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day143 キャビンとワゴン

『TO:ライ FROM:レン

 空に頼んでたやつできたみたいだよ

 この後暫くは朝陽がテラ街の露店広場にいるよ』


『TO:レン FROM:ライ

 やった!ありがとう!いくらかな?』


『TO:ライ FROM:レン

 617,400CZみたいだよ』


『TO:レン FROM:ライ

 了解!空さんにありがとうって伝えておいて~』


馬車のキャビンとワゴンが出来たみたいだ。

兄ちゃん曰く凄くこだわって作ってくれていたとのことで、ありがたいやら申し訳ないやら。でも、凄く楽しみだ。


空さんは絶対に3倍でしか売らないらしいから、恐らく今回もそうなのだろうけど、これまで空さんから購入したどの木工品より高い。

それだけたくさんの木材が使われているということだろう。


3倍か……オークションで毎回6倍、7倍なんて値段で売っている俺が欲深いような気がしてきた。

とは言え、オークションではどうしたって落札者に金額が委ねられてしまうから、俺がどうこうできるものでもない。

露店やプレイヤーショップで売るなら俺が金額を決められるけど……まぁ、いつか、出来たら良いと思う。


「キャビンとワゴン出来たみたいだよ。

 今日は次の村に行こうかと思ってたけど……せっかくなら馬車で行きたいよね」

「そうですね。でしたら、魔除けが出来てから進みましょうか」

「そうだね。それじゃあ魔除けが終わるまでは、狩りをしよう」


早めにエルムさんに魔除けについて教えてもらいに行かなければ。

突然行くのは申し訳ないし、いないかもしれないので手紙を送っておこう。


引き出しからレターセットを取り出し、便箋に文字を綴っていく。


「露店広場に行ったら、盾と杖も買おうね。

 シルトさんもベルデさんも多分露店にいると思うけど……いなかったらカヴォロに連絡してみなきゃね」

「翡翠聖木を持って行きますか?

 狩猟祭の時に使い切ってしまわれていたようですし」

「あ、そうだね。あの時は苗木がなかったから……依頼で貰った丸太5本だけだったもんね」


刀と薙刀、それからアクセサリーは昨日全て一新している。

今回からは退紅玉鋼を使っているのでぐんと攻撃力が上がっている。

秋夜さんのデスサイズや先日出品した武器類には使われていたけど、俺達が使っていた武器は退紅玉鋼を手に入れる前に作ったので使われていなかった。

俺達の武器は可能な限り全てを融合した退紅玉鋼を使いたいと思っているので、融合待ちで間が空いてしまう。

元々レベルが上がる度に装備を変えていたわけではないし、せっかく作って貰った刀だから暫く使っていたい気持ちがあるので丁度良い。


例えば俺の刀『黒風白雨☆4』は細工の数値と併せて攻撃力108。なんと3桁だ。

前回の装備条件レベル50の『如法暗夜☆4』が77だったので、一気に30程攻撃力が上がっている。


「盾は何が素材になるか分からないから……あ、でも、鉱石使ってるみたいだよね。

 じゃあ、竜胆鉄と月白銅も持って行こうか」

「そうだな! 準備しとくぜ。杖用に宝石も持ってくか?

