day1 作成終了
「さて、現在、ライ様の種族を<鬼神>へと調整しております。
調整が終わるまでの間に、職業のお話へと進ませていただきますね!
職業にはその職業に合ったスキルが1つ用意されており、職業を選択すると自動で取得されます」
「SPは使用しなくていいってこと?」
「はい、その通りです! 例えば[魔法使い]であればSPを使用せず、属性魔法のスキルを1つ取得した状態で、冒険を開始することができます。
また、職業に合ったスキルを使用する際は威力や効果が上昇します」
「つまり剣士が使う魔法より魔法使いが使う魔法の方が強いってことだね。
スキルを覚えられないってわけではないの?」
「はい。そういうわけではありませんよ。
それに、差があると言っても大きな差ではありませんので、取得したいスキルがあるならどんどん取得してくださいね!
色んなスキルを組み合わせることで、自分なりの戦闘、生産が楽しめますよ!」
「なるほど。楽しそうだね」
「さて、職業は[剣士]、[魔法使い]、[弓使い]、[格闘家]、[サモナー]の5の職業、それからランダムに選出された30の職業、合計35の職業からお選びいただけます。が」
「が?」
「ライ様の職業は[テイマー]で固定されます」
「それがデメリット?」
「んーそうですねぇ。デメリットの1つではあるかもしれません」
デメリットはそれだけではないということだろう。
確かに、なりたい職業があったのなら別だけど、職業がテイマーに固定されるだけではそこまでのデメリットではない。
「モンスターを仲間にして戦う職業だよね?」
「はい! その通りです!
[テイマー]はスキル【テイム】を取得しております。
それと、こちらをどうぞ!」
いつの間にやら妖精ちゃんの腕には赤色の宝石が抱えられていた。
差し出されたそれを俺は素直に受け取る。
「こちら、職業に[テイマー]や[サモナー]といったモンスターを使役して戦う職業を選択された方に最初に贈られる、この空間でのみ使用することができる《はじめてのモンスター石》というアイテムです。
召喚に成功するとランダムなモンスターを最初から1体、仲間にすることができます、が」
「が?」
「ライ様にはなななんと! あと4つの《はじめてのモンスター石》をプレゼントです!」
「……んん?」
疑問を浮かべたまま、どうぞどうぞと次々に渡される赤い宝石を全て受け取る。
今のところメリットしか見当たらないけど……。
「さて……そろそろですかね? はい、大丈夫ですね!
調整が完了致しましたので早速ステータスを見てみましょう!
ステータスは『ステータス』と声にだすか念じることで見ることができます」
ステータス、と念じてみると、小さなウィンドウが胸元に現れた。
名前:ライ Lv1 SP:10
種族:鬼神 職業:テイマー
HP:30 MP:50
STR:1 INT:12
DEF:2 MND:7
DEX:5 AGI:3
『種族特性』
・百鬼夜行
・地獄の業火
『種族スキル』
【融合】【熔解】【魔操】
『戦闘スキル』
『魔法スキル』
【黒炎属性】
【黒炎弾】Lv1
『スキル』
【テイム・百鬼夜行】Lv1
「気になるところはあるけれど、まずはデメリットが知りたいな」
「でしたら、種族特性のどちらかに触れてみてください」
まずは『百鬼夜行』に触れてみると、百鬼夜行についての詳細が書かれたウィンドウが現れた。
『テイム可能なモンスターが契約を了承している場合、必ず【テイム・百鬼夜行】が成功する。
☆4以上のテイム可能な人型かつユニークモンスター以外の【テイム・百鬼夜行】使用不可。』
「テイム可能なモンスターって☆何までいるの?」
「テイム可能なモンスターには☆1から☆5が存在しております。
種族自体の強さや希少さ等の差もありますが、基本的には単純に強さで☆の数が変わります。
そのため、同じ種族のモンスターであったとしても、☆の数に差があります」
「なるほどぉ……」
「また、☆3と☆4の壁は厚く、場合によっては☆1のモンスターの数値が☆2より僅かに高いことがありますが、☆3のモンスターが☆4の数値より高いことは絶対にありません」
序盤のフィールドでこの条件を満たすテイム可能モンスターは存在するものなのだろうか……。
仮に存在したとして、レベルが低い状態でテイム可能なのだろうか?
