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day109 狩りの後に

「あれ? ヤカさん、お店は?」

「休みだよ」


今日は早朝からエルフの森で狩りをした。

昨日お留守番だったシアとレヴに変わって、本日のお留守番はジオンとリーノだった。

2人はエルフの人達と交流をしていたそうだ。

エルフの集落の家には、俺達全員分の生産道具を置く事が出来ないので作業場がない。


早めにお昼ご飯を済ませ、昨日集めた素材の乗った荷車を引いてアクア街のクランハウスにやってくると、ヤカさんがリビングのソファで寛いでいた。

手には先日交換した本が持たれていて、読書を楽しんでいたであろう事がわかる。


「そう言えば、地下にベッドあったけど」

「あ、ごめんね。置く場所がなくて、一旦置かせて貰ってるんだ。

 邪魔だったら片付けるよ」

「ライ達が置いたのね。婆さんがまた何かやってんのかと思った。

 大丈夫。僕は地下でする事ないし、婆さん達はそう頻繁に来ないでしょ」

「そう言ってくれるとありがたいよ」


とは言え、俺達だけが利用するクランハウスではないのだから早めに片付けないと。

素材集めが終わったら、テラ街に行くためにレベル上げをしなければ。


「なんか外からゴロゴロ聞こえてたのは?」

「集めた素材を荷車に乗せて持ってきたんだ。

 家の増築が終わるまで、それもここに置かせて貰いたいんだけど良いかな?」

「ライのクランなんだから、ライの好きにしたら良いよ。

 他に異世界人がいるならともかく、僕達はあくまでサポート枠だからね」

「ありがとう。でも、嫌な事とか、こうして欲しいとかは、言ってね」

「その時は言うよ。……1人増えた?」

「あ、そうそう! 俺達の新しい仲間だよ」

「わしはネイヤ。お前さんは?」

「僕はヤカ。魔石屋やってる」

「魔石。魔道具に使うやつよな」

「そう。魔道具職人達に魔石売ってる。

 ……その目、どうしたの?」

「見えとるよ」

「そういうのじゃなくて……まぁ、大丈夫なら良いけど。

 とりあえず、片付けてきたら?」


本に視線を戻すヤカさんから離れ、地下室に昨日集めた素材を置きに行く。

さすがに家の中で荷車を引くのは無理なので、アイテムボックスの中にある大きな素材を地下の作業場に置いた後、荷車ごとアイテムボックスにいれてから移動しておいた。


「荷車は、俺が次に来た時も使うだろうから、アイテムボックスに入れておくね」

「次……明後日ですね。銀の洞窟に行くんですよね?」

「そうそう。銀と金とエルフの森で採れなかった色の宝石。

 それと、石工と錬金術で使う素材も集めたいよね」


銀の洞窟であれば、転移陣を使って全員で行く事ができる。

洞窟から出て海中で採取をするのなら、銀の洞窟内で待っていて貰うか、先に帰って貰う事になるけれど。


あ、そうだ。そう言えば、約束をしたんだった。

明後日だなんて突然の誘いでは、予定が空いていないかもしれないけど……聞くだけ聞いても……良い、かな。

日にちを決めるだけでも、しておいた方が良いと思うし、それに、スライムの為なら多分……明後日は無理でも断られるってことはないと思うし。


「ねぇ、よしぷよさん誘って良い?

 青色のスライムをテイムしたいんだって」

「いつも頭にスライムを乗せてるやつだよな?」

「そうそう。本戦中に今度一緒に行こうって約束したんだよね」

「良いんじゃない? 二手に別れる?」

「なるほど」


よしぷよさんと一緒に行くのなら、泳いで向かう組と転移陣で移動する組に分けなければ。

一番海の中に詳しいシアとレヴは当然、泳いで向かう組だ。

基本的に海中の魔物は避けて進むことが多いとは言え、一切戦わないと言うわけではないので、レベル上げも兼ねてイリシアとネイヤも泳いで向かう組かな。


『TO:よしぷよ FROM:ライ

 よしぷよさん、こんにちは。ライです。

 明後日day111に海の中の洞窟に行こうかなって思ってるんだけど、よしぷよさんも一緒にどうかな?

 予定があるのなら、後日空いている日に』


頭を悩ませながらメッセージを送る。


『TO:ライ FROM:よしぷよ

 行く! 誘って良いか迷ってたんだけど、送ってみればよかった

 どこで待ち合わせする? トーラス街ですよね?』


『TO:よしぷよ FROM:ライ

 トーラス街の港でどうかな?