 あ、でも、今うちにあるやつ全部魔法宝石だな。扱えねぇんだっけ」

「そうなんだよね。参ノ国で採れない宝石は……確か、緑色はたまに見かけて、黄色が極稀にあるんだっけ?」

「よく覚えてたなーその通りだぜ! 銀の洞窟っつーか、海中の洞窟? には、あるけどさ。

 あそこは案内がなきゃなかなか行けねぇよなぁ」


退紅玉鋼に変えたとは言え、使っている鉱石や宝石の数は変わっていないので、効果付与の数値は変わっていない。

今回も全て黒炎属性が付与された黒炎退紅玉鋼を使って作ってもらった。

ちなみにジオンは氷晶属性でネイヤは黒炎属性が付与された退紅玉鋼を使っている。


ネイヤの薙刀は装備条件の都合上、全てを魔法退紅玉鋼では作れなかったそうだ。

魔法属性が付与された武器はINTが必要になるので、まだレベルが低いネイヤではINTが足りないようだ。

それでも、攻撃力71、黒炎属性+35、石化+20の薙刀になっているのだけれど。

俺の装備条件50の刀と攻撃力にほとんど差がないのは、俺のSTRがないせいである。悲しい。


「……よし、手紙書けたよ。郵便局に行って、銀行だね。

 それから露店広場に行こう。あ、クロを連れて行ったら馬車で帰ってこれるかな?」

「そうね。街の中なら魔除けは必要ないもの。

 厩舎に置いた馬具を持って行けば大丈夫だと思うわ」


他の街だと街の中を馬車で移動出来る程の広さはないけど、テラ街の道は馬車が二台は余裕で通れる程広い。

そもそも、他の街だと街の中を馬で移動できないんじゃないかと思う。

前にクリントさんに馬車でカプリコーン街に連れて行ってもらった時、クリントさんは厩舎に預けると言っていた。


そう言えば、馬車で転移陣は使えるんだろうか。

次の村へ馬車で移動した後、馬車でテラ街に戻ってくるまでクロを預けっぱなしになってしまうかもしれない。

馬車ごとは無理でもクロだけなら転移陣が使えたりしないだろうか。ギルドで聞いてみたほうが良さそうだ。


「さて、行こうか」


家から出て、厩舎に向かう。

必要な馬具をイリシアに教えて貰ってアイテムボックスに入れていく。

そうしている間にイリシアが馬具を装着してくれたようで、シアとレヴが2人で手綱を握っていた。

よし、まずは郵便局に向かおう。


「うーん……力強い子をおすすめしてくれたとは言え、クロだけで大丈夫かな?

