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day111 海中探索

「よしぷよさん! ごめんね、待たせたかな?」

「ライさん! いや、さっき来たばっかだから、大丈夫。

 あれ? 今日はジオンさんいないんすね」

「うん、ジオン達は先に行ってるよ。

 今日一緒に行くのは、シアとレヴ、イリシア、ネイヤだよ」

「あ、ども。よしぷよです」

「スライム好きなのー?」

「おう。可愛いだろ?」

「うーん? ぷにぷに!」


シアとレヴがよしぷよさんが抱えているスライムを突く姿を横目に見つつ、待ち合わせの港から海岸沿いに進んで行く。


さて、どうやって切り出そうか。

リーノが昨日作ってくれていたアクセサリーと朝の内に作っておいた魔道具について考えを巡らす。

もうばれてしまっているし、隠す必要もないはずだ。


「リーノが……あ、リーノは俺の仲間の、えぇと……俺より少し背が高くて、金髪で……」

「あ、2人目の人っすね!」

「そうそう、2人目……よく知ってるね?

 リーノがね、よしぷよさんのスライムにどうかってアクセサリーを作ってくれたんだけど」

「へ? ……は!?」

「昨日俺がいない間に作ってくれてて……これ」


リーノが作ってくれた小さな王冠を取り出し、スライムの頭を眺める。

真上に真っ直ぐ乗せてしまうと、抱えた時に顎に突き刺さりそうなので、そっと斜めに乗せる。


「うん、似合うね。可愛い。

 よしぷよさんの趣味に合えば良いんだけど……」

「おぉお……おぉ……? 最高に可愛いじゃんお前……!

 ……待って!? アクセ!?」

「良かったら、使ってね。

 それから、こういうのも作ってきたんだけど」


アイテムボックスから朝作っておいた魔道具を取り出す。

待ち合わせ時間までに準備する事が出来て良かった。

なくても大丈夫だけど、あった方が便利だろうと思って作ったものだ。


「それは……!?」


よしぷよさんの視線が手に持つ魔道具に注がれる。

掌サイズの緑色の宝石をリーノに細工でスライムの形にして貰って、魔道具にしたものだ。


「この魔道具の近くなら海中でも話が出来ると思う。

 試せてないから、話せないかもしれないけど」


ただの可愛い置物になってしまう可能性もある。

エルムさんから追加で貰った本の中に、水中でも声が出せるようになると言うメガホンのような魔道具が書かれていたので、それを参考に作ってみたけど、どうなるだろうか。


「へー……いや、違う違う! どんな神対応!?

 驚きすぎて思考停止したわ!」

「俺達は従魔念話があるけど……よしぷよさんとは話せないから、話せた方が良いかなって思って」

「それはその通りだけど、そんな畳み掛けるように猛スピードで驚きを提供しないで!?」

「わ、わかった。ゆっくり畳み掛ける……」

「畳み掛けはするんだな……?

 よ、よし……1つずつ、聞いていくぞ」

「うん」

「まず、この王冠」

「レベルが分からなかったから、装備条件のないアクセサリーにしてくれたみたいだよ」

「あ、あー! 確かに、装備条件ない!

 助かるぅー! 違う!!!」

「えぇ……あ、スライムがアクセサリーを装備出来るのか分からなかったんだけど……乗ってるなら大丈夫なのかな?」

「うん! 装備は出来てる! 違う! いや、嬉しいけど!

 でもライさん達のアクセサリーをほいほい貰う訳にはいかねぇんだわ!」

「お土産です」

「お金払うからぁ!」

「いやいや、頼まれてもいないのに、そんな押し売りみたいなことできないよ」


前にもこんな事があったような……あ、カヴォロだ。

最初に包丁を作った時に同じような会話をした覚えがある。


「……正直に言って良い?」

「うん?」

「強化賞であの装備作ってるのがライさん達だって分かって、連絡出来なかったんだ。

 知った後に連絡したら、下心しかないって思われるんじゃないかって。

 いや、最初は、色々聞いてみたくて、話しかけたんだけど……」

「そうだったんだ? なんであれ、俺は話せて嬉しかったよ」

「それは俺も、話せて良かったって思ってる。

 でも、仲良くなったら、作って貰えないかなーっていう下心出ちゃうんじゃないかって」

「あはは」

「笑い事じゃねぇんだわ……」

「下心があって何か企んでいる人は、そんな風に正直に言わないよ。

 それに、俺も下心あるよ。お土産は、仲良くなれたら良いなって下心だから」

「それは気遣いって言うんだよ……」

「なるほど」

「これ以上俺の下心を育てないで!