 出来れば13時以降でお願いします』


大体いつも10時頃にログインしているので、準備してお昼ご飯を食べたらそれくらいの時間になるだろう。

早めが良いと言われたら、いつもより少し早くログインしたら良い。


『TO:ライ FROM:よしぷよ

 それじゃ、トーラス街の港に13時半で!』


了解と返事を送って、ウィンドウを閉じる。

社交辞令じゃなくて良かったとほっと胸を撫でおろす。

俺が一緒になんて言ったから気を遣わせてしまったんじゃないかと少しだけ不安だった。


地下からリビングに向かい、大きなソファに腰掛ける。


「おかえり」

「ただいま。何の本を読んでいるの?」

「これは魔力に関する本だね」

「魔力……ヤカさんの家にもたくさんありそう」

「まぁ、たくさんあるね。

 この本もあるにはあるけど、ボロボロで読めなかったんだよね」

「なるほど」


魔力の本か。俺も今度読んでみよう。

でも、貴重な本となると上級者向けだったりするだろうし、まずは初級者向けの本を読んだ方が良さそうだ。

そう言えば、生活魔法の魔導書がエルフの集落の図書館にあると言っていたので、行ってみようかな。

テラ街に向かうまではエルフの森で狩りをするつもりだし、暫くはエルフの集落に滞在する日も増えるだろう。


「銀の洞窟に行くなら、あの部屋の遺物、どうにかしたいね」

「そうですね……ですが、壁の中にある遺物を取り出すのは難しそうです。

 形状も分かりませんし」

「遺物? なんぞそれ」

「うーん……俺も詳しくは分からないんだけど、古の技術で作られた凄く便利な道具?

 今では作る事が出来ない物で、悪用されないようにギルドとか集落の長とかが所有して秘匿してるみたいだよ」


俺の説明にヤカさんが本から顔を上げる。


「個人で所有している場合もあるよ。僕もだし。

 それに、便利な物だけじゃない。

 そう言うのは、特別秘匿されてるね。僕みたいに使用もしない」

「ヤカさんの家の扉とゲート? は、遺物?」

「んー……まぁ、隠す必要もないか。鍵が遺物。

 2箇所を繋ぐことができるってだけで、転移陣程便利でもないよ」

「遺物、遺物……私もよくは知らないのだけれど、エルフの集落で聞いたことがあるわ。

 私がいた頃は、そこまで秘匿されていた訳ではない気がするのだけれど、違ったかしら。

 当時の長が所有している事やそれでエルフの集落が守られている事は皆知っていたわ」

「長い年月の中で完全に秘匿しなければいけない何かがあったのかもしれないね」


イリシアがエルフの集落で暮らしていたのが今から何年前なのかわからないけど、100年200年の話ではないだろうことは分かる。

年齢を聞いて良いものなのだろうか。特にイリシアは女性なので聞きにくい。


「んん……皆って同じ年齢くらい?

