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day18 生産をしよう

「なるほどね。熔解、魔操、融合か。

 来李のお陰で、俺の種族スキルの謎が解けたよ」

「兄ちゃんの種族スキルって?」

「融解、凝固、魔操だよ。来李のスキルの宝石版だね。

 鉱石と比べると恩恵は少ないかな」

「宝石かぁ~お揃いだね。宝石だってアクセサリーとか装飾で使えるんでしょ?

 武器の装飾に使えば付与できそうだけど」

「んー装飾に使う宝石って多くはないからね」


それもそうかと納得する。

1つの武器に使う金属に比べると装飾に使う宝石の数はかなり少ないイメージがある。

それに、アクセサリーに使う宝石の数だってそう多いわけではないだろう。


「あ、でも、兄ちゃんは魔法いっぱい覚えられるから色々付与できるね。

 俺は覚えられないから、付与できる魔法に限りがあるし」

「あーそっか。それを考えると……うーん、悩むところだな。

 ジオンがいるなら問題なさそうだし、この先も仲間が増えれば魔法も増えるだろう?」

「あ! 俺、仲間増えたんだよ!」

「へぇ? そうなんだ?」


鉱山での出来事を最初から全部話していく。

鉱石や宝石の場所を教えてくれたこと。最初は採掘スキルのナビゲートだと思っていたこと。

それから、堕ちた元亜人のこと。


「堕ちた元亜人、ね。

 序盤で倒せる敵ではなさそうだけど……弐ノ国の鉱山にいたなんて、妙だな」

「確かに。兄ちゃんと倒したヌシよりもずっと強いと思う。

 ある程度レベルが上がっても無理なんじゃないかってくらい状態異常になったよ」

「うーん……ま、奇跡ってことかな。テイムに成功したことも含めて」


今日俺の声が届いたのは、何故だったのか。

数日前までは鉱石の場所を教えてくれていたし、完全に堕ちていたわけではなかったとか?

何にせよ、仲間が増えて良かった。これからもっと楽しくなりそうだ。


「リーノは雷属性を持ってたから、明日融合してみようかな」

「雷か……麻痺が付きそうだね。

 ねぇ、来李。俺が融合……じゃなくて、凝固した宝石と来李が融合した鉱石、交換しない?」

「いいの!? あ、でも、俺は嬉しいけど、兄ちゃん使うの?」


リーノが細工を持っているからアクセサリーや装飾がこれからはできる。

普通の宝石でも問題はないけど、凝固した宝石……魔法宝石と呼ぼう。魔法宝石があるなら良い物ができるはずだ。

でも、兄ちゃんは魔法鉱石を何に使うのだろうか。


「魔力銃ってほとんど売ってないし、自分で作ろうと思って【銃工】を覚えたから、鉱石が必要なんだよね」

「交換する! いっぱい作る!」


兄ちゃんが作るものだからきっと格好良くて強い銃に違いない。

今でもあれだけ凄かったのだから、もっと凄くなるんだろうなと思いを馳せる。


「はは、いっぱいはいらないよ。スキルのことは俺と来李だけの秘密ね。

 作った銃を売るにしても来李と同じように調整するし、ロゼ達には内緒にしとくよ」

「うん、わかった。秘密ね」


ロゼさん達にも内緒なのか。

まぁ、兄ちゃんがそう言うのならそのほうが良いのだろう。


もぐもぐと口を動かしながら思考を巡らせていると、ご飯を食べ終わった兄ちゃんが食器を持って席を立った。


「ごちそうさま、母さん。父さんも仕事お疲れ様」

「おーありがとな」


お父さんはここのところずっと仕事が忙しかったようで、夜は遅くに帰ってきて、朝は早く出勤していた。

帰ってくるのは俺が眠った後だったし、俺が起きた時は既に出かけた後だったので、顔を見たのは久しぶりだ。


なんの仕事をしているのかは守秘義務がどうこうとかで仕事内容は教えてくれなかったけれど、それなりに偉い人のようだ。

実はマフィアだったりしたらどうしよかと思うが、危ない仕事ではないと言っていたからきっと大丈夫だろう。


「俺も、ごちそうさま! お父さん、お仕事お疲れ様!」


食器を重ねて席を立ち、キッチンに向かった兄ちゃんを追いかける。


「来李、今どこにいる?

