day31 オークション
本を入れる宝箱も欲しいな。エルムさんに貰った本がジオンのものも含めて結構あるから纏めておきたい。
アイテムボックスに本棚を入れておくこともできるし、同じ効果の魔法陣で魔道具にしてしまえば持ち運びも簡単だけど、さすがに、なんか、違う気がする。気分的な問題だ。
残りの《風魔石》4個は使ってしまおう。
「兄ちゃんのも作るね。大と中、どっちにする?」
「ありがと。んー……中かな」
「うん、わかった」
《宝箱:中》を2つと《宝箱:大》を2つ床に出して、順番に底にチョークで魔法陣を描いていく。
同じ魔法陣を描けばいいだけだから、すぐだ。
描き終わったら《風魔石》を手に取って、さくっと完成させてしまう。
「完成ー! はい、これ兄ちゃんの」
「ありがとう。大事に使うよ」
魔道具に加工したことで《風の宝箱:中》となった宝箱に、早速魔法宝石を移し替えて、ジオンの紙袋の中身とそれから最初の頃にジオンが買った料理の本を大の宝箱に入れておく。
机に散らばっている俺の本はまだ使うのでまた後で。
そうして、残った《風の宝箱:大》を眺める。
「うーん……この宝箱、売れると思う?」
「売れると思うよ。中に素材を入れても簡単に持ち運べるから、生産職の人に良いんじゃないかな」
「兄ちゃん、俺……オークションに出品したいんだけど……」
どうやらオークションシステムは匿名で出品ができるそうだ。
作り方や誰が作ったのかを内緒にしている俺にぴったりのシステムである。
それに、これなら朝陽さん達に迷惑をかけることもない。
ただ、これまでお願いしていたのに勝手にオークションに出品するのは、気が引ける。
「朝陽もロゼも空も、ライの作るアイテムはオークション向けだって言ってたから、気にしなくて大丈夫だよ。
それに……朝陽は付与装備を求めて来たプレイヤーに、続きはウェブでとかなんとか勝手に言ってたしね」
確かに続きはウェブ……ウェブなのかな?
ネットオークションのようなものみたいだし、ウェブでも間違いではなさそうだ。
「オークション向け?」
「値段がいまいちわからないって点がね」
言われてみれば、これまで『正直分からない』と言われてばかりだった気がする。
俺も相場はさっぱりだし、確かに、欲しい人が欲しい値段で買えるオークションのほうが合っているのかもしれない。
「それじゃあ、早速出してみるね!」
空の《風の宝箱:大》をアイテムボックスに入れて、ウィンドウから新しく追加されたオークションページを開く。
どんなものが出品されているのか気になるところではあるけど、まずは設定だ。
「えーと……匿名で出品にチェックを入れて……お問い合わせ受付?
これってしたほうがいい?」
「作り方を教えて欲しいとかそういうのばっかだろうから、しなくて良いと思うよ」
「そっか。それじゃあ、チェック外して……こんなところかな」
設定を終わらせて、次に出品の文字に触れると、アイテム一覧が表示された。
《風の宝箱:大》を選ぶと出品設定画面が現れる。
「商品説明とかは入力する必要ないんだね。
あ、なるほど。鑑定がなくても性能が見れるんだ」
「そうらしいね。設定するのは開始価格と期間だけで良いみたいだよ」
「開始価格かぁ~……それが一番難しいんだよなぁ。
ちなみに《宝箱:大》の値段は?」
「15,000CZだよ」
大きいし、しっかりとした作りだし、たくさんアイテムが入れられる。
それに、宝箱だ。もっと高くても良いと思う。
もしかしたら安くしてくれているのではないだろうか。
「んー……あれ? 表示されてる額から減らせないや」
「開始価格は最低でも街売り……買取価格の値段だよ。
相場がわからない人は大体2倍から4倍の値段に設定するみたいだね」
「2倍から4倍……」
表示されている30,000CZという値段を見て、魔道具って高いんだなという感想を持つ。
珍しいスキルのようだし技術料なのだろうか? それとも、魔石が高いのかな。
STRが多い人は鉱石が入っていようが持てるだろうから、いらないと思うんだけど。
「2倍でも、60,000CZ……たっか……」
