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day127 レベル上げ週間

「今日からレベル上げ週間だよ!」


考えてみれば、これまで現実時間の1週間に1回、ゲーム内時間でいうなら約1ヶ月に1回のペースでイベントが開催されていた。

しかし、クラン戦が終わってゲーム内で約1ヶ月が経ったのに、次回イベントの告知は出ていない。

もしかしたら新規参入プレイヤーがログインした後にあるのではないだろうか。

兄ちゃんに聞いてみても大いにあり得ると言っていた。


透さんもプレイできるようになることだし、良いところを見せたい。

正式オープンからプレイしている俺達と新規参入プレイヤーに大きな差が出るようなイベントではないだろうと兄ちゃんは言っていたけど、レベルが高くて困ることはないはずだ。

新規参入プレイヤーのログイン開始までゲーム内でまだ1ヶ月程あるので、たくさんレベルを上げて備えられるはずだ。


「エルフの集落を拠点に狩りをしようと思っているけど、農業と羊はどうしようか?」

「朝少しお世話をしたら良いだけだから、狩りに出かける前にぱぱっと戻ってきてやっちゃうわ」

「ボク手伝う!」

「アタシもー!」

「うふふ、ありがとうね」

「分かった。それじゃあ、お金……あ、皆お金残ってる?」


最近渡していなかったようなと思い聞いてみれば、皆大体1万CZくらい残っているようだ。

どうやら俺がいない間、シアとレヴの食費はジオンとリーノ、フェルダ、ネイヤの4人で交代で払ってくれているらしい。

イリシアはそこに含まれていないようで……紳士である。


それはともかく、何かあった時に困るので皆に5万CZずつ渡しておく。

もっと多く渡そうとしてたけど、皆は貨幣を持たなければいけないので財布がパンパンになるからと断られてしまった。

何より、落とした時が怖いと。確かにそうだと思い5万CZにした。


狩りはエルフの森で、昼も夜もする予定だ。

と言っても、夜はログアウトしている時間の方が多いのでそんなに長くはできない。

一応いつもより少しだけ遅くログアウトしようとは思っているので、日付が変わった後も狩りは出来そうだけれど。


「それじゃあ、今日からはエルフの集落だね。

 その前に、ロゼさん達の服を渡しに行かないと」

「どちらにいらっしゃるんですか?」

「アクア街の露店広場で露店を開いてるみたいだよ」

「へぇ~! アクア街の露店広場に行くのは初めてだな!」

「言われてみればそうだね」


今一番露店広場が賑わっているのはアクア街なのだそうだ。

生産プレイヤーが移動しているようなので、もう少ししたらテラ街に変わるだろう。

もちろん、テラ街にまだ移動しない戦闘プレイヤーもいるので、生産プレイヤー全員がテラ街に移動するわけではないみたいだけれど。


転移陣を使ってアクア街のギルドに移動する。

露店広場はどの街でも大体中心、ギルドの近くにあるのですぐだ。

ロゼさん達との取引が終わったら銀行に行かなければ。


先日の落札結果分は昨日カヴォロとの待ち合わせ前に預けたけど、魔力が見える魔道具……昨日、テラ街に着いてから急いで作り、みきさんと菖蒲さん、サクノさんと取引した分はまだ預けられていない。

元になったのはピアスなので素材も少ないしそんなに高くはならないだろうと思っていたのに、なんと買取価格で247,100CZなんて値段になっていた。

7倍払うと言う3人と3倍で良いと言う俺で交渉した結果、間を取って5倍……1つ1,235,500CZでの取引となった。

魔道具は高くなるとは聞いていたけど、こんなに高くなると心臓に悪い。


「あ! 兄ちゃん! ロゼさんと朝陽さんと空さんも! 今日は皆いるんだね」

「そりゃ俺らの装備作ってもらっといて、ロゼに預けさせるなんてしねぇって!