 ログインしたらそっちに行くから、一緒に鍛冶場に行こうよ」

「うん! 俺は今、鉱山の村だよ」


シンクに食器を置いて、2階へと向かいながら話す。


「んー……牧場の話をしてる時についでにどこにあるか聞いておけばよかったかな」

「アリーズ街の雑貨店で教えてもらったから、兄ちゃんもアリーズ街で聞いてみたらいいよ」

「へぇ、なるほどね。うん。俺もアリーズ街で聞いてみるよ。

 それじゃ、また後で。メッセージ送る」

「うん! また後でね」





3人でお昼ご飯を食べた後は、昨日鉱山でジオンが狩った吸血蝙蝠の戦利品を商店に売りに行く。


ギルドで依頼を確認してからでも良かったけど、アリーズ街まで戻らなければならないし、依頼があるかもわからない。

兄ちゃんが来るまでの間、することもないからと売ってしまうことにした。


戦利品を売却した後、何を買うでもなく並んでいる商品を眺める。

グラスがあれば買っておこうと思っていたけれど、見当たらない。

レストランや宿屋の食堂でもグラスは出てくるし、珍しい物でもないと思うが、売られているところをこれまでに見たことがない。

忘れていたことが一番の原因ではあるけれど、グラスが見当たらなかったのも牛乳を飲めなかった原因の一つだ。


「ねぇ、リーノ。細工で使う道具って持ってる?」

「んにゃ。持ってねぇんだよな」

「鍛冶場の作業場にある道具で出来る?」

「おー作業場にあった道具についてはジオンに聞いてっけど、細工で使う道具もあるみてぇだな」


鍛冶場の作業場にある道具はあくまで鍛冶用の道具だけかと思っていたけど、生産の道具がある程度揃っているのだろう。

それならば急いで購入する必要はないが、さて。


「買ってもいいけど、どうする?」

「んー……今はいいや。持ち歩くには邪魔になる道具もあるしな!

 家、買うんだろ? その時、買ってくれ」

「うん。その時は良いやつを買おうね。ジオンも」


2人が笑顔で頷いた頃、メッセージの受信を知らせる通知音が鳴った。


『TO:ライ FROM:レン

 着いたよ。鍛冶場の前にいる』


『TO:レン FROM:ライ

 すぐ行く!』


ウィンドウを閉じて商店を出る。

小さな村なので鍛冶場まではすぐだ。急ぎ足で鍛冶場まで向かえば兄ちゃんが笑顔で迎えてくれた。


「兄ちゃん! お待たせ!」

「ううん。待たせたのはこっちだよ。

 君がリーノかな? 俺は、レン。よろしく」

「おう、話は聞いてるぜ! よろしくな!」


俺がログアウトしている間、ジオンとリーノが何を話していたのかはわからない。

昨日俺も少しはリーノにこれまでのことやこれからのことを話しはしたが、詳しく話せたわけではない。

恐らくジオンはその辺りのことも詳しく話してくれたのだろう。


鍛冶場のドアをくぐり抜け、辺りを見渡していると、前回来た時と同じ男性が俺達に気付いてこちらへ来てくれた。

俺とジオンの顔に視線を向けた後、リーノと兄ちゃんに視線を動かす。


「従魔増えたんだな。んで、こっちの兄ちゃんは異世界の旅人か。友達か?」

「ううん。俺の兄ちゃんなんだ」

「へえ! なるほどなぁ。似てるとは思ったが、兄弟か!

 それで? 今日も作業場を借りに来たのか?」

「うん。空いてる?」

「おー前回同様、今は誰もいねぇから好きなとこ行っていいぜ。

 何時間借りてくんだ?」

「んー……」


今は『CoUTime/day18/13:42』だ。作業場の貸し出しの終了時間である19:00まで借りるつもりだけれど。


「5時間かな」

「そんじゃ19:00まで使っていいぜ。おまけだ」

「いいの? ありがとう!」


5時間分4.000CZを支払って、作業場に向かう。今回も一番奥の作業場だ。


「さて、何からはじめようか」


アイテムボックスから鉱石、氷晶鉱石、宝石を取り出す。


「んーじゃあ、俺はこの宝石に凝固していこうかな」

「今更だけど、魔力銃で撃った弾って魔操できるの?」


俺が魔操する時はジオンが浮かべてくれているから操りやすいけれど、結構な速さで飛んでいく弾を動かすのは大変なのではないだろうか。

それに、魔力銃で撃った弾は魔法属性スキルとは違うわけだし、そもそも魔操で操ることができるのか。


「さぁ? どうかな?

