう思われているかなんて、俺は聞きたくないし、見たくない。
本当は、考えたくもないけど、どうしたって考えてしまう時がある。
小豆の人達は、目の前で直接言ってくれただけましだと思う。
まぁ、嫌なのは変わらないし、むかっともするけれど。
頭を振って思考を散らす。
「そんなことより、兄ちゃん。俺達、優勝できるかな?」
「どうだろうね。優勝できてなくても、朝陽の鼻を明かしてやれただろうから満足かな」
「え? 朝陽さん?」
「テイムモンスターのいないテイマーは弱いなんて言ってたからね」
「……事実じゃない?」
「ま、普通はね」
『参加者の皆様の転移が開始します』
控室への転移が始まったらしい。
確かその後は集計時間を挟んで、上位30位までのパーティーがステージに上がるという話だったはずだ。
その時点では自分達が30位までに入っていることが分かるだけで、詳細な順位は結果発表が始まるまでは分からないとか。
余程の事が起きていない限り、俺達はステージに上がることが出来るだろう。
ポイントが貰えるのは上位10位までだ。多分貰える、はず。
結果発表が楽しみだ。
◇
【乱入クエスト】雑談スレpart56【発生!!】
862 名無しの旅人
マナポーションがぶ飲み&基本は刀術使用の2つから
かなりのMPが必要なんだろうってことは分かった
863 名無しの旅人
現時点で進化属性持ってるやつなんて聞いたことないぞ
864 名無しの旅人
βの終盤は進化属性持ってるやつ多かったけどな
レンさんも当時は魔法使いで色んな進化属性使ってたし
865 名無しの旅人
ライさんのテイムモンスターが使ってた魔法も進化属性だよね?
氷属性だっけ
866 名無しの旅人
あー光属性と水属性で氷属性に進化できるらしいね
867 名無しの旅人
あー・・・わかった
あの兄弟、☆4種族なんじゃね?
868 名無しの旅人
いやいやいやいやwww
出なさ過ぎてもはや都市伝説レベルじゃんwww
869 名無しの旅人
兄弟揃って☆4でるとかどんな奇跡よwww
870 名無しの旅人
仮に出てたとしても選ばないだろw
転生まっしぐらだぞwひっどいデメリットあるらしいしw
871 名無しの旅人
確かβの頃に☆4種族で人魚が出たらしいけど
30分おきに水飲まなきゃいけなかったらしいなwww
872 名無しの旅人
たしか、水中では全ステータス上昇大で地上は全ステータス減少特大だっけw
873 名無しの旅人
それから、水属性の威力が強いとかだったはずw
874 名無しの旅人
でも、地上では戦えないwww無駄wwww
875 名無しの旅人
まぁ、普通は選ばないよなー
が、2人揃って不遇職を選んでいるという点に注目してくれ
876 名無しの旅人
・・・選んでそう
877 名無しの旅人
いやー・・・いやー・・・
やばい 選んでそう
878 名無しの旅人
鬼人とエルフだと思ってたけど・・・違うのか・・・
879 名無しの旅人
あ、でもラセットブラウンのクラマスも☆4種族って話じゃなかった?
自慢して回ってるって聞いたけど
880 名無しの旅人
メンバーが勝手にクラマスが☆4種族だって自慢してるだけで本人はしてないらしい
まぁ、全然羨ましくねぇけどwww
881 名無しの旅人
ってことは、優勝争いは☆4種族の争いってことか 胸熱展開だな
882 名無しの旅人
結局強い種族のやつが強いってだけの話じゃん
面白くないわ
883 名無しの旅人
>>882
ばかかお前。ばかだな?
人魚の話読んだか???
884 名無しの旅人
>>883
読んだけど?でも、地上で戦えないのは人魚だからでしょ?
地上で戦える種族ならただ強いだけじゃん
885 名無しの旅人
☆4種族のキリングドール引いて即転生した俺氏登場
一回でも攻撃当たったらばらばらに崩れてその場から暫く動けなくなったw
自分の体が崩れんの普通に怖いwww怖すぎて泣いたwww
886 名無しの旅人
>>885
その情報初めて聞いたんだけどwww詳しくwwww
887 名無しの旅人
詳しくって言われてもすぐ転生したからよくわからんw
敵のHPが3分の1以下の時は即死攻撃ができたはず
888 名無しの旅人
そこだけ聞くと強そうなんだけどなーw
889 名無しの旅人
3分の1まで崩れることなく減らせればな!!!
あとは・・・体の中に色々暗器仕込めるけど、使い捨てw
買うか自作かで用意しなきゃいけなくてとてもじゃないけど無理w
890 名無しの旅人
金かかるなww
891 名無しの旅人
俺☆3種族だけど、MP自動回復量微減少っていう可愛いデメリットで良かったわw
その代わり魔法威力上昇してるけど、微々たるもんだしw
892 名無しの旅人
☆4種族続けられるやついなくて情報ほぼないけど碌なもんじゃないなwww
893 名無しの旅人
プレイヤースキルがあほ程高くないと扱えないんだろうなぁ
そういうやつは結局どの種族でも強いだろうし
894 名無しの旅人
あの兄弟、本当話題に事欠かないよなwww
895 名無しの旅人
実際☆4なのかな?
896 名無しの旅人
こればっかりは本人に聞くしかないよなぁ
897 名無しの旅人
話しかけられないんだけどどうしたら良い?
898 名無しの旅人
話しかけられないって話題何回出てくんだよw
専スレ作れよもうwww俺も行くからwww