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day18 生産終了

「よくお似合いですよ、ライさん」

「本当? それなら良かった。リーノ、ありがとう」


リーノに作ってもらったピアスは、小さな赤色の宝石が付いただけのシンプルなピアスだった。

ピアスなんて開けていないけれど、さすがはゲームだ。

なんの痛みもなく、また、血が出るなんてこともなく、すっと耳たぶの中に入っていった。

試しに外してみれば、耳たぶに穴は開いておらず、ある意味怖いという感想をもった。


「おう! やっぱライには赤だよな!」

「そう? あ、角の色と目の色が赤だもんね」

「髪にも赤が混ざってるしな!」


ジオンは俺と同じような小さな青色の宝石のピアスで、リーノは赤色の宝石が付いたリングのピアス。

それから兄ちゃんは、青色の宝石に1センチ程の長さの小さな装飾が垂れるピアスだ。

全員2つずつあり、俺とジオンは両耳につけたが、兄ちゃんとリーノは左耳に2つ付けた。

リーノは左耳の耳たぶに1つと上側の軟骨の部分に付けているが、痛くないと分かっていても軟骨は怖くて真似できない。


ちなみに、俺とジオンと兄ちゃんの宝石には魔力回復の付与、リーノの宝石には麻痺耐性の付与が付いてる。

それから、使った鉱石は全て耐寒の付与のものだ。

数値自体が低いのでほとんど意味はないかもしれないけれど、あって困るものではないし、それに、防御力も少し上がっている。


「出来た剣は兄ちゃんに渡していいの?」

「うん、いいよ。まぁ俺はほとんど露店にはいないから、ロゼか朝陽に渡しておくよ」


出来た剣は氷晶鉱石から作った《スノーカトラス》と《スノーダガー》、《スノーブレード》、《スノーグラディウス》。

それから雷鉱石から作った《サンダーグラディウス》、《サンダーバスタード》、《サンダーカトラス》だ。


グラディウスというやつがショートソードのようだ。

一応兄ちゃんに尋ねておいたけれど、大丈夫だろうと返事をもらっている。


俺が装備している《雪月華》やジオンの装備している《雪中四友》といった、特別な名前が付いた武器はユニーク武器というものらしく、作るための条件は様々あるが、第一前提として鍛冶スキルが高くなければ作れないらしい。