 出来なかったら種族スキルが全滅することになるけど」


そう言いながら、兄ちゃんは1丁の魔力銃を取り出して構えた。

フリントの色が淡い薄緑色に光ったのを確認した後、銃口に銃を持っていない左手を翳して、引き金を引く。


「よっ……と。うん。できたね」

「わー! 凄いや兄ちゃん! ねぇ、今の弾はなに?」

「回復弾だよ。体に撃ったら回復する」

「へぇ……そうなんだ……」


回復するとは言え撃たれなきゃいけないのか。回復してもらう度に驚きそうだ。

何とも言えない顔をしている俺の顔を見て、兄ちゃんがくすくすと笑っている。


「ライ、《青の宝石》と《赤の宝石》の違いってあるの?」

「んー……《赤の宝石》のほうが出にくいくらいしかわかんないや。

 リーノ、どうなの?」

「まぁ、出やすさくらいしか差はねぇな。後は好みだな」


リーノの言葉に頷いた兄ちゃんは、青の宝石に手を翳して融解と呟いた。

熔解の時と同じくどろりと溶けた宝石に、先程の回復弾を合わせて凝固する。

融合の時はうっすらと色が変わっていたが、色は変わっていないようだ。


「どう? 兄ちゃん」

「んー……『魔力回復+2』だって。へぇ、いいな」

「魔力回復ってスキルのやつ?」

「そうだね。効果は一緒。時間毎に回復するMPの量が増えるよ。

 ただ、+2だから2回復するってわけではないみたい。

 どういう計算がされているのかはわからないけど」


兄ちゃんに渡された青の宝石を眺める。

魔力回復はとてもありがたい効果だ。


「聞いていたが、すげぇスキルだな」


リーノの言葉に兄ちゃんは小さく笑って肩を竦める。


「俺もそう思うよ。

 ね、リーノ。材料が揃ったらアクセサリー作ってもらえるかな?」

「それいいね! リーノ、俺のも作って欲しいな」

「おう、いいぜ。何を作る?」

「んーそうだなぁ……ピアスとか?」

「ピアスか。一番シンプルなやつなら宝石2個と鉱石……鉄でいいな。鉄が1個ありゃできるぜ」

「あ、確か耐寒が付いてる鉄が残ってるはず。

 えーと……あ、あったあった」


前回作業場で融合した時に出来たやつだ。

+1や+2じゃほとんど意味ないかもしれないけど、何も付いてないよりは良いだろう。


「おう。それじゃ、それ使って作るぜ」

「宝石は全部凝固してしまって良さそうだね。

 あ、そうだ。ライ、パーティー入れてくれる? ジオンの魔法が魔操できるか試してみようよ」

「うん。そうだね」


早速兄ちゃんをパーティーに招待する。

参加したのを確認してから、ジオンに氷晶弾を出してもらう。


「あー……やっぱり駄目だね」

「そっかぁ。まぁ、そうだよねぇ」


パーティーメンバーの魔法は魔操できないようだ。

作業台に並んでいる鉄を熔解して、ジオンの出してくれた氷晶弾を魔操で操り、融合する。

鑑定してみれば『氷晶属性+2』だった。


「それじゃ、どんどん作っていっちゃおうか」

「はい。では私は、鍛冶をしつつ、クールタイムが回復し次第、氷晶弾を浮かせていきますね」

「俺は材料が揃い次第ピアス作っていくわ。雷弾はどうする?」

「兄ちゃんも雷属性持ってるし、同じ効果が多いほうが良いから、雷弾も融合したいな」

「おう。午前中にジオンに聞きながら練習したから俺も浮かせられるようになったんだぜ」


そう言ってぽんっと雷弾を浮かせて見せてくれる。


「練習してくれたの? ありがとう。

 兄ちゃんみたいに飛び出て行く弾を魔操できる自信ないから助かるよ」


キラキラと輝きながら、時折小さな稲妻が走る雷弾を魔操する。

氷晶弾と雷弾の両方を交互に融合していけば、前回より効率よく魔法鉱石を増やせそうだ。


鉄を熔解して雷弾と融合して、出来た雷鉱石を鑑定する。

予想していた『麻痺+2』が付いていた。


昨日たくさん採掘をしたので、鉱石も宝石もたくさんある。

宝石は鉱石に比べて出にくいようだけど、リーノがいるので惜しみなく使ってしまおう。

マナポーションもたくさんある。

足りなくなったら兄ちゃんがくれるとのことだ。


それから、ロゼさんにあげるショートソードも2本打ってもらおう。

あげると言っても納得してくれなさそうだけれど。

お金を受け取ることになるなら尚更、強くて気に入ってもらえるようなショートソードを2本用意しなきゃ。


魔法宝石や魔法鉱石、それからリーノに作ってもらうピアスのことについて、兄ちゃんと俺の間にお金のやり取りの話は一切していない。

仮に兄ちゃんが払うと言っても俺は絶対に受け取らないし、俺が払うと言っても兄ちゃんは受け取らないと分かっているからだ。

ジオンとリーノもそれに関して何の不満もないようなので良かった。


「よし! それじゃあ作業開始だね!」

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