 俺達8人もいるし、荷馬車でもどれだけ素材積み込むか分からないよね」

「ええ、そうね、大変かもしれないわね。もう1頭いたら、クロも楽になると思うわ」

「そっか、そうだよね。……うん、もう1頭買いに行こう」


本当は俺達全員分の馬が欲しいところだけど、さすがに我が家の厩舎に8頭は入りきらない。

せめてパーティーの人数分……それでも6頭。全員で野原を駆けるのは難しそうだ。


道中見かける畑には今日も色んな植物が実っている。

初めてテラ街に来た日と比べると、どのお家で何を育てているか覚えられたように思う。

と言っても、我が家から中心地までの道筋にある畑だけだけれど。


「手紙出してくるね。皆はクロと待ってて」

「ええ、お待ちしてますね」


手紙を送るだけなのでささっと済ませてしまおう。

この時間は畑仕事をしている人が多く、また、郵便局に来るプレイヤーはほぼいない為、郵便局内にはほとんど人がいない。

並ぶ必要なく窓口で手続きを済ませられた。


郵便局から出て、皆と一言二言話した後、隣の銀行の扉を潜る。

いくら下ろそうか。キャビンとワゴン代で約60万CZ。

それから杖と盾は……完成してからになるかな。

でも、もしかしたら露店に並んでいるのをその場で買うかもしれない。


杖と盾の相場が分からない。前回買った時の倍用意してたら大丈夫だろうか。

シアとレヴ、イリシアの杖は争奪戦中に作って貰ったのでお金は支払っていないから……ベルデさんの露店でシアとレヴの杖を買った時はいくらだったかな。

確か、2本で約10万CZくらい。盾はリーノが今装備しているマリンバックラーが約20万CZだったと思う。

イリシアの杖のことも考えて、倍のお金を用意しておいたら多分大丈夫だと思うけれど。


それと、馬用のお金はクロの時を参考に、少し多めに下ろしておけば良いだろう。

250万CZだったはずだから……空さんに約60万、杖と盾が約30万CZの2倍で……ええと、370万……よし、500万CZ下ろそう。足りないより良い。


「お待たせ。それじゃあ、露店広場に行こう」

「ベルデくんいるかなー?」

「シルトちゃんも!」

「2人とも争奪戦の時から会ってないし、久しぶりに会いたいよね」


中心地以外に店がないのは確かに不便なのかもしれないけど、中心地に来てしまえば郵便局やギルド等の公共施設、お店や露店広場等全てが揃っているので移動が楽だ。

露店広場の入り口近くにある繋ぎ場にクロを繋ぎ、皆で露店広場に入る。


まずはキャビンとワゴンだ。

朝陽さんがどこかに露店を開いているそうだけど、どの辺りで開いているかまでは聞いてない。

どうしたものかと悩んで兄ちゃんにメッセージを送るとすぐに返事がきた。

中心寄りの西側、目印は3本の大きな木……あの辺りだろうか。

メッセージに書かれた内容を頼りに進めば朝陽さんの露店を見つけることが出来た。


「朝陽さん、こんにちは」

「お、ライ! 今日は馬に乗ってこなかったのか?」

「露店広場の外に繋いであるよ」

「そりゃそうか。馬で乗り込むわけにはいかないよな。

 昨日だっけ? 馬乗ってたんだろ?」

「うん、少しだけ。兄ちゃんから聞いたの?」

「んにゃ、知り合いが見たっつってたんだよな。結構スピード出るんだろ?」

「乗馬スキルを取得したからってのはあるかな。

 なくてもある程度の速さまでは大丈夫みたいだけど……ちょっと練習したくらいだと歩くくらいのスピードしか出せなかったよ」

「ほーん。取得しちまったほうが手っ取り早いよなぁ。

 っと、空に頼んでたやつだよな? 取引ウィンドウ開くぜ」


朝陽さんの言葉に頷くとすぐに取引ウィンドウが開いた。


「キャビンとワゴン……人が乗るやつと荷物載せるやつだよな?

 2つで、えー……617,400CZだな!」


現実世界のキャビンとワゴンっていくらくらいなんだろう。

もっと高いような気もするけど……さすがに馬車のことは分からない。


取引の完了と共に取引ウィンドウが閉じる。


「で、あー、ちょっと待てよ……えー……」

「うん? うん、分かった」


ウィンドウに指を滑らせている朝陽さんの姿を眺めつつ、言われた通り待っていれば、するすると動いていた指はすぐに止まった。


「えーと……人が乗る方は最低限しか作ってない、らしいぜ」


恐らくメッセージを読んでいるだろう朝陽さんの話を纏めると、ワゴンについては完成品だけど、キャビンについては未完成に近いそうだ。

木工で作る部分と革細工や裁縫、鋳造を使って作られている部品以外は最低限らしい。

座る場所は一応あるけど木の台のようなものが置いてあるだけで、ソファを置く場所の目安にしてほしいとのことだ。

装飾についても木工で行う装飾以外はやっていないらしい。


「細工とか裁縫とか? やってない部分はそっちでやってくれってさ」

「それは構わないけど……でも、空さんって最初の方から革細工とか裁縫って取得してたんだよね?

 ソファとか机とか、そういうのずっと作ってたって聞いてるけど……」


細工については、兄ちゃん曰く『一応取ってるみたいだけど、熱心にやってるわけじゃない』らしいから、リーノに任せるのは分からないでもない。

ただ、作る気があまりないらしい防具ならともかく家具関連だ。

イリシアがいるからって理由なのだろうけど……空さんは他のプレイヤーがソファ等の家具に見向きもしない時から作り続けていたのだから、ノウハウを知っているんじゃないかと思う。


「途中までは作ってたみてーだけど、納得いかねぇってぶち壊してたんだよな。

 今の知識と技術じゃ限界があるって」

「なるほど……目標があるのに出来ないと悔しいよね」

「あ、けど、中にある照明は、納得いく出来だっつってたぜ」

「照明は空さんの得意分野だよね」


ガラス玉で作る簡単な光球なら依頼と争奪戦の時に作ったけど、おしゃれなデザインの照明なんかは作ったことがない。

家の光球をおしゃれな照明にしてみようかな。でも、他に作りたい物が多いのでなかなか手が伸びなさそうだ。

洗面所の洗面ボウルや浴槽もまだ完成していないし……シャワーはお風呂を作ろうと話した日に完成しているので一応シャワーは浴びれるようになったけれど。

それに、俺は冒険者用の魔道具を作る方が多いので、そちらに時間を割きたいとも思う。


「乗って帰ろうかと思ってたけど、難しいかな?」

「一応乗れるらしいぜ。

 遠出するってなると乗り心地がーつってたけど、まぁ、近場なら大丈夫なんじゃねぇか?」

「それなら大丈夫そうだね」


この後狩りをしようかなって思ってたけど、馬車に手を加えた方が良さそうだ。

いつもより約1日分ログインできていないので、時間が足りない。

今日はいつもより早めにログインしたけど、昨日は4時間程しかいなかったし、明日は半日でログアウトだ。

学校があったので仕方ない。今は夏休みだけど、全日制の学校に通う人より長くログインできるのだから出来る事は多い。


「言い忘れたことあったら、レンから伝えてもらうわ。

 そんじゃ、馬車の旅? 楽しんでこいよ!」

「ありがとう。空さんにもお礼を伝えておいてください。

 あ、シルトさん達の露店ってどの辺りにあるか分かる?」

「お? ああ、生産頑張る隊のやつらは大体あっちのー……あの辺で露店開いてんな」

「あっち……あの辺りかな? 教えてくれてありがとう!」


よし、キャビンとワゴンの取引は完了だ。

次は盾と杖の相談に行こう。

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[一言] お馬さんのお嫁さん選び次回かな?(*´艸`*)
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