「テイム・百鬼夜行は、条件を満たしていない相手に使用するとどうなるの? 失敗?」
「通常の【テイム】と違い、【テイム・百鬼夜行】は条件を満たしていない場合使用することができません」
「通常のモンスターとユニークモンスターだと成功率は変わる……?」
「もちろん、変わります。ユニークモンスターの成功率は低いです。
スキルのレベルを上げると成功率は上がりますが、それでもユニークモンスターを【テイム】するのは難しいと言われていますね……。
ちなみに、スキルのレベルはそのスキルを使用することで上がります」
テイム・百鬼夜行は条件を満たさないと使用することができないこと以外はテイマーの初期スキルであるテイムと変わらないのだろう。
スキルレベルはテイム可能モンスターに対しスキルを使用することで上がるが、テイム・百鬼夜行は☆4以上の人型ユニークモンスター相手でないとこのスキルを使用することができない。
つまり、物凄くレベルが上がりにくい上に、成功率も極めて低いということだ。
「……さっき貰った《はじめてのモンスター石》から☆4以上の人型かつユニークモンスターが出なかったら……」
「とても大変な旅になるでしょうね……!」
《はじめてのモンスター石》の追加4つは、メリットでもなんでもなく、救済措置だったようだ。
俺は小さく呻きながら百鬼夜行について書かれたウィンドウを閉じ、『地獄の業火』の文字を眺める。
名前からして強そうだし、ステータスを見て気になった黒炎属性はこれに関係している気がする。
最悪、テイムモンスターがいなくても、自分で何とかできるのではないかと期待して、文字に触れた。
『初期状態で黒炎属性の魔法スキル取得。
黒炎属性の魔法スキルの魔法攻撃力上昇。
他属性の取得不可』
「あっ! いいんじゃない!? 他属性を覚えられないのは残念だけど、1人でも戦えるよね!」
「そう、ですね……黒炎属性の魔法スキルは凄く強いですよ」
これなら、なんとかなりそうだ。
まぁ、《はじめてのモンスター石》で仲間ができないと決まったわけじゃないけれど。
できなかったとしても、威力は劣るものの魔法使いのようなものだし、レベル上げもできるだろう。
地獄の業火の特性で、黒炎魔法だけなら魔法使いより強い可能性もある。
他の属性が使用できなくなる分、その可能性は大いにあり得るのではないだろうか。
「よし! 《はじめてのモンスター石》を使うよ!」
「はい! きっと大丈夫ですよ!
なんと言ってもレア中のレアである☆4種族を引き当てた豪運の持ち主なんですから!」
「そこで運を使い果たしただけかもしれないけどね。でも、なんだかいける気がするよ!」
「いけます! ふぁいとです! 使い方は、簡単! 石を置いて『契約召喚』と声に出すだけです!」
俺は祈りを込めて宝石を1つ握りしめ、1度深呼吸をしてから地面に置いた。
「契約召喚!」
その瞬間、宝石はボンッ!と音を立てて爆発した。
爆発といっても小さなもので何の被害もない程度のものではあったが、恐らくこれは……。
「失敗、かな?」
「ですね……でも、大丈夫です! あと4つもありますよ!」
「そうだね! どんどん行こう!
契約召喚!」
ボンッ!
「契約召喚!!」
ボンッ!
「契約召喚!!!」
ボンッ!
「……」
「……」
「い、いける気がしてきたよ! 大丈夫だよ!」
「はい! 最後にすべてをぶつけましょう!」
大きく息を吐いて、宝石を置く。
深呼吸をして、ぎゅっと目を閉じた。
「契約召喚!」
爆発音は、ならない。
「……契約召喚?」
「違います! 失敗じゃないです!