 そもそも、俺らが取りに行くべきだったのに、来て貰って悪いな」

「ううん、大丈夫だよ。それに、俺達どこにいるか分からないからね」


トーラス街の家にいる時もあれば、テラ街の家やエルフの集落の家にいる時もある。

アクア街のクランハウスにいる可能性は少ないけど、ないとは言い切れない。

俺以上にどこにいるか分からない秋夜さんには取りに来て貰ったけれど。


「じゃあ、一人ずつ取引ウィンドウ開いて良い? それとも全員一緒?」

「別々でお願いして良い?」

「うん! それじゃあ、ロゼさんからね」


兄ちゃんは戦闘祭と狩猟祭の時ポイントで交換した防具をクラーケンの時のポイントで強化して以降、防具は変えてなかったみたいだけどロゼさん達は違う。

レベルが上がる毎に買い替え、前の防具はその都度露店で売っていたそうだ。


俺達がこれまで出品した武器やアクセサリー、魔道具なんかも新しい装備や道具に変えた後はオークションに出品され、結構なお値段で落札されているらしい。

と言っても、ほとんど出品されていないようだ。レベルが上がってもそのまま使い続けている人がほとんどらしい。

ジオンやリーノが作った武器やアクセサリーより強い装備は、余程装備条件のレベルが高いとかじゃない限り出ていないからだ。

これに関しては、この先鍛冶や細工をする人達のスキルレベルが上がれば変わってくるだろう。


「5倍……ううん、彼はいつも何倍で取引してるの?」

「彼?」

「ラセットブラウンのマスターよ」

「秋夜さん? 秋夜さんは7倍だね」

「だったら私も7倍出すわ。良いでしょう?」

「5倍で充分だよ」

「7倍7倍! あいつよりケチったなんて言われたくねぇしな!」

「俺いくらで売ったとか言わないよ」

「プライドの問題。私も7倍」


兄ちゃんとは5倍どころかお金の取引さえないのだけれど。

昨日のサクノさん達は申し訳ないからという理由だったから交渉したけど、プライドと言われると交渉しにくい。

ライバル関係であろうクランのマスターより安く買うのは、何かしら引っかかるものがあるのだろう。

自分達のほうが安く買えるという優越感もあるし、自分達の方が高く買ってるという優越感もあるし、それは人それぞれだ。


買取価格を伝えて7倍の値段で取引を行えば、ロゼさんと朝陽さん、空さんの3人分で9,104,100CZになった。

何度経験してもぎょっとする値段だ。驚くけど、納得も出来る。

イリシアの作った服はきっとどんな防具より素敵で、性能だって良いはずだ。


「凄いわね……見て、レン。似合ってる?」

「似合ってるよ。凄く綺麗」

「レンに聞いた私が馬鹿だったわ。貴方誉め言葉以外言えるの?」

「はは、言えるよ。本当に綺麗だからね。

 空も凄く似合ってる。可愛い顔を隠しちゃうのは勿体ないね」

「出さない」

「俺は? なぁ、俺は?」

「似合ってる似合ってる。格好良いよ」

「雑なんだよなぁ……!」

「俺の時は派手しか言わなかったのに求めてくるなよ」


元々レベルに合わせて防具を変えていた3人は、ほとんど防具を変えていなかった兄ちゃんと比べると少しだけ色や装飾も多かった。

それでもやっぱり、イリシアが3人の為にデザインした服はもっと豪華になっている。

裁縫スキルを持つプレイヤーの作った服が地味というわけではないけど、やはり知識の差なのだろう。

素材を持っていてもその使い方が分からなければ、また、その素材を裁縫で使用できることを知らなければ、それらの素材を使って服を作ることは出来ない。

もちろん、リーノがお手伝いしているからというのもあるだろうけれど。


受け取ってすぐに装備を変更したロゼさんと朝陽さん、空さん、そして先日渡した服を身に纏う兄ちゃんをイリシアは嬉しそうに顔を綻ばせて眺めている。

イリシアが嬉しそうで俺も嬉しい。


「あ、兄ちゃん。暫く、夜の狩り付き合ってもらって良い?