「はは。まぁ、大丈夫だよ。
宝箱いっぱいに素材を集めて、そのまま売るなり、生産して売るなりしたらすぐ元が取れるからね」
「そうなのかな?」
そう答えれば、これまで露店に出していた値段を教えてもらった。
いつもあんな値段になっていたのだから分かっていたはずだけど、そんな値段で出してたのかと驚く。
例えば鉱石が100個あったとして、一番鉱石を使う大剣だと5本は作れるから……いや、大剣なら1本で元が取れる。
「ジオンの腕と、あと、魔法鉱石があるから、ライの装備品は他のプレイヤーの装備品より高いけどね。
それでも、すぐに元は取れるよ」
「兄ちゃんがそう言うなら、大丈夫だね」
60,000CZで値段を設定する。
落札されなくても自分で使えるし大丈夫だ。
「期間はどうしたら良いかな?」
「装備はイベントに間に合うように設定したほうが良いと思うけど、宝箱は好きにしていいと思うよ」
「それじゃあ、5日でいっか」
現実時間の1日分だ。そう考えると凄く短い気がするけれど。
期間を設定して、確認してから出品完了。
あとでジオンとリーノが作っている装備もまとめて出品しよう。
価格は……さっき兄ちゃんに聞いたこれまで露店で出していた値段で良いかな。
それとも入札があることを考えて低く設定しておくべきなのだろうか。
まぁ、一緒でいっか。一旦それで出してから考えよう。
「それじゃあ当初の目的の冷蔵庫……冷蔵宝箱? と、コンロを作ろう」
「あぁ、だから円形のと長方形の木の板って言ってたんだね」
冷蔵庫とコンロの魔法陣は、エルムさんに教えて貰いながら描いた魔法陣のメモがあるので、多少調整が必要な可能性はあるけど、一から考える必要はない。
問題は……ランクだ。カヴォロの料理レベルは聞いたけど、他のプレイヤーのレベルは知らない。
「兄ちゃん、みんなの料理スキルのレベルのこととかわかる?」
「さすがに料理スキルはわからないな。
んー……カヴォロが使ってる道具の1つ下のランクで大丈夫だと思うよ」
1つ下というと……料理レベル10のものか。
それなら、魔法鉱石と魔法宝石を使う必要はないかな。
とりあえず、使用条件のない冷蔵宝箱から先に作ってしまおう。
本来、木材の冷蔵庫は鉱石で作られた冷蔵庫と比べると性能が落ちるらしいけれど、氷晶鉱石で補うことができる。
一番いいのは《氷晶鉄》で作られた冷蔵庫なんだろうけど、今の俺ではそれを扱うにはスキルレベルが足りないし、そもそも鋳造職人の知り合いがいないので鉱石を加工してもらう手段がない。
「ライ、出来たぜ~。4つで良いんだよな?」
「うん! ありがとう! 大きい方の宝箱に3個と残り1個は中くらいの宝箱にお願い」
「おう、この辺りの宝箱だな? ちょっと調整するだけだからすぐ終わるぜ」
良いタイミングで《氷晶鉄》を使って作られた装飾が全て完成したようだ。
鉄細工と言うらしい。
リーノが細工を施し終えた宝箱の性能とメモしている魔法陣を見比べる。
使った魔法鉱石の付与と数値は揃えてあるので、それぞれで違う調整をする必要はない。
装備だと+1、+2ではほとんど効果はないけれど、魔道具だと1の差で結構性能に差が出るようだ。
「んー……考えてみたら、これも食材とか入れてたら重くなるよね」
「そうなるね。使える魔石は1つ?」
「ううん。2つ使うこともできるよ。
俺はスキルレベルが足りないから使えないけど」
仮にスキルレベルが足りていても、貰った《風魔石》はさっき使い切ってしまっている。
宝箱に入れている魔法宝石から何か使えそうなものはないかと探してみると、ぴったりの宝石を見つけることが出来た。
「あれ? 兄ちゃん、風属性覚えたの?」
「うん。凝固で使えるから色々覚えようと思ってね」
「ナイスタイミングだよ兄ちゃん!」
《風魔石》程の効果は出なくても多少重さを感じなくすることはできそうだ。
スキルレベルが高ければ、魔法宝石をたくさん使って《風の宝箱》と同じだけ軽くすることも出来るけど、そのレベルなら魔石を2つ使うことが出来るだろう。
「リーノ、風属性の宝石を鉄細工に付け加えられる?