 王冠は貰うけど! ありがとうございます! めちゃくちゃ嬉しいです!」

「それなら良かったよ」

「次はその魔道具……魔道具作ってるのって……ライさんなのか……?」

「実はそうなんだよね」

「………そっかぁ……そうだったかぁ……。

 それで、なんでスライム型……? 可愛いけど……」

「よしぷよさんと出掛けるならスライムが良いかなって」

「ライさんが気遣いの鬼過ぎて、うっきうきで手ぶらで来た俺格好悪過ぎない……!?

 もうやだ! これあげる!」


そう言って差し出されたのは、真っ白な羽だった。

ふわふわした凄く綺麗な羽だ。


「……? これは?」

「おもちの羽」

「……おもちさんの羽……? さすがに貰えないかな……」

「毟り取ったわけじゃないから、安心してくれ。

 あいつのスキルで羽が落ちてくるやつがあるんだけど……あ、クラン戦の時に使ってたやつ」

「回復してたやつかな? アルカナム、だっけ?」

「それそれ。他のは消えるんだけど、1枚だけ羽が残るんだ。

 使ったらHPとMPがちょっと回復するってだけのアイテムなんだけど」

「へぇ~HPとMP両方回復するんだ? 凄いね」

「普通にポーションとかマナポーションのが回復するから、ほとんど使わないんだけどな」


ネイヤに視線を向けると、ネイヤは真っ白な羽に視線を向けた。


「薬を作る時に放り込めば、効果が増幅する素材のようだな。

 ポーションやマナポーションなら回復量が増える」

「へー! そんな効果があったのか。

 けど、知り合いに調薬出来るやついないなぁ。

 ネイヤさんは使えるのか?」

「おお、使える」

「だったら、貰って欲しい。

 あいつこれで羽毛布団作るって、一時期スキル使いまくってたから大量に残ってるんだよ。

 結局、裁縫出来ないからって街で売ってた羽毛布団買ってたし」

「そう言う事なら、ありがたく貰うよ」


俺の返事を聞いたよしぷよさんはにかりと笑って、取引ウィンドウを開いた。


「じゃんじゃん持って行っちゃって!」

「わ、多い多い。こんなに貰えないよ」

「いーのいーの。王冠のお礼と、仲良くなれたら良いなって下心だから」

「なるほど……ありがとう」


80と表示される数字に申し訳なさを感じつつ、取引を完了する。

王冠や魔道具で気を遣わせてしまったようだ。


「もう1つ聞きたい事があるんだけど、従魔念話って?」

「そのまま、従魔と念話が出来るスキルだよ。

 よしぷよさんは出てない?」

「出てないなぁ。スライムとは話せないのか……」

「うーん……俺も最初からあったわけじゃないから、いつか話せる時がくるかもしれないよ」

「おう、そうだな。その時を楽しみにしとくわ」

「ライくん、お話終わったー? 海に入ろー」

「あ、うん。イリシア、ネイヤ。これ」


《可変瓶:水中呼吸》を取り出して、2人に飴を渡す。

俺も1個口に入れて、ころころと飴を転がせば、しゅわしゅわと口の中に甘みが広がった。


「飴?」

「水中呼吸が出来るようになる飴だよ」

「そんな飴が……それも魔道具?

 あれ、でも、飴が魔道具になるのか……?」

「飴はカヴォロが作った飴だよ。

 瓶が魔道具で、中に飴を入れておけば水中呼吸が出来る飴になるんだ」

「へぇ~! そんな魔道具もあるのか……」

「飴だから、食べ終わったら水中呼吸できなくなっちゃうんだよね。

 食べてみる? 水中呼吸のアクセサリーがあるなら必要ないとは思うけど」


よしぷよさんは少し悩んだ後、指から指輪を抜き取ってぱくりと1つ口に放り込んだ。


「おっ? おぉ? しゅわしゅわするな」

「この瓶に入れてたらそうなったんだよね。

 外した指輪が水中呼吸のアクセサリー?」

「そうそう。クラーケンの時のドロップ。

 飴がなくなったら付けようかと」

「アクセサリーだと途中で切れることないから良いね」

「壊れたら終わりだし、耐久値が分かり難いから、ドキドキするんだよな。

 っと、シアちゃんとレヴ君に付いて行ったら良いのか?」

「うん、行こうか」


とぷりと海に浸かる。

深い場所まで移動して、早速スライム型の魔道具を起動してみれば、球状に淡い光が広がった。


「あーあー」


試しに口を開いてみれば、ごぽりと溢れる泡と一緒に言葉を発する事が出来た。


「よしぷよさん、聞こえる?」

「聞こえる! おお……話せてる……! すっげぇ」

「ちゃんと出来てたみたいで良かったよ。

 皆も聞こえる?」

「聞こえてるわよ」

「わしも聞こえとるよ。

 ……おお、ほーか。この光の中だけか」


会話が出来る範囲はスライム型の魔道具が放つ光の中だけのようだ。

俺を中心に直径5m程の球状に淡い光が広がっている。

これだけ広範囲なら、泳ぎながらでも全員で話す事ができるだろう。


「こっちだよー」


赤色の珊瑚を抜け、魔物がこちらに向かってくるようになる場所の目印となる緑色の珊瑚までどんどん進んで行く。

珊瑚はまだ家にあるけど、追加でいくつか集めておこうかな。


「素材集めながら行って良い?