ただ、ユニーク武器はどの武器よりも強いかと言われると、そういう訳でもないようだ。

ユニーク武器じゃなくても強い物は強い。良い物は良いのだ。


「ロゼさんと朝陽さんはあんまり狩りしてないの?」

「ううん、してるよ。俺のレベルも追いついたから、4人で一緒に狩りに行くこともあるし。

 でも、朝陽も言ってたように俺も含め個人行動が多いパーティーだからね」

「もう1人のパーティーの人、会ったことないんだけど、ポーション作ってる人なんだよね?」

「あぁ、空とは会ったことないんだっけ? まぁ、素材集めであちこちふらふらしてるからなぁ」

「空さんって言うんだね。ポーションの素材を集めてるの?」

「それもだし、他にも色々。生産が好きなやつだからね。

 最近【木工】と【皮細工】も取ったみたいで、そっちの素材も集めて回ってるよ」

「あ、じゃあ、兄ちゃんが使ってた木材はその人が集めてきてくれたの?」


兄ちゃんが銃を作っている時、鉱石だけでなく木材も使っていた。

木材に付与はされていないけれど、それ以外に使われている鉱石と宝石は俺達がスキルを使って付与したやつだ。


「そうそう。木工用に集めてたやつを少し分けてもらったんだよ。

 銃工で使うのが分かっていたからね」


銃工等の生産スキルは取得したら作り方がわかるらしい。

ただ、生産スキルは作れるものの基礎がなんとなくわかるって感じで応用も可能。

レベルが上がれば違うものの作り方の基礎がわかるといった感じのようだ。

刀術も取得したらなんとなく扱い方の基礎が分かったし、ジオンの動きを真似ながら俺に合った戦い方をしているから、似たよう感じなのだろう。


「さて、そろそろ出ないとね」


現在の時間は『CoUTime/day17/18:56』で、作業場の貸し出し時間の19:00まであと数分だ。

残っている魔法宝石と魔法鉱石は俺が使っていいとのことなので、全てアイテムボックスに入れておく。

もちろん、この先必要になった時にはいつでも渡すと約束している。


作業場を出て、受付をしてくれたおじさんに挨拶をして鍛冶場を出る。

その後は4人で夕食を取るためにレストランへ向かった。


「俺、オムライス。ジオンとリーノは何にする?」

「では私は、パスタにします。そうですね……魚介のペペロンチーノにします」

「俺は……ピザにする!」


メニュー表を見ながらそれぞれがメニューを決めていく。


「へぇ。エールなんてあるんだ。それじゃ、俺はエールと……フィッシュアンドチップスにしようかな」

「エールって?」

「んー……まぁ、ビールのことだよ」

「へぇ~お酒もあるんだ」


俺は未成年だけど、ゲームの中では飲んでいいのだろうか。

まぁ、飲みたいと思わないので飲まなくてもいいけれど。


「ジオンとリーノも飲む?」

「ふむ……頂いても良いですか?」

「うん。遠慮しなくていいよ。お酒好きなの?」

「えぇ、鬼人のほとんどが酒は好きですよ」


確かに、絵本なんかに書かれる鬼は酒豪なイメージがある。

これまで俺が一切お酒に触れていないから遠慮させていたのかもしれない。


「俺も俺も!」

「了解。妖精ってお酒飲むんだね?」

「俺はな。まぁ、甘い物のが好きってやつのが多いけど」


店員さんを呼んで注文をして、後は料理が運ばれてくるのを待つだけだ。


「兄ちゃんはこの後は狩り?」

「そうだね。夜のほうがレベルが上がりやすいし」

「その分きつそうだけど……あ、カヴォロと狩りに行ってたんだよね?