鉄細工とは別で装飾しても大丈夫だけど」
「おー鉄細工に付け加えるわ」
「よろしく! 使って欲しい宝石出しておくね」
俺のスキルレベルだと付与効果の数値が3、4程度でないと扱えないし、氷晶属性が既に2付いているから、風属性の数値は2で抑えなければならない。
俺がぎりぎり持てるくらいの重さには調整できる、と、思う。最悪兄ちゃんが持てたら大丈夫だ。
《風の宝箱》の魔法陣と冷蔵庫の魔法陣を合わせたような魔法陣に変更しなければ。
「よし! 頑張ろう!」
スキルレベルが上がれば他にも色々作れるようになるし、落札されたらお金も増えるしで一石二鳥だ。
◇
【オークション】生産総合スレpart.21【スタート!!】
234 名無しの旅人
風の宝箱、氷の宝箱、コンロは同じやつが作ったってことは確か
235 名無しの旅人
今出ている考察を纏めると
・空さん説
・NPC説
・運営が用意した目玉商品説
こんなところか
236 名無しの旅人
運営やNPCだとしたら数時間おきとか決まった時間に出すと思うんだよな
最初の風の宝箱の後、数時間空いてから同じ時間に氷の宝箱とコンロ出品してるから違うと思う
237 名無しの旅人
規則的に出したらすぐばれるから敢えてばらばらにしてんじゃね?
238 名無しの旅人
空さんなら最初の1個は試しに出品してみたものだとしても、その後は露店に出すだろ
そもそも匿名で出すとも思えない
239 名無しの旅人
俺わかったかも
いや、誰かとかはわかんないけど気付いたことがある
240 名無しの旅人
>>239
言ってみろ しょうもなかったら許さん
241 名無しの旅人
今さぁ、俺らは宝箱を落札しようと張り付いてんじゃん?
んで、戦闘職のやつらが同じように張り付いてるのが何か知ってる?
242 名無しの旅人
例の付与装備も今出品されてんだろ?
続きはウェブでってやつ
243 名無しの旅人
その装備もさ、氷の宝箱とかと一緒の時間帯に出品されてるっぽいんだよね
まぁ、その時間帯、他にもたくさんアイテム出品されてるけどさぁ
244 名無しの旅人
つまりお前は付与装備と魔道具は同じ人が出品してると言いたいわけか
245 名無しの旅人
そうそう んで、同じ人だとしたら、レンさん達の知り合いのプレイヤーでしょ?
ついでに空さんじゃないって話になるじゃん?
246 名無しの旅人
説が全部覆されるってことだね
魔道具スキルを持つプレイヤーが存在してるって証明にもなるのかな
247 名無しの旅人
取得条件は! なんですか!!
問い合わせ解除してくれ!!!!
248 名無しの旅人
あぁ~~これ以上はもう、捻りだせない……落札無理だぁああ
249 名無しの旅人
>>248
普通の収納アイテムで我慢しろ
250 名無しの旅人
STRがないんだよ!!!!
素材が詰まった箱なんて持てるわけないだろ!!!
251 名無しの旅人
生産職って基本筋力ないもんねぇ 鍛冶職人とかは別として
まぁ鍛冶職人も扱う素材が鉱石だから結局大量には持てないらしいけど
252 名無しの旅人
生産スキルのレベルばっか上げてるからそもそもレベルが低いしな
253 名無しの旅人
風の宝箱出品者も、収納アイテムが重くて持てなかったから作ったのかな・・・
254 名無しの旅人
親近感沸いたわ・・・