 時間がないなら真っ直ぐ向かうけど」

「大丈夫大丈夫。付き合わせてるのはこっちだからさ」

「ありがとう。ネイヤ、どう?」


ネイヤは頷くと、早速近くにある貝を手に取った。

そんなネイヤを見たよしぷよさんが首を傾げて、手に持った貝に視線を向ける。

ネイヤがぐっと力を入れてパカリと開けば、中には白く輝く小さな宝石が入っていた。


「真珠だ!」

「薬の材料になる。リーノも使うよな」

「うん、使うと思う」

「殻も使えるから、両方持っとってくれんか?」


頷いて両方を受け取り、アイテムボックスに入れる。

前回海で食材や素材を集めた時は見つからなかったけど、レアなのだろうか。


「それいるのー?」

「食べられないよ?」

「錬金術と細工で使えるみたいだよ。

 あんまりないのかな?」

「食べられないから知らんぷりしてたー」

「いっぱい集める!」


どうやら前回は食べられない貝は除外して集めていたみたいだ。

リーノの宝眼は珊瑚と同じく真珠にも反応しないようだ。

あくまで鉱物に限るのだろうか。分類が分からない。

凝固は出来るのかな。今度兄ちゃんに試してもらおう。


「よしぷよさんもいる?」

「真珠は俺にはまだ早い」

「なるほど……? おもちさんにあげるとか……」

「正気を疑われるか爆笑されるな」

「そうなんだ……」


素材を集めつつ海の中を進んで行く。


緑色の珊瑚を越えると、グロテスクな見た目をした魚のような魔物が俺達に向かって襲い掛かってきた。

シアとレヴは襲い掛かってくる魔物を翻弄するようにひらりひらりと泳ぎ回り、真っ直ぐに次の目印の珊瑚へ向かって行く。

呪痺を使いながら魔物を引きつけてくれている2人を追いつつ、2人から漏れてしまった魔物はイリシアが魔法弾を使って倒す。

倒し切れなくても怯ませることは出来るので、その隙に先へ進む事が出来た。


イリシアはクラン戦と素材集めの間にそれぞれの魔法弾がレベル5に上がり、魔法纏を使えるようになったので、魔石に封印することが出来るようになった。

ネイヤの土弾はレベル4。移動中でレベルが上がれば良いけれど。


どうやら土属性は聖属性と木属性で特殊進化する属性らしい。

ネイヤは聖属性と木属性のどちらも持っていないので、産まれた時から土属性を持っていたのだろう。

土属性の魔法スキルは、聖属性と同じく攻撃魔法ではないそうで、土弾は単体に防御力と魔法防御力が上昇するバフを付ける事ができる。


融合で付く効果付与は土属性、石化耐性、石化……そしてなんと、魔力冷却。

今はまだ魔力冷却の鉱石の数が少ないので装備は作っていないけど、ある程度数が出来たらすぐに作ってもらおう。


「大変大変!」

「強いお魚さんがいるよー!」


シアとレヴの言葉に、前方にいる大きな魔物の姿に視線を向ける。


真っ赤な体には黒色の斑点があり、とげとげとした鱗や背びれは凄く硬そうだ。

俺達をぱくりと丸飲みしてしまいそうな程に大きな口からは長く鋭い歯が飛び出ている。

時折口から溢れる黒色の液体は毒だろうか。トゲ自体にも毒がありそうだけれど。


「は……!? ユニークモンスター!?

 ら、ライさん! どうする!?」

「【黒炎弾】」


辺りの水温が急激に上昇する。

着弾した黒炎弾はユニークモンスターの体を包み、燃え上がる。

海中で燃え上がる炎……不思議だ。使えて良かったけれど。


「あ、倒せた。よし、行こう!」

「そんなあっさり……?」

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― 新着の感想 ―
[一言] 普通なら戦闘力も低く、肝心のテイムも成功せず 投げ出す前提の種族のハズなんだが、リアルラック で全て突破してるからなぁ。
[気になる点] 全属性の子と合体でもすると人語を習得できるのかしら
[良い点] ぽよぽよなスライムに王冠のアクセサリー…! 好きです。 [一言] 初めまして。更新ありがとうございます。 いつも楽しく読ませていただいてます。 スライムに王冠のアクセサリーで興奮してコメン…
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