 いいなぁ。どうだった?」

「んーこれまでほとんど料理ばかりしてたみたいだから、戦闘にはあんまり慣れてないみたいだったよ」


そりゃあ兄ちゃんと比べられたら、皆慣れていないのではないだろうか。

兄ちゃんはべつに現実で戦闘系の、例えばボクシングや柔道、空手なんかを嗜んでいるわけではないけれど。


「でも、少しアドバイスしただけですぐに成長してて凄かったよ。

 戦闘メインのプレイヤーだったら最前線プレイヤーになってたんじゃないかな」

「へぇ~! カヴォロって何で戦うの?」

「魔法だよ。だからこそアドバイスできたんだけどね」


なるほど。兄ちゃんはβの頃は魔法職だ。それも、高レベルの。

魔法メインにしているカヴォロにとって良い先生なのではないだろうか。


「アドバイスも最初は、何言ってんだこいつみたいな顔されたけどね。

 そんなに難しいことを言ったつもりはなかったし、出来ると思って言ったんだけど……でも、出来てたから問題ないよね」

「あー……なるほど」


それで、笑顔が怖い、か。

そう言えば、兄ちゃんは人に何かを教える時、結構強引なところがあるらしい。

強引というか、『大丈夫だよ。君なら出来るよ』といった感じで、全面的に信頼を寄せてきてくれるので、しなければならないという気持ちになるとのこと。

それがわざとなのか、本当に信頼してくれているのかはわからないけれど、とは兄ちゃんの友人談である。


「俺、兄ちゃんに何かを教えてもらうのはやめておこう」

「はは。まぁ、ライは見て覚えるからね。言葉はほとんどいらない」

「刀術でまさにそれを感じました。私の動きを見て、それを試しながら自身の物へと変化させていく姿には驚いてばかりいます」

「先生が凄いからだよ。でも、ありがとう」


褒められたことに少しの気恥ずかしさを覚えつつ、素直に喜ぶ。


「ライが戦うとこ、俺も早く見てみてぇなぁ。

 鉱山でライに話しかけてた時の事はうっすらとは覚えてんだけど、夢みたいな感じではっきりと覚えてるわけじゃねぇんだよな」

「そうなんだ?」

「おう。それに、うっすら覚えてるのも、採掘の音が聞こえてる時だけだから、戦ってるとこは覚えてねぇんだよ」

「あーなるほど。ジオンに戦ってもらって掘ってる時はあったけど、逆はなかったもんね」


ログアウトしている間に調べたところ、ノッカーとは岩肌をノックして鉱脈があることを教えてくれるつるはしを持った鉱山に棲む妖精だそうだ。

『Chronicle of Universe』のノッカーが全く同じ存在というわけではないだろうけれど、元になっているのは間違いないだろう。


「近いうちにヌシを倒しに行く予定だから、すぐに見れるよ。

 大したものじゃないと思うけどね」

「あぁ、壱ノ国のヌシを倒しに行くんだっけ?」

「そうそう。カヴォロと一緒にね」

「あー俺大丈夫かな。足手纏いになるんじゃねぇか」


これまでにリーノが戦っているところは吸血蝙蝠の間を走り抜けている時に【雷弾】を打っているところしか見たことがない。

そもそもリーノが仲間になってから狩りは一切していないのだけれど。

採掘をしている間にジオンが吸血蝙蝠を倒してくれていたお陰でリーノのレベルは3にはなっているが、どうだろうか。


「んーでも、DEFは俺と比べて倍近くあるから耐えられるよ!」

「耐えられるだけじゃどうしようもねぇんだよなぁ……」


一応、プレイヤーのレベルに換算すると18程度なのだから、適正レベルではあるはずだけど。

リーノは戦闘スキルを持っていない。魔法スキルは現状雷弾のみだ。


「ま、ライとジオンに攻撃が当たりそうな時は壁になってやれるか」

「えー痛いじゃん。俺は助かるけどさ」

「ライとジオンが近距離だろ? んで、カヴォロってやつが魔法だから、遠距離。

 んで、俺が壁役。いいじゃねぇか」


壁役か。ありがたいしパーティーには必要な役割なんだろうけどなんとも申し訳ない気持ちになる。

盾とか買っておいたほうがいいだろうか。


「まぁ、リーノが良いなら良いけどさ。

 そうだ。カヴォロにいつ行けそうか聞いておかないと」


メッセージを送っておこう。


『TO:カヴォロ FROM:ライ

 ヌシ、いつ行けそう? レベルどれくらいになった?』


返事は数分で届いた。今は狩りをしていないのかな。


『TO:ライ FROM:カヴォロ

 16になった。明日の昼にはログアウトするから、次にログインした時か、明日の午前中に行きたい。行けるか?』


「16……!? 早くない……!?」

「カヴォロのレベル? 俺がログアウトした後も狩りしてたんだね」

「兄ちゃんがログアウトしたって、いつの話?」

「んー今日の朝かな。こっちの世界の」


兄ちゃんとカヴォロが狩りに行ったのは昨日の朝方だったはずだから、大体1日しか経っていない。

それなのに、8も上がるなんてどんな裏技を使ったんだろう。


「まぁ、序盤は上がりやすいからね。15超えたあたりから上がりにくくなるけど。

 仮眠挟みつつずっと狩りして、夜はブラックボア」


ブラックボアは壱ノ国でヌシを除いて一番強いモンスターだ。

適正レベルがどれくらいかはわからないけど、攻撃力も高いし防御力も高い。


「ただでさえ兄ちゃんの種族特性で強くなってるのに?」

「うん。そのほうがレベル上がるからね。

 それに、カヴォロも早く15になりたいからそうしようって」

「なるほど……」


裏技は兄ちゃんと狩りに行く、だったようだ。

戦闘に慣れていないみたいだったと言っていたし、兄ちゃんはともかく、カヴォロはきつかったのではないだろうか。


「何度か死にかけてたけど、一度もリスポーンはしなかったよ」


死にかけてもポーションなり【回復弾】を撃たれるなりで回復して狩りをし続けたのだろう。

兄ちゃん式なんちゃらキャンプは効果絶大だ。俺もいつか入隊してみようかな。


『TO:カヴォロ FROM:ライ

 それじゃあ、明日の午前中に行こう。

 待ち合わせははじまりの街の、前に会った宿屋の近くでいい?』


朝から移動していたら時間がかかるから、今日ははじまりの街に帰ろう。

一旦アリーズ街に行って、そこからは転移陣で良いかな。


『TO:ライ FROM:カヴォロ

 ああ。今日もその宿を取っているから、問題ない。

 それじゃあ、7:30頃でいいか? 早すぎるか?』


俺もはじまりの街ではあの宿屋で毎日宿を取っていたけど、どうやらカヴォロも同じだったようだ。

今日もはじまりの街に着いたらあの宿屋に行く予定だったし、同じ宿屋にいるのなら待ち合わせは宿屋の中で良いだろう。


『TO:カヴォロ FROM:ライ

 俺も今日、あの宿屋に泊まるつもりだったから、7:30に宿屋のカウンター辺りでどうかな?』


カヴォロから了承のメッセージが届いたことを確認して、ウィンドウを閉じる。

ちょうど運ばれてきた食事を4人で楽しみながら、明日の事に思いを馳せる。


明日は初めてできた友達とヌシ退治だ。

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