 兄ちゃんにはエルフの森はもう効率悪いかな?」

「大丈夫だよ。ま、最近は違う場所でも狩りしてるけど、そんなに変わらないよ。

 それに、エルフの森のほうが周囲に気を遣わなくて良いからね」

「ありがとう、兄ちゃん。それじゃあ、また夜ね」

「うん、またね。レベル上げ頑張って」


兄ちゃん達から離れて露店広場を出る。

アクア街のギルドに向かう途中で銀行に寄るか迷って、ギルドに向かうことにした。


「お隣の土地は先に購入しちゃおう。それから、改築も頼んでおこうかな。

 時間掛かるし、家に入れなくなっちゃうから、レベル上げしている間に改築しておきたいよね」

「そうですね。ですが、庭で育てている作物や羊は大丈夫なのでしょうか?」

「ああ、確かに。うーん……聞いてからのほうが良さそうだね」


ギルドの扉を潜り抜け、空いているカウンターに足を進める。


「こんにちは。本日はどのようなご用件ですか?」

「土地の購入と改築のお願いなんだけど……」


畑と羊のことを聞けば、屋内で育てている場合は収穫や移動をしなければならないけど、庭や畑等の屋外で育てている場合は収穫や移動をしなくても問題ないと返ってきた。

改築中のお世話については、屋外であれば大工さんに伝えておく必要があるとのこと。


「あ、そっか。大工さんとの打ち合わせがあるんだったね……うーん。

 狩りに行くのを遅らせても良いけど……今回は購入だけにしようかな」

「な、ライ。打ち合わせって俺でも出来るか? 俺、昼は留守番だし」

「えっと……どうだろう? あ、でも、大工さんに渡すお金……」

「大丈夫ですよ。銀行引き落としであればこちらで手続きが可能です」

「それなら大丈夫そうだね。リーノに任せて良い?」

「おう! 任せとけ! 柵で囲うのと厩舎、羊の餌入れと倉庫だろ? 

 あと、今ある納屋は道具入れにして、素材入れ用の倉庫。合ってるか?」

「合ってるよ。それから、作業場ももう少し広くしたいから、家自体の改築もかな。

 フェルダは庭の作業のほうが良いとかある? ガヴィンさんもいつも庭で作業してるし」

「ま、作業によっては外のが良い時はあるね」

「じゃあ両方用意しよう! 作業場を広くして、庭にも石工用のスペースを作ってもらおう」

「おう! 普段の作業のこととか話して、使いやすいようにしてもらう!」

「予算は……4500万CZ以内で!」

「改築よな? そんなに金が掛かるもんなんか?」

「多分掛からないと思うけど、一応ね」

「そんなに使わねぇから大丈夫だぜ!」


俺の現在の所持金と預金から土地代である860万CZを抜いた金額だ。

結構な大きさの家を買えそうな金額ではある。


お隣の土地を860万CZで購入し、お金を預ける為に一旦ギルドから出て銀行に向かう。

銀行にはあまり人がおらず、すぐにお金を預けることが出来た。

これで改築費用の心配はなくなっただろう。


再度ギルドへ向かい、転移陣受付の列に並ぶ。


「それじゃあリーノ、任せたよ。シアとレヴもよろしくね」

「おじいちゃんに貰ったお菓子食べてもいいー?」

「おじいちゃん……?」

「えっとね、エアさん?」

「ああ、なるほど……うん、良いよ。リーノと一緒にエルフの集落に行ってね」

「「うん!」」


本日のお留守番はリーノとシアとレヴ。

夜になったらこれまでと同じくイリシアとネイヤと交代する予定だ。

もう少し2人のレベルが上がったら、夜の狩りにも一緒に行こうと考えている。

そうなった時の昼と夜のメンバーは……うん。またその時考えよう。

全員でレベル上げ出来るような場所があれば良いのに。


「それじゃあ俺達は、エルフの集落に行こう」


転移陣受付で8人分の転移陣代を支払い、暫く順番待ちをした後、全員で転移陣部屋に入る。

先にリーノとシア、レヴがテラ街に転移するのを見送り、俺とジオン、フェルダ、イリシア、ネイヤはエルフの集落へ転移する。

リーノ達も大工さんとの話が終わった後エルフの集落に転移してくるだろう。

転移先の鐘のある広場にいたエルフの人達に挨拶をしてから、早速エルフの森に向かう。


「目標はレベル80!」


俺のレベルが80になれば、ジオン達のプレイヤー換算レベルも大体同じか少し低いか上になる。

80でも最前線プレイヤーの人達には届かないし、俺が80になるまでに更に上がっているだろうけど、エルフの森は俺達にとっては適正レベルの高い場所だ。

レベルの上がるスピードは俺達のほうが早いはずなので、少しは差を縮められるだろう。


今の俺のレベルは58。果たして何日掛かるだろうか。

その間に違うことをし始めてる気がしないでもないけど、day136のクラン会議までは一応予定はない。

クラン会議後に予定が出来る可能性はあるので、それまではなるべく予定を入れずにみっちりと狩りをしよう。

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[気になる点] ぐんぐんさんピアス要らないんだ。 と、思いましたが農業系は要らないのかな
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