ライ様! 成功してます! 成功ですよ! 目を開けてください!」
妖精ちゃんの言葉を信じて、恐る恐るではあるが、目を開いて宝石を見ると、眩いほどに光輝いていた。
「成功!? 本当に!?」
「はい! 成功です! ☆4の人型かつユニークモンスターですよ!」
「や、やったぁー!」
これで、1つのデメリットは解消できた……と、思う。
俺が戦えなくても戦ってくれる仲間ができたのだ。
「人型ってことは、話ができるの?」
「はい! できますよ!」
ということは、恐らく妖精ちゃんと同じ『高性能学習型次世代AI』とやらが搭載されているのだろう。
これは、楽しい冒険になりそうだ。
輝く光が大きくなり、人の形へと変化していく。
そうして、その光が少しずつ晴れていくにつれて、姿が明らかになってくる。
まず目を引いたのはその服装だった。
馴染み深い服……と、言っていいのかはわからないが、よく知っている。
普段着ることはないし、俺も最後に着たのは七五三の時だ。
『Chronicle of Universe』の世界はファンタジーだと思っていたし、兄ちゃんの見た世界もそうだったはずなので、まさか袴を着用しているとは思わなかった。
しかし、鬼人や鬼神といった種族があるのだから、和風な場所もあるのかもしれない。
そして、次に目を引くのは、真っ白な髪、それから、その頭に映える2本の角だ。
「鬼、だよね?」
「そのようですね? ステータスを見るまではわかりませんが」
身長は、兄ちゃんより少し高いくらいだろうか。
上衣の袖から伸びる腕には程よく筋肉がついている。
細いわけではないが、ガタイが良いという程でもない。
目は閉じられており、それでも整った顔をしているとわかる。
なるほど、イケメンだ。程よいむきむきの男らしいイケメンである。羨ましい。
どういう人……人、でいいのかな? まぁ、角は生えているけど人型って言っているし、人で問題はないか。
良い人だったらいいな。
テイムモンスターが悪い人ってことはさすがにないんじゃないかとは思う。
性格が合わないことはあるかもしれないけれど。
これからのことにどきどきと思いを馳せながら、光が晴れるのを待つ。
しかし、光が完全に晴れたかと思うと、彼はまた光に包まれ、消えてしまった。
「あれ? 失敗……?」
「いいえ! 失敗ではありませんよ!
彼は私共の世界でライ様の到着を待っておりますのでご安心ください」
「それなら良かった。ステータスは確認できる?」
「そちらも、私共の世界に到着してからになりますね。
では、えー……最終調整、ですね。ライ様の見た目の調整、です」
「きたね!」
待ちに待ったアバターカスタマイズの時間である。
「それでは、ウィンドウをご覧ください。
種族に合わせた姿となったライ様が表示されております」
期待を胸に、ウィンドウを見る。
「……ふむ」
そこに映された姿は普段の俺からほとんど変化していない。
暗い朱色の角が2本生えていること、それから、角より少し色味の違う紅色の着物を着ていること以外に大きな変化はない。
種族による身長や体重、筋肉量の変化はないようだ。
まぁ、カスタマイズできるのだから問題はない。
ウィンドウには、目の形や輪郭の形等といった様々な調整バーがずらりと並んでいる。
こだわる人だとここで1日が過ぎるのではないだろうか。
俺は早速、様々な項目の中から『筋肉量』と書かれた項目を見つけ出し、スライダーのつまみを『MAX』へと動かす。
「ん? あれ? 動かない?」
「……そうですねぇ……」
試しに『MIN』へとつまみを動かしてみると、きちんと動いた。
「バグ……?」
「……バグではありませんよ……」
「え……それじゃあ、どういう……」
「……動かないということは、そこが、上限……ということですね」
「は? え?」
つまみを『MAX』へ動かす。動かす……動かない。
「う、嘘でしょぉおおおおお!?!?!?!?」