 見た目は同じくらいに見えるんだけど……あ、シアとレヴは違うかな?」

「んー……実年齢で言うなら、俺が一番下なんじゃねぇかなー」

「ボクたちのほうが長生き?」

「でも、リーノくんのほうが大人だよー」

「実年齢以外で年上ってことがあるの?」

「種族によって寿命も違いますからね。

 人間と同じ成長をするわけではありませんから」


寿命が違えば成長も違うという事だろうか。

確かに、100年生きる人の10歳と1,000年生きる人の10歳は違う気がする。


「長命の種族は、あまり実年齢は考えないんですよ。

 覚えていないと言った方が正しいでしょうか。

 年月を重ねただけ老成するというわけではないので」

「そうなの?」

「ええ。人間基準の外見年齢で考えていただければ分かり易いかと。

 長生きな分、人間と比べると老成している部分はありますが。

 ライさんの言う通り、シアとレヴ以外の私達は近い精神年齢だと思いますよ」


見た目の年齢と精神年齢が比例していると言うことかな。

一番年上に見えるのは……フェルダだろうか。ジオンかもしれない。

見た目から年齢を予想するのは得意ではないので、正直よくわからない。


「エルムさんは、見た目は俺とそんなに変わらないように見えるけど」

「婆さん……と言うか、エルフは別。人間でも老いと無縁なやつっていない?」

「なるほど」


美魔女というやつだろうか。

いや、エルムさんの場合は単純に、童顔とかそういう類だと思っていたけど。

エルムさんと同じ年くらいであろうエアさんも、凄く綺麗なお兄さんで老いとは無縁な感じがするので、エルフは別と言うのはそうなのだろう。


「外見が変わらない種族もいるよ。

 僕も同じ……って言って良いか分からないけど」

「前に、お兄さんって歳ではないって言ってたよね。

 見た目はそうだけどって」

「そう。僕がリッチになった時の外見だね。

 ただまぁ、出来た大人でもないから、結局見た目と変わんない精神年齢かもね」

「産まれた時からリッチってわけじゃないの?」

「元は人間だよ。んー……そうだな。

 前に僕の家系は全員リッチだって言ったけど、正しくは全員リッチになれる家系、だね」

「進化したってこと?」

「退化だよこんなの。……まぁ、変異だね」


変異。フェルダと同じなのかな。


「年齢やら僕の事はともかく、遺物どうするの?

 遺物を綺麗に取り出せる知り合いとかいる?

 仮にいたとしても、余程信頼できる相手じゃないと、頼むのはやめた方が良いよ」

「うーん……俺達で取り出せないかな?」

「形状が分かれば? でも、それを知られないように壁の中に埋めてるんじゃないかって思うけどね」

「あーなるほど……他のネーレーイスの集落に行けたら良いんだけど……」

「参ノ国にもいるらしいけどね。

 グラキエス街に鉱石やら鋳造品を売りに来てるらしいから、近くの海にいるんじゃない?」

「グラキエス街?」

「ここから見たらテラ街の次の街だね。間に2つくらい村があるけど。

 雪国だよ。寒さが苦手な種族だとなかなか行かない街だね」

「へぇ~俺も得意じゃないから、厚着していかないと」


テラ街の次はグラキエス街か。言われてみれば地図に書いてあった覚えがある。

確か、氷って意味じゃなかったかな。なるほど寒そうだ。


「なんぞ知らんが、壁に含まれとる遺物とやらを探したら良いんか?

 形状くらいなら壁と違う性質を持ったもん探しゃ良いから、分かると思うぞ」

「! そっか! よろしくね、ネイヤ」

「形状が分かるなら俺が取り出すよ。

 石壁だったしいける」


ネイヤとフェルダで遺物を取り出す事ができそうだ。

問題はその後どうするかだけど……参ノ国にあるネーレーイスの洞窟に行けるようになるまでは、うちで保管しておくしかないだろう。


「婆さんには話したの?」

「……忘れてた」


話す機会は何度かあったのに、他の話をしていて忘れていた。

一昨日も錬金術用の魔道具を作った後は勉強会で色々教えて貰ったけど、2階にある持ち帰った素材や本については一切話せていない。


「ネーレーイスの集落に行くつもりなら、話す必要ないかもね。

 ただまぁ……参ノ国のネーレーイスの集落の長が信用できない相手とかだったら、集落の長に話さずに婆さんに話した方が良いと思うよ」

「うぅん……見極められるかな……でも、分かった。そうするよ」


今の所、何の問題も起きていないし、今すぐ話さなきゃいけないってわけでもないだろう。


ウィンドウを開いて現在の時刻を確認する。

もうすぐログアウト予定時間だ。


「ライがおらん間、マナポーション作って良いか?」

「もちろん。好きに過ごしてよ。材料足りそう?」

「おお、昨日集めた素材で作れそうだ。

 他にも色々用意したいが、ちと材料が足りんな」

「違う場所に探しに行っても良いけど……俺がいない間にとなると、足りない分はポイントで交換した方が良いね」

「良いんか? わしゃ参加しとらんが」

「まだまだポイントあるから大丈夫だよ」


昨日エルフの集落の家用にいくつか家具を交換したけど、まだまだポイントは残っている。

テラ街の家用の家具も交換してしまいたいけど、いつ辿り着くかわからないので保留だ。

交換期間内で辿り着けたら良いけれど。

本戦の次の日からCouTimeで2週間が交換期間だ。まだ時間はある。


ネイヤの選んだ素材を交換して、ログアウト。

次にきた時はよしぷよさんと青色のスライム探しだ。

この機会にもっと仲良くなれたら良いな。

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